ロジカルシンキングとは、論理的思考のことです。職場におけるコミュニケーションや問題解決において必要不可欠なため、注目されています。この記事では、ロジカルシンキングを身につける方法と例題を紹介します。
目次
ロジカルシンキングとは
ロジカルは「論理的な」という意味の言葉で、ロジカルシンキングは「論理的思考」のことです。
つまり、ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理した上で、矛盾のない筋道に沿って考えることです。直感や感情で物事を捉えるのではなく、矛盾や破綻がないように論理を積み上げていきます。
ロジカルシンキングができる人は、話に説得力があり、相手を動かすことができます。順序立てて説明してくれるので、あいまいな指示や感覚的な指示がなく、話を聞いているほうも納得しやすいのです。
できる人は普段から息をするようにロジカルシンキングをしており、改めて「よし、この問題はロジカルシンキングで考えよう」と思うことはありません。思考の癖そのものが論理的なので、意識しなくてもロジカルシンキングになっています。
一方で、ロジカルシンキングが苦手な人も大勢います。そのような人が発言しても、「何が言いたいのかよくわからない」「私はそう思わないけど…」と賛同を得られません。特に部下に指示を出す立場の上司が、ロジカルシンキングできない人だと、部下は不満を持ってしまいます。
ロジカルシンキングが苦手な人も、訓練すれば身につけることができます。説得力のある話や指示をして、ビジネスを円滑に回せるようになるためにも、ロジカルシンキングを身につけましょう。
ロジカルシンキングが注目される背景
ロジカルシンキングは、ビジネスパーソンの間で長らく注目を浴びているスキルです。ビジネス書を中心に、最先端の思考ツールが生まれては消え、を繰り返していますが、ロジカルシンキングの注目度は昔から変わっていません。社会人としての基本スキルと位置づけ、内定者や新入社員に研修を行う企業もあります。
なぜこれほどロジカルシンキングが注目され続けているのかというと、身につけるメリットが大きい割に、身につけている人が少ないからです。そのため、ロジカルシンキングが必要だと言われ続けています。
例えば、ロジカルシンキングのメリットに問題解決力の向上があります。現場で何か問題が起こったときは、問題の原因を突き止め、最適な解決策を早く実行しなければなりません。原因を突き止めることも、解決策を導くことも、論理の積み重ねです。ロジカルシンキングに長けた人ほど、早く解決策を見つけられます。
ロジカルシンキングは、問題解決力だけでなく、日常的なコミュニケーション能力、プレゼンや提案力の向上にも役立ちます。ビジネスの現場では、感覚や共感に頼るのではなく、論理的なコミュニケーションが求められるからです。
必要であることは昔からわかっていたのに、いまだにロジカルシンキングが注目され続けるのは、身につけていない人がそれだけ多いということを示しています。自然にロジカルシンキングができる人がいる一方で、感情や感覚を優先してしまう人がいます。感情や感覚ではなく、論理的に考える力を身につけることで、より強い組織に成長できるのです。
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ロジカルシンキングを鍛える方法
ロジカルシンキングが苦手な人が、身につけるにはどうしたら良いのでしょうか。ロジカルシンキングの鍛え方について解説していきます。
因果関係を整理する
物事には因果関係があるので、論理的に整理する必要がありますが、正しく整理するためにはロジカルシンキングが必要です。ロジカルシンキングの練習にもなるので、問題と解決策を考えるときは、因果関係を紙に書くなどして整理しましょう。
例えば、「社員の残業が減らない」という問題があったとします。原因として考えられるのは、業務量が多い、人員が少ない、サボっている社員がいる、上司の采配が良くない、などさまざまです。原因をリストアップしたら、すぐに解決策を考えるのではなく、因果関係を整理しましょう。
すぐに解決策を考えると、非論理的で誤った解決策になりがちです。「業務量が多い」という課題を解決するなら、業務量を減らさなければなりません。しかし、それでは売上まで下がってしまうでしょう。
業務量が多いのは、人員が足りないことが原因なので、人員を増やす必要があるでしょう。充分な人数を雇っているなら、上司の采配や社員の勤務態度に本当の原因があると言えます。
このように、原因どうしには因果関係があります。ロジカルシンキングを用いて因果関係を整理することで、最も重要な課題を見つけ、対処法を見つけることができます。
「なぜ?」を突き詰めて考える
