後輩指導を熱心に行う社員

後輩社員の育成が重要な人材マネジメントのひとつであることは、あらゆる企業において広く理解されています。しかし、「後輩育成に本気で取り組み、職場全体の人材力向上につなげている」企業はそう多く無いのが現状です。

後輩育成は「後輩を教育できる」だけではありません。
育成担当社員の大幅なスキルアップになり、組織全体が活性化できるのです。

この記事では、育成する側のスキルアップにもつながる後輩育成のポイントを解説していきます。
組織の人材力向上につながる後輩育成スキルについて見ていきましょう。

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なぜ後輩の育成スキルが人材力をあげるのか

後輩育成に必要となるスキルは、業務遂行や人材マネジメントに関わるスキルとイコールです。

そのため、後輩育成スキルを鍛えることは、プロジェクトリーダーやチームのマネジメントとして必要な力も養われることになります。

育成された後輩の戦力が上がるのはもちろんのこと、育成している社員自体の大幅な人材力向上が見込めるのです。

効果的な後輩育成をする際に必要となるスキルを、具体的にあげてみましょう。

  • コーチング技術
  • 目標管理能力
  • コミュニケーション力
  • 感情のコントロール力
  • 多角的な視野
  • 仕事調整力

これらのスキルは、後輩育成の枠に留まらず仕事の能力を大きく伸ばすスキルばかりです。

後輩の育成を担当する社員は、若手で働き盛りの人材が選出されることが多い傾向にあります。

今後さらに高レベルな業務へチャレンジさせるためにも、積極的に身に着けさせたい技術と言えるでしょう。

後輩育成への積極的な取り組みが職場に与える影響

先輩の指導を真剣に受ける後輩社員
後輩育成は職場のモチベーションアップや離職率低下にもつながるというデータがあります。

厚生労働省がまとめた統計によると、OJTやOFF-JTといった人材教育が相対的に多い企業においては、少ない企業に比べて3.3ポイントも社員のモチベーションが上がるというデータが出ているのです。

出典:厚生労働省「平成 30 年版労働経済の分析」第2-(2)-4図 企業の能力開発等と従業員の仕事に対するモチベーションとの関係

このように人材育成に積極的に取り組むことは、職場に活気をもたらし社員のやる気に直結する効果があることがわかります。

優秀な人材の流出や、社内のモチベーション低下を防ぐためにも、OJTやOFFJTを用いた効果的な後輩育成計画を導入することが必要なのです。

⇒離職率を下げる人材育成のポイントはこちらをチェック

人材力がアップする後輩育成のポイント

目標に向かうビジネスチーム
人材力アップにつながる後輩育成のポイントは大きく4つあります。

  1. 目的を共有してゴールを目指す
  2. スモールステップ法を用いた育成計画をたてる
  3. ティーチングとコーチングを使い分ける
  4. ストロークを意識したコミュニケーションをと

これら4つのポイントについて解説していきます。

目的を共有してゴールを目指す

後輩教育を始める際にまずやるべきことが、会社やチームの上司が掲げているビジョンの共有です。
これは後輩育成に限らず、チームマネジメント全体に有効です。

自分たちが何のために働いているのか、何を目指しているのかというゴールを、育成スタート時点から明確にします

人は目的を意識すると、目的達成を見すえた具体的な行動を取るようになります。

特に、新人や年次の浅い社員は自分の仕事をこなすことだけに目が向きがちです。こういった状況にある後輩社員こそ、ゴールに向けた行動を自主的に考えさせるきっかけとして目的の共有が不可欠なのです。

スモールステップ法を用いた育成計画をたてる

育成計画は、育成側の管理のためといった理由以上に「後輩がなにを目指すべきか」を明確に提示するために策定します。

育成計画をつくる際のポイントは2つあります。

  • スモールステップ法を用いること
  • 後輩を含めたチーム全体に公開すること

短い期間で小さい目標をクリアしながら小刻みにステップアップしていく「スモールステップ法」であれば、目標達成のやりがいと自信を得ることができます。

達成経験の少ない後輩社員であっても、効果的に育成内容を習得していくことが可能です。

そして、育成計画は全体が確認できるように共有することが大切です。
できるだけ具体的に、「どのような目的を持って」「いつまでに」「何ができるようになって」「どのような姿勢を身につけるか」の目標を掲げましょう。

目指すべき姿が明確であればあるほど、後輩も目標に向けた行動を起こしやすくなります。

育成計画をチームに公開する利点はふたつあります。

ひとつは育成者以外のメンバーのサポートが受けられやすくなること、ふたつ目は育成の進行が注目されて、いい意味での緊張感が生まれることです。

チームを巻き込んだ後輩育成をすることは、チームマネジメントの練習としても意味があります。

コーチングとティーチングを使い分ける

後輩育成には、知識を教える「ティーチング」と実践で学ばせる「コーチング」の組み合わせが必要です。

ティーチングは相手に答えを教える育成法であり、コーチングは相手から答えを引き出す育成法です。相手の理解度や性格によって使い分けることで、それぞれの効果を高めることができます。
後輩育成の基本的な方法は、レベルの低いうちはティーチングを中心にし、徐々にコーチングの割合を増やしていくやり方です

このときのポイントは、ティーチング中にも質問を織り交ぜていくことです。一方的な座学になりがちなティーチングは、「右から左へ抜けていく」状態になりやすいものです。「さっき話したことを自分の言葉で説明できますか?」や「前回教えたこととのつながりが何だかわかりますか?」といった、簡単な質問をしながら進めてみましょう
頭で考えさせることにより、ティーチングの定着度を格段にアップさせることができます。

ストロークを意識したコミュニケーションをとる

ストロークとは、心理学の分野で「人と人とのあらゆるやりとり」のことを指します。

後輩育成においては、「相手を認める」「興味を持って性格を知る」「肯定的な声掛けをする」「無視したり邪険に扱ったりしない」といった、プラスのストロークを意識して接しましょう。

ストロークは、表情や体の向きなど非言語的なやりとりのことも指します。これは、言葉のやりとりという意味合いが強い「コミュニケーション」とは異なる点です。ストロークは人間関係の維持や構築に、なくてはならないものと言われています。

ストロークを意識したコミュニケーションは、後輩育成だけでなくあらゆるマネジメント層にも必要とされる能力です。

育成の経験は人材力アップのチャンス

先輩後輩が共に成長する様子
後輩育成には様々なスキルがバランスよく必要となり、思った以上に高いレベルが要求される仕事です。

これらのスキルは、今後の業務やマネジメントでも必要となる技術ばかり。研修等で体系的に習得させるべき内容といえます。
後輩育成という仕事は、一回り上の人材を目指すためのあらゆる経験の宝庫。優先度が後回しになりがちですが、本気で取り組めば取り組んだだけ企業全体の人材力として返ってくる仕事です。

「育成対象者」「育成者」「サポートするチームのメンバー」、全ての人材力アップになる貴重なチャンス。会社全体で真剣に考え、スキルアップの場として活かしていきたいですね。

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