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個人の人生設計と同じように、今はビジネスの現場でも将来を見据えた設計図を作ることが注目を浴びています。
これは『キャリアデザイン』と呼ばれ、社員のキャリアデザインをサポートする企業が増えています。

ここではキャリアデザインが必要とされている背景と、具体的な進め方について解説します。

キャリアデザインとは

希望に溢れた表情の若い男性
「キャリアデザイン」とは、将来のなりたい姿やありたい自分を実現するために、自分の職業人生を主体的に設計することです。誰かの意見で左右されることなく、自分の思い描いた理想に近づけるように具体的で実現可能な計画を立てるのです。

キャリアデザインとキャリア形成

描いたデザインを現実のものにするために行う行動(能力・スキルの向上や経験の積み重ねなど)がキャリア形成です。

キャリアデザインとキャリアパスの違い

キャリアパスは1つの企業でどうのようにして昇進・昇格していくかの道のりのことです。キャリアデザインは1つの企業に縛られず、職業人生全体の計画のことを言いますので、キャリアパスよりも広い範囲を意味します。

研修の重要性が高まってきている背景

昭和30年代に始まった高度経済成長は、日本人の勤勉な性質と合致した日本型の労使関係を生み出しました。
終身雇用・年功序列といった安定的な雇用を背景に、社内でのキャリアパスに乗っかって、会社の求める通りのキャリア形成を行っていればよかったので、自らキャリアデザインを行う必要はありませんでした。

しかし1970年代に高度経済成長が終わり、世界との競争の中で生産性が悪化してしまった2000年以降では、日本型の労使関係は終焉しつつあり、成果主義や人材の流動化が求められるようになちました。

会社に何もかも委ねていた時代から、自分でキャリアデザインを行う「自律型員」の時代へと移行せざるを得なくなりました。

キャリアデザインは、仕事に対する能力は成果だけではなく、価値観やライフスタイルまで含め、自分らしく働くためにどのような働き方を選択するのかを設計する必要があるのですが、ほとんどの社会人は学生時代にそのような教育を受けていません。

そこに、社会人向けキャリアデザイン研修の重要性が高まってきているという背景があります。

キャリア管理サービスを提供する企業は、 高い定着率、低コストの後継プロセス、優れた従業員ブランディングを享受し、才能のある人材の応募を獲得できます。
《出典》 What is Career Management?


企業が抱える課題や悩み

社員のキャリアデザインに対して積極的になれない企業の経営者には、以下のような疑問を感じている方が多いです。

・会社をあげて社員のキャリアデザインをサポートするのは大げさではないか
・転勤したくないなどの社員のわがままを、キャリアデザインという言葉でごまかされている気がする

たしかにデザインしたキャリアを歩むのは個々の社員ですが、会社と社員の方向性が一致していなければ、双方にとってメリットの無いキャリアパスになってしまいます。社員が活躍できることと、それが会社にとってメリットになることを両立するため、会社と社員は協力してキャリアをデザインする必要があります。

キャリアデザイン研修では、受講者となる社員にこうしたことを分かりやすく教えてくれます。自分のことだけを考えてわがままなキャリアパスを提案するのではなく、自分と会社の両方にとって良いビジョンを描ける人材を育成します。

研修の対象者

キャリアデザイン研修の対象者は、主に中堅社員です。入社3年目~10年目くらいの社員が該当するのが一般的です。

中堅社員は、仕事にある程度慣れてきて、仕事のほとんどが自分ひとりでできるようになり、部下にも指示を出せるくらいの社員です。このレベルになると、社内での昇進や資格取得などのキャリアアップが視野に入りますが、結婚や育児、親の介護など大きなライフイベントが発生する年代と重なることが多いです。良くも悪くも環境に翻弄されがちなので、キャリアデザイン研修を通じ、自身のキャリアビジョンを明確にしておくことが大切です。

