職場でのハラスメント防止策とポイント

職場のハラスメント対策について、基本方針の策定から具体的な防止策、発生時の対応まで、企業の人事担当者様や管理職の方々に向けて体系的にご説明いたします。

2020年6月からパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となり、多くの企業様でハラスメント対策の見直しが急務となっています。

本記事では、パワハラやセクハラ、マタハラなど各種ハラスメントの定義や具体例を踏まえながら、相談窓口の設置方法や社員研修の進め方、管理職向けの実践的な防止策をご紹介いたします。厚生労働省のガイドラインに準拠しつつ、企業規模や業態に応じた実効性の高い対策を実現するためのポイントをわかりやすく解説しております。

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職場のハラスメント対策が必要な背景と現状

ハラスメントの定義と種類

職場におけるハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する言動により、労働者の就業環境が害されることを指します。近年、企業における重要な人事課題として認識されています。

ハラスメントの種類 概要
パワーハラスメント 職務上の地位や権限を利用した嫌がらせ
セクシャルハラスメント 性的な言動による嫌がらせ
マタニティハラスメント 妊娠・出産・育児休業等に関連する嫌がらせ
モラルハラスメント 精神的な攻撃による人格や尊厳を傷つける言動

職場ハラスメントの発生状況と影響

厚生労働省の令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は60,125件と、依然として高い水準を維持しています。

ハラスメントは職場の生産性低下や人材流出、企業イメージの低下など、組織に深刻な影響を及ぼします。具体的な影響として以下が挙げられます。

影響分野 具体的な影響
人事面 メンタルヘルス不調、離職率上昇、採用難
組織面 職場の士気低下、コミュニケーション不全
経営面 生産性低下、損害賠償リスク、企業価値の毀損

労働施策総合推進法におけるハラスメント対策の義務化

2020年6月から、パワーハラスメント防止対策が事業主の義務となり、企業は具体的な防止措置を講じることが求められています。中小企業においても2022年4月から義務化されました。

具体的な義務内容には以下が含まれます。

義務項目 具体的な内容
事業主方針の明確化 ハラスメント防止の社内方針策定と周知
相談体制の整備 相談窓口設置と適切な対応体制の構築
研修・育成 管理職・従業員向けの教育研修実施
事後対応の整備 迅速・適切な調査と再発防止策の実施

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効果的なハラスメント対策の進め方

企業におけるハラスメント対策は、計画的かつ体系的に進めることが重要です。本章では、具体的な対策の実施手順とポイントを解説します。

ハラスメント対策の基本方針策定

組織全体でハラスメント防止に取り組むため、まず経営陣による基本方針の策定が必要です。方針には以下の要素を必ず含める必要があります

項目 内容
基本姿勢 ハラスメント行為を絶対に許さない姿勢の明確化
経営責任 経営陣による責任の所在の明確化
推進体制 人事部門を中心とした実施体制の構築

実態調査と現状把握

効果的な対策を講じるためには、自社の現状を正確に把握することが重要です。厚生労働省の調査によると、実態調査では以下の項目を確認します。

  • 従業員の意識調査
  • 過去のハラスメント事例分析
  • リスク要因の特定
  • 組織風土診断

社内規程やガイドラインの整備

組織内での統一的な対応を実現するため、具体的な規程やガイドラインの整備が必須です。以下の要素を含めた包括的な規程を作成します。

規定項目 規定内容
禁止行為の定義 具体的な行為類型の明示
懲戒処分 違反時の処分内容
相談体制 相談窓口と対応手順

相談窓口の設置と運用方法

社員が安心して相談できる環境を整備することは、早期発見・対応の要となります。以下の点に留意して窓口を設置します。

  • 社内外での複数窓口の設置
  • 相談員の育成と研修
  • プライバシー保護の徹底
  • 対応手順の標準化

社員教育・研修の実施

効果的な人材育成のためには、階層別の研修プログラムの実施が重要です
具体的には次のような研修が挙げられます。

  • 管理職向けハラスメント対策研修
  • 一般社員向けハラスメント対策研修
  • 相談窓口担当者向け専門研修
  • 新入社員向け研修
  • コンプライアンス研修

定期モニタリング・評価

対策の実効性を確保するため、以下の項目について定期的な確認を行います。

評価項目 確認内容
相談件数の推移 月次での件数変化
研修実施状況 参加率と理解度
組織風土の変化 意識調査結果

情報公開と企業風土づくり

組織全体での取り組みを推進するため、対策状況の可視化と情報共有が重要です。具体的な施策として。

  • 社内報での定期的な情報発信
  • 好事例の共有と表彰制度
  • 経営層からのメッセージ発信
  • 相談・対応事例の匿名化した形での共有

管理職向けハラスメント対策

管理職は組織におけるハラスメント防止の要となります。管理職自身がハラスメントの加害者とならないよう注意するとともに、部下間でのハラスメントを未然に防ぐ役割も担っています

パワーハラスメントの防止

管理職に求められる最も重要な対策の一つがパワーハラスメントの防止です。厚生労働省の統計によれば、職場のハラスメントの約7割がパワーハラスメントに関する相談となっています

業務上の指導との線引き

適切な指導とパワーハラスメントの境界線を明確にすることが重要です。以下の点に特に注意が必要です。

区分 適切な指導 パワハラに該当
叱責の方法 個室での冷静な指導 他者の前での大声での叱責
業務指示 能力に応じた適切な課題設定 過度な仕事量の強要
教育方針 段階的なスキル育成 放任や過度な干渉

