次世代の経営者や社内起業家の育成、ご自身のキャリアのために、MBA(経営学修士)の取得に興味を持つ方が増えています。日本国内でMBAはそれほど重視されてきませんでしたが、近年急激にその重要性が高まっています。
この記事では、MBAに関する概要・学習法・よくある質問などについて解説します。取得に興味がある方、取得を検討している方は、自分のキャリアに活用できるかどうかを判断する機会にしてください。
MBA(経営学修士)とは
「経営学修士」と訳されるMBA(Master of Business Administration)は、大学院で経営学を修了した方に与えられる学位です。MBAは、大きく国内MBAと海外MBAに分けられます。
国内MBA
国立大学や私立大学の大学院・ビジネススクールで、専門課程を修了することで取得可能です。日本国内のビジネスや経営について、深く学べます。また、日本語で授業やディベートがおこなわれるため、経営についての概念を学んだり、密度の濃いディベートをしたりすることを希望する方に適しています。
海外MBA
海外のMBA大学院のプログラムを履修することで取得可能です。英語力の証明や海外でのキャリアアップなどの際にメリットがあります。また、海外でのビジネス事例を学ぶため、グローバルなビジネスを学習できます。
また、国内MBAと海外MBAの両方に関して、オンラインコースも開校されています。ただし、海外MBAの講義は英語でおこなわれるため、英語力が必須です。
MBAで学ぶこと
MBAのコースでは、以下の内容を学習します。
・経済学
・統計学
・情報・マーケティング
・人的資源管理
・財務会計
これらはいずれも、経営に携わる際には不可欠とされる知識です。MBAでは、座学ではなく実践的な学習(ディベートやグループワークなど)として身につけられるため、得た知識・技能をそのままビジネスの場に活かすこともできます。
近年では、終身雇用制の崩壊や経済のグローバル化などにより、従来に比べて企業は厳しい商環境に置かれています。日本国内の企業も海外企業の競争に勝って生き残るために、経営陣が高レベルの実践的な知識を身につけなくてはなりません。日本国内で最近になってMBAの注目度が高まっているのは、上記の状況によるものです。なお欧米においては、MBAは100年以上前から重視されてきました。
MBAは何の役に立つのか?
コースの選び方によっては、仕事をしながらMBAを習得することが可能です。ただし、MBA習得には労力・時間・費用を要するため、具体的なメリットが見えなければモチベーションの維持が難しいのが正直なところです。この章では、MBAの具体的なメリットを紹介します。
経営に関する知識が身につく
MBAでは、経営に必要な知識を体系的・俯瞰的に学べます。これらの知識を活用することにより、経営資源を効率的に活用し、適切に経営判断できます。特に経営に携わる経営陣や起業家にとって、MBAで習得する知識は大変有用な知識です。
また、プレゼンテーションや第一線で活躍する経営者との意見交換の授業なども取り入れられているため、知識をインプットするだけでなく実践的にアウトプットすることができます。これらの知識や経験は、実務において多いに役立つものです。
人脈が広がる
人脈形成は、MBAにおいて最も期待されるポイントの一つです。実際に、MBAのスクールには、ビジネス経験の豊富な講師と志の高い同期生が集まっています。また、研究チームによるつながりにより交流が生まれることもあります。
これらの人脈を活用できれば、ビジネスの幅を広げたり専門性を追及したりするなどのメリットが得られます。
キャリアアップにつながる
MBA取得者の多くが、役職・給与のアップを実現しています。国内MBA取得者のアンケートにおいて、平均年収が200万円アップしたとのデータもあります。
これらのMBA取得者のキャリアアップの二次的なメリットとして、MBA取得者のモチベーション向上やチームの業績アップなどの効果も期待できます。
MBA取得をおすすめする人
「MBAを取得しても意味がない」という意見があるのも事実ですが、このような意見が出てくる最大の要因として考えられるのが、MBAで学んだ知識を効果的に活用できていない事例です。
MBA取得が推奨されるポジションの方は以下のとおりです。
・経営幹部候補の方
・起業を検討中の方
・事業承継を考えている方
要約すると、経営にプレーヤーとして根本的に携わる方にとってMBA取得が大いに意味があります。特に、実践に重きを置いたゼネラリスト型MBAを取得することで、失敗との向き合い方を理解できます。失敗との向き合い方が重要である理由は、経営判断において非常に重要なポイントだからです。経営では、成功・失敗の結果が見えない判断を迫られる場面が多々あります。失敗の確率を下げたり、失敗からの改善についてうまく立ちまわったりすることで、ビジネスで成果を上げられる確率が高まるのです。
MBAを取得する方法
MBAを取得する方法は、4通りあります。それぞれの学び方の特徴やメリットを具体的に解説します。
フルタイムMBA(国内の大学院)
フルタイムMBAとは、国内大学院の全日制コースに通学することです。
