人材育成の研修で助成金はもらえる?種類や申請手順も解説

「人材育成研修の助成金を貰う方法がわからない」「研修の助成金の支援制度がどういうものか詳しく知らない」

このような疑問を抱く企業の方は少なくありません。

今回は、人材育成研修の助成金制度の概要や種類、申請手順を解説します。自社で研修を実施する際に助成金を活用したい方は、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

  • 人材育成研修の助成金制度とは
  • 助成金の種類
  • 助成金の申請手順

助成金を活用すれば、これまでコストを理由に躊躇していた研修を実施できるかもしれません。とはいえ、助成金の申請はなかなか大変です。研修の準備と一緒に実施すると想像以上に工数や負担がかかるかもしれません。

研修準備にリソースを割きすぎないためには、外部の研修会社の利用を検討しましょう。キーセッションでは、貴社にぴったりな研修プランをご提案可能です。助成金申請のサポートが可能な研修会社の紹介も可能なので、ぜひお気軽に無料相談からお問い合わせください。

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人材育成研修の助成金制度とは

企業が研修を実施する際、国からお金を貰える制度です。

研修の受講者が仕事で大切なスキルや知識を習得できるよう、必要なお金を助成金として補助してもらえます。助成金は、研修費用を全額補助してもらえるわけではなく、一部のみ負担してもらえます。

人材育成研修における助成金の種類

人材育成研修の助成金は、以下の2種類です。

  • 人材開発支援助成金
  • キャリアアップ助成金

実施したい研修と助成金の種類が合っていなければ、費用を負担してもらえません。そのため、助成金を貰いたい場合は、実施したい研修に当てはまるかのチェックが大切です。

それぞれを詳しく解説します。

人材開発支援助成金

1つ目の種類は、人材開発支援助成金です。

人材開発支援助成金は、職務に知識・技能を習得させるための職業訓練を実施した際に、一部の費用を助成する制度です。計画に沿って実施した場合など特定の条件を満たした場合にのみ、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。人材開発支援助成金には、全部で以下の7コースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

助成金の金額や受給条件はコースごとに異なるため、受給したい際には事前にそれぞれのコースと条件を確認することが大切です。

人材育成支援コースを例に挙げると、対象となる訓練や助成額は以下の通りです。

対象となる訓練 経費助成 経費助成

賃金要件または
資格等手当要
件を満たす場

賃金助成
(一人1時間当たり)
賃金助成
(一人1時間当たり)賃金要件または資
格等手当要件を
満たす場合
OJT実施助成
(一人1コース当たり)
OJT実施助成
(一人1コース当たり)賃金要件または資
格等手当要件を
満たす場合
人材育成

雇用保険被保険
者(有期契約労
働者等を除
く。)の場合

45%(30%) +15%
(+15%)
760円
(380円)
+200円
(+100円)
人材育成訓練

有期契約労働者
等の場合

60% +15% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
人材育成訓練

有期契約労働者
等を正規雇用労
働者等へ転換し
た場合

70% +30% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
認定実習併用職業訓練 45%(30%) +15%(+15%) 760円
(380円)
+200円
(+100円)
有期実習型訓練

有期契約労働者
等の場合

60% +15% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
20万円
(11万円)
+5万円
(+3万円)
有期実習型訓練

有期契約労働者 (+3万円)等を正規雇用労
働者等へ転換等
した場合

70% +30% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
10万円(9万円) +3万円
(+5万円)

参照:厚生労働省

すでにコースが決まっている場合は、事前にチェックしましょう。

キャリアアップ助成金

2つ目は、キャリアアップ助成金です。有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。正社員化、処遇改善の取組を実施した際に給付する制度です。

コースは6つあり、正社員支援と処遇改善支援で大きく分けられます。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

6つのコースにおける特徴は、以下の表でまとめています。

コース 特徴
正社員化コース 非正規労働者を正規労働者として雇用
障害者正社員化コース 障害者を正規雇用者として雇用
賃金規定等改定コース 非正規雇用者の賃金を3%以上増額
賃金規定等共通化コース 非正規雇用者と正規雇用者の共通賃金規定などを新しく規定
賞与・退職金制度導入コース 非正規雇用者に賞与や退職金を導入
短時間労働者労働時間延長コース 非正規雇用者の労働時間を増やして社会保険を適用

