イノベーションを起こすために企業がするべきこと

多様化が進む現代、ビジネスシーンにおいてイノベーションという言葉を耳にする機会が多くなりました。
ひとことにイノベーションといっても定義やポイントは様々あります。イノベーションとは、実際にどのようなもので、企業にどう影響するのか、この記事では具体的なイノベーションの定義やポイントについて解説します。
自社にイノベーションを促したい企業の方は、ぜひこの記事を参考にし、適切なイノベーションを促して下さい。

目次

ビジネスシーンで使われるイノベーションの意味

イノベーションとは既存の価値観にとらわれず、新たな考え方や技術を積極的に取り入れることで社会に大きな影響を与えるような革新を起こすことです。
3人の著名な人物がそれぞれイノベーションに関する提唱をしています。
ここでは3人のそれぞれ提唱に関して解説していきます。

ヨーゼフ・シュンペーターが提唱した5つの定義

ヨーゼフ・シュンペーターはオーストリアの経済学者であり、5種類のイノベーションに関して提唱しています。

  1. プロダクト・イノベーション:新しい生産物の創出
  2. プロセス・イノベーション:新しい生産方法の導入
  3. マーケット・イノベーション:新しい販売先および消費者の開拓
  4. サプライチェーン・マネジメント:新しい供給源の獲得
  5. オーガニゼーション・イノベーション:新しい組織の実現

これら5種類のイノベーションを起こしていくことが企業の発展には重要であるとしています。

ヘンリー・チェスブロウが提唱した2つのパターン

ヘンリー・チェスブロウはイノベーションに関して、「クローズド・イノベーション・オープンイノベーション」の2種類あると提唱しています。

クローズド・イノベーションとは、研究から製品開発までを外部の手を借りず、自社の中で行う自前主義に基づいたイノベーションです。対してオープン・イノベーションとは、外部のもつ技術やノウハウを活用して研究から製品開発を行うイノベーションです。
オープンイノベーションの背景としては、グローバル化や産業構造の変化により、全て自社で行うことは困難になったことがあります。

クレイトン・クリステンセンが提唱した2種類の手法

クレイトン・クリステンセンは、「創造的イノベーション」と「破壊的イノベーション」という2種類のイノベーションの手法に関して提唱をしています。
創造的イノベーションとは、顧客の意見や要望を取り入れながら進めるイノベーションの手法です。
破壊的イノベーションとは既存の概念にとらわれず、新しい発想を積極的に取り入れていくことで新たな価値をうみだしていくイノベーションです。
例えば携帯電話への、カメラ機能の搭載の例があります。
それまで写真はカメラで撮るというのが常識でした。しかし携帯にカメラ機能がつくことによってそれまでの常識は覆ることになりました。これこそが破壊的イノベーションです。

P.Fドラッカー「イノベーションに繋げる7つの機会」

P.Fドラッカーはマネジメントの祖であり、「イノベーションとは科学や技術ではなく、価値であり、組織の中ではなく組織の外に変化をもたらすこと」であると定義しています。
そこでドラッカーはイノベーションに繋げる7つの機会に関して提唱しています。

  1. 予期せぬもの
  2. ギャップ
  3. ニーズ
  4. 産業構造の変化
  5. 人口構造の変化
  6. 認識の変化
  7. 発明変化

それぞれ解説していきます。

予期せぬもの

ドラッカーはこの「予期せぬもの」こそが、7種類のイノベーションの中で最も重要であるとしています。
予期せぬものとは隠れたニーズの発見です。
例えば一人カラオケが、この予期せぬものの良い例です。
少し前までカラオケというのは、複数人で行って楽しく歌うというのが常識でした。しかし実際には一人カラオケにもニーズがあり、現在では「一人カラオケ専門店」ができているほどです。
固定概念に囚われるのではなく、常に隠れたニーズはないのか考え、実行してみることが重要なのです。

ギャップ

ギャップとはサービスを提供する側と、提供される側のギャップを埋めることです。
例えばヘアカットが良い例です。
基本的なヘアカットは、カットの他にシャンプーやマッサージなどサービスを受けます。しかし人によってはカットだけで十分という人が多くいます。
そこで現在ではカットのみをサービスメニューに加えている理髪店が出てきているのです。

