「自社でコンプライアンス違反が起きないか不安」「他社の事例から学んでおきたい」——こうした悩みを抱える人事・研修担当者は少なくありません。コンプライアンス違反は、ひとたび起きれば業績や信用、人材確保にまで深刻な影響を及ぼします。
この記事では、実際に発生したコンプライアンス違反の事例10選を紹介したうえで、違反を招く要因と予防策を解説します。2024年の最新の倒産統計もあわせて確認いただけます。
この記事でわかること
- コンプライアンス違反の定義と具体的な10事例
- 2024年のコンプライアンス違反倒産の最新データ
- 違反を招く要因(不正のトライアングル)
- 違反を予防する3つの対処法
コンプライアンス違反の予防には、社内システムづくりとともに、従業員一人ひとりの知識習得と意識改革が欠かせません。研修を活用すれば、事例を通じて効率的にコンプライアンスの意義を浸透させられます。キーセッションでは、貴社の課題に合わせて最適なコンプライアンス研修をご提案できます。
そもそもコンプライアンス違反とは?
コンプライアンス(compliance)とは、日本語に直訳すると「命令や要求などに応じる・従う」という意味です。企業活動におけるコンプライアンス違反とは、主に次の3つに違反することを指します。
- 法律・条例などの法令
- 社内規定・就業規則など社内で定められたルール
- 道徳・社会倫理
近年は人権保護の意識が高まり、ハラスメントや差別に関する社会倫理が変化したことで、対象範囲も広がっています。SNSの普及により内部告発がしやすくなり、企業の問題が公になるケースも増加傾向です。
コンプライアンス違反の代表例には次のようなものがあります。
- 不正会計・文書改ざん
- 助成金の不正受給
- 誇大広告・不当表示
- 食品の産地偽装・衛生管理の不備
- 過度な時間外労働などの劣悪な労働環境
- ハラスメント
- 個人情報・機密情報の漏洩
- 著作権の侵害
- 不適切な情報発信
定義をさらに詳しく知りたい方は「コンプライアンス違反とは?」もあわせてご覧ください。
データで見るコンプライアンス違反の現状
コンプライアンス違反は、企業倒産の引き金にもなっています。東京商工リサーチによると、2024年の「コンプライアンス違反」倒産は320件と過去最多を更新し、前年比1.6倍に増加しました。
| 区分 | 2024年(暦年) |
|---|---|
| コンプライアンス違反倒産 総数 | 320件(前年比+66.6%/過去最多) |
| 税金関連 | 176件(+91.3%) |
| 不正受給 | 39件(+69.5%) |
| 粉飾決算 | 20件(+42.8%) |
| 負債総額 | 3,790億6,400万円(+28.2%) |
出典:東京商工リサーチ「2024年『コンプライアンス違反』倒産」
件数は過去最多を更新し、税金関連や不正受給を中心に増加しています。負債10億円以上の中堅企業の倒産も増えており、コンプライアンス違反は企業規模を問わない経営リスクといえます。
コンプライアンス違反の事例10選
過去に実際に起きたコンプライアンス違反の事例を10件紹介します。自社で似た構造のリスクがないか確認するうえで参考にしてください。
1. 製造業における排水データの改ざん
2023年3月、千葉県内の食品関連製造業者が、排水データを合計97回にわたって改ざんし県に報告していました。同社は水質汚濁防止法で定められた基準値を超える化学物質を河川に排出しており、担当者が社内報告をせず自己判断でデータを書き換えていたとされます。
2. 消防士の酒気帯び運転
2023年6月、静岡市の消防士が酒気帯び運転で電柱に衝突する事故を起こしました。本人は「飲酒後7時間の睡眠をとっていたから問題ない」と自己判断したそうですが、事故後の呼気検査で基準値を超えるアルコールが検出され、停職6か月の懲戒処分を受けています。
3. 市職員による上長の印鑑の不正利用
仙台市の水道局職員が、上長の決裁を必要とする書類で印鑑を不正利用し、独断で合計32件の決裁処理を行っていました。上長の印鑑を無断で持ち出したり、上長と同名の印鑑を購入したりしたとされ、停職3か月の懲戒処分が下されています。
4. 警察官によるテレワーク中のサウナ通い
2022年4月、宮崎県警の警視が、テレワーク中に合計4回サウナへ外出していたとして懲戒処分を受けました。情報提供を受けた県警の調査で発覚した事案で、テレワーク中の勤務態度を問う代表的な事例として注目されました。
5. 市職員によるファックスでの誤送信
2023年7月、石垣市の職員が、市税の滞納者7名分の住所氏名を含む文書をファックスで誤送信しました。市のマニュアルでは送信時にアドレス帳から選択する決まりでしたが、担当者が送信履歴から再送信したことが原因です。ルールがあっても運用が徹底されないと事故が起きる典型例です。