キャリア プランニングは、時間をかけて自分のアイデンティティを評価し、新しい目標を設定し、新しいキャリアの視野を作成し、成長して知識とスキルが向上するにつれて成功を祝うという繰り返しのプロセスです.
《出典》 キャリアマネジメント - University of California, Merced


研修のカリキュラム例

● 対象者
入社3年目までの新入社員・若手社員

● 目指すゴール
1.過去を振り返り、未来を具体的に考えるヒントを得る
2.社員の成長意欲と仕事へのモチベーションを高める
3.理想の姿に向けて何をすべきか具体化し、行動計画へと落とし込む

導入 ◆キャリアは自ら描くもの
・キャリアデザインとは
・なぜ「なりたい姿」を描くことが重要なのか
・キャリアデザインのメリット
過去と現在を考える ◆過去を振り返る
【ワーク】ライフラインチャートの作成
⇒過去の出来事と気持ちを可視化する
◆ライフラインチャートをもとに自己分析
【ワーク】逆境を乗り越えた瞬間と、そのときどんな要素がそろっていたかを整理する
未来を思い描く ◆VUCAの時代に求められる人間力とは
・キャリアデザインを描くプロセス
・会社のビジョンから個人のビジョンを逆算して考える
行動宣言・まとめ ◆アクションプラン設定
【ワーク】3年後の理想の姿を描く
⇒グループ内で討議・共有
【ワーク】理想に近づくために、3ヶ月・半年・1年後に達成したい目標を設定

研修のラインナップ

自律的キャリアをオンラインで学ぶ キャリア開発研修「株式会社ライフワークス」

株式会社ライフワークスのキャリア開発研修は、若手社員や女性社員、管理職など様々な階層に合わせたプログラムを用意しています。仕事への価値観や人生の目標に向き合い、自律したキャリアの見通しを立てることが目標です。オンラインで学ぶため、移動の手間がなく忙しい社員も参加しやすい研修です。

株式会社ライフワークスは、キャリア開発の支援サービスを強みとする会社です。企業が抱える人事課題に寄り添い、社員一人ひとりが自らキャリアをデザインし、いきいきと働ける職場づくりのお手伝いをします。(参照:株式会社ライフワークス)

自ら道を切り拓く社員を育成 キャリアデザイン研修「株式会社日本コンサルタントグループ」

株式会社日本コンサルタントグループの研修は、「社員の仕事に対する待ちの姿勢が目立つ」「主体的にキャリアを形成する認識が弱い」という課題を解決します。主な研修内容は以下の通りです。
・キャリアの振り返りと自己イメージの構築
・キャリア形成の方向と能力開発
・キャリアプラン作成、発表
キャリアは与えられるものではなく、自ら切り拓くもの。自身のキャリアへの当事者意識を養い、将来のビジョンを描くきっかけをつかみます。

株式会社日本コンサルタントグループは、創業から60年以上の歴史と実績をもとに、組織と人材の課題解決を総合的に支援してきました。独自の知見から生み出された研修では、社員のバイタリティーを育成し、現場で本当に役立つノウハウを伝えます。(参照:株式会社日本コンサルタントグループ)

自己実現のきっかけをつかむキャリアデザイン研修「株式会社ココティアコンサルティング」

株式会社ココティアコンサルティングは、自己理解に特化したキャリアデザイン研修を提供しています。キャリアを描くには、まず自分を理解することが大事です。心理学の知見をベースに、「何のために働くのか」を明らかにしながら今後のキャリアの組み立て方、自身の強みの活かし方を学びます。

株式会社ココティアコンサルティングは、社員がやりがいを持って働く環境づくり、長きにわたって成長し続ける組織づくりを目指す中小企業を支援する会社です。社員の行動を変えるには、心の育成が不可欠。それぞれの企業の社風に合った研修と、研修後も学びが続く仕組みづくりで、効果的な組織改革を推進します。(参照:株式会社ココティアコンサルティング)

