タスクフォースとは?ビジネスにおける意味と必要性を説明

タスクフォースという言葉をビジネスの場で耳にすることが増えてきましたが、実際にはどのような意味を持ち、どのような役割を果たすのでしょうか。

縦割り組織の弱点を補うために生まれたこの考え方は、現代のビジネスシーンでどのように活用されているのか、その背景や意義、そして運営方法について詳しく解説していきます。

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タスクフォースとは

タスクフォースのメンバー
それでは、ビジネスの場において必要になってきた、タスクフォースという言葉の使われ方について考察していきましょう。

タスクフォースには、下記の5つの要素が存在しています。

  • 具体的に解決が必要な課題がある
  • 緊急性が高い
  • 短期的である
  • 組織ではなくなチームである
  • それぞれの分野の専門家を集める

つまり、普段は様々な組織で別業務をしているメンバーが、問題解決をするの適任だという判断のもとに招集され、業務を遂行します。

縦割り組織の弱点を補う目的で生まれた考え方なので、ビジネスの場では現在の縦割り組織を改善するための業務改革や組織改革を、やや長期的な取り組みとして担うケースが目立ちます。

しかし本来はあくまでも短期的な問題解決型のチームです。
例えば、英国のEU離脱という不測の事態に対応するために、タスクフォースが結成されたことが、最たるケースです。
参考:外務省『英国のEU離脱に関する政府タスクフォース(英国及びEUへのメッセージの採択)』

タスクフォースという言葉が生まれた背景

タスクフォースは軍事用語から生まれたものなのですが、どうして軍隊から生まれたのかを考えてみると、タスクフォースという言葉の持っている意味をより理解することができます。

軍隊はご存じのとおり、陸軍、海軍、空軍などの分かれており、強固な縦割り組織です。
上層部が決めた作戦をいかに早く正確に浸透させることができるか、そして指示通りに動かせることができるか、ということが強く求められるため、強固な縦割り組織になります。

しかし、軍隊でも横の連携を取らなければ遂行できない、緊急かつ重要な任務が発生するわけで、その時に特別に組まれたチームがタスクフォースです。

決して縦割り組織を変えるわけではなく、あくまでも問題解決のための特別な動き方であるからこそ特別に名前がついたのであり、それがビジネスの場にも浸透していきました。

2020年、河野行政改革担当大臣が開設した「縦割り110番」が注目を集め、縦割り行政の弊害を解消するために、行政では多くのタスクフォースが立ち上がっています。

このように、タスクフォースが注目される背景には必ず縦割り組織が存在しています。
そもそも縦割り組織でなければ、タスクフォースなどは必要ないからです。

タスクフォースに込められた意味を考える

チーム編成をする際、名前にメッセージを込めるという場面は多く、確実に参加者の意識にも影響しますので、正しい名前をつけなければなりません。

そこで、タスクフォースと同じような場面で使われる言葉について、それぞれ考察していきます。

プロジェクトチーム

タスクフォースとプロジェクトチームの共通点は、「具体的に解決が必要な課題がある」という点です。
その問題が解消されたときに解散するという構図に違いはありません。

そして一番の相違点は「緊急性」という点になります。

迅速な課題解決を求められるタスクフォースに対して、プロジェクトチームは長期的な課題に取り組む場合にチームとして結成されます。

例えていうのであれば、山火事が起こっている際、いち早く火を消すというミッションを負っているのがタスクフォースであり、山火事が起こった原因までも検証し、二度と起こらないような問題解決方法を探るミッションを負っているのがプロジェクトチームです。

当然両者では、必要となる専門性も違ってきますので、人選が成否を大きく左右します。

ワーキンググループ

ワーキンググループも緊急性の高い問題を解決する目的で結成されるグループであり、タスクフォースとほとんど同じ意味で使われています。

タスクフォースと違い、ワーキングという言葉は「ワーキングビザ」「ワーキングホリデー」「ワーキングプア」といった「働く」「仕事」といった意味でよく使われますし、グループという言葉も日常での使用頻度が高いため、少し軽い印象を持たれがちです。

それに伴って、解決すべき課題課題の規模や重要度に応じて両者を使い分けることが多く、ワーキンググループはやや切迫感に欠けるライトな場面で使われています。

クロスファンクショナルチーム

クロスファンクショナルチームは、「全社的」な課題解決のために結成されるチームであり、その性格上、社外からもメンバーを集めることが起こり得ます。

また、課題の性質によっては正式な組織として設置される場合もあり、ここがタスクフォースとの大きな違いです。

クロスファンクショナルチームとは元来、1980年代において国際的に高い競争力を誇っていた日本企業の強さを分析した米国で理論化された考え方です。

非公式なコミュニケーション(喫煙室での部署を超えた対話や仕事終わりの飲み会など)を行うことで、自然発生的に部門間の情報共有や協働が実現していたという状況を、欧米の研究者が組織として体系化したことが始まりです。

