フラットな関係性のオフィス

現代のビジネス界における組織運営の潮流は、絶えず変化しています。その中で、「ティール組織」という概念が、従来の管理と指導に基づく組織構造に新たな光を投げかけています。

従来の階層的な指令系統に代わり、メンバー各自の自主性と協働を重視するこのモデルは、ビジネス世界において革命的な存在となっています。この記事では、ティール組織の基本概念、その背景、そしてこれがどのように従来のビジネスモデルと異なるのかを掘り下げ、読者がティール組織の世界に一歩踏み込むための道筋を提示します。

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ティール組織をわかりやすく説明

「ティール組織」とは、社長や上司が部下に指示を出して動かしていた従来の組織と異なり、メンバーひとりひとりに意思決定権がある組織のことです。マネージャーの存在は必要なく、自分たちのルールや仕組みを理解したメンバーたちが、独自に意思決定して目的のために動いていきます。

ティール組織という概念が注目される背景には、フレデリック・ラルーの著書『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』があります。帯に書かれた「上下関係も、売り上げ目標も、予算もない!?」というコピーのとおり、ティール組織では経営者やリーダーが目標を決めることはありません。

5つの組織モデル図
引用:東洋経済オンライン『今さら聞けない「ティール組織」基本中の基本』より

ティール組織が注目される背景

日本の組織には、上から課されたノルマや目標は絶対、という風潮が残っていますが、ティール組織は真逆の組織です。注目される背景には、ビジネスパーソンたちが薄々感じていた、従来の管理手法への限界があります。

従来の管理の弊害としては、例えば以下のようなことが挙げられます。

・上から管理され、圧力を与えられてストレスが溜まる
・力を入れるべきビジネスよりも、社内ルールの複雑さに疲弊する
・受け身で仕事をする社員ばかりで、次のリーダーが育たない

このように、従来型の管理手法には副作用があります。仕事に人生を捧げるのではなく、人生を大事にしながら成果を上げるためにも、組織のあり方には変革が求められています。そのなかで特に注目が集まっているのが、ティール組織なのです。

ティール組織のメリット

ティール組織に移行できると、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく解説していきます。

メンバーの主体性が高まる

ティール組織では、メンバーひとりひとりが意思決定をしてビジネスを回します。自分で決定する場面が増えるので、責任感を持って仕事に取り組むことができ、メンバーの主体性が高まります。

従来の組織だと、上からの指示に従って仕事をするため、主体性も責任感もないメンバーがいました。しかし、今の時代に本当に必要なのは、指示を待つのではなく、自ら行動できる人材です。

メンバーが主体的に行動できるようになれば、ビジネスのスピード感も高まります。ティール組織がうまく機能すれば、スピーディーに変化に対応し、柔軟にビジネスを展開することができます。

風通しの良い職場環境になる

ティール組織には上下関係がないので、職場の風通しが良くなります。権力の乱用やハラスメントも起こらず、社員が働きやすい職場を作ることができます。

ただし、年齢や入社年次に関係なく、メンバー全員が平等という価値観に、馴染めない人もいるはずです。「今までは部下を大勢抱えて指示を出していたのに、ティール組織になってから、みんなが自分のことを下に見ている」と被害感情を抱いてしまう人もいるので、ティール組織とは何かをメンバーにしっかりと説明し、納得してもらうことが重要です。

ティール組織のデメリット

メリットに注目が集まるティール組織ですが、デメリットもあります。ティール組織は完璧な完成形ではないので、メンバーたちがより良い形を模索しながら、組織を作っていく必要があります。

モデルケースを見つけにくい

ティール組織には、そもそも構築が難しいというデメリットがあります。ヒエラルキー構造を持つ従来の組織の形を捨てるだけでなく、自分たちの組織に合ったやり方のティール組織の形を見つけなければならないからです。

ティール組織には、「メンバーひとりひとりが意思決定を行う」「トップダウンではない」といった特徴はありますが、実際にどのような形式が合っているかは、組織によって異なります。組織に所属するメンバーたちが柔軟に行動し、組織を作るところから始めなければならず、簡単ではありません。

メンバーの能力に依存する

ティール組織は、メンバーひとりひとりがセルフマネジメントを行い、組織がひとつの生き物であるかのように行動します。セルフマネジメント能力に長けた人材が集まれば、ティール組織として成功できる可能性は高まります。しかし、セルフマネジメント能力が低い人材が多い組織には、向かない組織形態と言えます。

従来の組織では、トップダウンで指示が下りてくるので、セルフマネジメント能力が低い人でも指示通りに行動することで、なんとか成果を出していました。ティール組織に移行したら、そのような人は不要な人材になってしまいます。

経営者などマネジメント層や一部の社員が、ティール組織に移行したいと考えるだけでは不十分です。社員研修を行い、社員のセルフマネジメント能力を伸ばすことも、ティール組織への移行において大変重要です。

働く側としてはティール組織の方が良いのか?