自律・自立型人材を育成するキャリア開発研修「公益財団法人日本生産性本部」

公益財団法人日本生産性本部のキャリアコンサルタント養成講座では、企業向けのキャリア開発研修を主催しています。この研修は、組織と自分の将来を考え、自ら主体的に行動できる自律・自立型の人材を目的としています。モチベーション、思考の質、行動の質を高められる内容です。
研修は、主体性を引き出すモチベーションを向上させるプロアクティブプログラム、早期離職を防止するセルフリーダーシッププログラムなど、テーマ別に分かれています。

公益財団法人日本生産性本部は、社会経済システムおよび生産性に関する調査研究などを行い、研究会やセミナーの開催によって経済の生産性向上を図る財団です。キャリアデザイン研修だけでなく、次世代リーダー育成研修などの人材育成研修、生産性向上や顧客満足度向上などの経営課題にアプローチする研修など、さまざまな階層向けの研修を主催しています。(参照:公益財団法人日本生産性本部)

折り返し以降のキャリアステージへの意識と行動をセットアップするキャリアデザイン研修「人材開発マネジメント株式会社」

人材開発マネジメント株式会社のキャリアデザイン研修は、30代の社員(中堅社員)が対象です。2日間のプログラムで、受講者が自分の役割と責任を再確認し、キャリアの折り返し以降のステージに向け、意識と行動をセットアップすることを目的としています。

人材開発マネジメント株式会社は、研修やコンサルティングによって強い企業・人材づくりを支援する組織・人材開発の企業です。キャリアデザイン研修だけでなく、ものづくりマネジメント研修など製造系に特化したユニークな研修も主催しています。(参照:人材開発マネジメント株式会社)

新たなチャレンジに向けた次なる具体的行動を喚起するキャリアデザイン研修「株式会社ビジネスプラスサポート」

株式会社ビジネスプラスサポートのキャリアデザイン研修は1日コースのプログラムで、受講者が自分の強みや価値観を理解して自身の方向性を定め、主体的・自律的に将来のキャリアを開発する意識を育むことを目的としています。結婚や育児、転勤、昇格、介護などのライフイベントを踏まえ、中期的な視点でキャリアデザインを行うことで、次の新たなチャレンジに向けて受講者が行動できるようにします。

株式会社ビジネスプラスサポートは、研修やセミナー、公演を通じた人材育成や、業務効率化のためのコンサルティングなどを行う企業です。キャリアデザイン研修のほか、働き方改革や50歳からのキャリアイノベーション研修、事務ミスゼロの仕事術セミナーなども人気があります。(参照:株式会社ビジネスプラスサポート)

自己実現と会社提言のためのキャリアデザイン研修「株式会社フルネス」

株式会社フルネスのキャリアデザイン研修は、受講者が自身のキャリアデザインをするとともに、会社の帰属意識を再認識する機会を作る研修です。受講する社員は、会社づくりの一員であると認識することが、研修における最も重要な目標です。

研修の対象者は入社3年目~10年目程度のキャリアデザイン教育が必要な方です。基本的な日数は1日~2日で、カスタマイズが可能です。

株式会社フルネスはITに強みを持つ企業です。キャリアデザイン研修のほか、IT基礎研修やプログラミング研修などを主催しています。(参照:株式会社フルネス)

中堅社員向けキャリアデザイン研修「株式会社キャリアネットワーク」

株式会社キャリアネットワークのキャリアデザイン研修は、仕事に慣れてきた入社10年目近くの中堅社員が対象です。現代社会は変化が激しいので、今のところ順調にキャリアアップできている方でも、5年後や10年後には予想していなかった状況に陥っている可能性があります。研修では、大きな変化に備えて将来の目標や自分の強み、今後必要となるスキルなどを改めて見直すことで、キャリア戦略の棚卸を行います。

株式会社キャリアネットワークは、組織の発展と個人の成長を理念とし、ビジネスパーソン向けの研修を提供している企業です。キャリアデザイン研修だけでなく、女性活躍支援やダイバーシティに関する研修なども主催しています。(参照:株式会社キャリアネットワーク)