ニーズ

ニーズとは求められている・足りていないものを明確にして、それを解決するために起こすイノベーションです。
ドラッカーはこのニーズを「イノベーションの母」と定義づけています。
ニーズに関しては漠然としてものではなく、以下の3つの視点が重要であるとしています。

・そのニーズは現在の科学技術で実現可能なのか
・そのニーズは明確になっているか
・ニーズに対して行うことが本当に価値観と一致しているか

以上の視点にマッチすることが重要です。

産業構造の変化

近年多くの業種で行われているIT化が、まさに産業構造の変化です。
これまで人手が必要であった単純作業が、今では無人化して機械が行うようになっています。また、金融システムや会社でのコミュニケーションの仕方にも、ITが大きく活用されるようになってきています。

人口構造の変化

近年少子高齢化の傾向は強まってきています。
しかしそういった人口構造の変化が、まさにイノベーションを行う上で重要なものになってきます。
具体的には高齢化が進むことによって、新たに高齢者向けのサービスの需要が強まってきます。そこに新たなビジネスチャンスが生まれてくるのです。
例えば高齢者向けの宅配サービスは良い例です。
買い物をしに店舗まで行くのが難しくなってくる高齢者にとって、宅配サービスは非常に高い需要があります。
このように人口構造の変化に対して、どこに可能性があるのかを探ることが重要です。

認識の変化

近年、健康意識は高まりつつあります。
オンラインフィットネス・健康食品など健康産業は次々と新たな商品・サービスを生み出しています。
例えば最近のコンビニが良い例です。
これまでのコンビニに対するイメージは「健康にあまりよくない」でした。しかし最近では低糖質や野菜が十分に摂れる商品が出ています。
これも最近の人々の健康に対する意識の高まりに合わせて、商品にイノベーションを起こしているのです。

発明発見

この発明発見に関しては、ドラッカーは最も可能性が低いとしています。
それはこの発明発見が根拠ではなく、アイディアに基づくイノベーションだからです。ドラッカーは、これを社会は邪魔してはいけないとしています。
可能性が低くともこのアイディアは、社会の大きな発展に繋がる可能性があるからです。

参考:Harvard Business Review Home『The Discipline of Innovationby Peter F. Drucker』

イノベーションが注目されている理由

イノベーションのイメージ
イノベーションは現在様々なところで注目されています。
その理由について3点解説していきます。

イノベーションによる大きな経済成長

イノベーションを起こすことによる最大の効果は、大きな経済成長を見込むことができるからです。
既存の事業だけでは企業が経済的に成長していくことは困難であり、常に新しい価値を生み出し、成長していくことが重要です。
今でも大きな経済成長を遂げている企業は、日々新たなイノベーションを起こし続けています。

国内外での市場競争における優位性の獲得

グローバル化が進み、市場での競争は一層激しくなっています。
そこで他社に対して優位性を獲得していくためにも、イノベーションを起こして他社と差別化していくことが重要です。

企業課題の解決

環境問題など社会を取り巻く環境は大きく変化しており、企業が抱える課題も増えてきています。
そのためイノベーションを起こし、課せられている課題を解決することが重要になってきています。

企業が直面している課題

イノベーションは、企業の大きな経済成長のために必要なものです。しかし、現状企業が、イノベーションに対して直面している課題があります。
ここではイノベーションに対する企業の課題に関して3点紹介します。

既存事業に注力するあまりイノベーションができていない

企業にとって既存事業は重要です。
しかし既存事業に注力するあまり、イノベーションに対するチャンスを逃してしまっている場合があります。重要な既存事業ではありますが、それがかえってイノベーションの妨げになってしまっている場合があるのです。

従業員がイノベーションに前向きになれない

特に減点主義の風土が強い企業ほど、この傾向は強くあります。
イノベーションに取り組むことには、失敗することのリスクがあります。従業員がイノベーションに取り組んだことで失敗したことにより、減点もしくは罰則を与えるような風土であれば従業員はリスクを恐れイノベーションに取り組むことができません。
従業員が前向きになれていない企業は、風土の見直しをすることが重要です。

持続可能なイノベーションの維持ができていない

イノベーションは1回行なってそれで安泰というものではありません。
企業が安定して成長し続けるためには、イノベーションを継続して起こし続けることが重要です。

イノベーションを起こせる企業の特徴

イノベーションを起こせる企業に主に3つの特徴があります。これらの特徴に関して解説していきます。

イノベーションのリスクに対する正確な理解をもつ

イノベーションにはリスクが常に隣り合わせです。
そのためイノベーションは必ず成功するものではなく、失敗する可能性もあるということを正確に理解しておくことが重要です。

