ビジネスにおいて人間関係はとても重要な要素です。信頼関係が築けないと悩んでいる人は、ラポール形成ができていない可能性があります。
どんなに優秀な人材でもラポール形成ができていないと、円滑に物事を進めることができないのです。
ここではラポールの意味やその効果、ラポール形成に必要な行動などについて解説しています。ぜひ理解を深めて実践していきましょう。
目次
ラポールとは
ラポールは『信頼関係』と訳されることが多く、フランス語では『架け橋』という意味を持ちます。人と人をつなぐものという解釈ができます。
ラポールは臨床心理学の用語で『精神感応』を表す言葉です。精神感応とは、言葉で伝えなくても気持ちが伝わることを指します。
ふと思い出した人から連絡が来たり、示し合わせていないのに同じ行動をしたり、同じようなことを考えていたりというのが、精神感応です。シンクロと似たような意味合いを持ちます。
ラポールは架け橋になるものですので、自分だけの一方的な考えでは成り立たず、双方向で形成されます。
川の向こうに物を運ぼうとすると、橋がないとできないですよね。気持ちも同じで、まずはお互いの間に橋を架けることから始めなければなりません。
橋が架かって、初めて信頼関係を築くための行動ができるのです。
ラポール形成の効果
ラポールは深い部分でのつながりを持つことですから、ビジネスではとても良い効果が現れます。
- 上司や部下、ビジネスパートナーなどの立場を超えてチームになれる
- 意思の疎通がスムーズになる
- プレゼンや営業での言葉に説得力が出る
- 相手を尊重することができる
- 自己肯定感が上がる
- 絶対的な安心感を与えられる
お互いに気持ちが通じ合っているため、何を言っても大丈夫という安心感があるのが最大の効果です。
信頼し合える関係になれますので、どのような場面でもより良い関係と環境を作ることができます。
ラポール形成をするために必要な心構え
ラポール形成をするには、スキルだけに頼ってはいけません。基本姿勢ができていなければ、高いスキルをもってしてもラポールを築くことはできません。
次の3つの心構えをしっかり自分の中に持つようにしてください。
思いやりを持つ
相手に興味を持ち、相手のことを大切にする気持ちを持つことが大切です。
相手の感情や行動をコントロールしようとしたり、こちらの都合の良いように話を進めようとする気持ちがあると、一時は上手くいくかもしれませんが長い目で見た時に、必ずトラブルが起きます。
この人と誠実に向き合いたいという気持ちがあって初めてラポール形成が上手くいきます。
違いを受け止める
自分と全く同じ思考や行動をする人はいません。これは頭ではわかっていても、感情では割り切れない時もあると思います。
ラポール形成には相手を尊重することも大切な要素です。
自分と違う部分があったとしても、否定することなく受け止めましょう。理解ができなくても良いのです。
ただ「こういう考えなのだな」「今はこういう行動をしたいのだな」と、事実を受け止めることが大切です。
違いを受け止めることは、ひとりの人間として認めることでもあります。
同調する
自分と似た部分を持っている人に出会うと、初めての人でもホッとしませんか?
同じと思う気持ちは安心感を抱きますので、相手の感情や行動に同調することはラポール形成にとても重要な意味を持ちます。
こちらからどんなにアプローチをしても、相手がラポール形成を望んでいなければ橋を架けることはできません。
安心、安全と思ってもらうためにも、同調できること、共通していることを見つけてラポールを強固なものにしていくことが大切です。
ラポール形成に有効な行動
ラポール形成をするのはこちらからの働きかけが必要です。相手に信頼してもらうために効果的な行動を4つご紹介します。
どれもすぐにできるものばかりですが、やり過ぎるとわざとらしくなったり、違和感を与えてしまうのでさりげなくおこなうのがポイントです。
相手の真似をする
ミラーリングという方法で、相手の行動やしぐさを真似します。
相手が足を組んだらこちらも足を組み、顔を触ったら同じように顔を触る、お茶を飲んだら同じようにお茶お飲むというように、まるで相手の鏡になったように行動をします。
こうすることで、同調している行動がシンクロしていると感じ、距離が縮まります。
ミラーリングは対面だけではなく、メールでも活用できます。
相手の言葉をそのまま引用する、同じ文体を心がける、同じような文章の構成にするなどもミラーリングになります。
注意点としては、溜息、しかめっ面、腕を組むなどの拒否や迷いなどを表すネガティブな行動は真似をしないようにしてください。
テンポを合わせる
ペーシングという方法で、相手の会話のテンポに合わせるようにします。
早口の人には早口で、ゆっくり話す人にはゆっくりペースで話をします。他にも声のトーンや大きさも相手に合わせると、同じ空気感を作り出せるため安心感を与えます。
また、うなずく時も相手の話すスピードに合わせます。早口の人にゆっくりとし相づちをすると会話のテンポがちくはぐになり、違和感につながります。
ミラーリングがしぐさを真似るのに対して、こちらは話し方やスピードを真似る手法です。
相手がスローペースで、こちらがハイペースな話し方の場合は、もどかしくなり途中で話を遮ってしまいそうになるかもしれませんが、そこは我慢をしてまずは相手のペースに合わせるようにします。
ラポールが形成されると、こちらのペースで話を進めることも可能になります。
心理状態を把握する
キャリブレーションと言われ、相手の様子から体調や気持ちを推察する方法です。
姿勢や声のトーン、話し方、表情など言葉以外のことから汲み取ります。
いつもの状態と違うことを見つけるものですので、初対面や出会って間もない人には使えません。
「声の調子がいつもと違うように感じるのですが」「何か雰囲気が変わったように感じます」というように、伝えると見てくれているという安心感を与えます。
しかし、毎回キャリブレーションをすると、監視されているような気持ちにさせてしまい、不快感を持たれる可能性がありますので、異性や干渉されるのが苦手な人にはあまり使わないようにした方が良いでしょう。
復唱する
バックトラッキングという方法で、いわゆるオウム返しのことです。
相手の言っている言葉を繰り返すことで、話を聞いていますという姿勢を印象付けられます。
言葉をそのまま繰り返す、言葉を少し変えて繰り返す、話を要約して繰り返すなどの方法があり、会話の流れで使い分けると効果的です。
ですます調で話をしてきたら、こちらもですます調で返す、フランクな言い方をしてきたら、こちらもフランクな言葉を使うというように、言葉そのものではなく語尾を同じにして返すのも有効です。
人間関係はラポール形成から
ラポール形成は信頼関係を作る前段階です。これが上手くいかないとどんなに努力をしても良い人間関係を築くことはできません。
相手に思いやりを持ち、受け止め、同調するという基本姿勢を持ち、ミラーリングやペーシングなどのスキルを使って、ラポールを形成するようにしましょう。
独学では難しいと感じている方は、単発や連続講座で個人的にセミナーを受講することもおすすめです。私たちが抱える悩みは人間関係がほとんどです。学んで改善できることは積極的に知識を深めに行きたいものです。