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ホテルの人材不足を乗り越える - 原因と効果的な対策方法を解説

ホテルの人材不足は、インバウンド需要の急回復と訪日客数の過去最多更新を背景に、宿泊業全体で最も深刻な課題のひとつとなっています。この記事では、観光庁・厚生労働省・帝国データバンクの最新調査をもとに、ホテルの人材不足の実態と原因、そして待遇改善・DX活用・外国人材活用・研修制度整備までの実務的な対策を整理します。

この記事でわかること

  • ホテルの人材不足の最新実態(2024〜2025年データ)
  • 人手不足が引き起こす経営・現場への影響
  • コロナ禍以降の環境変化と構造的な原因
  • 待遇改善・DX・外国人材・研修などの具体的な対策
  • 特定技能制度を活用した外国人材の採用方法
【この記事の監修者】
ザ・ホスピタリティチーム株式会社 代表取締役 船坂 光弘

新卒でホテルのオープニングを経験し、以降17年間ホテルマンとして現場でホスピタリティを体現。ホテルマン時代には、ベルマン、フロント、販売、バンケット、企画、宴会予約、ウェディングなど様々なセクションを経験し、ウェディング支配人時代には、ハード・ソフト両面で改革し、日本のホテルウェディング売上増部門で帝国ホテルを抜いて全国第1位となり、地方ホテルとしては異例の日本一を実現した。

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深刻化するホテルの人材不足の現状

ホテルは、日本国内で最も人材不足感が強い業界のひとつです。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」によると、旅館・ホテルの非正社員の人手不足割合は59.0%と、調査対象51業種中で最も高い水準に達しています。2023年11月以来23ヶ月ぶりに非正社員不足のトップとなり、インバウンド需要の高まりが背景にあります。

厚生労働省「労働経済動向調査」では、宿泊業・飲食サービス業の未充足求人割合は67%と、全業種平均(59%)を大きく上回ります。観光庁が2025年3月に公表した「令和6年度 宿泊業の人材確保・育成の状況に関する実態調査」では、宿泊事業者363施設のうち多くが慢性的な人手不足を抱えていることが明らかになっています。

ホテルの人材不足が引き起こす影響

人材不足は、ホテル運営の現場と経営の双方に大きな影響を及ぼします。サービス品質の低下、既存スタッフへの負担増、機会損失と、放置すれば連鎖的に経営課題へと広がります。

サービス品質と顧客満足度の低下

従業員一人あたりの業務負担が増えることで、きめ細やかなサービスの提供が困難になり、結果としてホスピタリティの質が低下します。具体的には次のような事象が顕在化しやすくなります。

  • チェックイン・チェックアウト時の待ち時間の増加
  • 客室清掃の遅延・繁忙期の対応漏れ
  • レストラン・ルームサービスの提供時間の長期化
  • 従業員の疲労蓄積による接客品質の低下
  • 口コミ評価・リピート率の下落

既存スタッフへの負担増と連鎖離職

欠員を埋めるための業務負担が既存スタッフに集中すると、長時間労働や有給取得困難が常態化します。観光庁の調査でも、離職率の高い施設ほど研修を実施していない傾向が指摘されており、教育機会の不足がさらなる離職を招く悪循環が生まれています。

機会損失と経営インパクト

人材不足によって稼働できる客室数を絞らざるをえないケースもあり、満室にすれば得られた売上機会を失う事態が発生します。新規開業計画の遅延や、繁忙期の予約受付制限など、経営面でのインパクトも無視できません。人材不足は単なる労務課題ではなく、機会損失と将来の競争力低下を伴う経営課題です。

コロナ禍以降のホテルを取り巻く環境変化

近年のホテルの人材不足を理解するうえで欠かせないのが、コロナ禍以降の業界全体を取り巻く環境変化です。需要・供給・人材の3つの面で、過去にない動きが同時並行で進んでいます。

インバウンド需要の急回復

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の訪日外国人旅行者数は3,686万9,900人で過去最高を記録し、2019年比でも15.6%増となりました。訪日消費額も8兆1,395億円と過去最高を更新しています。政府は2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円の目標を掲げており、需要拡大は今後も継続する見通しです。