組織への貢献度を高めることを重視したキャリアデザイン研修「株式会社富士通ラーニングメディア」

富士通ラーニングメディアが行うキャリアデザイン研修は、中堅社員、女性社員、中高年の3つのコースにわけて行われています。
「経験の振り返り」「自分探し」「ありたい姿の設定」を通じて理解できた自分らしさを尊重しながら、「社会情勢や組織の動向を捉える(環境理解)」ことや「業界動向や組織の期待に向き合う(仕事理解)」こと、 「自身の提供価値を考えて能力開発に取り組む(自己理解と自己実現)」こととの関連性を考え、最終的には組織に貢献できるようになることをゴールとしています。

株式会社富士通ラーニングメディアは、富士通グループが持つノウハウを用いて、人材育成や研修サービス、eラーニングなどを提供しています。(参照:株式会社富士通ラーニングメディア)


研修についてよくある質問



キャリアデザイン研修を行う対象者はどのように選択するべきでしょうか。


実施する企業側がまず最初にやるべきことは、キャリアデザイン研修を通じて、何を実現したいのかという目的について考えをまとめることです。

例えば「離職率を下げたい」という理由であれば、どの年齢・役職の、どのような状況下におかれている社員に対してキャリアデザイン研修を行えば、離職率を低下させることができるかどうかを考えなければなりません。

女性が結婚や育児のタイミングで離職してしまうことが問題なのであれば、20歳代の女性に対してキャリアデザイン研修を行い、企業が多様な働き方について支援していることを伝えると同時に、社員それぞれがどのようなキャリアデザインを描いているのかを知ることができれば、個別対策も打ちやすくなります。

上記のように目的が定まれば、どのような対象者に対して研修を実施すべきなのかが確定します。予め対象者ありきではなく、目的をしっかりと見定めてから対象者を選択するようにしましょう。

キャリアデザイン研修を選ぶ上でのポイントはありますか?

企業側がキャリアデザイン研修を行う際は、従業員がキャリアデザインを行うことが第一義ではなく、キャリアデザインを描くことによって期待できる二次的な効果に対して目的があるケースがほとんどです。

従って、企業が求めている二次的な効果について理解があり、そのための方法論を持っていて、柔軟に研修プログラムをカスタマイズする能力を持っている研修先を選択することが一番大切です。

研修前や研修後に何かすべきことはありますか?

研修を実施すること自体に対して、研修前や研修後に行うべきことはありませんが、効果検証を行うという観点では、いくつか実施しておいた方が良いことはございます。

研修前の時点では、キャリアデザインについてどのように考えていたのか、理想像は描いているのか、理想像に近づくために何か具体的なアクションを行っているか、などについて簡単なアンケートでも構わないのでとっておくと良いでしょう。

大切なのは研修後です。

具体的なキャリアデザインを描くことができた参加者は、理想像の実現に向けて会社や上司がどのようなサポートをしてくれるのかが気になるようになる筈です。
そこでしっかりとしたサポートやキャリアパスを提供することができなければ、将来的な離職につながってしまう恐れがあります。

キャリアデザイン研修を設計する際は、上司に対しての研修やキャリアパスの見直しなども合わせて行うと良いでしょう。

管理職が部下のキャリアデザインをサポートできるようになるような研修はありますか?

組織マネジメントの一環として、1on1や評価面談の際、部下にキャリアデザインの支援が行うことができる管理職を養成したいという要望が増えています。

年功序列・終身雇用の時代で育った管理職の方々には、現在の状況があまり理解できていないケースが多くみられます。
部下を育成するためには、キャリアデザインへの支援が不可欠であるという意識付けから始めて、上司が納得したうえで部下に対するキャリアデザインの支援が行えるようにしましょう。

次の異動先の希望を聞くだけでなく、短期と長期の両方をキャリアデザインを構築するための「サポーター」として機能するためには、具体的に適切な行動が取れるように、キャリアデザインを支援するための実践的なノウハウやツールの活用法などの技術を身に着けることも重要です。

