マッキンゼー 7S フレームワークの解説

マッキンゼーの7Sモデルは、組織の効果的な機能や変更を評価・改善するためのフレームワークです。1980年代初頭にマッキンゼー&カンパニーにより開発され、組織の戦略、構造、システムなど7つの要因を考慮し、それらが相互にどのように影響を及ぼすかを理解することで、組織の全体的なパフォーマンスを最適化する手助けをします。

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マッキンゼーの7Sとは?

マッキンゼーの7Sモデルは、組織の効果的な機能を評価・改善するためのフレームワークとして、1980年代初頭にマッキンゼー&カンパニーのコンサルタントによって開発されました。このモデルは、7つの要因を中心としています。

7S_Shared_Values

ストラテジー (Strategy)
組織の競争上の位置や取るべき方向性を示す計画。
構造 (Structure)
組織の階層や部門構成、組織図。
システム (Systems)
日常の業務をサポートする手続きやプロセス。
スキル (Skills)
組織全体としてのコアコンピタンスや能力。
スタイル (Style)
組織のリーダーシップや文化を示す行動や態度。
スタッフ (Staff)
従業員の属性や能力、役職。
共有価値 (Shared Values)
組織の中心にある価値観やミッション、ビジョン。

これら7つの要因は相互に連携し影響を及ぼし合いながら、組織のパフォーマンスを形成します。変更や改革を検討する際、これらの要素が調和しているかを確認し、バランスをとることが重要です。

マッキンゼー&カンパニー
マッキンゼー&カンパニーは、1926年に創設された世界的な経営コンサルティングファームです。戦略、組織、業績向上など多岐にわたる領域で、多数の企業や組織にアドバイスを提供。高い専門性とグローバルネットワークを持ち、産業や問題に深い知見を持つ専門家が多数在籍しています。

7S理論が優れている理由

マッキンゼーの7Sモデルが多くの組織やリーダーに評価されている理由は、以下の点に起因しています。

総合的アプローチ
7Sモデルは組織のさまざまな側面をカバーしているため、組織の現状分析や改善策の策定において、偏った判断を避けることができます。
柔軟性
7Sモデルは非常にフレームワーク的であり、大小さまざまな組織や業種、文化に適応することができます。
戦略とカルチャーの統合
多くの組織モデルが戦略や構造に焦点を当てる中、7Sモデルは「共有価値」や「スタイル」を含むことで、組織文化と戦略の関連性も強調しています。
変更管理に有効
組織変更や改革を進める際に、7つの要因をバランスよく調整することで、より効果的な変更管理を行うことができます。
システム的思考
7つの要素は独立しているように見えるかもしれませんが、実際には相互に影響を与え合います。このモデルは、その関連性を理解し、組織内の動きをシステムとして捉えることを促します。
診断ツールとしての価値
組織の弱点や強みを特定する際の参考として、7Sモデルを利用することで、具体的な改善点やアクションプランを策定しやすくなります。

このように、7Sモデルは組織の多様な側面を総合的に捉えることができ、実践的な改善策の策定や変更管理において有用なフレームワークとなっています。

7Sフレームワークが向いている組織

7Sモデルはその柔軟性から、さまざまな種類や規模の組織に適用可能です。以下は、具体的な組織タイプとその適用例を挙げて説明します。

大手企業

大手企業は部門やチームが多く、組織構造が複雑です。7Sモデルを用いることで、各部門間の相互作用や組織全体の調整ポイントを明確にすることができます。例えば、新しい製品の市場投入や事業部の再編成時に、組織の構造や文化、スキルなどを総合的に考慮しながら変更を進める際に役立ちます。

スタートアップ企業

スタートアップは急速な成長や変化が求められるため、7Sモデルを使って戦略や組織の方向性を定め、それに伴い必要なスキルや文化を整えることができます。例えば、資金調達後の拡大フェーズで、戦略や組織構造を再評価し、新たなスキルや文化を育成する方針を決定する際に有効です。

非営利組織

7Sモデルは、ミッションや価値観が中心となる非営利組織にも適用可能です。例えば、新しいプロジェクトや活動を開始する際に、組織の戦略や文化、スキルなどを整えるための参考として使用できます。

公共機関

政府や自治体などの公共機関では、ステークホルダーが多く、トランスペアレンシーが求められます。7Sモデルを用いて組織の運営を評価・改善することで、より効果的なサービス提供や政策実施が可能となります。例えば、新しい政策の実施や組織改革を進める際の参考として活用することが考えられます。

7S分析の手順

7Sモデルに基づいた分析の手順と、各ステップでの注意点を解説します。

目的の明確化

7S分析を行う目的や目標を明確にします。何を解決したいのか、どの方向に組織を導きたいのかを特定します。目的が不明確だと分析の焦点が散漫になり、結果が効果的でなくなる可能性があります。

データ収集

各S要素に関する情報やデータを収集します。インタビューやアンケート、過去のレポートやドキュメントなどから情報を得ます。偏った情報や古いデータに基づくと誤った分析結果を導き出す可能性があります。多角的な視点からの情報収集を心がけることが重要です。

各S要素の現状評価

収集したデータを基に、各S要素の現状を評価します。各要素を孤立して評価するのではなく、相互の関連性を考慮しながら評価することが必要です。

問題点・ギャップの特定

目的や目標とのギャップや問題点を特定します。表面的な問題にとらわれることなく、深層の原因を探る姿勢が求められます。

改善策の策定

特定した問題点やギャップを解消するための改善策を策定します。単一のS要素に焦点を当てすぎず、7つの要素が相互に調和するような改善策を考えることが重要です。

実施・実行

策定した改善策を実施します。実施計画を立て、リソースやタイムラインを確認します。改善策の実施は組織の文化やステークホルダーのコミットメントを考慮しながら進める必要があります。

