2020年3月から深刻化した新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの企業がリモートワークを取り入れました。
リモートワークが進んだことにより、
- 会社内での雑談や会話が減りメンバーの気持ちが分からない
- ひとりだけで仕事をする孤独感がある
- ライバルと切磋琢磨するモチベーションが下がってしまった
と感じるビジネスパーソンが増えています。
ここで重要になるのが、やはりチームでの目標設定です。チームの目標を決めることで、チームビルディングへの効果が期待できます。
ここでは、内発的動機と外発的動機、フレームワークSMARTを元に、コロナ下における効果的なチーム目標の決め方を整理し解説します。
目次
効果的なチーム目標設定の方法
効果的なチーム目標を決める方法について、前提となる概念整理の上、人の動機付けに関する視点から考えていきます。
目的と目標の違いを理解する
目標設定に当たり、まず「目的」と「目標」の違いについて整理しておく必要があります。目的とは、「何のためにやるのか」という仕事やプロジェクトの最終ゴールを指します。一方で目標とは、その最終ゴールに向けてどのように実現していくかという指標です。
例えば、『顧客のマーケット拡大に貢献する』というのは目的であり、『この半年でIT業界の顧客に3,000万円の売り上げを立てる』というのが目標です。
内発的動機に着目する
F.ハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論では、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者を動機づけ要因、後者を衛生要因と呼んでいます。
そして、動機付けには『内発的動機』と『外発的動機』があります。
内発的動機とは、自分の内側からの要因によって起こる動機付けのことであり、仕事に対する好奇心や探究心等が元になっています。
外発的動機とは、自分の外側からの要因によって起こる動機付けであり、報酬や賞罰などから引き起こされるものです。
(参考:グロービス経営大学院 MBA用語集)
内発的動機にフォーカスすると、目標はチームメンバーが自律的に設定し、リーダーが軌道修正する形になります。
例えば、「将来的に携わりたい業務領域の布石として化学品業界を担当したい」というメンバーの意思や気持ちがあり、それに対してリーダーが「顧客A社の売り上げを110%アップはどうだろう」と提案するようなやり取りです。
内発的動機は、自身のやりたいことや興味関心が源泉になっているため、目標達成の道筋を描きやすいと言えます。
一方で、内容がメンバーの独りよがりにならないようにチームミッションとの整合性が必要となります。
外発的動機に着目する
いわゆるアメとムチに該当するのが外発的動機にフォーカスした方法です。
新規顧客開拓に関するインセンティブ、目標未達による評価のステイ、降格などにより、メンバーを組織として向かわせたい方向へ、迅速に動かすことができます。目標はリーダーがメンバーへ下ろし、それを調整する形になります。
例えば、「今期は事業部として新サービスの売上向上を目指しているため、あなたには顧客に新サービスを5件受注してもらいたい。インセンティブとして商談1件1万円とします」といったリーダーの申し入れに対してメンバーが合意する、調整するという流れです。
メンバーが受け身になったり、やる気を失わないように、リーダーは組織のミッションや目標の根拠について丁寧に説明する必要があります。
具体的な指標の決め方(SMART)
次に具体的な指標の決め方について解説していきます。
効果的な目標の作り方について、頭文字を取ってSMARTの法則と言われるものがあります。これは、メンバーが作成した目標をチェックするときの指標として活用できます。チームとして共通の目標を持つ場合も同じです。
S:Specific具体的か
明確で具体的な表現や言葉で書きます。5W1Hを意識して、取り組む理由や手段などが明らかになっているか確認します。
社内で頼りにされる存在になる
事業部内で●●分野の知見を積み重ね、データベース化し、営業からの問合せを受けられる体制を作る
M:Measurable測定可能か
目標の達成度合いが客観的に判断できるよう、その内容を定量化します。本人とリーダーだけではなく、他部署の人が見ても分かるようにしましょう。
トップ営業になる
●●の商材において、▲▲事業部内で、売上高において●●万円を達成する
A:Achievable達成可能か
夢物語や単なる願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容で作成します。
特に内発的動機にフォーカスして作成した場合には本人の気持ちと現実の部分を埋めていくことが必要です。
業界シェアナンバーワンになる
競合商品と差別化した提案を行い、半年以内に●件受注する
R:Related関連性があるか
その目標を達成することが何につながっているかを意識します。組織の経営目標と関連していることを見ていきます。
●●業界の顧客をターゲットとして営業活動を行う
事業部重点施策である●●サービスを拡販するために、関連性の高い●●業界の顧客をターゲットとする
T:Time-bound期限はあるか
いつまでにそれを達成するのかという時間的期日を設定します。期限があることで達成モチベーションを健全に保つことができます。
なるべく早く達成する
上半期に達成するために、1ヶ月で●件対応する
コロナ下でチームの目標を持つ重要さ
コロナ下でチームの目標を持つことは、メンバー間の心理的距離感がある中で、チームビルディングへの効果が期待できます。
リモートワーク下での結束力強化
リモートワークが進んだことにより雑談や会話が減り、メンバーの気持ちが分からなかったり、孤独さを感じたりするビジネスパーソンが増えています。
しかしチームの目標を共有することで、物理的に離れていてもチームの一員として、メンバーの成果を喜び、あるいはできなかったことを励まし、結束力を高めることができます。
今はオンラインで社員総会やプロジェクトキックオフなども開催されており、オンラインで目標を明文化して決起したり、レビューすることが一般化していきそうです。
エンゲージメントの向上
エンゲージメントとは組織への愛着や思い入れ、忠誠心のことです。
近年、エンゲージメントは人事のキーワードですが、社員同士の対面コミュニケーションが減少したコロナ下においてはますます重要になっていると言えます。
納得した目標があることで、所属するチームへの関心が高まり「目標を達成したい、組織のために貢献したい」という気持ちが生まれてきます。
進捗管理の精度向上
リーダーの目線から大切だと言えるのが、進捗管理です。
リモートワーク下では、メンバーの裁量に委ねる部分も増え、業務進捗を管理することが難しくなっています。とはいえ、マイクロマネジメントをして、レポートを増やすことはリーダー側の負担も重くなってしまいます。
そこで、チームの目標や個人の目標を効果的に設定することにより、”目標に対してどのくらいのところにいるのか”という進捗管理の精度が向上すると言えます。