キャリアデザインが必要とされる理由

キャリアデザインが注目を浴び、必要とされている理由はいくつかありますが、社会、企業、個人の3つの側面から見ていきましょう。

社会的側面

  • 経済の崩壊
  • 将来が見通せない
  • 超高齢化社会

少子高齢化やグローバル化など、かなり以前から言われていた社会情勢の変化以外にも、最近ではAI化やDXの活用、リモート勤務の浸透など、今まで信じられていた価値観さえも揺るがすような社会変化が起きています。

キャリアデザインは基本、「ありたい自分の姿」を考えるわけですが、その姿が社会に受け入れられない姿であったとしたら、実現が困難です。

リモート勤務によって実現しそうな居住地域の自由化や、副業への理解・推奨、就業継続年齢の高齢化など、多種多様な働き方ができるようになり、選択の幅が拡がってきたということは、それだけ自分で選択する必要が出てきたということを意味しています。

年金受給の後ろ倒し、そして人生100年時代に備え、時代の変化をしっかりと捉えたうえでの「ありたい自分の姿」の実現が求められているのです。

企業的側面

  • 成果主義
  • 職業の多様化
  • 労働者の減少

企業では年功序列制度ではなく、成果主義へと変わってきています。転職が当たり前になり、中途採用でも戦力になる人材を求めるようになりました。

高齢化社会で、労働人数が限られた中でいかに成果を上げるかを考えることが企業の課題のひとつとなり、社員のモチベーションを保つためにもキャリアデザインのメリットが高いと考えています。

さらに社会情勢の変化に伴い、職業や働き方の幅が広がり選択肢が広がったことも影響を受けています。

個人的側面

  • 個人主義
  • 働くことへの意識の変化
  • 価値観の多様化

個人としてキャリアデザインを考えると聞くと、「転職」をイメージする方が多いかと思いますが、決してそうではありません。

変化の激しい世の中にさらされている企業において、今までのような年功序列制度による自然発生的なキャリアアップが保証されていることはほとんどなくなっています。

「自社内でどのようなキャリアデザインを描いて業務に取り組んでいくか」ということを考えず、キャリアに対して受け身の姿勢を取り続けていては、いつの間にか自分の居場所がなくなってしまう危険性があります。

世の中の動向を知り、今後どのようなスキルや経験が求められるようになるのかを見極め、自ら意思表示を行いながら、キャリアデザインを常に行うことが求められています。

年代別に見る研修の目的と内容

穏やかな笑顔の女性

初めて社会人になる新入社員


新入社員の場合、採用面接において志望理由や10年後の自分について面接で聞かれることが多く、一度はキャリアデザインについて考えたことがあるケースがほとんどです。

しかし就職が決まってから実際に入社するまでに、かなり長い時間が開いてしまうので、せっかく描いたキャリアデザインを忘れてしまっても仕方がありません。

従って、入社のタイミングで自分自身の「なりたい理想像」を確認してもらい、目指すべき「なりたい理想像」に向かっていくためには、これから会社で何を行っていくべきなのか、どのようなスキルを学ぶべきなのか、を具体化していきます。

仕事を始めれば必ず一度や二度くらいは壁に当たり、自分を見失ってしまうことがあるわけですが、その時に現職における明確な「なりたい理想像」を持っていれば、改めてその理想像に向かって歩き出すことができるはずです。
離職率を下げるという意味合いにおいて最も重要になるのが、この時期におけるキャリアデザイン研修なのです。

中堅社員(30~40歳代)


ある程度企業内での自分の立ち位置や役割が明確となり、自らが描いたキャリアデザインに沿っている社員もいれば、自分の理想像からはかけ離れてしまいつつある社員もいるのがこの世代の特徴です。

社会や企業から必要とされ続けるためには自らの価値を再認識し、キャリアデザインを再構築する必要性があるのかどうか、自らに問いかける機会を与えることが重要です。

上の立場から何かを教える研修のスタイルよりは、自らの「気付き」を即すようなワーク型の研修内容が適している世代だと考えられます。

管理職(30代後半~50歳代前半)