6. 航空会社社員による営業機密の持ち出し
航空会社の元社員が、競合他社へ転職する際に保安検査上の機密データを私物のUSBメモリで持ち出し、2023年8月に不正競争防止法違反の疑いで書類送検されました。「転職先で役立つと考えた」との供述で、退職時の情報管理の重要性を示す事案です。
7. 外国籍学生に対する説明会の一方的キャンセル
2022年5月、大手飲食店が就職説明会において外国籍学生の予約を一方的にキャンセルし、SNS投稿を受けて謝罪しました。「就労ビザの取得が困難なため」という理由でしたが、学生への説明や確認が不十分だった点が問題視されました。差別的対応とみなされるリスクの高い事例です。
8. 老舗料理店における漂白剤入り水の提供
2023年9月、銀座の老舗料理店で女性客に漂白剤入りの水を提供する事故が発生し、保健所から営業停止の行政指導を受けました。厨房で消毒中だったピッチャーを飲料水と取り違えた人為ミスで、品質管理体制の不備を浮き彫りにしました。
9. 団体職員による給油カードの私的利用
2023年5月、北海道の団体職員が公用車用の給油カードを私的に持ち出し、合計10回・約6万円分を私用車の給油に使っていたとして懲戒免職処分を受けました。記録改ざんで隠蔽を試みていましたが、同僚の不審な気づきから発覚しました。
10. 消防司令長によるパワハラ
2022年2月、志摩市の消防本部で10年来パワハラが横行していたことが匿名アンケートで発覚し、消防司令長を含む3名が停職・減給の懲戒処分を受けました。学歴や容姿への暴言、長時間の叱責、私的雑用の押し付けなど、組織風土に根差した違反事案です。
コンプライアンス違反を招く2つの要因
コンプライアンス違反が発生する主な要因は、大きく次の2つに整理できます。
- コンプライアンスに対する意識やモラルの欠如
- 社内体制の不備
コンプライアンスに対する意識やモラルの欠如
個人の知識や意識が不足していると、線引きが曖昧になり、意図せず違反する恐れがあります。「これくらいいいだろう」「黙っていればバレない」という安易な判断が、重大な事案へつながる典型パターンです。
ハラスメントのように、一昔前は許容されていた行為が現在では明確にNGになっているケースもあり、知識のアップデートが追いついていない社員は意図せず違反者になりかねません。経営陣のコストカット要求が長時間労働や安全対策の不備を招くなど、組織文化が原因となるケースも見られます。
社内体制の不備
セキュリティ対策・チェック体制・通報窓口といった社内システムが不十分だと、人的ミスや不正がそのまま表面化します。法令や社内規則がカバーしていないグレーゾーンを担当者の裁量に任せていると、判断の不統一や見過ごしが起きやすくなります。
背景にある「不正のトライアングル」
コンプライアンス違反の背景を理解するうえで有名なのが、米国の犯罪学者ドナルド・R・クレッシーが提唱した「不正のトライアングル」です。人が不正に走るのは「機会」「動機」「正当化」の3要素がそろったときとする考え方で、いずれか1つを断つだけでも違反を防ぎやすくなります。
| 要素 | 内容 | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 機会 | 不正を実行できる環境がある | チェック体制・権限分離・記録の自動化 |
| 動機 | 不正を行いたい理由がある | 無理なノルマの見直し・相談窓口・処遇改善 |
| 正当化 | 「自分は悪くない」と理屈をつける | 研修・行動規範・組織風土づくり |
内部統制の整備の考え方については「内部統制強化のポイント」もあわせて参考になります。
コンプライアンス違反を犯すことのリスク
コンプライアンス違反が発生すると、取引先や株主との関係悪化はもとより、社会全体からの信頼が損なわれる重大なリスクがあります。
ブランドイメージの毀損から顧客離れが進み、売上減少・経営破綻、場合によっては倒産にまで発展する可能性があります。職場の雰囲気も悪化し、従業員の離職や採用難など人材面のダメージも避けられません。
法令違反の場合は損害賠償や行政処分も加わり、経営をさらに圧迫します。前述のとおり2024年は「コンプライアンス違反」倒産が過去最多を更新しており、リスクは年々高まっています。
こうしたリスクを回避するには、コンプライアンス研修で正しい知識とノウハウを継続的にアップデートするのが近道です。キーセッションでは、貴社の要望や予算に合わせたコンプライアンス研修をご紹介できます。
関連記事:コンプライアンス違反による倒産とは?