物事には必ず原因と結果があります。ロジカルシンキングができる人は、結果を得たら原因を考え、論理的に理解します。ロジカルシンキングができない人は、結果を無条件に受け入れるため、次に同じような問題に遭遇しても対処できません。
結果を黙って受け入れるのではなく、必ず「なぜ?」を突き詰めて考えましょう。結果が出るまでにどのような筋道を辿ったのかを考えることは、論理的思考そのものだからです。
例えば、「売上が落ちている」という結果があったとします。このとき、原因を考えることなく「新商品を開発しよう」「カラーバリエーションを増やそう」などと考えるのは、感覚的すぎます。ロジカルシンキングを用い、売上が落ちているのはなぜか、しっかりと考えなければなりません。
主張をひとつに絞る
ロジカルシンキングができない人の特徴のひとつに、「何を言っているのかよくわからない」と思われてしまうことがあります。本人は一生懸命伝えようとしているのに、周囲が理解できないのは、主張がひとつに絞られていないからです。
「Aが良いと思います」とだけ言えば良いのに、「Aが良いと思う、Bは良くない、CはBに比べれば良い、DはCよりダメ」のように、たくさんのことを伝えようとしても、相手には伝わりません。この例でも、「Bは良くない」以降の話は、まったく触れなくて良いことです。
このようにたくさん喋っていると、相手に伝わらないどころか、喋っているうちに自分でも訳がわからなくなってきます。そもそも、自分の思考回路を1から100まで説明することは、ロジカルシンキングができる人でも難しいです。「思っていることの1割くらいしか伝わらない」と考えるようにして、主張を絞り込みましょう。
主張するときは根拠を考える
もうひとつ、ロジカルシンキングができない人の特徴に、主張に対する根拠がないことが挙げられます。逆の立場になり、自分が誰かの話を聞いているとして、理由を説明されずに「こうしたい」と主張だけを言われても困ってしまいます。相手に「こうしてほしい」「こうしたほうが良いと思う」など主張をするときは、必ず根拠を添えましょう。
根拠を考えようとしても、何も思いつかない…と感じる人は、その主張自体が直感・感覚によって導かれたものではないか、振り返る必要があります。問題の原因を適切に捉えれているかなど、主張を考える前段階に戻って考え直しましょう。
人を動かすためには、相手が納得できる根拠が必要です。ロジカルシンキングはまさに根拠から主張を導く思考方法なので、主張するときに根拠を添える練習は、ロジカルシンキングを鍛えるのにうってつけです。
ロジカルシンキングを鍛える為の具体的なアクションプラン
ディベートや討論をする
ディベートや討論は、ロジカルシンキングを鍛える最も効果的な方法の一つです。
他者との意見交換を通じて、自分の考えを明確に表現し、反論や質問に答えることで、自分の考えが論理的に整理されているかを確認することができます。
また、他者の意見や視点を聞くことで、自分の考えに偏見がないか、あるいは新しい視点を取り入れることができます。
- アクションプラン
- 定期的にチーム内での討論会やディベートセッションを設ける。
- 特定のトピックや業務上の課題を取り上げ、参加者には賛成・反対の立場を割り当てる。
- 実行時の注意点
- 討論の際は、感情的にならずに論理的な議論を心がける。
- 全員の意見を尊重し、話し合いの場を安全なものにする。
ロジックツリーを作成する
ロジックツリーは、問題や課題を解決するための手法として非常に有効です。ロジックツリーは、問題の原因や解決策を階層的に整理し、全体の構造を視覚的に捉えるツールです。
例えば、ビジネスの課題やプロジェクトの計画など、複雑な問題を分解し、それぞれの要素を論理的に関連付けることで、問題の本質や優先順位を明確にすることができます。
- アクションプラン
- 新しいプロジェクトや課題に取り組む際、ロジックツリーを用いて計画や課題の構造を明確にする。
- ホワイトボードや専用のソフトウェアを使用して、チームで共同作成する。
- 実行時の注意点
- ロジックツリーは階層的に整理するため、大きなテーマから細かい項目へと分解すること。
- 過度に細かく分解しすぎないよう注意する。
多角的な視点を持つ
一つの問題や課題に対して、一方的な視点だけで考えるのではなく、さまざまな視点から考察することが重要です。
異なる背景や経験を持つ人々の意見を取り入れることで、より深い理解や新しい発見が得られます。また、多角的な視点を持つことで、自分の考えに偏見や先入観がないかをチェックすることができ、より公平で論理的な判断を下すことができます。
- アクションプラン
- チーム内での意見交換の際、異なる部署や背景を持つメンバーの意見を積極的に取り入れる。
- 定期的に外部のセミナーや研修に参加し、異なる業界や専門家の視点を学ぶ。
- 実行時の注意点
