
企画書にはポイントがあり、コツを押さえれば読み手にわかりやすい企画書が書けるようになります。この記事では、企画書の書き方や使えるフレームワークを解説していきます。企画書に悩んでいる方は、この方法で企画書のクオリティを高めましょう。
目次
企画書とは何か?
企画書とは、新しいプロジェクトやアイディアについて、自分以外の人に伝えるための文書のことです。自分の頭の中にある企画を実行に移すには、周りの人を動かしたり予算を獲得したりしなければなりません。関係者に企画の良さや実行するべき理由をアピールするために作るのが企画書です。
提案書との違い
企画書とよく混同されるのが「提案書」です。どちらも課題の定義や解決策、プロジェクトの予算や期間などを記載しますが、基本的には企画書は社内向け、提案書は社外の顧客向けに作成するという違いがあります。
企画書は、新商品や新サービスのアイディア(=企画)を自分以外の社内の人に伝えるために作成します。考えている新商品や新サービスはどのようなものなのかを説明するだけでなく、それによって自社の売上や利益が伸びることをアピールし、意思決定権のある上層部を動かします。
一方の提案書は、顧客の課題や困りごとを解決するための方法を提案する文書です。自社の売上や利益は関係ありません。あくまでも顧客のために作成する文書で、自社の商品やサービスを活用すると顧客の課題を解決できることを訴求します。
なお、企画書と提案書は厳密に使い分けられているわけではありません。会社によって呼び方が異なるので、社内向けの文書を「提案書」、顧客のための文書を「企画書」と呼ぶ場合もあります。「企画書、作っといて」と言われたら、文脈を踏まえて意味を解釈しましょう。
企画書の必要性
企画書は、自分の頭の中にあるアイディアを他人に伝えるために必要な文書です。
良いアイディアが浮かんでも、ビジネスにおいては一人で実行することはできません。周囲の人や他部署の人を巻き込み、チーム一丸となってプロジェクトを進めていく必要があります。良いアイディアを思いついたら、まずは周りの人にそのアイディアの良さを理解してもらい、共感を得る必要があるのです。
そのために使うのが企画書です。頭の中にある漠然としたアイディアを文章化し、他人にも伝わるようにします。
したがって、企画書は他人が読んだときのわかりやすさが重要です。わかりにくい企画書を書いてしまうと、いくら優れたアイディアでも周りの人に理解してもらうことはできず、企画は却下されてしまいます。
では、わかりやすい企画書はどのように作成すればよいのでしょうか。以降の章で詳しく解説していきます。
企画書の構成要素
企画には、新商品や新サービス、新イベントなど、さまざまな種類があります。しかし、企画書に含めるべき内容はほとんど同じです。どのようなアイディアを企画書にする場合でも、主に以下の5つの構成要素が軸となります。
- 企画の目的・目標(ゴール)
- 現状分析
- 企画の全体像と具体的な内容
- スケジュール
- 収支計画
基本的には、この順番で文書を作成していけば企画書が完成します。各項目で書くべき内容について、詳しく解説していきます。
企画の目的・目標(ゴール)
企画書の上部のわかりやすいところには、企画の目的と目標(ゴール)を書きます。その企画を実行することで、会社にとってどんなメリットがあるかを訴求するのです。
このパートは、以下に続く現状分析や企画の内容のまとめ部分でもあります。ビジネス文書の基本である「結論から書くこと」を意識し、企画の到達点について簡潔にまとめましょう。
現状分析
現状分析は、「なぜ企画が必要なのか」を伝えるパートです。市場における自社のポジションや競合他社との関係も踏まえ、以下のような課題を整理しましょう。
- 自社が抱えている顕在的な課題
- 市場における自社のポジションの変化
- 競合他社のポジション(自社が不利な立場に追い込まれる可能性がある等)
企画書上では、課題を数多く列挙する必要はありません。会社にとってもっとも重要と考えらえる課題を抽出しましょう。