コンプライアンス違反を予防する3つの対処法
コンプライアンス違反を予防する対処法は、次の3つです。
- 知識や認識を継続的にアップデートする
- 社内体制の整備に配慮する
- コンプライアンス研修を実施する
知識や認識を継続的にアップデートする
社員一人ひとりがコンプライアンスの重要性を理解し、時流に合わせた知識を持つことが防止の第一歩です。法令や社会的な風潮は日々変化するため、一度学んで終わりではなく、定期的なすり合わせが欠かせません。
個人任せにすると共通認識が浸透しないため、社内報・ポスター・定例ミーティングなどで継続的に発信しましょう。経営陣が率先して取り組む姿勢を見せることで、組織の風土として根付きやすくなります。
社内体制の整備に配慮する
コンプライアンスを遵守するための社内体制が整っていれば、不正のトライアングルでいう「機会」を抑止できます。まずは社内で明確な規定を設け、グレーゾーンをなくすことを目指しましょう。
重大な過失対策にはダブルチェック体制、情報漏洩対策にはセキュリティ強化やアクセス履歴の管理が有効です。実情に合わない無理なノルマは「動機」を生むため、業務設計の見直しも欠かせません。具体的な施策としては、次の3つが代表的です。
- 相談窓口の確立
- 外部組織との連携
- 奨励制度・罰則制度の制定
相談窓口の確立
コンプライアンス違反に通じそうな事態に直面しても、どこへ相談すべきか分からない従業員は少なくありません。窓口があればスムーズに報告・相談ができ、早期発見につながります。匿名で相談できる仕組みにすると、より声を集めやすくなります。
外部組織との連携
社内だけで判断する仕組みでは、立場を利用した無言の圧力が働き、公平性を欠く恐れがあります。弁護士・社会保険労務士・監査法人・第三者委員会と連携しておけば、客観的な立場からの判断を得られます。
奨励制度・罰則制度の制定
意識改革が進みにくい場合は、奨励制度や罰則制度を併用するのも有効です。コンプライアンス遵守に貢献した社員を表彰する一方、悪質な違反には注意喚起や減給を検討します。ただし、行き過ぎた罰則は職場の雰囲気を悪化させるため、運用は慎重に行いましょう。
コンプライアンス研修を実施する
コンプライアンス違反を予防するうえで、研修の実施は最も効率の良い方法のひとつです。事例を通じて学ぶことで、社員は具体的なリスクを自分事として理解でき、意識改革が進みます。
研修会社を活用すれば、現場スタッフ・管理職・経営陣など、階層ごとに求められる知識やスキルに合わせた研修を実施できます。キーセッションでは、実績のある講師によるコンプライアンス研修をご紹介可能です。貴社の要望や予算に合わせてご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。
コンプライアンス研修で違反を予防し、企業運営に役立てよう
コンプライアンス違反は、社員一人ひとりの認識不足や、社内体制の不備から発生します。事例で見たとおり、業種・規模を問わず起こり得るため、平時からの備えが欠かせません。
効率的に予防するには、コンプライアンス研修の実施が有効です。経験豊富な講師が事例を交えてレクチャーすることで、社内に遵守意識が浸透し、整備すべき体制も明確になります。2024年の倒産統計が示すように、コンプライアンスリスクは年々高まっています。早めの対策が経営の安定につながります。
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