オブザーバーが会議・研修にもたらす効果

会議や研修ではオブザーバー役を設定することがあります。
オブザーバーを設置することにより、さまざまなメリットがあるといわれますが、制度を未導入の場合はオブザーバーを設置することにどのようなメリットがあるのかイメージしづらいです。

そこでこの記事では、オブザーバーを設置することでどんな効果があるのか、効果を出すために気をつけることは何かを解説します。

オブザーバーとは

オブザーバーについて理解されていない方のために、まずはオブザーバーの意味や定義を解説します。そもそもの用語の定義を確認したうえで、ビジネスにおけるオブザーバーの意味・定義の理解を深めましょう。

オブザーバーの意味

オブザーバー(observer)は、「陪席する」「観察する」という意味の英語です。元来の意味では、例えば裁判の傍聴者や国際会議のゲストなどを指します。これらの意味は、ビジネス上でのオブザーバーと完全に一致するわけではありませんが、元の意味を把握しておくことでビジネス上のオブザーバーの意味をつかむのに役立ちます。

会議や研修においての意味

ビジネスでのオブザーバーは、傍観者や立会人などの第三者を意味します。会議や研修の場面でのオブザーバーは、積極的に発言をしたり、決定をしたりすることはありません。オブザーバーは、司会やファシリテーター役から意見を求められた場合のみ発言が許可されます。

ファシリテーターとは、意見を調整しながら会議の司会進行をとる役割を担います。司会に似ていますが、主観や個人的な意見を述べずに全体のバランスを取りながら会を進行する役割を持つという点で司会とは異なります。

参照記事:会議の効率化については以下の記事もご参照下さい。
会議効率化のコツ - 無駄な会議の原因や効率化に役立つツールを解説

アドバイザーとの違い

会議のオブザーバーは、しばしばアドバイザーと混同されます。しかし、オブザーバーとアドバイザーは明確に異なります。

オブザーバー:参加者とは異なる第三者の視点で、会議に参加します。必ずしも専門的な知識や特別な経験をもっていることを必要とはしません。どちらかといえば、第三者としての客観的なポジションが重要視されます。

アドバイザー:忠告者や助言者などを指します。顧問や専門家など、豊富な経験や専門的な知識をもった外部もしくは内部のメンバーが、参加者に指示やサポートをするために参加します。

上記のように、オブザーバーは傍観者・アドバイザーは主観的・専門的見地からの助言者という位置づけです。

オブザーバーの役割とは

研修の参加者
オブザーバーを設置して会議を進行したことのない方にとって、そもそものオブザーバーの役割を疑問視する方がいます。主観的な意見を述べない立場のスタッフを会議に入れることでどのような効果が期待できるのかイメージしづらいためでしょう。

そこで、この章ではオブザーバーが必要な理由を紹介します。必要な理由は大きく分けて3つあります。

客観性・公平性を保つ

オブザーバーが会議に参加することで、特定の参加者の意向やその場の感情で偏った方向に会議が進行しないように調整できます。オブザーバーは発言権をもたない第三者ではあるものの、客観的な視点が入ることで自然と緊張感が生まれるためです。偏った方向に会議が進行すると会議の本題から外れてしまうことも多いため、客観性・公平性を保つことは会議の質の向上にもつながります。

コンプライアンスを順守する

第三者の目が入ることは、コンプライアンス順守にも効果的です。

時として法律やモラルに反する活動が短期的には収益や広告につながることもあります。ただし、コンプライアンス違反は大きなリスクをはらんでおり、長期的な視点で考えると企業のブランドイメージを大きく損ないます。また、研修の場面では熱心に指導しようとするあまり、パワハラと取られかねないほど接し方が厳しくなるケースもあります。

会議や研修のメンバーが第三者の目線を意識することで、会議や研修に秩序と落ち着きがもたらされます。

会議や議題内容を客観的に確認できる

チームのメンバーでも専門家でもない第三者が会議・研修に加わることで、会議のメンバーはオブザーバーにも内容がわかるように発表や発言の内容を工夫しなくてはなりません。また、司会者・ファシリテーターは、議題ごとに状況を要約したり、かみ砕いたりして内容を伝える必要があります。

チーム内での暗黙の了解や共通認識に依存せず会議・研修を進行することで、一般消費者や取引先に近い第三者の視点で議題を確認できます。

オブザーバーのメリットとは

会議や研修においてオブザーバーが機能すると、会議・研修のメンバー側にもオブザーバー側にもメリットがあります。メリットを意識したうえでオブザーバーを設置することで、オブザーバーを置く意味もより鮮明になります。この章では、両者の視点からオブザーバー設置のメリットを解説します。

会議・研修のメンバー側のメリット

会議・研修の参加者側のメリットは、ビジネスの質を高められることです。チーム外のメンバーを入れることにより、以下の効果が期待できるためです。

・会議に緊張感が生まれ、発言内容や参加の態度について緊張感が生まれる
・第三者から見られていることで、主体的に会議や研修に取り組めるようになる
・時間への意識が高まり、ムダな会議の削減につながる