企画書において現状分析のパートが必要なのは、新たなプロジェクトに乗り出す動機を明確にするためです。現状に問題がなければ、新たな企画に取り組む必要はありません。現状では問題があることを周囲に知ってもらうことで、「この企画を実行して解決しましょう」というモチベーションを高めるのです。
企画の全体像と具体的な内容
このパートでは、企画の中身について完結に全体像を示しつつ、具体的な内容を記載していきます。アイディアに思い入れがあったり、頭の中で細かい部分まで詰めている状態だと、このパートは筆が乗るので書きすぎになってしまうことがあります。あくまでも、初めて企画書を見た人にわかりやすいよう、完結にまとめてください。短い文章や簡単な図だけでは伝わらないと感じるなら、企画書に別紙を添付して、別紙で詳細な内容を記載しましょう。
企画の全体像と内容は、前のパートで考察した課題を解決できることをアピールするように書いていきます。新商品や新サービスを打ち出すことで自社の課題をどのように解決できるのか、説得力のある提案をしましょう。「やってみたいから」「おもしろそうだから」という理由で企画が通るわけがないのはご存じのとおりです。
スケジュール
スケジュールのパートでは、企画のスタートからゴールまでどの程度の時間がかかるのかを記載します。法令などの外部環境により締め切りや納期が決まっている場合、逆算してスケジュールを考えましょう。
スケジュールを考えるときは、予期せぬトラブルが発生することを想定するようにしましょう。トラブルが起こらない想定でスケジュールを作成しても、現実にはそのとおりに行かないことが多いからです。企画書を提出した上司にも、「このスケジュールでは無理」と却下されかねません。
収支計画
企画書には、お金の計画も記載しておきます。初期投資はいくら必要なのか、いつどのくらいのお金を回収できるのかを見積もりましょう。スケジュールに対応させて企画書に記入します。
企画書を伝わりやすくするためのポイント
企画書に書く項目がわかったら、次は他人に伝わりやすい企画書を作るためのポイントを押さえていきましょう。企画の中身がよく練られていたとしても、企画書が読みにくかったら、読み手に企画の良さは伝わらないからです。これから解説するポイントに気を付けて、企画書を作成しましょう。
読み手を意識する
あなたのアイディアについてまったく知らない人が企画書の読み手になることを意識して、企画書を作成しましょう。企画を考えている人は、自分の中で検討を重ねているので、企画に対してとても詳しくなっている状態です。これを自覚し、企画のことをまったく知らない人でも理解できるよう、初歩からひとつずつ階段を昇るように文章を作成します。
企画書は、自分が所属する部門以外の人や、普段あまり話さない人にも共有されるものです。自分と身近な人が日常的に使っている言葉でも、ほかの人にはなじみにくい場合があります。
誰にでもわかりやすい企画書を作成するためには、読み手を「自社の仕事のことを知らない社外の人」と想定するくらいで丁度良いです。家族や学生時代の友人に説明するつもりで、企画書を作成していきましょう。
結論から書く
ビジネス文章は、結論から書くのが常識です。企画書も、結論を書いてから詳細を説明する流れで書きましょう。
普段は結論から話すことができる人でも、企画書の作成になると順番が変わってしまう、ということもあります。頭の中にあるアイディアをすべて伝えたいと思うあまり、個別の論点をたくさん書きたくなってしまうからです。企画書では要点を絞り、優先度の高いことをまとめるようにしましょう。
個別の論点や例外事例について書きたい場合、別紙を用意しましょう。論点が多岐にわたる場合、Q&A形式でまとめると読みやすくておすすめです。
図やグラフで説明する
文字ばかりの企画書を作成する方は非常に多いのですが、図やグラフを活用し、目で見て企画書の内容理解できるように工夫しましょう。文字ばかりの文書は、読むのが大変だと感じる人が多いからです。「読むのが億劫」というマイナスの印象を持って読み始めるので、企画の内容が良くてもマイナスイメージを挽回できないことがあります。
図やグラフを使った見やすい企画書は、それだけで読みやすそうな好印象を与えることができます。読み手も「良さそうな企画だな」とプラスのイメージを持って読み始めるので、企画書の内容を理解したり、共感したりしてもらいやすいです。
