研修でインバウンドを学び、自社サービスと日本の魅力を、しっかりと外国人観光客にアピールしましょう。言語と文化の違いを踏まえたうえで、快い接遇体験を提供することが重要です。インバウンド対応をきちんと整備すれば、自ずと自社の評価が向上し、利益につながります。
2012年頃から日本を訪れる外国人観光客は急増しました。2020年からは新型コロナウイルス感染症の影響があり激減はしましたが、それでもビジネス上のターゲットとして無視できない存在です。
やはり組織全体でインバウンド対応を向上させ、外国人観光客を取り込む動きは必要です。
本記事では以下の点について解説します。
- インバウンド研修における学習内容
- おすすめカリキュラム5選
- インバウンド研修が求められる理由
企業が抱える課題
外国人旅行者や観光客向けのサービスを提供する企業には、以下のような課題があります。
- 英語が苦手なスタッフが多くお客様の要望をヒアリングできない
- 英語だけでなく中国語や韓国語での対応が必要
- 文化的背景の異なるお客様の要望や行動を予測できない
- どうすればお客様の満足度を高められるのか分からない
こうした悩みから分かることは、言語によるコミュニケーションの難しさだけでなく、文化的背景が異なる外国人にサービスを提供することの難しさです。何をすれば相手を満足することができるのか、日本の文化を背景に生きてきた日本人には、予想することが難しい場合があります。
外国人のお客様がサービスに求めることは、業種によっても異なります。例えば、ホテルなど宿泊施設で求められるサービスと、駅構内で求められるサービスは同じではありません。業種別にインバウンドを学べる研修を導入し、業種に合ったサービスのあり方を学びましょう。
研修の対象者
インバウンド研修の対象者は、観光関連の事業に携わる方です。現場で外国人のお客様に応対するスタッフや、現場スタッフの育成担当者や管理責任者などが対象です。
業界としては、ホテルや商業施設、鉄道など、外国人観光客と接する機会の多い業務に従事する方が対象となります。各業界に特化したインバウンド研修もあるので、積極的に活用しましょう。また、研修会社にあらかじめ業界を伝えておくことで、その業界で頻繁に起こるシチュエーションや現場の課題を踏まえた研修にカスタマイズしてもらうことができます。
研修の目的と特徴
インバウンド研修の学習内容は、大きく分けて3つあります。
- 接客用の英会話で対応能力を高める
- 業界・業種ごとで求められる対応力を身につける
- 日本と海外の文化の違いを学習する
外国人観光客は、日本において理解され、暖かく迎えられることを望んでいます。
そのように感じてもらうことが、インバウンド研修で学んだスキルを発揮する目的です。
外国人観光客に日本の魅力を伝える
インバウンド研修で学ぶのは、「外国人観光客に日本の魅力を伝えること」です。
「日本という国は素晴らしい」と思ってもらえれば、当然ながらビジネスチャンスは拡大します。
「もう一度この国・店に来たい」と思ってもらえれば、国境を超えたリピーターとなります。
そうすることで国内に限定しない、海外からのニーズを獲得することが可能です。
日本という国には、以下のような部分で特別な魅了があります。
- 食事
- 観光地
- スポーツ
- 言語
- ファッション
- 建築etc…
あらゆる面で日本文化の素晴らしさを伝えて来日をうながし、観光収入へとつなげます。
接客用の英会話で対応能力を高める
インバウンド研修では英会話を学ぶことが可能です。
もちろん日常会話ではなく接客としての「技術」を習得します。
インバウンドでは相手の国々の風習を理解したホスピタリティが求められ、そのうえで適切な接客用の英会話を話すことは重要です。
しかし多くの人は日常的な英会話に親しんではいません。
接客用となるとなおのこと経験がないはずで、このままではインバウンドに対応できているとは言えません。
接客用の英会話を学んでよりよい印象を持ってもらうことが、ひとつの目的となります。
業界・業種ごとで求められる対応力を身につける
業界・業種ごとで、求められるインバウンド対応は異なります。
研修では、それぞれで必要となる振る舞いやフレージング、提供するサービスを学ぶことが可能です。
幅広いパターンを学び、より柔軟なインバウンド対応が実現できる状態を目指します。
日本と海外の文化の違いを学習する
インバウンド研修では、日本と海外の文化の違いを学習することもポイントです。
やはり生まれ育った文化が違えば、取るべき対応も変化します。
日本では当たり前のことが、海外顧客にとって不適切なケースも少なくありません。
たとえばメキシコ人に対して、「スペイン料理は美味しい」というのは禁句です。
