自己評価が低い部下は、実力があるにもかかわらず「自分はまだまだダメだ」と感じ、本来の力を発揮できないことがあります。放置すると、生産性の低下や離職につながるリスクがあるため、上司や管理職が適切にフォローすることが重要です。
この記事では、自己評価が低い人の特徴と心理的な背景を整理したうえで、職場で実践できるフォロー方法を解説します。
この記事でわかること
- 自己評価が低い人に共通する特徴
- 自己評価・自己肯定感・自己効力感の違い
- 自己評価の低さが組織に与える影響
- 上司・管理職ができる具体的なフォロー方法
- 本人が取り組める自己評価の高め方
自己評価が低いとは — 自己肯定感・自己効力感との違い
自己評価が低いとは、自分の能力や成果を実際よりも低く見積もってしまう傾向のことです。似た概念として「自己肯定感」や「自己効力感」がありますが、それぞれ意味が異なります。
| 概念 | 意味 | 焦点 |
|---|---|---|
| 自己評価 | 自分の能力・成果に対する主観的な評価 | 仕事の成果・能力 |
| 自己肯定感 | ありのままの自分を受け入れる感覚 | 存在そのもの |
| 自己効力感 | 「自分ならできる」と信じる力 | 課題への挑戦意欲 |
自己評価の低さは、自己肯定感や自己効力感の低さと連動していることが多く、いずれかが改善されると他の側面にも良い影響を与えます。マネジメントにおいては、これらを総合的に捉えてフォローすることが大切です。
自己効力感について詳しくは、以下の記事で解説しています。
自己評価が低い人の特徴

自己評価が低い人には、いくつかの共通した特徴があります。「私なんて」「どうせ自分は」が口癖になっていることが多く、以下のような行動パターンが見られます。
褒められても素直に喜べない
幼少期に成果を褒められた経験が少ない人は、大人になっても褒め言葉を素直に受け取れない傾向があります。テストで良い点を取っても「ここを間違えたね」「次はもっとがんばって」と言われ続けると、自分はまだまだダメだ、もっとがんばらなければと自分を責める思考パターンが定着します。
職場でも、上司から評価されても「お世辞だろう」「自分にはそんな価値はない」と感じてしまい、モチベーションにつながりにくくなります。
周囲と比較して自分を低く見る
同期の営業成績、同僚が上司に褒められる頻度、後輩が任される仕事の責任度など、自分が劣っている部分に意識が向きやすいのが特徴です。周囲が優秀に見える一方で、自分の強みや成果には目が向かず、自信を失っていきます。
他者からの評価に過度に依存する
自分のことを客観的に評価できないため、上司・先輩・同僚・取引先など、周囲からの評価が行動の基準になります。評価されなければ自分の存在価値を見出せず、認められようと過度にがんばる一方で、評価が得られないと一気に落ち込んでしまいます。
理想が高く完璧を求める
自己評価が低い人は、実は非常に高い理想を持っていることがあります。目標が高いため、到達していない自分をダメだと思い込んでしまうのです。本人は無意識に高い基準を設定しているため、自覚がないケースがほとんどです。
インポスター症候群の可能性
十分な実力や実績があるにもかかわらず、「自分の成功は運やまぐれのおかげだ」「本当の実力ではない」と感じてしまう心理状態を、インポスター症候群(詐欺師症候群)と呼びます。
特に責任感が強く真面目な人、昇進や異動で新しい役割を担った人に見られやすい傾向があります。自己評価の低さがインポスター症候群から来ている場合は、通常の褒め方だけでは改善しにくいため、成功体験を事実として記録・振り返る仕組みが有効です。
自己評価の低さが組織に与える影響
自己評価が低い部下を放置すると、本人だけでなく組織全体に悪影響が及びます。
生産性の低下
自信がないために意思決定に時間がかかり、仕事のスピードが落ちます。「自分の判断は間違っているかもしれない」と感じるため、上司の確認を必要以上に求めたり、着手すること自体を躊躇したりする傾向があります。
挑戦の回避と成長の停滞
「どうせ自分には無理だ」という思い込みから、新しい業務や責任のある仕事を避けるようになります。結果として成長の機会を逃し、周囲との差が実際に開いていくという悪循環に陥ります。
ヘルプを出せない
「こんなことで相談したら迷惑をかける」「自分の能力不足がバレる」と考え、困っていても助けを求められません。問題が大きくなってから発覚するケースが多く、チーム全体の業務に影響を及ぼします。
離職リスクの上昇
会社の評価と本人の自己評価に大きなギャップがあると、「自分はこの仕事に向いていない」と感じて退職を選んでしまうことがあります。特に経験の浅い若手社員は、自己評価の低さが早期離職の要因になりやすい傾向があります。
自己評価が低い部下へのフォロー方法