評価・フィードバック

実施した改善策の効果を評価し、必要に応じて再度7S分析を行います。短期的な結果だけでなく、長期的な視点からも評価を行うことが重要です。
これらの手順を通じて、組織の現状を理解し、必要な変更や改善策を効果的に策定・実施することができます。

7Sと他のフレームワークの比較

7Sモデルは組織の診断や変更管理に関するフレームワークの1つですが、他にも多くのフレームワークやモデルが存在します。以下は7Sモデルと比較可能な主なフレームワークやモデルをいくつか挙げます。

SWOT分析

内容: 組織の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を評価する。
比較点: SWOTは外部環境と内部環境の双方を考慮しますが、7Sは組織内部の要因に焦点を当てています。

ポーターの5フォース分析

内容: 産業の競争構造を5つの要因(競争の激しさ、新規参入の脅威、代替品の脅威、取引先の交渉力、取引業者の交渉力)で評価する。
比較点: 5力分析は産業の競争状態を評価するのに対し、7Sは組織内部のバランスや調和を中心に考えます。

7SモデルとSWOT分析の違い

7SモデルとSWOT分析はどちらも組織の分析に使用されるフレームワークですが、目的、焦点、そして構成要素において異なる特性を持っています。以下にそれぞれの特点と違いをまとめます。

項目 7Sモデル SWOT分析
目的 組織の内部要因を総合的に評価し、変更や調整の洞察を得る。 組織の内外の要因を評価し、戦略的なポジションを明確にする。
焦点 組織の内部構造・動き 組織の内部の強み・弱みと、外部の機会・脅威
構成要素 戦略, 構造, システム, 共通の価値観, スタイル, スタッフ, スキル 強み, 弱み, 機会, 脅威
適用範囲 組織の内部要因のみ 組織の内部要因と外部要因の両方

主な違い

焦点の範囲

7Sモデルは組織の内部要因にのみ焦点を当てていますが、SWOT分析は内部要因と外部要因の両方を評価する。

使用目的

7Sモデルは組織の機能や要素間の相互関係を考慮し、組織変更の指針を提供するのに対し、SWOT分析は戦略的な決定や方向性を設定するための情報提供を目的としています。

7Sモデルとポーターの5フォース理論の違い

7Sモデルとポーターの5フォース理論は、組織やビジネスの戦略分析に使用されるフレームワークですが、それぞれの目的、焦点、構成要素は異なります。

項目 7Sモデル ポーターの5フォース理論
目的 組織の内部要因を総合的に評価し、変更や調整の洞察を得る。 産業の競争状況を分析し、組織の競争的な立場を理解する。
焦点 組織の内部構造・動き 産業内の競争要因と外部環境
構成要素 戦略, 構造, システム, 共通の価値観, スタイル, スタッフ, スキル 競争の激しさ, 新規参入の脅威, 代替品の脅威, 買い手の交渉力, 供給者の交渉力
適用範囲 組織の内部要因のみ 特定の産業や市場の外部要因

7Sモデルは組織の内部要因に焦点を当てており、組織変更や効果的な組織運営のためのフレームワークとして使用されます。一方、ポーターの5フォース理論は、組織が事業を展開する市場や産業の競争状況を理解するためのフレームワークとして使用されます。

7SモデルとSWOT分析、5フォース理論の使い分け方

7Sモデル、SWOT分析、およびポーターの5フォース理論は、ビジネスや組織の戦略分析のための異なるフレームワークです。それぞれのフレームワークは独自の目的と焦点を持っており、特定の分析や状況に応じて使い分けることが効果的です。以下に各フレームワークの特徴と使い分けのポイントを説明します。

7Sモデルの特徴

組織の内部要因を中心に、組織全体の構造、文化、および戦略を考慮するフレームワーク。
組織の変革や組織文化の形成、組織の効率性や有効性の分析に使用。組織内部の要因との整合性を確認したい場合や、組織変更の計画時に役立つ。

SWOT分析の特徴

組織の内部の強み・弱みと外部の機会・脅威を分析するフレームワーク。
新しいプロジェクトや製品の戦略策定、市場参入の可能性、組織の現状評価などに使用。組織のポジショニングや将来の方向性を検討する際に役立つ。

5フォース理論の特徴

産業の競争環境を分析し、組織の競争的な立場を評価するフレームワーク。
産業の魅力や競争環境を分析したい場合、または戦略的な決定を下す前の産業分析に使用。市場参入や撤退の判断、競合との関係や業界の動向を理解する際に有効。

使い分けのポイント

組織の内部環境や文化、構造を理解し変革を促進したい場合
7Sモデル
新しい市場やビジネス機会を評価し、組織の強みを最大限に活用したい場合
SWOT分析
特定の市場や産業の競争環境を詳しく理解し、戦略的な立ち位置を決めたい場合
ポーターの5フォース理論

これらのフレームワークは相互に補完的であり、組み合わせて使用することでより包括的な戦略分析が可能です。

フレームワーク 特徴 適用状況
7Sモデル 組織の内部要因を中心に、組織全体の構造、文化、および戦略を考慮するフレームワーク。 組織の変革、組織文化の形成、組織の効率性や有効性の分析。
SWOT分析 組織の内部の強み・弱みと外部の機会・脅威を分析するフレームワーク。 新しいプロジェクトや製品の戦略策定、市場参入の可能性、組織の現状評価。
5フォース理論 産業の競争環境を分析し、組織の競争的な立場を評価するフレームワーク。 産業の魅力や競争環境の分析、市場参入や撤退の判断、競合との関係や業界の動向の理解。
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