働く人の多くが会社でのストレスを感じながら仕事をしています。
近年は、個人だけではなく企業でもストレス対策に取り組む方向で進んでおり、ストレスが社会全体に強い影響を与えると認識されつつあります。
では具体的にどのような対策が有効なのでしょうか?
具体策を考えるには、そもそもストレスとは何か?ストレスがかかるとどうなるのか?というところから知識を深めることが必要です。
今回はストレスに強い心と組織作りの方法を解説します。
目次
ストレスとは
ストレスとは、”物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態”(「こころの耳」より抜粋)のことをいいます。
参考サイト:心の耳『ストレスとは』
ストレスという言葉は、もともとは物理の分野で使われていたため、このような表現になっていますが、心に置き換えると『外部から受けた刺激がもとで、心が緊張状態になること』と言えます。
あらゆる刺激がストレスになるため、お祝い事や旅行、サプライズなどもストレス源になります。
さらに、ストレスというと悪いものというイメージになっていると思いますが、ストレスには良いものもあるのです。
- 良いストレス:適度な刺激で、やる気や向上心を掻き立て、自己の成長につながるもの
- 悪いストレス:過度または過小な刺激で、心身に悪影響を与えるもの
ストレスをすべて悪いと認識せずに、その刺激が良いストレスになるのか悪いストレスになるのかの見極めが大切です。
ストレスによる心身への影響
現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.0%[平成 29 年調査 58.3%]となっている。
参考:厚生労働省 『平成30年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況/仕事や職業生活に関する強いストレス』 より
悪いストレスに長時間さらされると、次のような影響が出てきます。行動的影響に関しては職場でもわかりやすいサインです。心当たりがあるスタッフが居るならば、すぐにでも対応と対策をするべきです。
身体的影響
胃・十二指腸潰瘍、高血圧、不整脈、肩凝り、腰痛、便秘・下痢、食欲不振、不眠など。
これらは本人にしかわからないことも多く、軽度の症状であれば見過ごしてしまう可能性もあります。
心理的影響
意欲の低下、不安、焦燥感、イライラ、緊張、気分の起伏が激しい、感情が乏しくなるなど。
仕事に行こうとすると涙が出る、仕事のことを考えると不安と緊張で落ち着かなくなるといった、仕事に関する行動の時にリンクして起こります。
行動的影響
遅刻・欠席、作業効率の低下、残業が増える、清潔感の欠如、アルコール量の増加、拒食・過食など。
女性であればメイクをしなくなる、男性であれば同じネクタイを何日もしてくるなどもわかりやすいサインです。
個人で取り組むストレス対策
会社のストレスだから会社に任せるのではなく、自分でできる対策をする必要があります。自分の心身を守れるのは自分だけです。
自分のストレスの傾向を知る
上記で挙げたように、ストレスによる影響はたくさんあります。すべての症状がすべての人に当てはまるわけではなく、症状の種類や程度はストレスの強さによっても変わります。
疲れた時、仕事が忙しくなった時、悲しいことがあった時などに、自分の感情がどのようになるのか、体調の変化がないかを知っておくことが大切です。
変化に気づくためには日ごろの心身の状態を理解しておく必要があります。小さな変化に気づいたら、無理をせずに休む時間を作るようにしましょう。
そして、自分のことはなかなかわからないものです。家族や恋人、友人など身近な人からの心配の言葉があった時は、素直に受け入れることが重要です。
ストレスを溜めにくい心づくり
ストレスを感じてから対策をするのではなく、日ごろの行動がストレスに負けない心を作ります。
自分にねぎらいの言葉をかける
誰にでも承認欲求はあり、上司や会社に認めてもらいたいと思うものです。しかし、自分で自分を認めることで周囲からの評価を必要以上に求めなくなります。
どんな些細なことでも良いので、自分を褒めるようにします。
- 遅刻せずに会社に行った
- 会った人全員に笑顔で挨拶ができた
- 今日やるべき仕事を全部できた
- 安全に1日を過ごせた
というような、当たり前なことで良いのです。毎日動いてくれている自分に感謝とねぎらいの言葉をかけましょう!
集中できることをおこなう
趣味を持つことはストレス対策にはとても有効です。
特に男性は仕事のみの生活になる傾向が強く、休日も仕事のことを考えてしまうという人も多くいます。
仕事を忘れる時間を作ることは、脳や筋肉をリラックスさせますので、疲れを溜めにくくなります。
趣味はひとつではなく、ひとりでできるもの、みんなでできるもの、外でできるもの、室内(家)でできるものの4つがあると、どのような状況でも楽しむことができます。
ひらめきが起こりやすい環境を知る
お風呂に入っている時、通勤時間、ベッドに入った時などに、突然忘れていたことを思い出したり、良いアイディアが浮かぶことはありませんか?
その状況や環境の共通点を見つけてみてください。ひらめきが起こりやすい状況は脳がリラックスしている時なのです。
ストレスを感じている時は、解決しにくい何かを抱えていることが多いため、ひらめきが起こりやすい状況を意識して作ることで、問題解決が早くなりストレスにさらされる時間を減らすことができます。
組織で取り組むストレス対策
会社でのストレスは、個人だけでは対処しにくいため、組織全体で取り組む必要があります。
社員のストレス状態を知る
50名以上の企業ではストレスチェックの集団分析結果を、49名以下の企業では定期的な面談やヒアリングなどで社員の心の状態を把握するようにします。
悩みの種となっていること、改善してほしいと思っている部分を明確にすることが、環境改善につながります。
ストレスチェック実施の義務化は労働者のストレスは個人の問題ではなく、企業で対応すべきことと位置付けています。
普段と様子が違うと感じたら指導だけではなく、面接等をおこない話を聴くようにします。
ストレスについての知識を高める
メンタル不調を訴える人は弱いという風潮がありましたが、今はもう古い考えです。ストレスによる心の不調は誰にでもあり得ることです。
組織全体でストレスへの理解を深めることが求められています。
若い年代では従来のうつ病とは違う、現代型うつ病が多くなっていますので、新しい知識と新しい常識を全員で共有することが必要です。
参考サイト:独立行政法人労働者健康安全機構”現代型うつ病他”
サポートしやすい環境作り
ストレスを抱えにくい職場環境はもちろんですが、もしメンタル不調になり休職をせざる負えなくなった時、安心して休み復職できる制度の確立も大切です。
辛くても迷惑がかかるからと無理をして仕事に行き、さらにストレスがかかってしまうことは良い人材を失ってしまうことになりかねません。
お互いにサポートし合える組織作りが目指すところです。
ストレス対策が当たり前の時代へ
ストレスは誰もが経験することです。気合と根性で乗り切る時代はもう終わりました。
事業者自らが率先してストレス対策をすることが当たり前になってきています。
個人、企業それぞれができることを実践することが、会社でのストレスを軽減する結果につながります。