トップ / メディア / 組織構築/ 暗黙知とは?形式知化のメリットとSECIモデルを解説

暗黙知とは?形式知化のメリットとSECIモデルを解説

経験や直感を基にした知識で、言葉や数字で表現しにくく、伝達が難しい

暗黙知とは、個人の経験や直感に基づく知識のことで、言葉や数字で表現しにくく他者への伝達が難しい知識を指します。熟練した職人の技術やベテラン社員の顧客対応スキルなどが代表例です。

暗黙知をそのままにすると業務が属人化してしまうため、組織として競争力を維持するには、暗黙知を「形式知」に変換し共有する仕組み(ナレッジマネジメント)が欠かせません。本記事では、暗黙知と形式知の違い、形式知化のメリット、SECIモデルを使った具体的な実践方法までを解説します。

この記事でわかること

  • 暗黙知と形式知の違い、それぞれの具体例
  • 暗黙知を形式知化する3つのメリット
  • ナレッジマネジメントの基本フレームワーク「SECIモデル」
  • SECIモデルを支える4つの「場」と実践のポイント

研修相談のお問い合わせ案内

暗黙知とは — 個人の経験に紐づく知識

暗黙知(tacit knowledge)は、ナレッジマネジメントの中心となる概念です。まずは定義と具体例から押さえていきましょう。

暗黙知の定義

暗黙知とは、個人の経験・勘・直感に基づく知識やスキルで、言葉や数字で表現することが難しく、他者への伝達や継承が困難な知識のことです。マニュアル化しにくい「暗黙のうちに身についた知恵」と表現されることもあります。

暗黙知の具体例

身近な暗黙知の例としては、自転車の乗り方、泳ぎ方、楽器の演奏など、体で覚えるスキルが挙げられます。これらは「やり方を文章で説明されても、実際にやってみないと身につかない」ものばかりです。

企業における暗黙知の例は以下のとおりです。

  • ベテラン営業担当者が持つ「顧客の機微を察する力」
  • 熟練した職人の手の感覚に基づく品質判断
  • 長年の経験から培われた顧客対応の気配り
  • トラブル対応時の判断軸や優先順位付け

これらは長年の実践で身についた知識であり、マニュアルには明文化しにくいものです。

暗黙知と形式知の違い

暗黙知の対極にあるのが「形式知」です。両者の違いを理解することが、ナレッジマネジメントの第一歩です。

形式知の定義

形式知(explicit knowledge)とは、言葉・数字・図表で表現できる知識のことです。文書やデータベースを通じてマニュアル化でき、集合研修やOJTを通じて社内で継承・共有できます。

暗黙知と形式知の比較

項目 暗黙知 形式知
性質 主観的・経験的 客観的・論理的
表現方法 言語化が困難 言語・図表で表現可能
共有方法 体験・観察を通じて伝える 文書・マニュアル・データで共有
具体例 営業の勘、職人の手の感覚 業務マニュアル、トークスクリプト
柔軟性 状況に応じて柔軟に対応できる 定型化されているが応用が必要

営業スキルを例に考えてみましょう。トークスクリプトや商材知識は形式知ですが、「この顧客にはこのタイミングでこのアプローチが効く」という判断は暗黙知です。新人はまず形式知を学び、現場での経験を積みながら徐々に暗黙知を蓄積していきます。

形式知は共有しやすい一方で、状況に応じた応用が必要になります。両者は対立する概念ではなく、補完し合う関係にあります。

暗黙知を形式知化する3つのメリット

暗黙知を放置すると業務が属人化し、特定の担当者が不在になると業務が滞ってしまいます。形式知化を進めることで、組織にどのようなメリットが生まれるのかを整理します。

属人化の問題については、属人化の原因と解消するための手法もあわせてご覧ください。

1. 業務の標準化と質の向上

暗黙知に頼った業務は、担当者によって品質にばらつきが生じやすく、想定外の状況にも対応しにくくなります。マニュアルや判断基準を整備することで、誰もが同じ水準で業務を進められるようになります。

たとえば顧客対応マニュアルを作成すれば、新人でもベテランと同じレベルのサービスを提供できる可能性が高まります。さらに業務プロセスが明文化されることで、改善や効果検証がしやすくなり、PDCAサイクルが回しやすくなります。

2. スキルの可視化による適正な人事評価

暗黙知は表面化しにくいため、従業員がどんなスキルを持っているかを把握しにくいものです。結果として、適切な人事評価につながらず、従業員の不満を招く可能性があります。