今は日本でも非公式なコミュニケーションの場は減っていますので、自然発生ではない場を作る必要が出てきています。

タスクフォースを導入する効果

目標達成を喜ぶチーム
縦割り組織は、自分の部門の利益を優先するため、組織間で対立が生まれやすくなります。
自分たちの組織に与えられた業務の範囲内で効率化や最大限の効果を発揮することは得意ですが、その反面、組織を超えて新たな価値を創出したり、業務改革を行うことは苦手になりがちです。

そういった「組織の硬直化」が起こらないよう、あえて組織化せずに行うのがタスクフォースですので、はっきりとしたメリットが存在しています。

その点について具体的に見ていきましょう。

課題解決というテーマがはっきりしている

漠然と「良い商品を作る」という目標を立てたとしても、性能の高い商品を作るのか、それとも価格競争のできる商品を作るのかで、方向性が全く違うので時に対立してしまい、話が進んでいきません。

しかしタスクフォースの場合は「この商品の価格を2割下げる」といったように、具体的な課題解決の目標が掲げられます。

集まった社員は、どうやったら課題を解決することができるか、という1点に集中することができるので、外からの圧力を受けにくく、短時間で成果を出すことが可能になります。

最適な人財を集めることができる

特別な能力や知識を持っている社員は、タスクフォースにおいて必要な存在であると同時に、各部署においても欠かせない存在です。

そういった社員を集めて組織化をしようとすると、現在在籍している組織から「抜けられたら困る」という反発があり、思うような社員構成ができません。

その点、タスクフォースは短期集中の非組織ですので、現在在籍している組織の仕事も兼務となるため、送り出しやすくなります。ミッションが終わったら戻ってくるので、大きな痛手になりにくい訳です。

短期的な非組織であることで、最前最適の英知を集結できることこそが、タスクフォースの最大のメリットです。

資源を投資できる

緊急性が高く、重要なミッションを負っていることが社内に通知されているが故に、目的達成のために行われる活動に対しての、周囲の協力が得やすく、また開発費や広告費などの資源を投下する承認が下りやすくなります。

ここで大切になってくるのは、そのタスクフォースが何のために動いているのか、社員全体の理解を浸透させておくことができているか、という社内環境の整備です。

関係部署に伝道師が生まれる

何か新しいことを始めようとした際、各部署の思惑が妨げとなり、計画通りにプロジェクトが進められないということがよく起こります。

しかし、タスクフォースの場合は各部署から影響力のある社員が参加した上で決定していることであり、どこかの部署だけの意向で進められている訳ではないので、抵抗勢力が生まれにくいというメリットがあります。

タスクフォースに参加した社員は、課題解決の伝道師として積極的に部署内で活動してくれるようになるということも、早く広く、そして深く浸透させていくための大きなメリットです。

問題解決能力が向上するモチベーションアップ研修

“考えた方・捉え方”といった思考や認識にアプローチすることで、目の前の問題を解決していく問題解決型のモチベーションアップ研修です。 やるべきことを”やりたいこと”に変えていく方法を解説していきます。

一人ひとりのモチベーションアップが組織を活性化し業績を最大にする

タスクフォースを導入する上での課題

会社が組織として動いているのは、そこに大きなメリットがあるわけです。
タスクフォースは組織が抱えるデメリットを解消するために行われるわけですから、そこには当然デメリットも存在しています。

その点について具体的に見ていきましょう。

課題設定を誤るとミスリードにつながる

課題の早期解決を目的に行われるタスクフォースは、最初からどこのゴールに向けって進むのかを明確にしておく必要があります。

しかし一方で、その課題設定を誤ってしまうと、会社全体をミスリードしてしまう危険性も持ち合わせています。

リーダーに高度な資質が求められる

問題解決のために集まった社員ですので、役職や年齢なども様々です。

それぞれが所属している組織であれば、上下関係も定まっていますので、プロジェクトを進める上ではやりやすさがあります。

それが組織の硬直化という問題にもつながるわけですが、タスクフォースにはそのしがらみがないので硬直化が起こり辛い反面、リーダーには組織マネジメントの高い資質が求められることになります。

