リフレクション - 経験や学び、考えを振り返り、深く考察する

私たちの日常の中で、過去の経験や出来事を振り返ることはどれほど行っていますか？

特にビジネスの世界では、毎日の業務の忙しさや新たな課題に追われがちで、過去の経験や学びを意識的に振り返る時間を持つことが難しいことも多いでしょう。しかし、この過去の経験や学びを深く振り返る行為、すなわち「リフレクション」は、私たちの成長や学びを加速させ、より質の高い業務遂行を可能にする鍵となります。

この記事では、リフレクションの意義、その方法、そして具体的な実践例について詳しく探ることで、その重要性と実践方法を理解し、日常の業務に取り入れるための手引きとします。

リフレクションとは

リフレクションとは、経験や学び、考えを振り返り、深く考察するプロセスを指します。リフレクションは学習やプロフェッショナルな成長において極めて重要であり、自分自身の考え方や行動の理解を深める手段として利用されます。

具体的な経験や出来事を元に、自らの感じたことや考えたことを振り返ることで、新しい知識や意識への洞察を得ることができるのです。このプロセスは、繰り返し行うことで自己認識や問題解決のスキルを養う助けとなります。

リフレクションの方法は多様で、日記の記述、グループディスカッション、指導者とのフィードバックセッションなどが含まれます。これにより、自分の強みや弱点、改善の余地がある点を明確にし、次の行動へと繋げることが可能となります。

リフレクションのサイクル

リフレクションにはサイクルがあります。一般的に言及されるリフレクションのサイクルは「コルブの学習サイクル」や「ギブスのリフレクティブサイクル」などがありますが、最も基本的かつ広く認知されているのはコルブの学習サイクルです。

コルブの学習サイクル

1. 具体的経験 (Concrete Experience)新しい経験や状況に直面する事。
2. 反省的観察 (Reflective Observation)その経験を振り返り、考えたり感じたりする事。
3. 抽象的概念化 (Abstract Conceptualization)反省から学んだことを一般的な理論や概念として理解する事。
4. 活動的試験 (Active Experimentation)新しい知識や理解を基に次の行動や実践を行う事。

このサイクルは繰り返し行われるため、学習者は経験と理論の間で連続的に動き、知識とスキルを絶えず発展させることができます。

ギブスのリフレクティブサイクルや他のモデルも、この基本的なサイクルのバリエーションとして存在します。リフレクションのプロセスを効果的に進めるために、これらのサイクルを参考にすることが有益です。

コルブの学習サイクルの実践シチュエーション

ある営業担当者が、新しいプレゼンテーション手法を試して、クライアントから肯定的な反応が得られなかった場合。

1. 具体的経験 (Concrete Experience)

営業担当者は新しいビジュアルエイドやスライドのデザインを用いてプレゼンテーションを実施した。しかし、クライアントは内容に混乱している様子だった。

2. 反省的観察 (Reflective Observation)

営業担当者はプレゼンテーションの後で、どの部分がクライアントにとって混乱の原因となったのかを振り返る。もしかしたら、新しいデザインが内容を伝える際の障壁となったのかもしれない。

3. 抽象的概念化 (Abstract Conceptualization)

営業担当者は、情報の伝達には明瞭さとシンプルさが必要であると結論づける。新しいデザインは視覚的に魅力的かもしれないが、それがメッセージの伝達を妨げる場合は避けるべきだと理解する。

4. 活動的試験 (Active Experimentation)

次回のプレゼンテーションでは、新しいデザインをよりシンプルに修正し、またクライアントのフィードバックをもとに、どの部分を強調すべきかを再評価する。そして、その改善されたアプローチでプレゼンテーションを実施する。

リフレクションを具体的に実施するための方法

日記法

毎日の終わりに、その日の出来事や学び、感じたことを書き留めます。

日記法の手順

1. 専用のノートやデジタルツールを準備します。
2. 毎日固定の時間を設定し、10-15分間日記を書く習慣をつけます。
3. 週末に一週間のエントリーを振り返り、気づきや反省点をまとめます。

グループディスカッション

仲間やチームメンバーと定期的に集まり、経験や考えを共有し合います。

グループディスカッションの手順

1. ディスカッションの目的とテーマを設定します。
2. 参加者を招待し、定期的なミーティングのスケジュールを組みます。
3. 各セッションの終わりに、気づきや学びをまとめ、次回に生かす方法を検討します。

フィードバックセッション

上司やメンターに定期的にフィードバックを求め、自身の行動や成果を評価してもらいます。

フィードバックセッションの手順

1. フィードバックを受け取る対象者を決定します。
2. 定期的なフィードバックのタイミングを設定します。
3. 受け取ったフィードバックを元に、自身のアクションや目標を見直し、改善点を明確にします。

リフレクションを支えるツール

ビジネスにおけるリフレクションは、適切なツールの使用によって、より効果的かつ継続的に実施することができます。以下は、リフレクションや振り返りをサポートする主要なデジタルツールとその使用方法の紹介です。

1. Notion

柔軟なノートテイキングとタスク管理ツール。

振り返りの実施方法: Notion内でテンプレートを作成し、週次や月次での振り返りのフォーマットを統一することができます。また、チェックリストや目標設定のボードも同時に管理可能。

事例: 大手企業のプロジェクトチームが、プロジェクトの進捗と問題点を週次で振り返るためのテンプレートをNotion内で共有し、チーム全体のアライメントを向上させた事例があります。

2. Trello

カードベースのタスク管理ツール。ビジュアルなボードで業務の流れを追跡。

振り返りの実施方法: Trelloのボードを用いて「完了したタスク」「課題」「次回のアクション」といったカテゴリを作成し、チームでの振り返りセッションでカードを移動させる形でリフレクションを行う。

事例: マーケティングエージェンシーが、キャンペーンの成功点と改善点を振り返るための月次ミーティングでTrelloボードを活用。具体的なタスクやフィードバックをビジュアルに共有し、次回のキャンペーン計画に反映させる流れを確立。

リフレクションのメリット

ビジネスにおけるリフレクションは、組織の継続的な成長と改善を促進する重要なプロセスです。

リフレクションにより意識的な学習が促進され、過去の経験からの洞察を活用して新たな戦略やアプローチを導き出すことができます。意思決定の質も向上し、失敗からの学びを速やかに取り入れることが可能となります。自己認識も深まり、個人やチームの強み、弱点を明確にすることができ、それを基にした賢明な戦略選択が可能となります。

さらに、リフレクションを行うことでコミュニケーションが強化され、チーム内の認識の共有や協力が促進されます。このように、リフレクションはビジネスの各段階での洞察、学び、そして進化をサポートする不可欠な要素となっています。

コーチング研修で内省やリフレクションのスキルを磨く

コーチングは、相手自身の考えや気づきを深める手法として広く認識されています。コーチング研修を受講することで、個人の内省やリフレクションのスキルを磨くことができます。

コーチングの技術やツールは、他者との対話だけでなく、自分自身と向き合う際の手助けともなります。特に、質問技術を学ぶことで、自らの行動や考えについて深く考察するスキルを持つことができます。

また、コーチングは他者とのコミュニケーションにおいても有効です。営業やマネジメントの場面で、チームメンバーやお客様との対話の質を高めることができるのです。

現代のビジネス環境では、単に情報を伝えるだけでなく、相手の意見や感じることを深く理解し、共感することが求められています。コーチング研修は、そうしたスキルを養う上で非常に有効です。

参照記事：内省については以下の記事もご参照下さい。
内省とは - 内省の意義や方法、その効果について詳しく解説