管理職の離職を防ぐための対策・改善策

近年、多くの企業で管理職の離職が増加しているという問題が顕著に表れています。管理職は、組織内でチームを指揮し、従業員をマネジメントし、経営層との橋渡し役を担う重要な役割を果たす存在です。彼らが退職を選択すると、会社は大きなリスクと影響を受ける可能性があります。

特に、優秀な人材ほど外部からの転職オファーが多く、将来に不安を感じると容易に転職を決断してしまうケースも少なくありません。

本記事では、管理職が辞める会社に共通する特徴や原因、その背景にある経営・組織上の問題点、さらに離職を防ぐための具体的な対策や改善策について網羅的に解説します。人事部・総務部・経営層・リーダーの方々に向け、実践的に活用いただける情報を提供することを目指しています。管理職の離職を予防・抑止し、組織全体が活躍し成長できる体制を整えるためにも、ぜひ最後までご覧ください。

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管理職が辞める主な原因

まずは、管理職が会社を辞める主な原因を整理します。これらの原因を知ることで自社が抱える問題を早期に把握し、対策を立案しやすくなります。

1. 激務・長時間労働による負担

管理職になると、責任が増すのと同時に業務量が膨大になることがあります。人事・総務・経営層からのさまざまな指示への対応、部下や他部署とのコミュニケーション、会議への参加など、多くのタスクを同時並行で進めなければなりません。さらに、組織で重要なプロジェクトや緊急事態が発生すれば、その管理や指示を担うのは管理職の役割です。結果として、残業や休日出勤が常態化し、心身ともに大きな負担を感じるようになります。

ワークライフバランスが崩壊すると、家庭やプライベートの時間が確保できず、睡眠不足やストレスの蓄積により体調を崩すケースも増えます。疲労が限界に達すると「もう続けられない」と感じ、転職や退職を検討するようになるのです。

こうした環境では、優秀な人材ほど将来を真剣に考え、新たなキャリアを求めて早期退職に踏み切ることがあります。

2. 強いストレスとプレッシャー

管理職に課されるプレッシャーは非常に大きいものです。経営からは目標達成を厳しく求められ、部下のマネジメントにも責任を負います。数字の達成や組織の成長に直接関わるため、日々の判断や指示には重いプレッシャーがのしかかります。失敗が許されない環境で精神的に追い詰められ、自ら退職を選ぶ管理職も珍しくありません。

また、ストレスフルな状態で業務を続けると、イライラや焦りからコミュニケーションに支障をきたし、部下や上司との関係が悪化してしまうケースもあります。これがさらに管理職を追い詰め、不満や不安を加速させる悪循環に陥る恐れがあります。

3. 部下のマネジメントの難しさ

管理職は組織のメンバーをまとめ、チームとして成果を上げるためにマネジメント機能を発揮しなければなりません。しかし実際には、部下への指導やモチベーション管理、評価制度の運用、時にはメンタル面のサポートも必要です。中には多様な価値観を持つ部下を抱えているケースもあり、1人ひとりの対応に時間と労力を要します。

特に、管理職としての経験が浅い場合や、必要な研修を受けずに突然マネジメントを任された場合などは、どのように部下を導けばよいか分からず苦しむことになります。本人が思うようにチームを機能させられないと強い無力感に陥り、そのまま退職を決断することもあるでしょう。

4. 給与・待遇への不満

責任や業務負荷だけが増えたにもかかわらず、それに見合った給与や待遇が与えられない場合、管理職は「自分は正当に評価されていない」と感じます。不公平感が募り、不満が大きくなると、経営方針や組織全体への不信感にもつながります。管理職にとっては、部下をまとめて成果を上げるだけでなく、自分の評価や将来設計も考えなければなりません。

特に、他社が魅力的な条件を提示してくれる場合や、自分の市場価値を高く評価してくれる環境が見つかった場合、転職を真剣に検討する原因となります。報酬や待遇面が明確で納得感のある基準を持っていない会社は、優秀な人材ほど離職しやすいのが現実です。

5. 社内の人間関係の悪化

人間関係は会社における働きやすさを大きく左右します。管理職は上司や経営層、同僚の管理職、そして部下という多層的な人間関係に気を配らなければなりません。コミュニケーションがうまく取れない、意見の衝突が頻発する、パワーバランスが崩れているといった状況が続くと、精神的な負担は急激に高まります。