- 多角的な視点を持つことは大切だが、最終的な判断は目的や目標に基づいて行うこと。
- あまりに多くの意見を取り入れすぎると、方向性がブレる可能性がある。
定期的な自己反省
日常の中での自分の判断や行動、意見について定期的に振り返ることは、ロジカルシンキングのスキルを維持・向上させるためには欠かせません。
自分がどのような基準で判断や意見を持ったのか、その背景にはどのような論理があるのかを自問自答することで、自分の考え方や判断の基準を見直すきっかけとなります。
過去の経験や失敗から学び、今後の行動や判断をより良くするための手助けとなります。
- アクションプラン
- 毎月の終わりやプロジェクトの終了後に、自身の行動や判断を振り返る時間を設ける。
- チームでのフィードバックセッションを実施し、他者からの意見や評価を受け取る。
- 実行時の注意点
- 自己反省の際は、自分を過度に責めないようにする。
- 他者からのフィードバックは、成長のための参考情報として受け取る姿勢を持つ。
ロジカルシンキングの例題
ロジカルシンキングを鍛えるには、「フェルミ推定」が有効です。フェルミ推定とは、実際に計測することが難しいものの数を、わかっている情報から論理的に推論することです。
解答が必ずしも実際の数と一致する必要はなく、いかにシンプルでわかりやすい筋道を立て、説得力のある論理を積み上げられるかが重要です。例題を紹介するので、解答例を見る前に、ご自身でも手を動かして考えてみましょう。
図:引用:カラクリブログ『【初心者必見】フェルミ推定の5つの手順【例題あり】』
アメリカのシカゴにはピアノの調律師が何人いるか?
これはフェルミ推定の生みの親であるエンリコ・フェルミが、実際に出した問題として知られています。正確な答えは調べようがありませんし、何人いるか本当に調べたところで意味はありません。こうした問題に対して、わかっている情報から論理的に数を推定すること自体が、ロジカルシンキングの練習になります。
この問題を考えるには、
- シカゴの人口
- シカゴには何世帯あるのか
- 何パーセントの世帯がピアノを1台所有しているか
- ピアノ1台の調律の頻度
- 調律師が1日に調律するピアノの台数
- 調律師が1年間で働く日数
といった情報が必要になります。しかし、正確な数値を調べる必要はありません。人口は300万人、1世帯あたりの人数は平均3人、ピアノを所有する世帯は10パーセント、など妥当そうな仮定を置いていきます。
最終的に得られた調律師の人数が、必ずしも実際の調律師の人数と近い必要はありません。正しい論理と妥当そうな数値で、結論を導くこと自体が、ロジカルシンキングの練習になるのです。
東京都にマンホールはいくつあるか?
ほかにも例題を掲載するので、取り組んでみましょう。「東京都にマンホールはいくつあるか?」という問いです。これも、実際のマンホールの数は重要ではなく、正しい論理と妥当そうな数値の仮定により、論理的に解答を導きます。
ここから先は考え方の例を示すので、ご自身でも考えた後にご覧ください。
必要となる情報には、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 東京都の面積
- 東京都で人が住んでいる地域の割合
- マンホールは何平方メートルに1個あるか
こうした情報に数値を仮定すれば、フェルミ推定による解答を導くことができます。
大型バスにゴルフボールはいくつ入る?
こちらも、実際に大型バスにゴルフボールを詰める必要があるわけではありません。誰も考えたことがないのに、確かに答えがある問題について、論理的に推論するのがフェルミ推定です。
ここから先は考え方の例を示すので、ご自身でも考えた後にご覧ください。
必要となる情報には、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 大型バスを立方体に見立てたときの体積
- 座席などがあり、使用できない部分の体積
- ゴルフボールの直径
- ゴルフボールは1平方メートルあたり何個入るか
この問題の場合、ゴルフボールの形が球形であることに注意する必要があります。大型バスに詰めたとき、ボールとボールの間に小さな隙間ができるので、隙間なく敷き詰めることはできません。
こうした条件に留意しながら、自分なりに解答を考えてみましょう。解答の正確さは関係なく、論理的に考えること自体が、ロジカルシンキングの練習になっています。
近年、ビジネスパーソンを中心に「デザイン思考」に注目が集まっています。デザイナーやクリエイター特有の思考方法ですが、デザイン領域以外の一般的なビジネスに応用でき、新商品や新サービスの考案に役立つので、広く注目を浴びています。
参考:ロジカルシンキングの鍛え方!コンサルが実践するトレーニングを紹介|コンサルキャリア