企業研修の総合メディア「キーセッション」では、研修や講演会で講師として活躍する方の魅力をお伝えすべく、インタビューを行っています。
今回は、スポーツとビジネスの両方の分野でコーチ業を営む、二ノ丸 友幸さんにお話を伺いました。
後編ではご自身の研修でとくに評価されている点や、二ノ丸さんの指導・教育論のバックボーンについて詳しく伺いました。
目次
人間は1日で74%を忘れる。定着のためには徹底的なフォローアップが必要
研修でクライアントから特に評価されているのはどんな点でしょうか?
定着させるためにその後のフォローアップや効率的・効果的なワークショップ(トレーニング)の実施ができるところを評価していただけていると思います。
現役のプロコーチだからこその強みかもしれません。
一般的に、研修は1回やって終了というケースが多いですが、振り返り・レビューやフィードバック、フォローアップこそが重要だと思っています。最終的に“定着“させることが目的だからこそ、トレーニングした後にフォローアップをしていかないといけない。
なぜフィードバックやフォローアップが必要かというと、人間は1日経つと得た情報の74%は忘れる生き物だと言われているからです。研修でせっかく学んだことも翌日には7、8割は忘れてしまうわけですよ。
それを忘れないためには、振り返り・復習が必要だということです。振り返りをすることで、23%程度、成長率が変わってきます。この23%という数字は10~15分程度の復習で達成できると言われているんですよね。
10~15分程度であれば「できるかな」っていう気になりませんか?この繰り返しが大人の成長の差に繋がっていると思います。
もう1つのポイントは、振り返りだけでは成長は得られないという点です。
例えば、大谷翔平選手の講演を聴いたからといって、野球が劇的にうまくなるかというと、そんなことはない。つまり、人の話を聞くだけでは人は成長しないのです。
情報を習得したら忘れないために復習する。それを意識して行動・トレーニングをする。これが成長のプロセスだと思うんです。
なので人事担当者の方々には、「研修を実施して自己満足してませんか?」「みなさん、翌日には忘れてますよ」とお伝えしています。
具体的にはどういうトレーニングを実施するのでしょうか?
ワークショップ(少人数制によるグループトーク)をとにかくやりますね。
細かな作業をすると嫌がる人もいるので、テーマごとに3人組などで1番印象に残ったことや、気になったことを話し合ってもらう場を意識的に設けます。
要はインプット(受信)だけじゃ人は成長しないので、アウトプット(発信)しなければいけません。日本の講義(教育現場)はインプットだけで終わってしまうこと多くないですか?
話を聞くだけの成長率が5%程度だとすると、アウトプットすると50から60%ぐらいまで引き上げられるんですよ。そこから100%にもっていくには、実際に行動に移していくフェーズになります。リクエストがある企業には、実際にどうやって落とし込んでいくかのプログラムを盛り込んだりもしています。
こういった理由や実績をきちんとお伝えすると、ご理解いただけることが多く、リピートにつながっていると思います。
研修カリキュラムはどのように決めているのでしょうか?
お客様との事前打ち合わせでのヒアリングから、カリキュラムをカスタマイズして組み立てるようにしています。
研修企画者の方もさまざまな課題を持っているので、「ここは入念に喋った方がいいな」とか、「ここは必要なさそうだな」などの調整です。カスタマイズしたほうが、費用対効果は高くなりますよね。
会社さんによっては「ちょっと内気なメンバーが多いので今回はグループワークはできるだけ控えてください」という依頼があれば、もちろんその依頼に従った形で実施します。
例えば、通常3時間やっていますと提案はしますが、「いや今回は2時間しかないのに時間で終わらせてください」と言われたら、その要望に対してきちんと2時間で終わらせるのがプロの仕事かなと思っています。
ただ基本的に聞くだけの研修はしんどいじゃないですか。私の研修は「本当に3時間の研修でした?」と言われるくらい、あっという間に感じられると思います。ワークショップや参加者同士で話す時間を盛り込んでいる、つまり、参加型の研修スタイルなんです。
「プロコーチ・二ノ丸友幸」の土台を作ったのは両親から受けた教育背景
研修時によく質問される内容を教えてください
部下を持つ管理職対象であれば、ほとんど同じで、「部下の指導育成について」や「部下とのコミュニケーションの方法」ですね。
お母さんが子供の教育方針で悩むのと同じで、自分のやっている指導アプローチに自信満々の人はなかなかいません。あとは、部下のタイプも十人十色なので、指導方法がマッチする部下もいれば、しない部下もいるわけです。
なので、どういう接し方をしたらいいのかという点に相当ストレスを抱えている管理職の方々もいらっしゃいます。
若手は若手で、自分でレベルアップしないといけないことは何となく感じていても、どんなスキルを上げていけばよいか具体的に見えてない人が多いです。
なので、「”自考動型人材”になっていくために、こんなことを鍛えていきましょう」という点を、すなわち基礎的なビジネススキルについてお伝えしていきます。
多様な人材を指導・育成する力をどのように身に着けたのでしょうか?
両親から受けた教育を土台に、ラグビーの経験と留学した際のニュージーランドの民族文化は大きく影響していると思います。
中学、高校、大学、留学とさまざまな人がいるのが当たり前の文化で生活してきましたし、そもそもラグビー自体がそうなんですよね。
足が速い人もいれば、私のように身体が小さい人もいるように、メンバーのそれぞれ特性が違うんです。だから、一人ひとりに違いがあって当たり前だし、意見が違うくらい当たり前なんです。
ですが、日本の子どもたちは「正解一つ」を求めるような教育を受けてきているわけですよ。
たとえば、5+3=?という算数の問題に対して8が正解、というのが日本式ですよね。X+Y=8という問いかけにすると、1と7、2と6、4と4のどれも正解として扱われます。どちらが柔軟性を生むかというと、やはり後者ですよね。
“ディベート“の訓練も受けてきてないので、自分と意見が違ったら敵かのように扱ってしまいます。よくありがちな派閥(群れる)を作りたがるのも、受けてきた教育が理由かなと思うんですよ。
だからこそ、意見の落としどころを見つけることも難しく、会議で意見が対立すると何も決まらないということが、よくあるのではないでしょうか。
ご自身の教育観や指導論のルーツはどこにあるのでしょうか?