そういったパターンを理解して、適切にインバウンド対応するのが、研修で目指すポイントとなります。
研修プランのラインナップ
インバウンド研修においては、以下のプランがおすすめです。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
基本的な知識を学べるインバウンド入門・準備|「株式会社ライフブリッジ」
株式会社ライフブリッジでは、基本中の基本を学べる「インバウンド入門・準備」というカリキュラムを用意しています。
同研修を受ければ、インバウンドにおいて重要な部分はほぼ網羅することが可能です。
また新入社員からベテランまで、幅広いレベルに合わせた内容です。
株式会社ライブブリッジは、インバウンドに関連した研修をメインに展開する貴重な研修会社です。
インバウンドについて学ぶうえではたいへん頼りになる組織だと言えます。
受講先としては最有力候補となります。(参照:株式会社ライフブリッジ)
外国人観光客おもてなし接客強化研修|「株式会社クリエイティブアルファ」
外国人観光客おもてなし接客強化研修では、顧客に対してよりよいコミュニケーションを提供するスキル習得を目指します。
インバウンドにおいて重要になるのは、なんといっても英語力。
適切な英会話スキルを磨き、外国人観光客を「おもてなし」できるようなカリキュラムが組まれています。
インバウンド対応を考えるとき、「自分に英語はできない」という決め込みで断念するケースも少なくありません。
しかし実際には英会話スキルでインバウンドビジネスが展開できることを、この研修において実感することが可能です。
株式会社クリエイティブアルファは、観光・店舗ビジネスに関する研修を展開する企業です。
インバウンドビジネスについて精通した人物が講師を担当しており、たいへん信頼できます。
自社においても有力な受講先候補となります。(参照:株式会社クリエイティブアルファ)
インバウンドおもてなし研修プログラム|「株式会社JBMコンサルタント」
外国人雇用インバウンド向け研修プログラムでは、外国人観光客の気持ちに寄り添う応対を学びます。
日本を訪れた人々は、接客サービスの場面においていろんなギャップや不満を感じるものです。
同研修では外国人観光客の思いや心理を熟知し、より適切なサービスが提供できるスキルの習得を目指します。
主催者の株式会社JBMコンサルタントは、あらゆる研修や社員教育を提供する研修会社です。
大企業はもちろん銀行や官公庁に対する研修も実施しており、たいへんな信頼を集めています。(参照:株式会社JBMコンサルタント)
外国人観光客等おもてなし向上コンサルタント|「株式会社トゥルース」
株式会社トゥルースは、観光客をターゲットにした研修・コンサルタントを数多く手がけています。
英語圏に加えて中華圏と韓国語圏を想定しており、幅広い外国人層へ対策できるのがぽんとです。
コミュニケーションの取り方にもかなり深く考察しており、受講にあたってハイレベルなナレッジを習得できます。
ベースとなる研修内容は以下のとおりです。
・インバウンドの現状と心構えの学習
・主要国の異文化に関する理解
・英語・中国語・韓国語による基本的な会話
・スマートフォンとSNSを活用したインバウンド対応
・SNSによる外国人観光客とのコミュニケーション
・外国人接遇におけるセオリーとタブーの学習
・接客場面のロールプレイング
株式会社トゥルースは、語学に関する研修を多数展開する研修会社です。
招聘される講師はいずれも各言語のプロフェッショナルであり、レベルの高いスキルを習得できます。(参照:株式会社トゥルース)
語学と臨店を中心としたインバウンド研修|「株式会社イースト」
株式会社イーストでは、語学と臨店を中心とした研修を展開しています。
やはりインバウンドでは基礎となる外国語会話をマスターしつつ、実際に店舗でどのように動くか、実践的なレベルで学習することが可能です。
早い段階でスキルを習得したい場合は、頼りになる研修内容だと言えます。
主催者である株式会社イーストは、セールスソリューションやオペレーション事業を主体とする企業です。
つまりビジネスの発展や再生のサポートを得意としており、その一環としてインバウンド戦略を提供しています。
これまで株式会社イーストは、全国150以上の著名な施設へノウハウやサービスを提供してきました。
その点を踏まえれば、実績と信頼を十分に積み上げている企業だと言えます。(参照:株式会社イースト)
中華圏に特化したインバウンド対策研修|「キャプラン株式会社」
キャプラン株式会社の「インバウンド対応中国研修」は、中華圏に特化したカリキュラムです。
「爆買い」という言葉を、聞いたことはないでしょうか?