自己評価の低い部下は、周囲からの適切なサポートによって少しずつ自信を取り戻していきます。以下のフォロー方法を継続的に実践することが大切です。
効果的な褒め方を実践する
褒められた経験が少ない人には、褒め方にも工夫が必要です。以下のポイントを意識すると効果的です。
- 具体的に褒める —「よくがんばっている」ではなく「最近仕事が早くなった」「いつも丁寧な資料を作っている」など、何が良いのかを明確に伝える
- その場で褒める — 後から褒めると取ってつけた印象になるため、状況が許す限りリアルタイムで伝える
- 「やっぱり」をつけて褒める —「やっぱりこの手の資料作りは上手だな」のように、以前から思っていたことを伝える形にすると信頼感が増す
- 間接的に褒める —「○○さんがあなたのことを褒めていたよ」と、第三者からの評価を伝えることで、複数の人に認められている実感を持たせる
1on1ミーティングで定期的に対話する
自己評価が低い部下は、自分から悩みを打ち明けることが苦手です。定期的な1on1ミーティングの場を設け、業務の進捗だけでなく、本人が感じている不安や課題を引き出すことが重要です。
1on1では、目標の確認と進捗の振り返りを行うことで、自分の成長を客観的に認識してもらう効果もあります。「先月できなかったことが今月はできている」という変化に気づかせることが、自己評価の改善につながります。
心理的安全性のある環境をつくる
失敗を過度に恐れている部下に対しては、「失敗しても大丈夫」というメッセージを行動で示すことが大切です。失敗した際に大声で叱責するのではなく、冷静に原因を一緒に考え、次にどうすればよいかを建設的に話し合う姿勢が、心理的安全性を高めます。
どのような場面でも冷静に同じスタンスで接することが、部下の安心感につながります。
個人に合わせた評価基準を持つ
自己評価が低い人は、平均的な基準で評価されるとますます落ち込んでしまうことがあります。他の社員と同じ物差しではなく、本人の成長度合いに焦点を当てた評価を心がけましょう。
「先月と比べてここが良くなった」「この部分は着実に成長している」というように、過去の自分との比較で成長を伝えることが効果的です。
指導と褒めをセットにする
改善点を伝える際は、良い点とセットで話すことで、必要以上に自分を責めることを防げます。
「あなたにはこういう強みがある。ここをもう少し工夫するともっと良くなる」というように、期待と伸びしろを伝える形にすると、前向きに受け止めてもらいやすくなります。
本人が取り組める自己評価の高め方

上司や同僚のサポートに加えて、本人自身の取り組みも自己評価の改善には欠かせません。管理職は以下のような行動を促す声かけを行うことで、本人の変化を後押しできます。
できたことを記録する習慣をつける
1日の終わりに「今日できたこと」を3つ書き出す習慣は、自己評価の改善に効果的です。小さなことでもよいので、できた事実を積み重ねることで、自分の成長を客観的に認識できるようになります。
目標ではなく現状に目を向ける
未来の目標にばかり意識が向くと、「まだ達成できていない自分」に焦点が当たってしまいます。月に1回程度、1か月前にはできなかったが今はできるようになったことを振り返る時間を持つことで、着実な成長を実感しやすくなります。
比較対象を「過去の自分」に変える
他者と比較する癖を変えるのは簡単ではありませんが、比較対象を「周囲の人」から「過去の自分」に切り替えることを意識するだけでも、自己評価の捉え方は変わっていきます。1on1の場で上司がこの視点を繰り返し伝えることで、徐々に定着していきます。
自己評価向上を支える研修の活用
自己評価が低い部下へのフォローは、上司個人の力だけでは限界があります。組織としてコーチング研修やモチベーション研修を導入し、管理職のフォロー力を高めることが効果的です。
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