大学院やビジネススクールの多くは、フルタイムMBAのコースを開校しているので、コースの選択肢が多いというメリットがあります。また、日中に講義が開講されているため、集中して効率よく学習できるという点もメリットであるといえます。
ただし、フルタイムMBAは仕事との両立が困難であるため、在職中の方はいったん退職もしくは休職をしなくてはなりません。休職や退職によって、キャリアパスや継続中の仕事の案件にネガティブな結果がもたらされる可能性があります。
フルタイムMBA(海外の大学院)
海外の大学院・ビジネススクールに留学してMBAを取得する方法もあります。
特に欧米では日本よりもMBAの歴史が長いため、国内よりもカリキュラムが豊富です。ただし、海外留学の形をとるため、国内でMBAを取得するよりも費用が高額です。
また、最低限の英語力がなければ、フルタイムMBAの取得は困難です。英語力が足りない方の場合、仮に単位の獲得に成功したとしても、講義の理解度が低くなってしまったりディベートなどの授業にうまく参加できなかったりするなどのデメリットが起こります。
パートタイムMBA(通信型)
パートタイムMBAは、夜間や週末などの通学によりMBAを取得できるコースです。
高校や大学の通信課程と似たシステムを取っており、仕事との両立がしやすいことが最大のメリットです。
講義・授業の回数はフルタイムMBAよりも少ないですが、その分学費も安いという特徴があります。
オンラインコース
国内・あるいは海外の大学院・ビジネススクールのMBAコースをオンライン受講する方法もあります。
1~2年程度の短期集中型のコースと、2年以上かけて高い負荷をかけずに履修できるコースがあります。
授業の回数・費用・仕事との両立のしやすさなどはカリキュラム次第ですが、空いた時間を利用して仕事と両立しながら学べるコースが多いです。
MBAについてよくある質問
この章では、MBA取得について特に多く寄せられる質問や疑問について解説します。
Q:MBA取得の難易度は?
MBA取得の難易度については、2段階に分けて考える必要があります。
まず、MBAを取得するための大学院・ビジネススクールに入学する難易度についてですが、入学試験の内容や倍率などは学校によって異なるため一概にはいえません。
人気の大学院・ビジネススクールのなかには、小論文・英語・志望理由などのテストを課す学校があります。大学受験のように学力テストにて合否が決まるわけではないため偏差値のような指標はありませんが、倍率の高い学校を志望される場合には試験対策も必要です。
すべての学校の倍率が高いわけでもないため、確かな志を持った方であれば入学のハードルは高くありません。単位取得の難易度に関しても、国内MBAであれば国内大学の学科生と同程度の難易度です。
通学型のMBAの場合は、大半の方が退学になることなく卒業しています。ただし、仕事と両立をしながら長期間のMBA取得を希望する場合、自主性が必要とされる分、継続する意思を持ち続けることが重要視されます。
Q:MBA取得のための費用と時間はどれくらいかかりますか?
MBA取得のためにかかる費用は、学習するコースによって異なります。
コース | 国内フルタイム MBA |
海外フルタイム MBA |
パートタイム MBA |
オンライン |
---|---|---|---|---|
費用 | 120万~400万円 | 700~2,000万円 | 130~340万 | 100~300万 |
学習年数 | 1~2年 | 1~2年 | 1~5年 | 1~5年 |
備考 | 国立大学の方が費用を安く抑えられます | 選択する学校によって、費用に大きな違いが生じます | カリキュラムにより、費用や通学年数に大きな差が生じます | パートタイムよりもさらに費用を抑えられる傾向があります |
Q:大学を卒業しなくてもMBAを取得できますか?
多くのMBAコースが大学院で開講されていることもあり、高卒や専門学校卒でもMBAを取得できるか否かを心配される方がみえます。結論としては、大学を卒業していなくても、「入学資格審査」に合格することによりMBAを取得できます。
入学資格審査にて出題される問題は、主にビジネスや経営に関するものです。入学資格審査を受験する以外の方法として、大学の通信講座などを受講して大卒資格を取得してからMBAコースに入学する方法もあります。
Q:MBA取得に意味はある?
MBAで学ぶ内容自体は、書籍などで読んで独学することも可能なものが多いため、「MBAを取得する意味がない」という方もいます。
しかし、MBAを取得してポジションや年収が上がっている方が多いのも事実です。個別の項目については市販されているテキストなどで学べる内容であったとしても、体系的に学習したり、仲間たちと実践演習したりしながら学んだりする機会はなかなか得られません。
もちろん、活かし方次第という面はありますが、MBAがとても価値の大きなものであることは間違いありません。
個人の人生設計と同じように、今はビジネスの現場でも将来を見据えた設計図を作ることが注目を浴びています。これは『キャリアデザイン』と呼ばれ、社員のキャリアデザインをサポートする企業が増えています。ここではキャリアデザインが必要とされている背景と、具体的な進め方について解説します。