これは来日中国人が日本製品の安さや性能に目をつけ、両手いっぱいほどに購入する行動を指します。
ここに魅力を見出している中国人観光客は、インバウンドにおいて対策すべき存在で、その具体的な手法を学べるのが当該研修です。
主催者のキャプラン株式会社は、法人向けの研修を多数提供している企業です。
厳密にはPASONA傘下なので、実績やクオリティの面ではかなり安心できます。
グローバル意識が強く、インバウンド対応についても深いノウハウを持っているのが特徴です。(参照:キャプラン株式会社)
徹底した研究によって作り上げられたナレッジを学ぶ|「一般社団法人 キャリアマネジメント研究所」
一般社団法人キャリアマネジメント研究所では、ベーシックな内容のインバウンド対策研修を実施しています。
同社が59の国と地域、そして6,000人以上の外国人とかかわってきた経験から得られたナレッジを学べる研修サービスです。
グローバルビジネスの経験が乏しい場合は、たいへん役立つ研修だと言えます。
一般社団法人キャリアマネジメント研究所は、どこよりも深く外国人の行動をマーケティング視点で分析している団体です。
だからこそ研修カリキュラムやそこで提供される理論には、強い信憑性があります。(参照:一般社団法人 キャリアマネジメント研究所)
研修のカリキュラム例
インバウンド研修におけるカリキュラムの一例として、以下が挙げられます。
<受講対象者>
英語未経験者・新入社員・ストアマネージャー・接客担当者・管理職
<受講後の到達水準>
- インバウンドの現状と重要性を理解する
- インバウンド・マーケティングにおいて求められる準備を完了する
- 適切な接客会話で、各国の外国人観光客に魅力的な体験を提供する
- SNSを使い、より高度なインバウンド対応を実現できる
主要なテーマ | 学習内容 |
---|---|
インバウンド対応の基本講義 | 外国人観光客に対する心構え 異文化理解の重要性 多言語コミュニケーションの重要性 日本におけるインバウンドの現状 外国人観光客の消費健康 |
インバウンド・マーケティングの準備 | ハード面整備 トラブルが起きたときの対処方法 コミュニケーションの基本 食文化への理解と対応方法 注意すべきフレージング |
インバウンド対応における接客会話の習得 | 大言語における基本的なフレージング ロールプレイングによる接客 スマートフォンを利用した翻訳ツールの活用 外国人観光客に寄り添うコミュニケーション 異文化に応じたサービス提供 |
インバウンド対応におけるSNS戦略 | SNSでの集客 SNS上での発信内容とコミュニケーション> |
接遇技術のレベルアップ | 外国人を相手取ったロールプレイング 実地研修 |
いずれの研修も、基本的には「インバウンドの現状や外国人の行動様式」などを把握するところからスタートします。
それを踏まえたうえで、必要なスキルを身につけて、実践へと落とし込までが本筋です。
研修が求められる理由
インバウンド研修が強く求められるのは、2012年ごろから外国人観光客が増加し出した、という背景があります。
日本はもともと、海外から見てもかなり魅力的な旅行先です。
いわゆる「SAMURAI」や「BUSHIDO」に代表される日本的な文化は、欧米圏では「クールだ」と評価されています。
またサブカルチャー、つまり「ジャパニメーション」などが外国人を惹きつけている部分もあります。
それが各国で認知されるにつれ、外国人観光客が日本旅行を検討するようになりました。
同時に円安やLCCの台頭、さらにはビザ緩和を絡み、日本は一躍観光地として注目を集めるようになります。
そして、一大観光地として、「海外顧客をどのように迎え入れるか」が重要視されました。
よって適切な対応を取れるように学習できるインバウンド研修が求められているわけです。
民間だけではなく、政府もインバウンド対応をレベルアップさせようとしています。
観光庁は通訳案内士研修などを実施し、有資格者にはバッジを与えるなどの体制を整えているのです。
民間ビジネスにおいてそのバッジはかならずしも必要ではありませんが、それ相応の知識がインバウンド対応に求められていると考えて、まず問題ありません。
研修が必要な業種・業態とは?