参照:厚生労働省

たとえば、正社員化コースの支給額は、以下の通りです。このほかのコースにおいても、条件を満たせば数万円〜数十万の助成金が支援されます。

正社員化前雇用形態 有期雇用労働者 無期雇用労働者
中小企業の支給額 57万円 28万5,000円
大企業の支給額 42万7,500円 21万3,750円

参照:厚生労働省

人材開発支援助成金のコース

人材開発支援助成金のコースは、以下の7つです。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

それぞれを詳しく見ていきます。

人材育成支援コース

1つ目は、人材育成支援コースです。人材育成訓練、認定実習併用職業訓練、有期実習型訓練の3つに分けられます。職務に関連した知識・技能の習得を目指す研修を実施した際に支給されます。大企業や中小企業が対象で、研修費用や研修中の賃金を一部負担してもらえます。

  • 以下の3つの研修が、対象です。
    人材育成訓練:職務に関連のある知識・技能の習得を目指した10時間以上の訓練(OFF-JT)
  • 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣より認定を受けた実習・併用職業訓練(OJT・OFF-JT)
  • 有期実習型訓練:有期契約労働者などに向けて、正規雇用労働者への雇用形態の転換を目指すための訓練(OJT・OFF-JT)

対象事業主等は以下の通りです。

  • 大企業
  • 中小企業
  • 事業主団体など

参照:厚生労働省

教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース

教育訓練休暇等付与コース」および「人への投資促進コース」は、労働者が自発的に職業能力を磨く機会を設けた場合に適用されます。具体的には、以下3つの助成が用意されています。

引用元:厚生労働省

対象事業主等は以下の通りです。

  • 大企業
  • 中小企業
  • 事業主団体

参照:厚生労働省

事業展開等リスキリング支援コース

4つ目は、事業展開等リスキリング支援コースです。新規事業を立ち上げる際、雇用者に新たなスキルを習得させるための研修で助成金が受けられます。

また、対象企業は以下の2つです。

  • 大企業
  • 中小企業

企業の規模に関係なく助成金を受けられますが、雇用保険適用されていることや適切な賃金を支払っていることが条件に挙げられます。

計7つの要件があり、それらをすべて満たす必要がある点には注意しましょう。

参照:厚生労働省

建設労働者認定訓練コース

5つ目は、建設労働者認定訓練コースです。その名の通り、建設関連の研修で助成金を受けられます。助成金の対象となるのは、以下の研修です。

  • 認定職業訓練・指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施
  • 建設労働者に認定訓練を受講

また、中小建設事業主、中小建設事業主団体などが支給対象に挙げられます。

参照:厚生労働省

建設労働者技能実習コース

6つ目は、建設労働者技能実習コースです。企業で雇用されている建築労働者向けの助成金です。

建築関連労働者の熟練技能の維持・向上を図るため技能実習を実施した場合に、支給されます。中小建設事業主、中小建設事業主団体などが支給対象です。

参照:厚生労働省

障害者職業能力開発コース

7つ目は、障害者職業能力開発コースです。障害者従業員を対象に、職務に必要なスキルを習得させるための研修を実施すると、助成金が受けられます。

対象事業主は以下の2つです。

  • 大企業
  • 中小企業

計10の要件をすべて満たした場合に支給されます。運営管理者は教育訓練の事業に携わった経験が5年以上、研修期間は6月以上2年以内でなければならないなどの条件が設定されています。

参照:厚生労働省

人材育成研修の助成金を貰うメリット

人材育成研修の助成金を貰うメリットは、以下の3点です。

  • お金を返す必要が無い
  • 予算が足りず実施できなかった研修を行える
  • 研修の規模を大きくできる

それぞれを具体的にチェックします。

お金を返す必要が無い

1つ目のメリットは、助成金として貰ったお金は、基本的に返す必要が無いことです。

助成金は国から支給されたお金であり、借入のように借りているお金ではありません。そのため、今後の経営予算を気にせず研修を実施できます。

ただし、不正受給が発覚した場合は、返金しなければいけません。

予算が足りず実施できなかった研修を行える

今まで予算が足りず実施できなかった研修を行えることも、メリットに挙げられます。

社員の能力向上のために研修を実施したくなっても、予算が足りなければ実施できません。助成金があれば、費用の一部を負担してもらえるため、余裕が無くても必要な研修の実施が可能です。

助成金によって必要な研修が行えるため、雇用者のスキルアップや知識習得ができます。

研修の規模を大きくできる

3つ目のメリットは、研修の質を向上させられることです。

規模の大きい研修を実施したり、実績の豊富な外部講師を招いたりしようとすると、必要な予算は増えます。助成金によって予算が増えると、研修の選択肢が増え、質の高い訓練を実施できるようになります。それにより、雇用者は仕事に必要なスキルを習得しやすくなります。

