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クリティカルシンキングとは?
クリティカルシンキングは、日本語では「批判的思考」と呼ばれる思考方法です。この場合の「批判」とは、反対意見を物申すことではなく、「感情的・主観的にならず、客観的に物事を捉え、前提から考え直す」という意味です。
クリティカルシンキングにおいて重要なのが、「前提を疑うこと」です。例えば、新卒で入社した社員の3年以内の退職率が高い会社があったとします。
「最近の若者は忍耐力がないから、すぐに辞めてしまう」と考えることはできますが、これは正しく原因を捉えているでしょうか。「自社の社員教育には問題がない」ことが前提となっており、「人材育成に問題があるため、早期退職者が多い」という可能性が見えなくなっています。
このように、議論の前提となる事柄を批判的に見直し、問題に対する本当の原因を見つけるのが、クリティカルシンキングです。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
クリティカルシンキングとロジカルシンキングは、いずれも問題を解決するための思考方法という点が共通しています。しかし、思考プロセスが異なるので、問題の性質によって使い分けたり、併用したりします。
前の章で解説したとおり、クリティカルシンキングは「前提を疑うこと」からスタートし、それまでには気づいていなかった問題の原因を探ります。対してロジカルシンキングは、ある前提のもとに、どのような結果が得られるかを論理的に考える思考方法です。
ある問題を解決したいときは、クリティカルシンキングとロジカルシンキングの両方を使うことかできます。クリティカルシンキングで前提を見直し、ロジカルシンキングを用いて新たな前提のもとに仮設を立てるのです。
クリティカルシンキングが必要な理由
価値観が多様化して複雑化する現代社会において、クリティカルシンキングの必要性はますます高まっています。従来どおりの価値観が通用しないので、以前は正しかった前提を見直さなければならないからです。
高度経済成長期以降の日本では「良い製品を作れば売れる」という時代が続き、次々に高機能な電化製品が作られました。例えば携帯電話は通話ができるだけでなく、カメラが搭載され、ワンセグでテレビも見られて、防水で…と独自の進化を辿りました。
世界的に見てもこれだけ高機能な携帯電話が一般的に使用されるのは日本くらいでしたが、iPhoneやスマートフォンが登場すると、あっという間にシェアを奪われてしまいました。ガラケーが機能的に劣るわけではないので、「良いものなのに売れない」という現象が起きたのです。
ここで、「もっと優れたものを作れば売れる」「スマホより機能を充実させたガラケーを作ろう」と考えるのは、本質を捉えられていません。「良いものなら売れる」という価値観が通用していないので、前提を疑うクリティカルシンキングを用い、問題を解決するべきです。
現代社会には、従来の価値観が通用しなくなり、手をこまねいている企業がたくさんあります。このような企業こそ、クリティカルシンキングを用いて前提を疑い、現代に合った新たな前提を生み出していく必要があります。
ビジネスにおけるクリティカルシンキングのメリット
クリティカルシンキングを用いると、ビジネスにはどのようなメリット があるのでしょうか。この章では、クリティカルシンキングの3つのメリットについて解説していきます。
問題の根本的な解決ができる
クリティカルシンキングを用いると、ビジネス上の問題を根本から解決することができます。前提を見直すので、問題の本質を解決し、新たな商機に結びつけられるのです。
従来の前提が通用しなくなっているのに、その前提を疑わずに問題を捉えると、正しい解決策は見つけられません。ビジネスにおいては、「売上が上がらないのはなぜか」「顧客が求めているのはどんな商品やサービスなのか」といった課題をいち早く解決する必要があります。クリティカルシンキングを用いて前提から疑い、時代に合った商品やサービスを生み出しましょう。
新たな視点や発想が生まれる
クリティカルシンキングを用いて問題を考えると、新たな視点や発想が生まれ、斬新な商品やサービスの開発につながることがあります。前提を見直すことで、従来の価値観では生まれなかったアイディアが出てくるのです。
現代のビジネスでは、他社には真似できない斬新なアイディアが必要です。とはいっても、斬新なアイディアを考える方法がわからない、という人は多いです。クリティカルシンキングを用いて前提から考え直すことで、オリジナリティのあるアイディアが浮かぶようになります。
矛盾しない戦略を取れる
クリティカルシンキングを用いると、経営戦略や販売戦略において、矛盾しないプランを立てられるようになります。クリティカルシンキングとは、「本当にそれで良いのか?」を問い続け、矛盾をなくしていく思考方法だからです。
一般的な企業では、経営陣と現場の向いている方向がずれており、お互いにフラストレーションを抱えていることがよくあります。課題を洗い出し、クリティカルシンキングを用いて整合するように整理すれば、一貫した指示ができるようになります。
クリティカルシンキングの実践方法
ビジネス上の課題を解決するためにも、クリティカルシンキングを取り入れましょう。この章では、クリティカルシンキングの実践方法を解説します。
着地点を明確にする
クリティカルシンキングを始める前に、まずは着地点を明確にしましょう。クリティカルシンキングは問題を解決するための思考方法です。問題がないところには使わないので、まずは問題に対する着地点を明確にします。