上下関係に悩まされることがなく、風通しの良い職場で働けるとなれば、ティール組織の方が良い、と感じる人が多いでしょう。

しかし、「主体的になる必要がある」「セルフマネジメントを身につけなければならない」など、メンバーにも高いスキルが要求されます。やる気に溢れているスタートアップならまだしも、大勢の社員を抱える大企業で全社員にスキルアップを期待することは難しいのが現実です。

また、ティール組織には明確なモデルケースがありません。形にこだわるのではなく、「上下関係をもう少し緩やかに変えていこう」「もう少し主体性を持って取り組もう」など、ティール組織の良い所を取り入れていく所から始めてみると良いです。

ティール組織の実現に重要な3つのポイント

ティール組織の概念が日本に紹介されたのは2018年のことですが、まだまだティール組織と呼べる企業は少ないです。それだけ、移行するのが難しい組織形態であると言えます。

そこで、ティール組織に近づくために重要なポイントをまとめました。形式にとらわれず、以下のポイントを重視して組織づくりを見直しましょう。

コミュニケーションの機会を作る

ティール組織では上下関係がなく、横のつながりが重要です。従来のように、会社が定めた上下関係がないため、仕事を円滑に進めるためにはメンバーどうしが日頃からコミュニケーションを取り、良い関係を築く必要があるのです。

そのため、コミュニケーションの機会を作り、横のつながりを強めましょう。手段は特に決まっておらず、ティール組織的な企業ではオンラインのミーティングを導入したり、雑談しやすい環境を作ったりしています。

評価の仕組みを作る

管理する上司がいないティール組織ですが、メンバーの仕事を評価する仕組みもなくなってしまっては、本末転倒です。働きが給与やボーナスに反映される組織こそ、社員が働きやすい職場と言えるからです。

そのため、従来の枠組みに縛られない評価の仕組みを導入しましょう。一緒に仕事をするメンバーに評価してもらい、給与に反映するなど、働きがきちんと評価される仕組みが必要です。

メンバーを信頼する

ティール組織で重要なのが、メンバーどうしがお互いを信頼することです。特に、ベテラン社員は新入社員や若手社員の仕事に対し、不安を感じるかもしれません。しかし、上下関係で指導するのではなく、個人としては信頼し、必要なときに手助けするように意識を変えましょう。

ティール組織では、メンバーひとりひとりが意思決定を行う主体となります。この組織形態を実現するためには、メンバーへの信頼が必要不可欠です。

ティール組織の成功事例

日本の企業で、ティール組織として成功している事例は数少ないです。日本企業には従来型のトップダウンの組織形態が染みついており、そこから抜け出すのは非常に難しいからです。

そんな中、独自の方法でティール組織らしい運用を実現している日本企業があります。この章では、ティール組織の成功事例を見ていきましょう。

オズビジョン

オズビジョン公式サイト
フレデリック・ラルーの著書『ティール組織』で紹介された唯一の日本企業が、株式会社オズビジョンです。オズビジョンは、ポイントサイト「ハピタス」などのWebサイトやサービスを展開する企業です。

本書では、オズビジョンが導入していた「Thanks day」と「Good or New」という制度が取り上げられました。「Thanks day」は、誰かに感謝するための休暇と現金2万円を支給するという制度です。休暇のあと、社内ブログで誰にどのような感謝をしたのかを共有するというものでした。

「Good or New」は、毎朝ランダムに5~6人のグループを作り、会話をする制度です。普段の仕事では顔を合わせない人が集まり、コミュニケーションを深めるために行われていました。

いずれも現在は実施されていないとのことですが、これらはオズビジョンがやってきた無数の取り組みのうちの、たった2つでしかありません。さまざまな取り組みを通し、オズビジョンは自己実現の舞台として会社を機能させようとしているそうです。

参考:オズビジョン公式サイト『ティール組織に書かれていないこと。』

ヤッホーブルーイング

ヤッホー流コミュニケーションマップ図
ヤッホーブルーイングは、長野県の軽井沢に本社を置くビール製造メーカーです。顧客に喜んでもらうためには、みんなで切磋琢磨しよう、という考え方でティール組織を実現しています。

ヤッホーが重視するのは、意見の質と納得感です。リーダーひとりの能力は限られているので、複数のメンバーが集まって意見を出すことで、アウトプットの質を高めています。こうしてレベルの高いプランを練ります。

また、プランを実行する人たちの納得感も重要です。「忙しいから後回しにしたい」「正直やりたくない」と思っている人がプランを実行しても、やっつけ仕事になってしまいます。実行の質を高めるためにも、みんなで意見を出して納得感を得ることが重要なのです。

参考:ヤッホーブルーイング公式サイト『ワークスタイル』

ダイヤモンドメディア株式会社

ダイヤモンドメディアブログ
ダイヤモンドメディア株式会社は、不動産ITサービスを展開する企業です。管理しないマネジメントにより、会社を運営しています。

ダイヤモンドメディアでは、各事業部やメンバーに目標や予算を割り当てることはしません。数値的な目標にこだわると、予測のつかない新しいことに手を出しにくくなるからです。

そこで予算や目標は固定化せず、将来の売上・利益の予測にとどめています。また、社長・役員は1年ごとに選挙をして決めています。
2007年の創業以来、持続的かつ健全に発展・成長する組織のあり方を追求し続けている企業です。

参考:ダイヤモンドメディア株式会社公式サイト『情報を徹底的に社内開示して、社長も選挙で決めている会社の話

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