人材育成研修の助成金を貰うデメリット

人材育成研修の助成金を貰うデメリットは、以下の通りです。

  • 助成金受け取りの条件がある
  • 条件次第で返金しなければいけない

助成金を貰う場合は、あらかじめデメリットも把握しておくことが大切です。それぞれ、具体的に解説します。

助成金受け取りの条件がある

1つ目のデメリットは、助成金を受け取るための条件があることです。

労働者の雇用や労働時間削減など、さまざまな条件があります。場合によっては、助成金を貰うために労働条件を変えなければいけません。

たとえば、 キャリアアップ助成金の正社員化コースであれば、6ヶ月以上雇用もしくは、派遣先で従事している非正規雇用者が対象です。そのため、今まで短期のみ雇用していた企業も、6ヶ月以上雇用しなければいけません。

参照:厚生労働省

条件次第で返金しなければいけない

条件次第では、貰った助成金を返さなければいけない可能性があることもデメリットです。

支給後の労働条件変更や支給要件から逸脱すれば、助成金不支給にあたります。助成金を貰ったあとでも、返金しなければいけません。

たとえば、キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースでは、支給後も正規雇用者として雇用しなかった場合、返金の可能性があります。

人材育成研修で助成金を貰う手順

助成金を貰う手順は、以下の流れです。

  1. 研修内容を企画する
  2. 助成金が貰える対象か確認する
  3. 選任や策定を済ませる
  4. 実施計画書を作る
  5. 実施計画書を提出する
  6. 研修を実施する
  7. 助成金申請書を提出する

助成金によって具体的な手順は異なるため、申請時は貰いたい助成金のパンフレットをご参照ください。手順は共通する部分もあるため、イメージを掴むための参考としてください。

今回は、人材開発支援助成金の人材育成支援コースを例に、受給のためにすべきことを見ていきましょう。

参照:厚生労働省

1.研修内容を企画する

まずは、どのような研修を実施するのか、研修の内容を企画します

研修内容は、管轄労働局への提出が必要です。そのため、指摘される箇所が少なく済むよう、細かい部分まで企画しておきましょう。

2.助成金が貰える対象か確認する

次に、企画した研修が助成金を貰える対象かを確認します。

詳しい助成金の条件は、管轄労働局の公式ホームページに記載されています。たとえば、東京都であれば、東京労働局のホームページで自社が助成金の対象であるかを確認しましょう。

3.選任や策定を済ませる

コースによっては、事前に選任や策定を済ませなければいけません。

たとえば、人材育成支援コースの「人材育成訓練」や「認定実習併用職業訓練」は、計画書の提出前に選任や策定が必要です。管轄労働局と相談しつつ選任や策定をし、決まったら計画書の作成に進みます。

4.実施計画書を作る

次に、実施計画書を作ります

実施計画書は、管轄労働局の公式ホームページからダウンロードできます。ダウンロードした実施計画書に、必要事項を記載します。

コースによって実施計画書は異なるため、別のコースを間違えてダウンロードしないよう注意しましょう。

5.実施計画書を提出する

実施計画書が完成したら、管轄労働局に提出します。提出期限は、研修を開始する前の1ヶ月です。

新入社員研修が多い4月は、窓口が混み合う時期です。4月近辺に研修を実施したい場合は、早めの提出を心がけましょう。

6.研修を実施する

次は、実際に研修を実施します。

研修は、管轄労働局に提出した内容のまま実施しましょう。提出した内容と異なる研修であれば、助成金が認められない可能性もあります。

提出後に内容を変えなければいけなくなった場合は、必ず変更届を提出しましょう。

助成金の申請が大変そうと感じる方は、研修の実施を専門会社に依頼して申請をサポートしてもらうのも一つの手です。

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7.助成金申請書を提出する

最後に、助成金申請書を提出します。公式ホームページから必要な書類をダウンロードし、記載したうえで管轄労働局に提出します。

提出期限は、研修終了から2ヶ月以内です。提出期限に遅れないよう、管理を徹底しておきましょう。

人材育成研修の助成金を貰う際の注意点

助成金を貰う際の注意点は、申請手順を間違えないことです。手順を間違えると、助成金が貰えない可能性もあります。

とくに、実施計画書の提出前に研修を実施しないよう注意しましょう。実施後に助成金の申請をしても、支給されません。

細かい注意点は助成金によって異なるため、事前に各種パンフレットを参照しましょう。

助成金を活用して研修を実施しよう

人材育成研修の助成金は、人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の2種類です。人材開発支援助成金は7コース、キャリアアップ助成金は6コースに分かれます。

助成金は返す必要が無いため、予算に余裕がなくても、費用のかかる質の高い研修や規模の大きい研修を実施しやすくなります。

助成金を貰うためには要件を満たさなければなりません。手順を間違えると助成金を貰えない可能性があるため、注意しましょう。

助成金の申請により研修予算が増えることで、今まではコストの大きさが懸念で依頼できなかった企業に依頼できるようになります。

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