例えば、「利益を上げたい」という目標があっても、これでは漠然としすぎています。この目標を達成する方法は、販売額を上げるだけでなく、経費を削減することでも可能です。販売額と経費のどちらを着地点にするのか、はっきり把握するところから始めましょう。
具体的な課題に落とし込む
次に、目標を具体的な課題に落とし込みます。ここで、前提を疑うクリティカルシンキングの登場です。
例えば「利益を上げたい」という目標があるなら、その目標は達成可能なのか、何をすれば良いのかを考えます。「売れ筋の商品Aの価格を上げる」「売れ行きが落ち込んでいる商品Bを改良する」などさまざまな手段が考えられますが、ここで前提を疑い、ほかに課題はないのか考えましょう。
前提を疑うと、「商品Aは売れているが、マーケティングの予測よりも売れていない」「商品Bは他社が低価格な類似商品を出しているので、価格競争は避けられない」など、新たな課題が持ち上がります。前提を疑い、データを駆使していくと、課題がどんどん具体化されていきます。
柔軟に解決策を考える
具体的な課題が持ち上がったら、解決策を考えます。ここでもクリティカルシンキングを活用し、従来の前提に縛られない柔軟な解決策を考えましょう。
例えば「利益を上げたい」という課題に対し、既存の商品の改善だけでなく、新商品の開発やPR方法の変更を提案しても良いのです。「課題を解決せよ」と言われると商品そのものの改善点を探しがちですが、本当の問題は別のところにあるケースは多いです。クリティカルシンキングを用い、こうした課題を解決していきましょう。
クリティカルシンキングがよくわかる具体例
例えば、商品AとBを販売している会社が、「利益を上げる」という目標を掲げたとします。商品AとBの情報は、以下のとおりです。
商品A
・単価1万円
・月間100個売れた
・1個あたりのコストは1000円
商品B
・単価2万円
・月間40個売れた
・1個あたりのコストは5000円
単純に販売額を伸ばしたいなら、単価が高い商品Bの販売に力を入れれば良いです。しかし、商品Aが月間100個売れているのに対し、商品Bは40個しか売れていません。あまり売れていない商品を売るにはどうしたら良いのかを考える必要があります。
また、月間100個売れている商品Aの販促に、さらに力を入れることも考えられます。商品そのものの改良に加えて、商品Aの知名度を高める工夫も考えられます。
しかし、解決策はそれだけではありません。例えば、経費を削減すれば、販売額はそのままでも利益は向上します。ほかにも、新たな商品を開発する、といった手段もありうるのです。
例の場合、「商品AとBをもっと売らなければならない」というのが暗黙の前提でした。この前提に気付けると、経費削減や新商品など、目標を達成できるほかのアイディアを見つけられるようになります。クリティカルシンキングを用い、前提を疑って成果に結びつけましょう。
⇒こちらの記事もチェック!『改善』に必要な問題提起能力を高める方法は?
クリティカルシンキングの鍛え方
クリティカルシンキングを身につけるには、日常的に頭を使って訓練することが大切です。ビジネス上の重要な課題だけでなく、日常の些細な課題に対しても、以下の方法でクリティカルシンキングを実践して、頭を鍛えましょう。
前提を疑う
些細なことに対しても「なぜ?」と考え、前提は正しいのか疑う癖をつけましょう。
例えば、上司からの指示に無条件に従っている人は、「上司の指示は本当に正しいのか」を考えます。また、「前回と同じ方法でお願いします」と指示されたときは、なぜ前回の方法が良いのか、ほかの方法ではダメな理由があるのかを考えます。
仕事でも日常でも、前提を受け入れてしまうのは簡単です。しかし、誰もが受け入れているからこそ、誰も気づいていない重要な課題があるかもしれません。日頃から前提を疑う癖をつけ、クリティカルシンキングを実践していきましょう。
【批判的思考プロセス】
引用:SkillsYouNeed.com『批判的思考(クリティカルシンキング)スキル』
自分の思考の癖を理解する
クリティカルシンキングを行うのは人間なので、結論が自分の思考の癖に寄りがちです。自分の癖を理解しておき、結論が主観的にならないように努めましょう。
思考の癖は、その人が持っている価値観と言い換えられます。例えば、「自動車を好むのは男性」といった、無意識に抱いている価値観です。女性に人気がある自動車があっても良いのに、その可能性を最初から捨ててしまうのです。
このような思考の癖を把握し、個人的な「前提」として捉えましょう。その前提を覆すのが、クリティカルシンキングです。
【“思い込みレベル”のテストで「クリティカル・シンキング」の得意/不得意がわかる】
情報収集をする
クリティカルシンキングを用いて正しい結論を導くには、十分な情報がなければいけません。情報がない状態で前提を疑っても、妄想の域を出ないからです。そのため、情報収集を行いましょう。
例えば、売上が上がらないという課題を解決したいなら、情報収集を行います。顧客のニーズが現れたマーケティングデータや、売上推移のデータを取り寄せましょう。これらのデータから何を考察できるかを考え、それまでの前提に縛られない解決策を導き出しましょう。
参照サイト:株式会社koujitsu-クリティカルシンキングとは?ビジネスで使用するメリットと実践する流れを徹底解説
クリティカルシンキングとは、「批判的思考」と解説されます。砕いて説明をすれば、「本当にそうなの?」と疑う視点を持つ思考です。クリティカルシンキング研修ではより「本質的」な事を考える事につながる思考の基本とビジネスでの活用方法を学びます。