「管理職になりたくない」と考える社員が増えています。パーソル総合研究所の2025年調査では、管理職を目指したい社員はわずか16.7%にとどまり、3年前から7.3ポイント低下しました。背景には、責任とプレッシャーの増加、ワークライフバランスへの志向、専門性追求の価値観があります。
この記事では、最新調査データをもとに「管理職になりたくない」現象の実態と理由を整理し、企業が取るべき対応策まで解説します。
この記事でわかること
- 「管理職になりたくない」人の割合と最新データ
- 主な理由(属性別:全般・女性・若手)
- 放置した場合に企業に起きるリスク
- 企業が取るべき5つの対応策
「管理職になりたくない」人は何割?最新データで見る現状
「管理職を目指したい」と考える社員の割合は、近年明確に低下傾向にあります。複数の調査で同様の結果が示されており、一時的な傾向ではなく構造的な変化といえます。
| 調査機関・年 | 主な結果 |
|---|---|
| パーソル総合研究所(2025年) | 管理職を目指したい社員は16.7%。3年前の24.0%から7.3ポイント低下 |
| JMAM(日本能率協会マネジメントセンター) | 77.3%が「管理職になりたくない」と回答 |
| マンパワーグループ | 一般社員の約80%が「管理職になりたくない」と回答 |
| 産業能率大学(2024年8月) | 大卒1〜3年目の44.2%が「一般職志向」で最多 |
注目すべきは、産業能率大学の調査が示すように、若手の傾向は「管理職離れ」というより「上位職級全般への忌避」に近い構造を持っている点です。単に管理職の魅力を伝えるだけでは解決しない問題であることがわかります。
管理職そのものの定義や役割については、「管理職の役割とは - 定義、仕事内容、あるべき姿を解説」もあわせてご覧ください。
管理職になりたくない主な理由
管理職を避けたい理由は人によって異なりますが、共通する5つの背景があります。
責任の重さに見合わない報酬
管理職になりたくない代表的な理由は、収入と責任のバランスへの不満です。多くの企業では、管理職になると残業代が支給されない一方、固定給の上昇は限定的で、結果として時給換算では非管理職より下がるケースもあります。
「責任は重くなるのに手取りはほとんど変わらない」と感じる社員にとって、管理職への昇進は合理的な選択ではなくなっています。
仕事と私生活のバランスが崩れる
管理職になると業務時間外の対応や緊急連絡が増え、プライベートな時間を確保しにくくなります。家族との時間や趣味、自己研鑽の時間を大切にしたいと考える社員にとって、ワークライフバランスの悪化は大きな懸念材料です。
上司と部下の板挟みになる
管理職は、上層部からの目標達成圧力と、部下からの職場環境改善や業務サポートの要求の両方を受け止める立場です。異なる立場の要求を調整し続けるストレスが、管理職の精神的負担を大きくしています。
現場・専門業務を続けたい
管理職になると、業務の中心が個人の専門技術からチームマネジメントへ移ります。エンジニア・デザイナー・営業など、専門スキルを磨いてきた社員にとっては「自分の強みを活かせなくなる」と感じやすく、管理職を避ける動機になります。
自分の適性に自信が持てない
「自分にリーダーシップは向いていない」「人をまとめるのが苦手」という自己認識から、管理職を避ける社員も少なくありません。実際の能力より自己評価が低いケースも多く、適切な経験とサポートがあれば変わる可能性がありますが、現状ではそのきっかけがないまま昇進を辞退する人が増えています。
女性が管理職になりたくない理由
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によると、日本の女性管理職比率(課長相当以上)は12.7%にとどまっています。政府は2030年までにプライム上場企業の女性役員比率30%以上を目標としていますが、実態とのギャップは依然として大きい状況です。女性が管理職を目指しにくい背景には、以下のような事情があります。
仕事と家庭の両立が難しい
子育てや介護など家庭での役割を担う女性にとって、管理職に伴う長時間労働や突発的な業務は大きな障壁です。家庭と仕事の責任が同時に重くなることへの不安が、昇進への意欲を減退させます。
社内にロールモデルがいない
女性管理職が少ない職場では、ロールモデルとなる先輩がいないため、自分が管理職として働く具体的なイメージを描きにくくなります。「キャリアの行き先が見えない」状況は、昇進への意欲を弱めます。
リーダーシップ能力に自信が持てない
リーダーシップが「男性的特性」と見なされる文化的背景のなかで、女性は自分のリーダーシップ能力を実際よりも低く見積もる傾向があります。この自己評価の偏りが、女性の管理職進出を妨げる要因の一つとなっています。
若手・Z世代が管理職を避ける理由
若手社員、特にZ世代の管理職離れには、価値観の世代的な変化が反映されています。前述の産業能率大学調査では、大卒1〜3年目の44.2%が一般職志向と回答しており、若年層ほど昇進への関心が低い傾向が明確になっています。
プライベートの時間を優先したい