適切なコミュニケーション方法

厚生労働省のガイドラインに基づき、次のようなコミュニケーション方法を実践することが推奨されます。

・定期的な1on1ミーティングの実施
・具体的で建設的なフィードバック
・部下の意見や提案を積極的に聞く姿勢
・感情的にならない冷静な対応

セクシャルハラスメントの防止

管理職は以下の点に特に注意を払う必要があります。

・服装や容姿に関する不適切な発言の禁止
・性別による役割分担の固定化を避ける
・飲み会での強要や過度な気遣いの要求を控える
・プライベートに関する不必要な質問を避ける

マタニティハラスメントの防止

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、企業の人材育成・定着において重大な問題となっています。

状況 望ましい対応
妊娠報告時 祝福と支援の表明
体調配慮 必要な休憩・通院への配慮
業務調整 適切な業務分担の見直し
復職支援 段階的な業務復帰計画の作成

組織のリーダーとして、管理職は研修やスキルアップの機会を通じて、常に最新のハラスメント対策に関する知識をアップデートする必要があります

従業員向けハラスメント対策

ハラスメント防止のための意識改革

従業員一人ひとりのハラスメントに対する認識を高めることは、職場での防止対策の基本となります。2020年の労働施策総合推進法改正により、企業にはハラスメント防止のための具体的な対策実施が義務付けられており、組織全体での取り組みが不可欠です。

意識改革のポイント 具体的な施策
知識の習得 定期的な研修参加、eラーニングの受講
コミュニケーションスキル向上 ワークショップ参加、ロールプレイング実施
相互理解の促進 部署間交流会、チームビルディング活動

具体的な事例を用いた教育プログラム

人材育成の観点から、実際の職場で起こりうる具体的な事例を用いた実践的な教育プログラムの実施が効果的です。以下のような体系的なアプローチを推奨します。

研修項目 内容 期待される効果
基礎研修 ハラスメントの定義、種類、法的責任 基本的な知識の習得と意識向上
事例研究 実例に基づくグループディスカッション 問題の具体的理解と対処スキルの向上
ロールプレイング 模擬的な状況での対応練習 実践的なコミュニケーション能力の育成

従業員個々の組織における役割や立場によって、必要とされる研修内容は異なります。厚生労働省の職場におけるハラスメント対策「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」を参考に、以下のようなスキル開発プログラムを実施することが推奨されます。

  • アサーティブコミュニケーションスキルの習得
  • 多様性理解のためのワークショップ
  • ストレスマネジメント研修
  • 職場の人間関係構築セミナー

特に新入社員や若手従業員に対しては、早期からの教育が重要です。入社時研修プログラムの一環として、以下の要素を含めた包括的な教育を実施します。

  • ハラスメントの具体的事例と判断基準
  • 被害を受けた際の相談窓口の利用方法
  • 職場でのコミュニケーションの基本ルール
  • ハラスメントを生まない職場環境づくりへの参画方法

また、厚生労働省のハラスメント対策総合情報サイト「あかるい職場応援団」を活用し、最新の情報や事例を定期的に学習することも推奨されます。

ハラスメント発生時の対応と解決手順

ハラスメント事案が発生した際の迅速かつ適切な対応は、組織の信頼性維持と従業員の人権保護において極めて重要です。以下では、具体的な対応手順と解決までのプロセスを詳しく解説します。

相談対応の基本的な流れ

相談窓口での対応は、被害者の心理的安全性を最優先に考える必要があります。

対応段階 具体的な実施事項
初期対応 ・被害者の心身の状態確認
・相談内容の丁寧な聴取
・プライバシーの保護確約
情報収集 ・具体的な事実関係の確認
・関連資料の収集
・時系列での整理
支援方針決定 ・必要な保護措置の検討
・調査方法の決定
・関係部署との連携体制構築

事実確認と調査の進め方

事実関係の調査は、人事部門が中心となり、必要に応じて外部専門家と連携しながら実施することが推奨されます

調査実施のポイント

調査にあたっては、以下の点に留意が必要です。

  • 被害者・加害者双方からの聞き取り
  • 第三者からの客観的情報収集
  • 物的証拠(メール、チャットログ等)の確保
  • 記録の適切な保管と管理

加害者への処分と再発防止策

厚生労働省のガイドラインに基づき、適切な処分を検討します。

処分レベル 対応内容
軽度 ・注意指導
・研修受講義務付け
・配置転換検討
中度 ・始末書提出
・減給処分
・出勤停止
重度 ・懲戒解雇
・諭旨退職
・刑事告訴検討

組織としての再発防止に向けて、以下の施策を実施することが重要です。

  • 全社員向けハラスメント防止研修の実施強化
  • 管理職向けリスクマネジメント育成プログラムの導入
  • 相談窓口の機能強化と周知徹底
  • 社内コミュニケーションスキル向上施策の実施
  • 定期的な職場環境調査の実施
  • 人事制度・評価制度の見直し

まとめ

職場のハラスメント対策は、企業の健全な発展と従業員の人権を守るために不可欠です。労働施策総合推進法の施行により、中小企業を含むすべての企業に具体的な対策が求められています。

厚生労働省の指針に沿った基本方針の策定、実態調査、相談窓口の設置、定期的な研修実施など、体系的なアプローチが重要となります。

特にパワハラやセクハラ、マタハラなどへの対策では、管理職への適切な指導方法の教育と、全従業員の意識改革が鍵となります。相談窓口の設置においては、外部の専門機関との連携も視野に入れ、相談者のプライバシーを確実に保護する体制づくりが求められます。

ハラスメントのない職場づくりには、経営層のリーダーシップと全社的な取り組みが欠かせません。継続的なモニタリングと改善活動を通じて、誰もが安心して働ける職場環境を実現しましょう。

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