もし社内に不満や対立があっても、管理職という立場上なかなか本音を言いにくいケースも多いです。組織内での孤立感が高まり、サポートを得られずに一人で抱え込んでしまうと、逃げ場を求めて退職に踏み切ることがあります。

6. 自分のスキル・能力を活かせない

管理職というポジションは、組織全体のマネジメント・調整業務が中心となるため、専門スキルを活かした実務にはあまり時間を割けなくなることがあります。たとえば、エンジニアとしての専門知識や営業としての高いスキルがあっても、管理職になると現場での業務より人の管理が優先され、モチベーションを維持しにくくなるのです。

「本来やりたい仕事や得意分野があるのに、管理職としての仕事に追われている…」という状況は、キャリア成長への意欲を削ぎます。結果的に「自分には向いていない」「このままでは将来のキャリアが狭まる」と感じて退職する管理職もいます。

7. プライベートの時間不足

重責を担う管理職は、突発的な問題やトラブルに対応せざるを得ないケースが多く、休日や終業後の呼び出しが頻繁に起こることもあります。家族や趣味など、自分のプライベートな時間を犠牲にしがちになり、心身のリフレッシュがままならないまま業務を続けることになります。

プライベートを充実させられない状況が長期化すると、「自分の人生は仕事だけではないのに…」という不満が大きくなり、将来的な健康リスクも高まります。働き方改革が叫ばれる中で、ワークライフバランスを確保できない企業は、特に管理職レイヤーの離職率が高くなりやすいと言えます。

8. 会社方針・価値観への不一致

組織のトップが打ち出す経営方針や価値観に共感できない管理職は、仕事への意欲を失いやすくなります。管理職は企業の方針を部下に伝える役割も担うため、トップと現場をつなぐ橋渡しが難しいと感じる場合もあるでしょう。結果として、経営層に対する不信感が募り、最終的に退職を選択するケースがあります。

企業文化やビジョンの共有不足も一因です。「自分が大切にしたい価値観をまったく理解してくれない」「短期的な利益追求に傾きすぎている」と感じると、管理職としてのやりがいや将来性に疑問を抱きやすくなります。

9. キャリアの停滞・将来への不安

管理職まで昇進してから先のキャリアパスが見えない、あるいはさらなる成長機会が提供されないと、将来に対して不安を抱く人は少なくありません。

「このポジションが自分のゴールなのか」
「今後どのようにキャリアアップしていけば良いのか」
という疑問が解消されないままでは、転職を検討することになります。 特に、年功序列や曖昧な評価制度が残っている企業では、抜本的な変化や成長を期待できず、刺激や挑戦を求める管理職にとって魅力が薄く感じられます。やりがいと将来性の両方を提供できる環境でない限り、有能な管理職は引き留めにくいでしょう。

管理職が辞めやすい会社の特徴

上記の原因が複合的に絡み合うと、管理職は高い確率で離職を考えます。では、「管理職が辞めやすい会社」にはどのような特徴があるのでしょうか。以下に代表的なポイントを挙げます。

トップダウン一辺倒で現場の声が届かない

経営層が絶対的な権限を握り、現場の実情や要望を聞く姿勢が乏しい組織では、管理職が板挟みになりやすくなります。部下から上がる課題を経営層に伝えても改善されない、もしくは経営側からの指示をそのまま降ろすだけで終わってしまうと、管理職は「自分は何のためにいるのか」と疑問を抱きます。

こうしたトップダウンが強すぎる風土は、コミュニケーション不足や不満の蓄積に繋がり、現場での活躍や改善提案を阻害します。その結果、やる気のある管理職ほど早期に見切りをつけて退職する傾向があります。

不公平な評価制度や報酬体系

管理職といえども、自身の仕事ぶりを正当に評価されなければモチベーションは下がります。報酬体系が不透明だったり、評価基準が曖昧なまま運用されている場合は、組織全体に不満が広がりやすいです。特にチームの成果に対しての報酬が反映されにくいと、管理職は成果を出す意義を見失い、転職を視野に入れ始めます。

また、管理職という立場ゆえに評価基準が明確でないケースも見受けられます。どんなに成果を出しても報酬やポジションが変わらない環境では、将来のキャリアビジョンが描きづらく、優秀な管理職ほど積極的に別の環境を探し始めるでしょう。

