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研修の実施意義と研修レポート
研修は様々な目的で実施されますが、ほとんどの場合が何らかの「行動の変化」を期待して実施されています。
現状に何か課題があると判断し、その課題を解決するためはある種の「行動の変化」が不可欠であると考えられた際、研修は実施されるわけです。
しかし、受講者が研修で得た「学び」や「気付き」を持ち帰り、実際に仕事において活かされなければ研修を行う意味はありませんし、研修の内容が「行動の変化」に結びつく「学び」や「気付き」を提供できていないのだとしたら、研修を行う意味がありません。
そこで大事になってくるのが研修レポート(研修報告書)です。
研修レポートは、研修を実施した目的が果たされているかどうかを検証するために非常に大切な手法です。
この記事では、有益な研修にするための研修レポートの活用方法について解説します。
研修レポート(研修報告書)の必要性とは
研修を継続して行うためにはその成果を可視化する必要があり、そのためには、あらゆる立場の社員が閲覧することのできるレポート(報告書)を作成します。
さらに、研修に対するPDCAを回していくことで、よりよい成果を得られる内容になっていくわけです。しかし、研修レポートを作成する意味を受講者と共有しておかないと、必要とする情報が取れない懸念が高まります。
特に新入社員などに対しては、研修レポートの必要性について、しっかりとレクチャーしたうえで進めましょう。
研修終了時の参加者理解度を調査するため
納得して初めて行動に移すことができる人は多いので、行動変容にはまず物事への理解が必要です。
研修には予め、習得すべき知識が設定されていますので、テストなども組み合わせながら、知識の習得度合いをチェックしていきましょう。
研修は単発的な教育手法ではなく、会社全体の教育プログラムの一貫として行われています。
研修後の教育に関わる上司や次の研修の講師などに、受講者の習熟度合いを伝えておかなければ、次の教育方針を選択することが難しくなり、一貫性に欠け、効果が半減してしまいます。
また、研修後のOJTにおいて、上司は習熟度を加味しながら研修受講者と相対する必要があります。
何故ならば、受講者が研修への参加の意味を感じるためには、接する相手も一歩成長したことをリスペクトしてあげる必要があるからです。
参加者の意識・行動変化を調査するため
頭(知識)での理解が確認できたとしても、それで受講者の意識や行動が変化するかどうかは別問題です。
研修後の業務においてどのような意識・行動の変化が生じたのかについて、受講者から提出させた研修レポートだけで判断するのではなく、具体的な変化について上司にヒアリングを実施したり、アンケート調査を行いながら、多角的に判断する必要があります。
そもそも研修内容が理解できなかったのか、理解はできたけど意識や行動の変化にはつながっていないのかが判らなければ、対応のしようがありません。
今後の研修受講者への対応や研修内容にも影響してきますので、調査は一時的な実施ではなく、継続性を持ち、統計的な手法を用いながら、長期にわたって検証し続けるべきです。
研修内容の妥当性を参加者に聞くため
研修がどのような目的で実施されるのかを事前に研修受講者に共有できていれば、実施後に調査することで目的が達成されたどうかがわかります。
テストなどで客観的な理解度を図るとともに、アンケートやレポートなどを通じて受講者の体感的な理解度のチェックを行うと良いです。目的が達成していなければ、講師や研修内容を変更する必要があるということになり、今後の業務改善の選択が容易になります。
それ以外にも効果はあります。
・果たして研修を実施する必要性があったのか
・目的に値するだけの内容であったのか
・自分たちは行動の変容を実現できたのか
上記を考えるには、自分達の行動やスキル、実績を客観的に見つめなおさなけれができません。
特に文章にまとめるという作業は、作成者の心にストレートに訴えかけていきます。「研修を受けたことで自分の行動に変化はありましたか。」といった質問をするよりはるかに効果的です。
研修での「気付き」を確認するため
行動の変容には「気付き」が必要です。
「気付き」は、観察から始まり、観察対象についての疑問や好奇心から生まれてきます。そしていつしか、自分との違いについて考えるようになります。
それが「気付き」です。
研修では普段合うことのない、様々な人と時間を共有します。
同じ職種に就いている同僚や、他の部署の社員と接する中で問題点に気づき、物事の本質が見え始め、仕事の能率アップや組織の改善の原動力となっていきます。