若手社員は仕事と生活のバランスを重視する傾向が強く、業務量や責任が増える管理職は「自由な時間を奪う存在」と捉えられがちです。仕事以外の活動や人間関係も含めた人生全体の充実を求める価値観が広がっています。
副業や個人スキルで稼ぎたい
副業解禁の流れと、スキルベースで個人が稼げる環境の整備によって、若手社員は「会社での昇進」以外の収入経路を持てるようになりました。時間と場所の自由度が高い副業に比べ、管理職の責任と拘束は魅力に映りにくくなっています。
専門性を高めたい
「ジェネラリストよりスペシャリスト」を志向する若手にとって、管理職への道は専門性から離れる選択肢に見えます。自分のスキルを深めて市場価値を高めたいと考える層には、マネジメントへの転換は遠回りに感じられます。
管理職になりたくない人が増えると企業に何が起きるか
「管理職離れ」を放置すると、組織にはさまざまな悪影響が生じます。これは個人のキャリア観の問題ではなく、企業の存続にかかわる経営課題です。
後継者不足とノウハウ継承の停滞
次世代の管理職候補が育たないと、組織のリーダー層に空白が生まれます。現役管理職が退職・異動する際に引き継ぎが十分に行えず、長年蓄積してきた業務ノウハウや顧客との関係資産が失われるリスクがあります。
既存管理職への業務集中と連鎖退職
管理職を引き受ける人材が少ないと、現役管理職に業務とプレッシャーが集中します。負荷に耐えきれなくなった管理職が辞めると、残された管理職にさらに負担がかかり、連鎖退職を引き起こす悪循環が生まれます。
組織の変革力低下
意思決定や変革を主導するのは中間管理職の重要な役割です。管理職層が薄くなれば、現場の課題を経営層に伝える機能や、新しい戦略を実行に移す力が弱まり、組織全体の競争力が低下します。
企業が取るべき対応策
「管理職になりたくない」現象は、社員の意識を変えるだけでは解決しません。企業側が制度や仕組みを見直すことが不可欠です。
複線型キャリアパスを導入する
管理職一本のキャリアパスではなく、専門職として高い処遇を得られるルート(デュアルキャリアラダー)を併設する企業が増えています。マネジメントを志向しない優秀な人材に、管理職と同等の評価・報酬を提供できる仕組みは、人材流出を防ぐ有効な手段です。
プレイングマネージャー問題を解消する
多くの日本企業で、管理職は自身の業務もこなしながらマネジメントを行う「プレイングマネージャー」になっています。業務量過多で疲弊する管理職の姿は、若手にとって「管理職=罰ゲーム」という印象を強める要因です。マネジメントに専念できる業務設計に変えることが、管理職の魅力回復につながります。
評価・報酬制度を見直す
残業代がなくなることで実質賃金が下がる構造では、管理職への昇進は経済的にマイナスです。役職手当や成果連動報酬を見直し、責任に見合った報酬を提示することが必要です。
早期からのマネジメント教育を行う
管理職への不安や自信のなさは、十分な準備期間がないことが原因の一つです。若手のうちから段階的にリーダーシップやチーム運営を経験する機会を設けると、昇進時の心理的ハードルが下がります。
マネジメント教育を体系的に行いたい場合は、「マネジメント研修おすすめ20選」で研修会社を比較検討できます。
管理職のサポート体制を強化する
管理職が孤立せず相談できる環境を整えることも重要です。コーチング、メンター制度、管理職同士のピアサポートなどを活用し、管理職が一人で問題を抱え込まないようにしましょう。
管理職になるメリットを再認識する
ここまで管理職を避ける理由を中心に解説してきましたが、管理職には固有のメリットも存在します。
マネジメントスキルが身につく
チームを率いる経験は、人材育成や意思決定、調整能力など、他の役職では得にくい総合的なスキルを養います。これらは将来のキャリアパスにおいて大きな資産となります。
将来のキャリア選択肢が広がる
管理職経験は履歴書において強力なアピールポイントとなり、転職や独立の際に有利に働きます。リーダーシップやコミュニケーションスキルは、業界・職種を問わず重宝されます。
やりがいと成長機会
チームや組織全体の成果に影響を与えられることは、個人プレーでは味わえない達成感につながります。自分の働きかけによってメンバーが成長する経験は、大きなやりがいになります。
収入が増える可能性
制度設計が適切な企業では、管理職は責任に見合った給与・賞与を得られます。役職手当やストックオプションなど、非管理職にはないインセンティブも用意されているケースがあります。
そもそも管理職とはどの役職を指すのか整理したい方は、「管理職とはどこから?含まれる役職と管理監督者との違い、役割を解説」もご参照ください。
管理職への不安を解消する研修の活用
管理職候補向けの研修は、管理職の役割を正しく理解し、必要なスキルを体系的に学ぶ場として有効です。リーダーシップの基本、チーム管理、意思決定、コミュニケーションなど、管理職に求められる能力を実践形式で身につけられます。
具体的な事例を通じて管理職の実態を知ることで、漠然とした不安や誤解が解消され、キャリアアップへの意欲を取り戻すきっかけになります。管理職への移行を組織的にサポートする仕組みを整えることが、人材育成と組織力強化の両面で重要です。
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