形式知化により従業員の強みや弱みが明確になると、特性を活かした人材配置や育成計画も立てやすくなります。人事評価制度と組み合わせて運用することで、評価の納得感が高まります。

3. 知的資産の蓄積と組織の競争力強化

形式知化された知識は、企業の知的資産になります。組織全体で共有できる状態にすることで、知識をベースにした新しいアイデアが生まれやすくなります。

また、情報セキュリティの観点でも有益です。暗黙知のままだと意図せず他社に漏えいしてしまうリスクがありますが、形式知化して企業の資産として位置づけることで、取り扱いを管理しやすくなります。

関連して、業務の透明化については見える化とはも参考にしてください。

暗黙知共有研修

暗黙知共有研修 (6時間)

研修では、ハイパフォーマーへ複数名デプスインタビューを実施し、暗黙知をQCD行動リストとして可視化・モデル化。チェックシートとシェイピング演習で自身の行動を比較・深掘りし、行動目標と習慣を設定。独自シートで翌日からの変化をモニタリングし、自走力と組織パフォーマンスを継続的に向上させます。

輝く人財づくりを支援する

SECIモデル — ナレッジマネジメントの基本フレームワーク

暗黙知を形式知化し、組織で活用するための代表的なフレームワークが「SECIモデル」です。

SECIモデルとは

SECI(セキ)モデルは、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が著書『知識創造企業』(1995年)で提唱したナレッジマネジメントの理論です。暗黙知と形式知が変換・循環しながら、組織の知識が創造されていくプロセスを4つのフェーズで表現しています。

フェーズ 英語名 変換の方向
共同化 Socialization 暗黙知 → 暗黙知
表出化 Externalization 暗黙知 → 形式知
連結化 Combination 形式知 → 形式知
内面化 Internalization 形式知 → 暗黙知

これら4つのフェーズが循環することで、組織の知識が継続的に創造・進化していきます。

共同化(Socialization)

暗黙知を持つ従業員から、別の従業員へ対面で知識を共有する段階です。言語化が難しい知識を、経験や体験を通じて伝えます。具体的には以下のような取り組みが該当します。

  • 営業や商談に同席させる
  • OJTで実務を体験させる
  • ベテラン社員の仕事を観察させる

「見て覚える」「体験して学ぶ」ことで知識が伝達されますが、この段階では暗黙知のまま伝わることが多くなります。

表出化(Externalization)

個人が持つ暗黙知を言語化し、形式知へ変換する段階です。図や文章、事例などを用いて、周囲にわかりやすく表現します。

  • 朝礼やミーティングでの内容報告
  • 業務マニュアルの作成
  • グループワークでの話し合い
  • プロジェクトの振り返り

SECIモデルの中でも、もっとも重要かつ難しいフェーズです。暗黙知を持つ本人が自分の知識を客観的に見つめ直す力が求められます。

連結化(Combination)

メンバーがそれぞれ持つ形式知を組み合わせ、新しい知識を創出する段階です。他者のやり方を取り入れて業務効率化やアイデアの発見につなげます。

  • 成功事例から業務効率化の方法を見いだす
  • 社内データを分析して新たな知見を得る
  • 異なる部署のノウハウを組み合わせて新製品を開発する

ただし、他人の知識をそのまま使えるとは限らないため、自分の環境に合わせた調整が必要です。

内面化(Internalization)

形式知を身につけるために反復的に実践する段階です。形式知を実際に使いこなすうちに、新たな暗黙知が生まれていきます。

たとえば、成功事例(形式知)を参考に新しいプロジェクトを成功させると、その経験が新たな暗黙知となります。この新たな暗黙知が次の表出化につながり、組織的な知識創造の循環が続いていきます。

SECIモデルを支える4つの「場」

SECIモデルの4つのフェーズを機能させるには、それぞれに対応する「場(Ba)」が必要だとされています。場とは、知識共有を深めるためのコミュニケーションの機会や環境のことです。

創発の場(共同化)

個人の経験や知識を共有するための場です。業務中だけでなく、ランチや雑談などのインフォーマルな場でのやり取りも重要な役割を果たします。

  • ランチ会・朝礼・休憩時間の雑談
  • 社内SNSやフリーアドレス制などのコミュニケーション促進策
  • 経営層と現場の交流など、立場を超えた意見交換の機会

対話の場(表出化)