会議や研修は、時としてルーティーン化し緊張感が失われたり、ゴールを見失ったりしてしまうことがあります。オブザーバーの参加による適度な緊張感が会議・研修の質を高めます。

オブザーバー側のメリット

社内の別チームのスタッフを会議や研修に招待する場合、オブザーバー側には、以下のメリットがあります。

・オブザーバー自身が商品知識やビジネススキルを高められる
・会社の全体像を把握したり、商品知識を深めたりするなど、自社についての知識を高められる
・会社と深く関わることで、エンゲージメントを高められる
・普段接点のない部署の社員が関わり合うことで、コミュニケーションの活性化やイノベーションにつながる

オブザーバー側のメリットは、オブザーバーの属性やポジションによって異なります。例えば、新入社員の場合はビジネスについての理解を深める目的、中途社員については自社の理解やエンゲージメントの向上、他部署責任者の場合は視点を多角化するなどです。どのような観点であっても一定のメリットを期待できます。

また、新入社員と責任者を同時にオブザーバーとして招待するなど、オブザーバーの学習効果を高めるための工夫をすることも可能です。

オブザーバーに心がけてもらうこと

企業研修の様子
会議や研修にオブザーバーを招き入れることには多くのメリットがある反面、オブザーバーの活用法を誤ると十分な成果が得られません。この章では、社内のスタッフにオブザーバーとして会議・研修に参加してもらうときに、必ず心がけておきたいポイントを解説します。

会議・研修の邪魔をしない

オブザーバーは、基本的には「傍観者」として会議の進行を見守る役割を担います。自ら積極的に個人的な意見を述べたり、会議の司会・進行役を務めたりすると、オブザーバーとしての役割は果たせません。

また、オブザーバーは会議の進行や決定内容を邪魔してはいけません。特に、オブザーバーが私語をしたり、会議とは関係のないことをしたりしていると、参加者の集中力をそいでしまいます。

会議に積極的に参加する

例え自発的な発言を求められていなくとも、オブザーバーは会議に積極的に参加しなくてはなりません。意識を集中して会議に参加して取り組むことで、急に意見を求められた場合でもスムーズにオブザーバー自身の意見を述べられます。また、オブザーバーが集中して会議に参加している態度・意識が会議のメンバーの集中力を高めます。

第三者としての客観的な視点から会議を深めること

オブザーバーは、積極的に発言したり、自身の意見を述べたりすることなく会議の質を高める役割を担います。したがって、会議や研修でのあらゆることに意識を集中しておかなくてはなりません。

会議での発言の内容や議題の進行状況はもちろんですが、沈黙の長さ・参加者の表情・頻繁に登場するキーワードなどを細かくキャッチするよう要求されます。そして、客観的な見地から会議のコンセンサスのために不足しているものや議論を深めた方がよい点などについてオブザーバー自身が自分の考えをもつことが重要です。

オブザーバーについてよくある質問

会議・研修にオブザーバーを置く前に、疑問点を解消しておきましょう。この章では、オブザーバーに関して人事担当者が抱く疑問点とその回答を紹介します。

発言はさせてはいけない?

オブザーバーは発言をしてはいけないわけではありません。望ましくないのは求められていない場面での発言や客観性を欠いた発言をすることであり、司会・進行上の必要な場面で客観的な意見を述べることは、むしろ重要なことです。

オブザーバーにどのタイミングで発言を求めるのかについては、司会者の判断に委ねられることになります。司会者がオブザーバーを置く会議に不慣れな場合は、あらかじめ会議の司会・進行スケジュールにオブザーバーの意見を求める時間を設けておくと良いです。

席はどこを用意するのがよい?

一般的にオブザーバー席は全体が見渡せる場所に設置します。

例えば、ロの字型レイアウトやコの字型レイアウトの場合は、列の後方に一列机を配置するレイアウトが一般的です。スクール形式での会議の場合には、列の最後方にほかの参加者と少しスペースをあけて座席を設置します。

オブザーバーを試験的に導入する方法とは?

試験的に会議にオブザーバーを導入して、メリットが実感できてから本格導入する方法もあります。特に試しやすいのは、以下の会議です。

・少人数会議
・短時間の会議
・オンライン会議

特に、オンライン会議は移動や準備の手間が軽減されるため、試験導入に最適です。また、PCの画面上で参加メンバーの表情や資料などが一度に見られるため、オブザーバーにとってもハードルの低い参加方法であるといえます。

オブザーバーの導入によって会議や研修の質を向上させる

会議や研修にオブザーバーを設置することにより、内容が本題から逸れたり特定の観点を強く反映した合意形成がなされたりすることに対してチェック機能を働かせることができます。また、オブザーバー自身にとっても会議に参加することで知識を深めたり、自社に対するエンゲージメントが高まったりするなどのメリットを得られます。

オブザーバーの活用を含め、教育効果を最大限に高められるプログラムを組むことは非常に重要です。以下のコラムでは、教育カリキュラム作成の流れをていねいに解説しているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。

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