そこに「気付き」がなけれが、研修を行う意味がありません。
研修レポートでは、「気付き」があったのかをしっかりと調査できるようにしてください。
研修効果を高める研修レポートを作成してもらう
全ての研修は、実施したら終わりということではなく、内容の有効性を確認し、常に改善していくことが求められます。そしてそれ以外に、受講者の見極めという意味合いも持っています。
研修において、受講者にどのような成長・変化が見られたのかを考察し、上司の目ではない社員(人事や講師)から見た受講者の資質・特性を見極め、今後の人事戦略(配置転換や出世など)に活かしていくわけです。
例えばリーダーシップ研修では、リーダーシップスキルに関する全体的な向上を図る一方で、リーダーシップを持ち合わせている社員を見つけ出すという側面もあるということです。
研修にはそのような様々な目的があるので、研修レポートは、研修を受けた受講者側だけでなく、研修を実施した講師や人事担当者側にも書いてもらう必要があります。
・研修を受けた側が作成するのが「研修受講報告書」
・研修を実施した講師や人事担当者側が作成するのが「研修実施報告書」
と定義して解説していきます。
研修受講報告書の活かし方
受講者側からのレポート(報告書)は、実施された研修内容を正しく理解することができたのかどうか、今後継続すべきなのか、改善点はあるのか、といった判断を行うために必要な書類です。
講師や人事担当者といった”実施する側”の報告と照らし合わせて、もし認識のズレが生まれているとしたら何が原因なのかを考察する必要があります。
依頼する講師の選択が適正だったかどうかを判断できる内容や、受講者側からみた今後に対する提案について聞いてみることも大切です。
特に社外研修に参加する場合は、研修実施側からのフィードバックは都合の良い内容しか帰ってこない可能性がありますので、受講者から提出されるレポート(報告書)は、今後の継続を決めることに対して強い意味を持っています。
これらのことを効果的に行うために、研修実施前の段階で、実施後にどのような報告をしてもらうかという内容を共有しておきましょう。
また、受講者が研修内容を振り返ることによって、学んだことの定着化を図る目的も忘れてはいけません。さらには、ここで報告された内容は少なくとも上司に共有され、今後の指導に活かしていく材料にもなります。
したがって、研修を実施する前に現場の上司に対して「研修後の受講者の何を知りたいのか」についてヒアリングを行い、受講者の報告事項に盛り込むようにしてください。
そうすれば、現場との連帯感が生まれ、研修の効果を高める協力体制が強化されます。
研修実施報告書の活かし方
講師や人事担当者が企業の上層部へ報告する研修レポートが研修実施報告書です。
講師や人事担当者など、研修の運営側からのレポートは、実施された研修内容を今後継続すべきなのか、改善点はあるのか、といった判断を行うために必要な書類です。
・実現したい「行動変容」を起こすために適切な内容であったのか
・受講者の理解度はどの程度であったのか
といった視点にたち、客観的な報告以外に、今後に対する意見や提案について記載する必要があります。
そのためには、実施前の段階で、実施後にどのような報告をしてもらうか、という主催者側の意思を共有しておかなければなりません。
具体的には、研修中の様子と態度から個人の資質・特性の見極めです。
受講者同志の相乗効果を期待した研修の場合は特に、どのように研修中過ごしていたか、期待しているような動きが見られたのか、について個人名も入れながら具体的に報告します。
特徴的な言動や、リーダーシップ、チームワークなどに対しての資質・特性を見極めて、今後の人事に活かしていかなければならないからです。
物事に対する意識や研修中に身に着けておくべき知識・技術について、どのような「気付き」「変化」「成長」が見られたのか、全体所感と個人について言及します。
・講師所感と会社としての課題指摘
講師は他社の研修にも関わっていますので、他社と比較しての特徴や傾向、問題点などについて気付きやすいはずです。ですので、忖度することなく客観的な所感を報告してもらうよう、依頼しておかなければなりません。
さらに、講師はそれぞれ過去の成功事例などの成果も持っていますので、自社の問題点についてどのような解決方法を取っていくべきなのかという指摘も受けるようにしましょう。
・人事としての今後の育成指針
人事が講師も兼ね備えている研修でなければ、人事は傍観者として研修全体を、受講者側と講師側と両面で見ることができます。
効果検証もさることながら、研修の中で発生する事象を鑑み、今後どのような育成を行うべきなのかについての育成指針を考える必要があります。