企画書作成に使えるフレームワークと具体例
自分が考えたアイディアを説明するだけでは、説得力のある企画書を作ることはできません。現状分析や企画の説明において、客観的な証拠を揃えてこそ、相手に響く提案ができるのです。
客観的な証拠を揃えるためには、3C/4C分析などのフレームワークが役立ちます。この章では、企画書の作成で使えるフレームワークを紹介していきます。
3C分析
3C分析とは、以下の3つの観点で自社の現状を分析するマーケティングのフレームワークです。
- Customer(顧客・市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
まずは顧客のニーズや市場の成長性を分析し、今後期待できる分野や方向性を検討します。自社の独力ではどうにもできない外部要因を先に固めておくのです。
次に、競合他社と自社の強み・弱みを分析します。外部要因を踏まえ、他社はどのような戦略を取って来ると考えられるか、自社はどのような戦略を取るべきなのかを考えましょう。
SWOT分析
SWOT分析は、内部環境と外部環境について、以下の4つの観点で分析するフレームワークです。現状分析に活用できるほか、企画の内容を説明するときにSWOTを意識すると伝わりやすくなります。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
自社のみならず競合他社についてもSWOT分析を行うことで、「他社は弱いが自社は強い領域」や「自社に比べて他社のほうが有利な領域」などが明らかになります。自社が有利な領域で勝負をするのか、他社が強い領域でも果敢に挑むのかは企業の体力やビジョンによるので、絶対的な正解はありません。会社の方針に合った戦略を練り、企画書に落とし込みましょう。
6W2H
6W2Hは、企画の具体的な内容を記載するときに使います。以下の6W2Hを網羅するようにアイディアを記入すれば、ビジネス上の判断に必要な情報のほとんどを揃えることができます。
- When:実施時期
- Where:参入する市場
- What:新商品・新サービスは何か
- Who:実施する主体(自社の特定の部門など)
- Whom:ターゲットとなる顧客
- Why:企画を実施する理由
- How:Whatを実施する方法
- How much:必要な投資や費用
反対に、上記の項目が一つでも抜けていると、企画を実行するための情報が足りないので、決裁者は判断ができません。6W2Hを必ず企画書に含め、わかりやすく書きましょう。
企画書を作成するツールの長所と短所
企画書を作成するときは、ワードを使う方が多いでしょう。ワードではなく、エクセルやパワーポイントで作成することも可能です。
この章では、各ツールの概要と長所・短所を解説します。「うまく企画書が作れない…」と感じている方は、ツールを変えてみるのも良いでしょう。
ワード
ワードは文書作成ソフトなので、見栄えの良い文書を作成することができます。企画書のテンプレートもあるので、初めて企画書を作る人でも簡単に作成できるようになっています。
ただし、ワードで作った企画書は文字が中心になりがちです。図やグラフを入れたい場合、別の作成ソフトで作らなければならず、面倒に感じられるかもしれません。図やグラフを多用した企画書を作る場合、エクセルやパワーポイントを試してみましょう。
エクセル
エクセルはデータを楽に扱える表計算ソフトですが、企画書も作ることができます。セルを上下左右に大きくすることで、ワードで作るのと同じような形式の企画書が作れます。
エクセルはグラフを作成しやすいツールなので、見やすい企画書づくりに役立ちます。グラフを多用した企画書を作りたいときは、エクセルを活用してみましょう。
パワーポイント
パワーポイントはプレゼンテーションソフトですが、企画書の作成も可能です。横長の画面の印象が強いですが、書式設定を変更すれば、A4縦の文書を作成することができます。
パワーポイントは、フローチャートなどの図を作成しやすいツールです。図を多用した企画書を作りたいときは、パワーポイントを使ってみてはいかがでしょうか。