リーダーの選定を見誤ると、タスクフォースを行うことが、組織間の軋轢を拡大させるだけになってしまう危険性があります。

成果に対して誰が人事考課をするのか

良くも悪くも、日常業務の評価は直属の上司が行います。
日々の仕事を近くで見ていますので、その点では一定の納得感が存在しています。

一方でタスクフォース内での活動については、直属の上司が近くにいません。
また、直接組織に貢献したわけではないため、直属の上司からの評価にはなりにくいわけです。

人事考課に対して参加者が不利益にならないように、タスクフォースを行う場合は、その発案者と人事の間でしっかりとした人事考課の方法を練り上げておかなければ、誰もタスクフォースには参加したがらないという状況を生み出してしまいます。

ノウハウの蓄積が行いにくい

タスクフォースは編成期間が短いので、タスクフォース内で生まれたノウハウを蓄積して次に生かすという作業がとても難しくなります。

タスクフォースが立ち上がった際、うまくテイクオフするまでの間、アドバイザリーとして、過去のタスクフォースで培ったノウハウを伝承させていくような制度の導入は検討するべきです。

おすすめのリーダー研修

リーダー研修

リーダーがチームメンバーの成長とチームの成果を左右すると言っても過言ではありません。それぞれのチームが成果を上げることで企業の信用と収益を高めます。良いリーダーを育てること、それがリーダー研修の目的です。


タスクフォースの運営方法

企業の将来を左右しかねない課題を解決しなければならないタスクフォースは、編成と運営を誤ると会社に甚大な影響を与えてしまいます。

タスクフォースはどのように進めていくべきなのかについて、見ていきたいと思います。

下準備で押さえておきたい6つのポイント

タスクフォースを実行する前に、立案者は下記のポイントについて押させていく必要があります。

  1. 課題を明確化し、解決する目標を定める
  2. 課題を解決するために必要となる知識や技術を洗い出す
  3. 洗い出した内容に基づいて必要となる人物像を描く
  4. 収集が想定される社員をまとめられそうなリーダーを選出する
  5. 人事評価の方法などを確定させておく
  6. 結論を出すまでのスケジュールを明確化しておく

収集されたメンバーが不安にならないよう、一丸となって目標に突き進められるような環境の整備は、成否を分ける重要なポイントになります。

議事録を作成し、懸念点の共有を徹底

全社の協力体制を整備し、意思統一を図るためにも、議事録を作成し、関係者には全員状況が伝わるような体制を整えましょう。

タスクフォースは結論に向けて、着実に議題を進めていかなければなりません。
話の内容があいまいになり、同じことが議論されることを防ぎ、毎回の懸念点を共有するためにも、議事録の持つ役割はとても需要です。

途中段階で現場とのすり合わせ

それぞれの部署内でも議事録を共有し、懸念事項を解決するために現場はどのようなことをすべきなのか、新たな懸念事項はないか、といった点について、話し合いを行っていく必要があります。

各参加メンバーが、自分が所属している部署の意見を理解したうえで、話し合いの場に参加していれば、課題解決方法が決定した際、すぐに全社が動き出すことができるようになります。

タスクフォースの事例

アシストオフィシャルサイト画像
参考:アシスト『新製品立ち上げプロジェクト

創業1972年、売上高337億円(2020年度)、従業員数1,210名の老舗IT企業であるアシスト社のタスクフォース事例をご紹介しましょう。

これは経営陣よりトップダウンで降りてきた、典型的なタスクフォースの事例です。

タスクフォースに与えられたミッションは下記のとおりです。

  • 商品が売れる仕組み作りをする
  • 期限は3ヶ月以内

メンバーは、フィールド領域のエンジニアとマーケティングメンバーで構成された12名でした。

「キラーコンテンツにな可能性がある商品があるが、ビッグデータやIoT、AIの活用という時流に乗るためには早く対策を打たなければならない。」

そんな背景があり、プロモーション戦略と実行方法を3ヶ月以内でまとめあげるという課題を担うこととなります。

任命されたリーダーは、課題を解決するために自社にどんなリソースがあるのかを考え、「社内のコンサルティング営業を最大限に活用するにはどうしたら良いか」というコンセプトで人選を進めていきます。

コンサルティング営業が使いやすい、具体的なエピソードを含んだツールを作成するだけでは営業が動きづらいだろうという判断のもと、社内で説明会を開いたり、営業担当に直接説明したり、顧客動向などを行う具体的な活動プランを練り上げました。

その結果、具体的な目標達成だけでなく、「全員営業」という会社の掲げているキーワードを再確認するきっかけにもなりました。

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