インバウンド研修での学習は、あらゆる業種業態で求められます。
BtoCビジネスであれば大半は海外顧客との接点を持ちうるので、たいてい研修参加は検討する必要があります。
特に観光や日本文化といったジャンルに近いビジネスなら、ほぼ必須だと言えます。
今現在、海外顧客がさほど多くなくても、インバウンド対応を追求することで、新しい販路が開かれる可能性が十分すぎるほどあります。
とかく海外からの旅行者が多い最中、インバウンドについて対策することは非常に重要です。
研修に関するよくある質問
本記事ではインバウンド研修について解説しました。適切な研修カリキュラムをチョイスして受講し、インバウンドに関するナレッジを吸収しましょう。
最後にインバウンド研修でよくある質問についてQandAで解説します。
- 研修にかかる費用は?
- 業態によって研修内容をカスタマイズすることは可能か?
- 英語が喋れなくても問題はないのか?
- 研修以外に受けるべきカリキュラムは?
- 観光庁主催の研修だけでは不足があるのか?
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
インバウンド研修にかかる費用は?
インバウンド研修にかかる費用は一人15,000円〜20,000円と見込んでおきましょう。
価格設定は主催者が決めるものですが、上記レンジから大きく逸脱することはほぼありません。
ただし参加人数によって変動することもあるので注意しましょう。
また研修内容をカスタマイズする場合は、費用が上乗せされることもあります。
業態によって研修内容をカスタマイズすることは可能か?
事前に相談しておけば、インバウンド研修の内容をカスタマイズすることは可能です。
どのようなインバウンド対応が求められるか、業種業態によって大幅に変化します。
より効果の高いインバウンド対応を追求するなら、カスタマイズは有効です。
何を学びたいのか明確にして事前に相談し、できれば研修内容をカスタマイズしましょう。
英語が喋れなくても問題はないのか?
英語が喋れなくてもインバウンド研修に参加することは可能です。
ほとんどのカリキュラムでは、基本的な英会話ができるようにレクチャーしてから、インバウンド対応としての会話術をレクチャーします。
ただし、ある程度の予習で自己紹介程度できるようになっておけば、よりスムーズに学習することが可能です。
できれば事前に自主的に勉強してから、カリキュラムを受けるのがおすすめです。
インバウンド研修以外に受けるべきカリキュラムは?
インバウンド研修以外に以下のようなカリキュラムを受講するのがおすすめです。
- 英会話を学べる研修
- 「グローバルマインド」に関する研修
インバウンドで重要になるのは、まず英会話です。
言葉が通じなければ、高度なサービスは提供できないので、英会話については学習の優先順位が高いと言えます。
合わせてグローバルマインドについて学んでおけば、よりレベルの高いインバウンド対応を実現できます。
また官公庁が主催する「地域の観光人材のインバウンド対応能力強化研修」なども受けておくのもおすすめです。
それがそのまま会社の利益に直結するわけではありませんが、インバウンド対応の概要や全体像を掴むうえでたいへん役立ちます。
観光庁主催の研修だけでは不足があるのか?
結論から言えば観光庁主催の研修のみでは不足があります。
これは、自社において利益を出すための取り組み、という意味においてです。
観光庁と民間主催のインバウンド研修、それぞれ目指す地点は異なります。
官公庁がインバウンド研修を拡大しているのは、あくまでも政府の観光収入を向上させるという大きい目的があるからです。
民間主催のインバウンド研修は、自社、つまりクライアントに合った対応を提供します。
そしてそのノウハウを活かして、国単位ではなく個人・法人単位での利益へとつなげるのが目的です。
つまり観光庁主催の研修だけでは、具体的にインバウンド収益を得る方法論が欠けてしまうと言えます。
ただし観光庁主催の研修は、インバウンド対応における基本的なナレッジが充実している側面もあります。
言われるがままではいけませんが、ぜひとも参加してナレッジだけでも吸収したいところです。
マニュアル作成の監修は可能ですか?
結論から言えばマニュアル作成の監修は、基本的には可能です。
ただしどの程度関与できるかは研修会社によって異なるので、事前に確認しておく必要はあります。
費用面でも通常の研修とは異なる計算方法になるので、研修会社に問い合わせましょう。