複数人で知識を共有しながらディスカッションできる場です。マニュアルや資料の作成に伴って対話を繰り返すことで、形式知化が進みます。

  • 定例ミーティング
  • 1on1ミーティング
  • 部門横断のプロジェクト会議

目的が曖昧なまま実施すると単なる雑談で終わってしまうため、議論のテーマを明確にして定期的に行うことが効果的です。

システムの場(連結化)

形式知を可視化して共有するためのシステム環境です。文書やデータベース、チャットツールなど、スムーズに情報共有できる仕組みを整えます。

  • Googleドキュメント・スプレッドシートなどのクラウド共有
  • Chatwork・Slackなどのチャットツール
  • ナレッジマネジメント専用ツール

実践の場(内面化)

新しい形式知を実際に使い、自分のものにしていく場です。物理的な場所は限定されませんが、従業員が主体的に挑戦できるよう、新しい実践を評価する風土や仕組みづくりが重要です。

ナレッジマネジメント実践のポイント

SECIモデルをベースに、ナレッジマネジメントを実践する際の具体的なポイントを紹介します。

ナレッジマネジメントツールを活用する

形式知化や知識共有を効率化するには、ツールの活用が欠かせません。紙のマニュアルではアクセスしにくいため、データベース化することをおすすめします。

  • 社内SNS:リアルタイムの情報共有に向く
  • 社内Wiki:組織の知識を体系的に整理できる
  • FAQ集:顧客やメンバーからのよくある質問と回答を整理できる

知識の共有を評価対象にする

暗黙知を形式知化して共有することに、抵抗を感じる従業員もいます。「知識を共有すると自分の評価が下がる」「忙しくて時間がない」という理由で消極的になりがちです。

知識共有を促進するためには、企業として理念と方針を明確に示すことが大切です。「従業員の知識は企業の知的資産であり、次の世代に継承するもの」というビジョンを浸透させましょう。その上で、知識を共有できるスキルを評価対象に組み込むことで、形式知化が定着しやすくなります。

心理的安全性のある組織文化をつくる

ナレッジマネジメントを根付かせるには、従業員が安心して知識を共有・発信できる組織文化が欠かせません。

失敗を責められたり、質問を「そんなこともわからないのか」と返される環境では、暗黙知は表に出てきません。心理的安全性の高い組織では、メンバーが気軽に質問・相談・提案できるため、知識共有が自然に進みます。

暗黙知共有を組織的に進めるには

本記事で紹介したSECIモデルや実践ポイントは、知識として理解するだけでは組織に定着しません。実際に「場」をつくり、ツールを導入し、評価制度や組織文化を整えるという継続的な取り組みが必要です。

社内だけでナレッジマネジメントを進めるのが難しい場合は、ナレッジマネジメント研修の導入が有効です。研修会社が提供するナレッジマネジメント研修では、SECIモデルの理論から実践方法、ツールの活用、心理的安全性づくりまでを体系的に学べます。

どうしても自社に合う研修会社が見つからない、比較するだけの工数が確保できないという場合には、研修会社比較サービスのKeySessionをご活用ください。

暗黙知共有研修

暗黙知共有研修 (6時間)

研修では、ハイパフォーマーへ複数名デプスインタビューを実施し、暗黙知をQCD行動リストとして可視化・モデル化。チェックシートとシェイピング演習で自身の行動を比較・深掘りし、行動目標と習慣を設定。独自シートで翌日からの変化をモニタリングし、自走力と組織パフォーマンスを継続的に向上させます。

輝く人財づくりを支援する

まとめ

暗黙知は個人の経験に紐づく言語化しにくい知識であり、形式知は誰もが共有できる文書化された知識です。両者を変換・循環させるナレッジマネジメントの実践により、組織は属人化を防ぎ、知的資産を蓄積し、競争力を高められます。

暗黙知を形式知化する基本フレームワークがSECIモデルであり、共同化・表出化・連結化・内面化の4つのフェーズを循環させることで、組織的な知識創造が進みます。SECIモデルを機能させるには、それぞれのフェーズに対応する「場」を整えることが重要です。

まずは自社のどの業務に暗黙知が集中しているかを把握し、表出化の場(ミーティング・1on1)から取り組んでみることをおすすめします。

2026.04.10 KeySession編集部
この記事の作者
研修の導入を徹底サポート。企業に最適な研修会社を紹介しています。お気軽にご相談ください!

KeySession独自調査リリース

社員研修の一括見積り