先ほども述べましたが、二ノ丸友幸という人格を作り出した根底は、両親の教育なんですよ。
両親が今で言うところの、コーチングとティーチングをうまく使い分けて指導してくれたのが大きいと思います。専門知識を持っていたわけではなく、私の性格を理解した上で性格に見合ったアプローチを大切にしてくれました。
私は自分の意見をきちんと持っており、頭ごなしに言われると、聞く耳を持たない子だったようで!笑
それを母親は理解してくれて、先に自分の意見を言わせてくれました。子供の意見ゆえの見当違いな内容だったとしても、まず聞いてくれて、その上で親として正してくれたり、他の選択肢を提示してくれたり。
例えば何か失敗した際には、失敗の原因を親から伝えがちだと思うんですけど、「なぜ失敗したかわかるか?」とまず失敗した原因を言わせてもらえました。
やはり自分で考えて自分で喋るということを、家庭内で小さい頃から繰り返してきたことで、”自考動型人材”の根底が形成されたのではないかな、と思います。
ご両親以外に影響を受けた方や経験はありますか?
とにかく、指導者から押し付け型の教育を受けてこなかったことが大きいです。小学校のときは野球、バスケットボール、中学からはラグビー。全て押し付け的なものの教育を受けてないんです。
自分の土台を作り上げた小中高の指導者が、やはり良かったんですよ。指導者に恵まれたんです。
指導者に恵まれたからこそ、辞めるという発想は一切なかったですし、毎日楽しんで自分から進んで自主的から主体的に発展して練習ができました。
一方で、指導者が嫌でスポーツをやめたことも聞くわけです。
なので指導者は、選手の将来まで左右する大きな影響を持つものだな、とそこで実感しました。スキルばかり教えるんじゃなくて、言動一つにおいても大きな影響を与える責任ある存在だなと。
だからこそやりがいもあるなと思ったし、自分のように「まるさんと出会ってよかったな」とか、「まるさんにに出会ったから今があるな」と思ってもらえるような指導者になりたいと思ったのが一つのきっかけですね。
スポーツとビジネスの二刀流(デュアルキャリア)
スポーツとビジネスの2軸で活動されたきっかけはあるのでしょうか?
スポーツしかできない人間になりたくなかった、というのが大きいです。これも親の教育で、幼い頃から文武両道というか、勉強とスポーツを両立するのが当たり前という考え方、環境を両親が作ってくれたり、さまざまな話をしてくれましたね。
ラグビーでトップリーガー(元ジャパンラグビーリーグワン)になるときも、ラグビーでのプロ契約と社員をしながらの契約のどちらも選べたのですが、社会人というフェーズでは仕事とラグビーを両立したいと思っていました。この考え方が根付いていたので、プロ契約は選ばずに社員選手としてやっていくことを選んでいます。
なので、独立するときも、ラグビーのコーチとしてだけじゃなくて、ビジネスのことも知っていることが重要だなと自然と考えました。
卒業生から「就職のことを丸さんに聞こう」とか、「会社での悩みを相談したい」とか言われると嬉しいです。
正直、私がラグビーしか知らなかったら、ビジネスや人生に関する相談はそこまで来ないと思うんですよね。だからラグビー以外の相談が来るのは、スポーツとビジネスのデュアルキャリアを実践している私にとっては、幸せを感じる瞬間です。
実際、ビジネスの世界の研修にスポーツの実例を持ち込んだり、スポーツの研修のときにビジネスの話を持ち込んだりと、一つの強みになっていると思います。
ビジネスの研修で受講した方から嬉しい反応はありますか?
受講後に、SNSで研修の感想やお礼をダイレクトメールを送ってくださる方が多数いらっしゃいます。「言われたことを意識して行動すると、こんな良い変化が生じました」といった報告を具体的なエピソードを交えて、手間をかけてダイレクトメールなどで送ってくださるときは、ありがたいと思いますね。かなり嬉しいです。
研修の感想を伝えるだけなら、アンケートという手段もあります。もちろんアンケートも無記名ゆえのリアルな感想が出てくるという良さはあると思います。ですが、直接メッセージがくるのは、どうしても感想や気持ちを伝えたいなと思ってくださっていると思うので、一番嬉しさを感じますね。
あとは研修を受けた人たちが「この研修が良かった」ということを、違う会社の人に紹介して、口コミ等で広めててくださるのも嬉しい瞬間です。そこから来る新規オファーは、この上なく幸せに感じますよね。
数値化できない分、研修は価値を伝えるのがものすごく難しい商品だと思うんです。だからこそ信頼できる人の紹介は、それだけ力があると感じています。
ご自身の研修を検討されている方にメッセージをお願いします。
あれこれ綺麗事を言うよりも、実際に見聞きしていただくことが大切かなと思っています。なので、「とにかく私に任せてください、とにかく一度、研修をさせてください!」とお伝えしてしまいます。それで駄目であれば私も諦めがつくし、「自分の力がなかったんだな」と思えますしね。
今まで受けたことがない、他には真似できない研修だと自負していますので、これまで受けたことない研修を、ぜひ企画していただければ幸甚です。
新たな出会いを楽しみにしております。よろしくお願い申し上げます。
二ノ丸友幸さんの基本情報
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