管理職を対象にキャリアデザイン研修を行うのであれば、自らのキャリアデザインだけでなく、部下のキャリアデザインを支援するためのスキルを身に着ける内容にするべきです。

キャリアデザインは時として、結婚・出産・介護といった私生活や、価値観にまで踏み込んでいく内容になりますので、ハラスメントに直結する危険性を持っています。

上司としてどの程度まで踏み込んでも良いのか、部下を尊重した接し方はどのように行うのか、傾聴し共感を得るためにはどのようなコミュニケーションを取るべきなのか、といったノウハウや知識面についてしっかりと学ぶことで、始めて部下が求める最適な支援を行うことができるようになります。

定年を迎える年代(50代後半~60歳代)

これ以上の出世や会社の中での役割増は見込めなくなり、定年を意識し始める年代にたいして、「今更キャリアデザインを実施する必要があるのか」と思われる方も多いと思います。

しかし、キャリアデザインを最大限に活用し、活性化させるべきなのはこの世代です。

今後、65歳までの雇用延長が進み、ますます肥大化する50代後半~60代前半の社員を抱えることを余儀なくされる企業にとって、残りの社会人人生に目標を持たず「生きていくためにしかたがなく仕事をこなす」という気分で過ごされては、生産性も上がりませんし、周りに対する悪影響も考えられます。

世代的に「キャリアデザイン=出世」と捉えている方も多く、その道が閉ざされたことで一気に意欲を失ってしまいます。
モチベーションの再構築を個人任せにしてしまうのはあまりにもリスクが高く、企業主導で、代わりとなる価値観を持ってもらう方向に導いていく必要があります。

自らの価値を再認識して、どのような働きをすれば周囲に貢献し続けることができるか、その結果として、自分らしく幸せに生きることにつながっているという、全体デザインを再度構築してもらいましょう。

キャリアデザインの4ステップ

チームでお互いを称え合っている社会人
キャリアデザインを行うことは、それほど難しいことではありません。

過去を見直すことで今の自分を理解し自己分析を行います。
その上でなりたい自分(理想像)を明確にしたら、目標を達成するためにはどのような計画をたてたら良いのかを練っていくわけです。

それでは具体的に4つのステップについて確認していきましょう。

自分のスキル、興味、価値観に沿った仕事やキャリアを選択する人は、仕事の満足度と成功率が高くなります。
《出典》 Know yourself. - Forbes


過去を見直す

まず最初に行うことは、自分自身のキャリアを振り返ることです。

この時のポイントとしては
  • 過去に担っていた仕事や役割
  • 上手くできたこと
  • 何度やっても成果が上がらなかったこと
  • 持っている資格や技術
  • 人から良く褒められたこと

これらを整理することで、自分の得意な分野と苦手な分野が明確になり、どのような職業や役割、立場に向ているのかの傾向がわかってきます。実績(行ってきたこと)と合わせて、その時どのように思ったのかであるとか、感じたのかといった感情についても思い出してみましょう。
この段階では、とにかく思いつくものは全て書き出していくことが重要です。

記憶を頼りに見直していると、記憶が曖昧になっている可能性もありますので、身近な方の意見を参考にしてみるのも良いです。

自分を分析する

書き出せる実績をできる限り書き出した後はいよいよ分析です。

楽しいと感じたこと、やりがいを感じたこと、苦痛だったこと、成長を実感できたことなどそれぞれ分類してみると、自己分析はやりやすいです。

また、世の中に広く知られているフレームワークを活用するのもおすすめです。
例えば「マインドマップ」「SWOT分析」「モチベーショングラフ(ライフラインチャート)」などがよく使用されています。

大切なことは客観的に分析することです。

キャリアデザインをする上で、「自分自身をどれだけ知っているか」が実現可能なものになるのかの分かれ目になりますので、自分を分析する方法はひとつではなく、複数のものを受け取ると複合的に判断できます。