新規開業ラッシュによる人材獲得競争

インバウンド需要の急拡大に伴い、ホテルの新規開業が国内各地で相次いでいます。帝国データバンク「全国 旅館・ホテル市場 動向調査(2025年度見通し)」では、2025年度の国内旅館・ホテル市場規模は6.5兆円に到達する見込みで、4年連続の伸びとなる見通しです。施設数の増加によって、限られた人材を奪い合う獲得競争が一段と激化しています。

他業界への人材流出と回帰の遅さ

コロナ禍で営業縮小を余儀なくされた時期に、ホテルから他業界(小売・物流・IT・介護など)へ転職した人材が、需要回復後も戻ってきていない状況が続いています。一度離れた人材を呼び戻すには、当時よりも改善された労働条件と将来性のあるキャリアパスを提示する必要があります。

円安と外資系ホテルの参入

円安基調を背景に、外資系の高級ホテルが日本市場へ次々と参入しています。外資系ホテルは比較的高い賃金・福利厚生を提示する傾向があり、国内ホテルとの人材獲得競争を加速させる要因にもなっています。

ホテルの人材不足の主な原因7選

ホテルの人材不足の背景には、複数の構造的な要因が重なっています。観光庁の最新調査結果をもとに、特に重要な7つの原因を整理します。

1. 求人への応募が集まらない

観光庁の宿泊事業者調査では、人手不足の要因として「求人に対する応募がない」と回答した施設の割合が、シティホテル・リゾートホテルで77.5%、旅館で61.8%、ビジネスホテルで61.7%と、いずれの施設種別でも最大の要因となっています。とくに地方部では67.0%と、三大都市圏(56.4%)よりも応募確保に苦戦している実態が示されています。

2. 従業員の高齢化

旅館では「従業員の高齢化」を人手不足の要因として挙げる施設が61.3%、シティホテル・リゾートホテルで56.3%にのぼります。地方部の宿泊施設では55.8%が高齢化を要因と回答しており、世代交代の難しさが浮き彫りになっています。高齢化に伴う離職や、若年層の入職減が同時並行で進んでいることが課題です。

3. 離職率の高さ

同調査では、三大都市圏の宿泊施設の46.2%が「離職率15%以上」と回答しています。地方部でも37.5%が同水準で、業界全体として人材定着の課題を抱えています。要因としては「採用してもすぐにやめる」と答えた施設が三大都市圏で33.3%、地方部で35.4%にのぼり、離職防止策が急務となっています。

4. 賃金・労働条件の課題

厚生労働省の統計によると、宿泊業・飲食サービス業の月平均労働時間は173.6時間と全産業平均を上回り、平均賃金は約26万9,500円と全業種で最も低い水準です。年次有給休暇の取得率も51.0%と全業種で最低水準となっており、待遇面が他業種と比較して見劣りすることが定着率の低さに直結しています。

5. 育成・教育体制の不足

観光庁調査では、人手不足要因として「育成担当の社員の不足」を挙げた施設が三大都市圏で37.2%、シティホテル・リゾートホテルで43.7%にのぼります。離職率の高い施設ほど研修を実施していない傾向も指摘されており、教育機会の不足がさらなる離職を招く悪循環が生まれています。

6. キャリアパスの不明確さ

「いつ・どこに転勤になるか分からない」「現場から管理部門へ進むキャリアパスが見えにくい」といった声は、若年層の入職をためらわせる要因になっています。観光庁の教育機関インタビューでも、学生視点では「現場で閉じている」ように見えており、汎用的なスキルを身につけたい最近の若手のニーズと合っていない点が指摘されています。明確なキャリアパスの提示が、入職と定着の両面で重要です。

7. 繁閑差による人員配置の難しさ

ホテルは曜日・季節・イベントによる繁閑差が大きく、繁忙期に合わせて常時人員を抱えるとコストが膨らみ、閑散期に合わせると繁忙期の対応が困難になります。「中抜け勤務」など長時間拘束を伴う勤務形態も、若年層の応募意欲を下げる要因となります。需要予測と柔軟なシフト設計、スポットワークの活用が求められる領域です。