社内のコミュニケーション環境が整っている

持続的なイノベーションのためには、社内の従業員1人ひとりが立場や役割にとらわれず自由に発言・提案できるように環境を整えることが重要です。
そこで、会社は社内のそういったコミュニケーションが円滑に行えるための環境を整備することが重要になってきます。

おすすめのコミュニケーション研修

コミュニケーション研修

コミュニケーション研修では、チーム内・顧客とのコミュニケーションで起きる問題や解決方法を学ぶ事ができます。


市場の変化に対し、常に敏感なアンテナを張っている

市場は常に変化し続けています。
市場の変化を無視してイノベーションを起こすことはできません。そのため市場の変化には常に敏感にアンテナを張ることにより、正確にイノベーションを起こすことができるのです。

イノベーションを起こすための人事の役割

事業戦略だけが、イノベーションではありません。
人事戦略においてもイノベーションは重要であり、戦略的にマネジメントや従業員の育成を行なっていく必要があります。
そこでここではイノベーションを起こすための人事の役割に関して3点紹介します。

イノベーター採用を活用

イノベーターとは新しい発想やノウハウを持つ人を迎え入れることで、社内全体に変化の兆しを作ることを目的にしている手法です。
イノベーター採用を行うことで従業員に刺激が加わり、イノベーションに関して積極的な雰囲気にすることができます。

ちょっとしたことに感謝を表明する制度

基本的に人はちょっとしたことでも感謝や評価されると嬉しくなり、もっと頑張ろうという気になります。そうしてちょっとしたことから行なっていくと、次第に大きなものにつながり、結果イノベーションが起きるのです。

副業の解禁

副業を禁止している会社は多くあります。しかしその一方で副業を解禁している会社も多くあります。
それは副業という社内でできない経験を経ることで、新たな発想・アイディアが出てきて、結果イノベーションが起きるのではないかとされています。

イノベーションを成功させた企業事例

イノベーションを成功させた企業は数多くあります。
その中でも3社のイノベーションの事例について紹介していきます。

日東電工の4タイプの人材戦略

日東電工オフィシャルサイト
参考:日東電工株式会社オフィシャルサイト『Nitto Innovation Lab.』

日東電工は新しい価値創造へのチャレンジを掲げ、常に新しいことへのチャレンジを推奨する社内文化を築いています。
クリエーター型
ベンチャー型
スペシャリスト型
マネジメント型
それぞれの人材に応じた配置を行いイノベーションを促すようにしています。

ソニーの革新を生む人材の開発

ソニーオフィシャルサイト
参考:SONYオフィシャルサイト『設立趣意書』

ソニーの「設立趣意書」には、「会社は個の持つ力が最大限に発揮する場」であるべきとの考え方が示されています。
そのため、社員1人ひとりによる主体的な成長を促すために、50年前に社内募集制度を作りました。
今では多くの会社で採用されている制度ですが、ソニーが世に先駆けて始めていたのです。

ヤマト運輸のイノベーション

クロネコヤマトオフィシャルサイト
参考:ヤマトホールディングス株式会社『ヤマトグループ100年の歩みイノベーションを創出してきた歴史』

ヤマト運輸は1919年の創業以降、イノベーションを繰り返してきました。
1929年の日本初の路線事業の開始から始まり、現在では一般的となっている宅急便を誕生させています。
そして現在、「バリュー・ネットワーキング」構想を発表し、AI・デジタル技術の進化に合わせて新たに物流をバリューを生み出す手段として取り組んでいます。

ポストコロナ時代のイノベーションとは

ポストコロナに向けて多くの企業が、イノベーションを起こすために日々取り組んでいます。
そこでポストコロナに求められるイノベーションを2点紹介します。

1点目は、イノベーターを戦略的に育てることです。
イノベーションを起こすためには人材の育成が重要になります。そのため、人材育成のために企業は戦略的にイノベーターを育成していくのです。
2点目は、従業員満足度を上げることです。
従業員の企業に対する満足度が低ければ、従業員たちからイノベーションが起きる可能性は低くなります。そうならないためにも従業員満足度をあげ、イノベーションに対して従業員が積極的になれる行動が重要です。

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