理想像を明確にする

3つ目のステップは、未来に目を向けます。

キャリアデザインを考えるうえでは、自分の能力や興味、価値観などを、仕事面だけでなく私生活の面でも理解することが必要です。

必ずしも出世を望む必要はありませんし、もちろん周囲の人と比べる必要もありません。ここでは、『良いか悪いか』『周りからどう思われるか』の視点は持たないようにします。

・どのような働き方を求め、どのような価値観を大事にしていて、どのような社会人生活を送っていきたいと考えているのか
・「ありたい自分」を実現するとは、どのような状態を意味するのか

を具体化していくことで、次のステップがとても行いやすくなります。

ここで気を付けていただきたいことは、自己分析を基軸に考えるからといって自分自身の能力の限界などを意識する必要はないということです。
あくまでも理想像であることを忘れてはいけません。

もし、理想像が見つからないという時は、周りを見渡してみましょう。目標となる上司や先輩、同僚、友人などの特徴を洗い出してみると、理想の姿が見えてくる可能性が高いです。

キャリアデザインは後から修正ができます。最初から完璧なものを作ろうとしなくても大丈夫です。

行動計画を立てる

「ありたい自分」が具体化できたのであれば、後はどのようにすれば理想像に近づいていくことができるのか、という方法論を考えます。

キャリアデザインは人生そのものが対象になるため、対象となる期間が長く、目標も壮大になるので、いざ計画に落とそうとするととても難しいです。
そのためには短期、中期、長期計画と区分けし、優先順位をつけて、今すぐやるべきこと、中期的に取り組むべきことを選択していきます。

数値に置き換えられる目標であれば、具体的な数値目標をたてておくと、後々振り返るときに役立ちますのでお薦めです。

何歳の時にどんな職業でどんな役割(役職)になっているか。その役割の中で、どのようなことをしているか、達成していることは何か、必要だと思われるスキルや資格は何かを整理します。

計画を立てると、年齢や役職になるまでに何をしなければいけないか、今できることは何かが明確になり、具体的な行動がわかります。

例えば、
・年齢~35歳
・職種~営業
・役割~主任
・目標~チーム全体の業績20%アップ、部下を育成し離職者ゼロ
・必要なスキルや資格~マネジメント力、コーチングスキル
・行動~マネジメント研修受講、コーチングスキルの見直し、部下の性格や特徴を知る

このように3年おき、5年おきに目標と行動を書くことで、到達目標がわかり、行動に移しやすくなります。

大切なことは「自分らしいキャリアデザインが設計できたかどうか」であり、他人と比較する必要はありませんし、他人に評価を受ける必要はありません。


研修が企業にもたらす効果

企業がキャリアデザインを後押しするということを聞くと、「転職」を促す結果になってしまい、デメリットが大きいのではないかと考える方が多いと思いますが、決してそうではありません。
ここではキャリアデザイン研修が企業にもたらす効果を解説します。

自律型人材の育成に繋がる

時代の動きが加速する中、現状の仕事内容を十年以上も続けられるような仕事は皆無です。
従業員には、常に新しいことにチャレンジし、成長していくという意欲を持ってもらわないと企業経営は成り立ちません。
以前はその全てを会社が設計していたわけですが、従業員が自主的にキャリアデザインを考えるように促し、サポートすることで、仕事へのモチベーションや会社への愛着心を維持する効果が期待できます。

人事戦略

人事側としては、会社主導の研修などを実施することで、各社員のキャリアデザインの中身を把握することができますので、今後の人事データとして活用することができます。

キャリアデザインの概念を導入し、データベース化すれば、今までは次の部署異動先くらいしか把握できていなかったために短期的な戦略になってしまっていた人事戦略が、中長期的なビジョンで考えることができるようになり、人材配置や育成・研修計画の立案などに役立てることができる訳です。