慢性的な人手不足と過度な負担

一向に改善しない人手不足の環境では、管理職が常に現場のフォローに駆り出され、リーダーとしての仕事やマネジメント機能を十分に果たせません。加えて、休暇や有給が取りにくい職場ほど心身の疲労が重なり、社員全員の離職リスクが高まります。

「また人が足りないから、管理職が穴を埋めるしかない」といった状況が常態化すると、抜本的な改善策を打ち出さない企業への不信感が募ります。特に会社として改善の意思が見えない場合、管理職は「この先も何も変わらないだろう」と考え、退職を決断しやすくなるのです。

管理職が辞めることで生じる影響

管理職は組織の中核を担う存在であり、その離職は組織全体に大きな影響を及ぼします。ここでは、管理職が突然辞めることによる主なリスクを確認しましょう。

チームの士気低下と連鎖退職の誘発

直属の上司である管理職が退職した場合、チームや部下は不安を感じます。特に信頼関係が築かれていた管理職が去ると、「次は自分も辞めたほうがいいのでは」という心理が働き、連鎖退職を招く可能性が高まります。結果として、業務の停滞だけでなく、組織全体の雰囲気も悪化する恐れがあります。

意思決定の遅れと業務停滞

管理職は部下やチームをまとめ、日々の業務を進める上での意思決定を行う立場でもあります。その管理職が急にいなくなると、プロジェクトや施策の進行がストップするだけでなく、残されたメンバーが次にどう動くべきか判断を下しにくくなります。新任の管理職や後任が決まるまでに時間がかかればかかるほど、生産性は落ち込み、組織としての成果も出しづらくなるでしょう。

社外との信頼関係の揺らぎ

取引先や顧客との橋渡し役を担っていた管理職が退職すると、その関係性を引き継ぐのは容易ではありません。新任担当者との折衝やコミュニケーションに時間を要し、スムーズに業務を継続できない場合、相手側に不安や不満を与えてしまいます。特に密なやり取りが必要な事業やプロジェクトでは、外部との信頼を損なう大きなリスクとなります。

管理職の離職を防ぐための対策・改善策

ここからは、管理職の早期退職を防ぎ、優秀な人材に長く活躍してもらうための具体的な対策を解説します。経営層や人事部が中心となって計画的に進めることで、離職リスクを効果的に軽減できるでしょう。

1. 定期的なヒアリングや1on1面談の実施

管理職が抱える不満やストレス、将来的なキャリアへの希望を把握するために、定期的な面談や1on1ミーティングを設けましょう。ただ単に形だけの面談ではなく、経営層や人事が積極的に話を聞き、必要に応じてサポート策を提案する姿勢が重要です。「自分の声が届く」と感じられる環境があれば、小さな問題の段階でケアできる可能性が高まります。

2. 経営層との信頼関係構築とコミュニケーション強化

管理職が組織内で孤立しないよう、経営層との対話の場を定期的に設けることが大切です。社内SNSやチャットツールを活用して距離を縮めたり、オフサイトミーティングや懇親会を企画し、自由に意見交換ができる雰囲気をつくることも効果的です。トップダウンだけでなく、ボトムアップの提案もしやすい組織文化を根付かせましょう。

3. 労働環境と業務量の改善

長時間労働や人手不足が続く職場は、管理職のみならず従業員全体の離職リスクが高いといえます。業務プロセスの見直しやツール導入による効率化、不要な会議や社内文書の削減など、小さな改善の積み重ねで業務量を調整しましょう。加えて、新規採用や部署間での人員調整など、マンパワーを根本的に補強する施策も重要です。
特に管理職には、休日や連休をしっかり取得できる体制を整えることが欠かせません。長時間の稼働が続くと疲弊から判断力も落ち、結果的に組織全体に悪影響を及ぼす可能性があります。「適切な休息は必要である」という文化を経営層から率先して発信し、徹底させることが望まれます。

4. 公正な評価制度と納得感のある報酬設定

管理職として成果を上げた場合には、評価制度や報酬として反映される仕組みが不可欠です。評価基準はできるだけ明確化し、結果だけでなくプロセスやリーダーシップ面なども多面的に評価することが望まれます。また、定期的な評価面談で改善点や成果をフィードバックし、管理職本人が納得できる運用を目指しましょう。
報酬面では、基本給や賞与だけでなく、インセンティブやストックオプションなど多様な形を検討する企業も増えています。管理職が「自分の貢献に見合った報酬を得られている」と感じられれば、組織へのエンゲージメントが高まります。結果的に離職率の低下へ繋がる可能性が高いでしょう。