効果的な人材確保の対策方法

観光庁調査では、人手不足対策として注力したい取組として「給料の引き上げ」をシティホテル・リゾートホテルの76.1%、旅館の63.4%が挙げ、「働きやすい労働時間・休日等の整備」も旅館68.3%、シティ・リゾート67.6%と高い数値を示しています。複数施策の組み合わせが、人材定着への近道です。

待遇改善による人材定着施策

賃金水準と手当制度の見直し

業界平均を上回る賃金水準の検討と、手当・福利厚生の充実は、最も実施されている対策です。具体的には次のような施策が挙げられます。

施策カテゴリ 具体的な内容
給与制度 業界平均を上回る給与水準の検討、業績連動型賞与制度の導入
手当制度 深夜勤務手当の見直し、住宅手当の拡充、家族手当の整備
福利厚生 社員寮の整備、保育所利用補助、健康診断の充実化

勤務形態の柔軟化

従業員のワークライフバランスを重視した勤務形態の導入により、定着率の向上を図ることができます。観光庁調査でも「働きやすい労働時間・休日等の整備」がほぼ全施設種別で上位に挙げられており、現場ニーズの大きさが裏付けられています。

施策 期待される効果
固定シフト制の導入 生活リズムの安定化による離職防止
短時間正社員制度 育児・介護との両立支援
変形労働時間制 繁閑に合わせた効率的な人員配置
中抜け勤務の見直し 長時間拘束の解消、若年層のニーズに対応

DX活用による業務効率化

デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用は、業務効率化と人材不足の同時解消に有効です。観光庁では宿泊業向けの省力化投資補助事業を運営しており、補助金を活用した導入事例も増えています。

  • 需要予測システムによる適正な人員配置
  • クラウド型シフト管理・人事管理システム
  • 自動チェックイン機・キーレスシステムの導入
  • 多言語対応のセルフ案内システム
  • 清掃・配膳ロボット、IoT機器による設備管理の自動化
  • オンライン研修・eラーニングシステム

業務プロセス見直しによる省人化

従来の業務プロセスを見直し、不要な工程の削減や標準化を図ることで、限られた人員でも高い品質を維持できます。

  • 業務マニュアルの整備と標準化
  • 定型業務のチェックリスト化
  • 在庫管理・備品管理の自動化
  • 部門横断の業務分担見直し
  • 外部委託(清掃・夜間フロントなど)の検討
  • スポットワーカーの活用による繁忙期対応

研修の実施による離職率の低下と定着率向上

観光庁調査では、シティホテル・リゾートホテルの50.7%が「教育訓練・能力開発機会、スキル活用機会の充実」を注力したい取組と回答しています。体系的な研修プログラムの実施は、スキルアップとモチベーション向上を通じて、離職率の低下と定着率の向上に直結します。

研修種類 主な内容
新入社員研修 接客マナー、業務基礎知識、宿泊業界の構造理解
中堅社員研修 リーダーシップ、問題解決、後輩育成スキル
管理職研修 組織マネジメント、人事評価、シフト管理
多言語・インバウンド対応研修 外国人ゲストへの応対、異文化理解
OJT指導者研修 新人指導の体系化、教育担当者のスキル向上

外国人材の活用と特定技能制度

外国人材の採用は、人材不足解消とインバウンド対応強化を同時に進められる選択肢です。ホテルでは在留資格ごとに従事できる業務が異なるため、自社の課題に合わせた使い分けが重要になります。

特定技能「宿泊」

特定技能「宿泊」は、フロント・企画・広報・接客・レストランサービスなど、ホテル業務全般を幅広く任せたい場合に活用できる在留資格です。技能試験と日本語能力試験の合格、または技能実習からの移行が要件で、受入れ機関は生活支援体制の整備や報酬額が日本人と同等以上であることなどの条件を満たす必要があります。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」

大学・専門学校で関連分野を学んだ外国人を、フロントオフィスや企画・広報部門などのオフィスワークで採用する場合に該当します。学歴・職歴と業務内容の関連性が要件となり、現場業務(清掃・配膳など)には従事できません。語学力を活かしたインバウンド対応強化に有効です。

