職業の多様化、働き方の意識の変化などにより、仕事を辞めることに躊躇しない人が増えてきました。この傾向は若者世代が特に高くなっています。
少しでも離職率を下げ、長く働いてくれる優秀な人材を育てたいと思うのが企業の本音です。
この記事では、人材育成について様々なジレンマを抱える人事担当の方へ、「この会社で働き続けたい」と思わせるような指導のポイントを解説しました。
目次
人事が抱える悩み
人事担当者が感じている課題や悩みは、人事雇用と人材教育が圧倒的です。自社にあったスキルや能力、業務をおこなうための十分な人数の確保は、どの企業でも大きな課題となっています。
少子高齢化の影響もあり、働き手は減っています。必要な人材を見つけるよりも自社で育成をした方が確実という考えもあり、社員教育にさらに力を入れている企業も増えています。
しかし、時間的にも人員的にも余裕がある企業は多くなく、教育をしたくても時間がない、指導できる人がいない、どのような教育をしたら良いかわからないという悩みも出てきます。
社員側にも、全員が同じモチベーションとは言えず、指導をしてもやる気が感じられない、学ぶ姿勢がない、入社してもすぐに辞めてしまうなどの現状があります。
⇒人事・HRにおけるトランジションとは?こちらをチェック!
社員が持っている会社への不満
教育に関しては企業だけが課題や悩みを感じているのではなく、働く社員も会社に満足していないという現実があります。特に満足度が低いものとしては、教育や研修に関すること、給与や待遇、残業時間に関してが挙げられます。
この中の教育や研修の不満は、教育内容や研修の内容が古くて現状に合っていない、あまりにも当たり前の内容過ぎて学んでいる満足感が得られないなどがあります。
しかし、多くの社員が感じているのは、内容ではなく教育や研修に関するフォローがないことへの不満です。
机上で学ぶだけ、一度の体験で覚えられるとは限りませんし、マニュアル通りにできる仕事ばかりではありません。状況やレベルに合った継続的な指導を希望している社員が非常に多いのです。
これらの不満が解決されないままになっていると社員のモチベーションが下がり、退職を考えるようになります。
参考:DISCO『若手社員満足度調査』
若年者の離職状況
広い世代の社員を抱えている企業でも、特に若い世代の人材は貴重です。しかし、若年層の離職率は各世代の中でも高くなっています。
離職率
厚生労働省調査の平成30年の年代別離職率をまとめました。
19歳以下 | 20~24歳 | 25~29歳 | 30~34歳 | 35~39歳 | 40~44歳 | 45~49歳 | 50~54歳 | 55~59歳 | 60~64歳 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男 | 32.5% | 26.0% | 17.0% | 12.0% | 8.6% | 7.5% | 6.1% | 6.7% | 7.8% | 19.9% |
女 | 39.2% | 27.7% | 23.4% | 16.6% | 14.8% | 13.4% | 13.5% | 11.6% | 10.7% | 18.6% |
60歳以上では定年退職が考えられるため高めの数字になっていますが、それ以外の年代では男女ともに24歳までの離職率が平均して高いのが特徴的です。
男性よりも女性のほうが離職率が全体的に高めになっていますが、これは結婚や子育て、介護の理由が考えられます。
若い年代の離職率を下げることが、人材確保にもつながることがわかります。
離職理由
転職をした人の前職の退職理由は、定年退職や契約期間の満了以外では、収入、労働条件、人間関係がトップ3になっています。
男女では順位が少し違いますが、はやりこの3つは働く人にとって仕事をする上で大切な要素です。
労働条件では休日数や有給休暇の取りやすさ、福利厚生などが焦点となっており、若い世代では仕事も大切ですがプライベートを充実させたいという思いが強いと言えます。
「がんばりたい」と思わせる教育のポイント
離職率を下げ長く働いてもらうには、働きやすい環境や人間関係が大切です。少し辛いことがあってもがんばれると感じてもらうには、次のようなことをポイントに指導を進めると良いです。
社員のタイプにあった指導をする
仕事の覚え方は大きく分けて4つあります。
- マニュアルを読んで覚えるタイプ
- 人の話を聞いて覚えるタイプ
- 動画など映像で覚えるタイプ
- 実際に経験をして覚えるタイプ
実際に体験をしなければ覚えられないタイプにマニュアルを渡しても覚えられません。マニュアルを見て覚えるのが得意な人に動画を観てもらっても覚えにくくなります。
指導者のやり方が社員にあわなければ、いつまで経っても仕事が覚えらえず、自信とやる気を失ってしまうのです。
社員の特徴を理解して、指導方法を少し変えるだけで自信とやる気を維持することができます。
わかりやすい目標設定と評価
社員自身が成長していると実感できるように、目標も評価方法もわかりやすいものにします。
成長を可視化することで、本人にも他の人にも目標の達成度がわかりやすくなります。できていない部分に焦点を当てるだけではなく、できている部分も明確にすると効果的です。
できないことがあったり、注意されることがあっても、上司や指導者から褒められることは、一番のモチベーションになります。
質問係を作る
聞く人によって言うことが違うと、会社への不信感になりますし、どうしてよいかわからず混乱してしまいます。
指導者の他にもう一人「質問係」の立場を明確にしておくことで、聞きやすく安心感につながります。
質問に対してはっきりとした回答がないと、聞くことや相談することを諦めてしまう結果になります。
現状に沿った教育内容とフォローアップ
社員の成長度にあった指導はもちろんですが、研修等でも現状に沿った内容、現場が求めている内容にすることが大切です。
理想ばかりの内容で、現実的ではないと感じるとやる気が落ちますし、研修の意味を見出せなくなります。
そして定期的に振り返りの機会を作り、教育や研修の効果が出ているかを確認します。
指導はフェードアウトを心がける
早く仕事を覚えて欲しい、人が足りない、期待しているなどの理由で指導が熱くなり詰め込みの教育になることがあります。
一通り教えたからと、指導を一気にやめるのは危険です。成長を見ながら少しずつ指導を減らしていくようにすると、社員も安心して仕事に臨めます。
参照記事:人材育成については以下の記事もご参照下さい
人材育成とは - 育成手法や進め方・成功のポイントを解説
離職率を下げるには良い環境作りから
辞めてほしくないから思うように指導ができないというのでは、企業にも社員にも良い影響はありません。
信頼関係を築き、職場環境が整っていると少し厳しくされたとしても大丈夫です。
期待されている、指導結果が行動として見えることが、指導者も指導される社員もモチベーションが上がり、成長が加速します。
まずは教育方法とフォロー体制の見直しから始めて、社員の定着を図りましょう。