5. キャリア成長支援と管理職研修の充実

管理職に就いた後も成長を続けられるよう、研修やセミナーの機会を積極的に提供しましょう。リーダーシップやマネジメントのスキルアップだけでなく、最新の業界動向や専門知識を学べる場を用意することで、知的刺激と自己投資の意欲が高まります。組織全体にも好影響をもたらすため、研修費用の補助や資格取得支援制度の整備も有効です。
また、管理職間で成功事例やノウハウを共有する社内勉強会を開催するのもおすすめです。実際に起きた課題の解決策や、現場で試した改善策など、リアルな経験を共有することで全体のマネジメント力が底上げされます。

6. 企業理念・ビジョンの再確認と共有

会社のミッションや価値観を改めて見直し、全従業員に浸透させる取り組みを怠ってはいけません。経営層だけが企業理念を唱えていても意味がなく、管理職を含む組織全体が「自分ごと」として共有できる状態を作ることが大切です。定期的な全社会議や研修でビジョンを再確認し、具体的な行動指針に落とし込むようにしましょう。
管理職が経営層の言葉に納得し、部下へその意図をしっかり伝えられる体制が整えば、組織の一体感は格段に高まります。逆に理念や方向性が不透明なままでは、優秀な人材ほど将来性を感じられず、離職につながりやすくなります。

離職防止に成功した企業事例

離職率を大幅に改善し、管理職の定着にも成功している企業の共通点は「労働環境の整備」と「従業員一人ひとりへの配慮」をしっかり行っていることです。たとえば、柔軟な働き方を可能にするリモートワークや短時間勤務制度、休暇取得の推奨などを積極的に導入し、成果主義とワークライフバランスを両立させている企業は管理職の離職率も低い傾向があります。

また、外食産業のように「離職率が高い業界」と言われているなかでも、勤務ルールを徹底し、休日出勤や残業を最小限に抑える工夫を積極的に取り入れている企業では、管理職が疲弊しにくい仕組みが整っており、結果的に全体の定着率向上につながっています。社員の声を定期的に拾い上げ、評価制度や報酬体系を都度アップデートしている点も見逃せません。

専門家の見解:離職防止の重要性

人材マネジメントの観点では、管理職の早期離職は企業にとって大きな損失とされています。採用や育成、引き継ぎコストがかさむだけでなく、社内のメンバーや社外の取引先との信頼を失う恐れもあるため、組織の機能そのものが低下するリスクが高いのです。

専門家は、管理職を含む優秀な人材をいかに引き留め、活躍してもらうかが企業の成長戦略のカギになると指摘しています。実績のある管理職が抜ければ、若手にとって学ぶ機会も減少し、チーム全体のスキルアップの機会を奪ってしまう恐れもあるでしょう。したがって、制度面・環境面の両方で退職を防止できる仕組みを整えることが必要不可欠だと言えます。

まとめ

管理職が辞める会社には、激務や長時間労働、評価制度への不満、人間関係の不和、会社の方針への共感不足など、さまざまな原因と特徴が複合的に存在します。一方で、これらの問題点に早期に気づき、対策を適切に講じることで、管理職の離職を大幅に抑制することは十分に可能です。
特に、人事や経営層は以下のポイントを意識するとよいでしょう。

  • 管理職の声を定期的に収集し、課題を早期に把握・解決する
  • 経営層と管理職の間で風通しの良いコミュニケーションを築く
  • 適正な業務量を保ち、ワークライフバランスを確保できる仕組みを作る
  • 公平な評価・報酬制度を整備し、納得感のある処遇を実施する
  • 継続的な研修やキャリア支援で、管理職が成長できる環境を提供する
  • 企業理念・ビジョンを明確化し、組織全体で共有・浸透させる

これらの取り組みを粘り強く続けることで、管理職が安心して力を発揮し、将来にわたって組織の中心として活躍してくれる環境が整います。管理職の離職が減り定着率が上がれば、優秀な人材が組織に残り、結果として企業の成長力や競争力も向上するでしょう。会社と従業員の双方がメリットを得るためにも、今こそ自社の課題を見直し、必要な改善策を早期に実行に移していくことが重要です。

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