モチベーションアップによる離職防止

キャリアデザインによっておこる退職意欲の醸成よりも、理想と現状とのギャップを中長期的にどのように埋めていくのかを具体化することによって起こる「在職する意味の強化」による離職防止の方が効果が高いと考えられます。

研修の効果を高めるポイント

どのような研修でも同じですが、研修を導入するだけでは、高い効果は望めません。受講後すぐに実践できる環境を整えることで、研修の効果を高めましょう。

キャリアデザイン研修の効果を高めるためには、以下のような施策が有効です。

・キャリア面談を行う
・キャリアカウンセリングを活用する
・人事制度を整える

キャリア面談を行う

絵空事でないキャリアデザインを行うために、受講後には社員と上司とでキャリア面談を行いましょう。頻度は四半期に1回、半年に1回、年に1回などが一般的ですが、研修の受講後は例外的にでも面談を設けると効果的です。

研修後のキャリア面談では、研修で学んだことを活かしてキャリアビジョンを考え直しましょう。より良い目標を設定し、そのために必要なスキルや業務経験を、受講者とともに上司も考えます。

キャリアカウンセリングを活用する

社外のキャリアカウンセリングを利用したり、社内にキャリア相談窓口を作ったりしておき、社員がキャリアについて迷ったときにすぐ相談できる環境を整えることも効果的です。

社員によっては、仕事での利害関係がある直接の上司よりも、第三者であるキャリアカウンセラーのほうが本音を話しやすい場合があります。第三者に相談に乗ってもらうことで社員が気づきを得られるケースがあるので、キャリアカウンセリングも活用しましょう。

人事制度を整える

社員が望むキャリアパスを叶え、社員の活躍によって会社も成長するためには、柔軟な人事制度が必要です。定型的な人事異動だけでなく、社員がさまざまな経験を積める制度を整えましょう。

例えば、社員が希望する部署に自分を売り込む「社内FA制度」や、他部署の仕事を一定期間経験できる「社内留学制度」などが挙げられます。こうした制度を導入し、柔軟な人事制度を整えましょう。

研修を実施するときの注意点

キャリアデザイン研修を導入する前に、効果を高めるための2つのポイントを理解しておきましょう。

・受講の目的を共有する
・アフターフォローを行う

受講の目的を共有する

研修が始まる前に、受講者には受講の目的を理解してもらいましょう。目的を理解せずに受講すると、講師の話を右から左に聞き流すだけになりがちですし、抱えている仕事のほうに気を取られて集中できないことがあるからです。

特に、キャリアデザイン研修の対象者である中堅社員は忙しい立場です。管理職からの指示が最初に下りてくる立場なので、現場にいないと仕事が回らないケースが多いでしょう。また、自分の仕事をこなすことに加え、若手社員や新入社員の質問にも答えなければなりません。

そのため、「研修を受講する時間があるなら、自分の仕事に取り組みたい」と、研修に対して消極的な方が多いです。研修中の内職や居眠りなどを防ぎ、効果を最大化するためにも、受講者と会社にとってメリットのある研修であることを事前に伝えておきましょう。

アフターフォローを行う

研修が終了したらそのまま放置するのではなく、アフターフォローを行いましょう。受講者と上司とで改めて面談をして、キャリアデザインを検討し直すといった方法が考えられます。

研修を受講すると、キャリアデザインについて理解を深められるだけでなく、仕事へのモチベーションも高めることができます。その状態を維持して日々の仕事で高い成果を出してもらうためにも、研修で学んだことをすぐに実践できるよう、キャリアデザインについて上司と受講者が議論できる場を設けましょう。
KeySession研修コーディネーター
この記事の監修者
KeySession研修コーディネーター - 課題から最適な人材育成企業をご紹介します。

アパレル企業で店長職を経験し、人材育成の難しさを痛感する。2016年より人材育成研修/セミナーの集客支援を行う。 2019年からは経営者や人事担当者のお話を伺いながら、講演会の主催や連続講座の主催を行い、心理学、コーチングを学習中。

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