特定技能「外食」

ホテル内のレストランで料飲サービスや調理に従事する外国人材を採用する場合に活用できる在留資格です。ホテルレストランの料理長や調理スタッフ、サービススタッフの確保に役立ちます。

特定技能「ビルクリーニング」

客室や共用部の清掃業務を担う外国人材を採用する場合に該当する在留資格です。清掃部門の人手不足が深刻化している施設で、ハウスキーピングの戦力として有効活用できます。

外国人材採用時の注意点

外国人材の採用は人材不足の解消に有効ですが、受け入れ側の体制整備が成功のカギを握ります。次の点に注意して進めましょう。

  • 日本語教育支援の体制整備(業務日本語・接客日本語)
  • 文化・宗教の違いへの配慮(食事、休日、礼拝など)
  • キャリアパスの明確化(入社後の昇給・昇格基準)
  • 住居・生活支援体制の構築
  • 受け入れ部署のマネジメント教育(多文化チーム運営)
  • 不法就労助長罪を防ぐための在留資格と業務内容の整合性確認

ホテルの人材不足についてよくある質問

ホテルの人材不足対策に関するよくある質問にお答えします。

Q. ホテルの離職率はどのくらいですか?
観光庁の宿泊事業者調査では、三大都市圏の46.2%、地方部の37.5%が「離職率15%以上」と回答しています。厚生労働省「雇用動向調査」でも、宿泊業・飲食サービス業の離職率は全産業の中で高水準が続いており、業界全体として人材定着が大きな課題になっています。
Q. 特定技能制度の活用条件はどのようになっていますか?
宿泊業では特定技能1号として、フロント・企画・広報・接客・レストランサービスなどの業務に外国人材を受け入れることができます。技能試験と日本語能力試験の合格、または技能実習からの移行が要件です。受入れ機関側には、生活支援体制の整備や報酬額が日本人と同等以上であることなどの条件があります。最新の要件は出入国在留管理庁・観光庁の公表資料で確認してください。
Q. DX導入の初期コストはどの程度かかりますか?
導入するシステムの種類や規模によって幅があります。自動チェックイン機は1台あたり数百万円規模、クラウド型のシフト管理ツールは月額数千円〜数万円程度が目安です。観光庁が運営する「省力化投資補助事業」など、宿泊事業者向けの補助金制度も活用可能なため、導入前に支援制度を確認することをおすすめします。
Q. 中小規模のホテル・旅館でも実践できる対策はありますか?
あります。中小施設でも比較的取り組みやすい対策として、シフト固定化による生活リズム安定、業務マニュアル整備、外部委託の活用、自治体の助成金活用などが挙げられます。一度に大きな投資をするより、自社の課題と従業員の声を踏まえて優先順位を決め、段階的に実施することが効果的です。
Q. 研修の実施で離職率はどの程度改善しますか?
観光庁の宿泊事業者調査では、離職率が高い施設ほど研修を実施していない傾向が指摘されており、研修の有無と定着率の相関が示唆されています。明確なキャリアパスと体系的な教育機会の提供は、若年層の「成長実感」と「将来不安の解消」につながり、定着率向上に寄与します。とくに新入社員研修・OJT指導者研修・中堅社員研修の3つは優先度が高い領域です。

まとめ

ホテルの人材不足は、インバウンド需要の急回復と業界の構造的課題が重なって深刻化しています。観光庁・厚生労働省・帝国データバンクの最新調査が示す通り、求人への応募不足、従業員の高齢化、離職率の高さ、賃金水準、育成体制の不足、キャリアパスの不明確さ、繁閑差への対応難が、人材確保を困難にしている主な要因です。

解決には、待遇改善・DX活用・外国人材の活用・業務プロセスの見直し・研修制度の充実といった複数の施策を組み合わせて実行することが求められます。とくに研修制度の整備は、スキルアップとモチベーション向上を通じて離職率を下げ、長期的な人材定着を実現する基盤となります。

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2026.04.27 KeySession編集部
この記事の作者
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