キャリアの方向性や選択を明確にするためのツールとして、エドガー・H・シャインが提唱した「キャリアアンカー」は、多くの人々にとって非常に有用な概念となっています。
キャリアアンカーは、個人のキャリアにおける深層の動機や価値観を明らかにし、それを基に自分自身のキャリアの方向性や選択を考える手助けとなります。
本記事では、キャリアアンカーの基本的な概念から、その3大要素、さらには8つのカテゴリーについて詳しく解説しています。キャリアの選択や方向性に迷っている方、自分自身のキャリアに何を求めているのかを明確にしたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
キャリアアンカーとは
キャリアアンカーとは、個人がキャリアにおいて最も価値を置く要素や、自身の仕事に対する本質的な動機を示すものです。
エドガー・H・シャインが提唱したこの概念は、人々が自分のキャリアに何を求めているのか、どのような仕事が自分に合っているのかを理解する手助けとなります。
キャリアアンカーは、技術的/機能的能力、経営的能力、自主独立、安定/保証、サービス/専念、純粋な挑戦、ライフスタイル、そしてチームワークの8つのタイプがあります。これを理解することで、自分のキャリアの方向性を明確にし、より満足度の高いキャリアを築くことができます。
キャリアアンカーの3大要素
キャリアアンカーは、エドガー・H・シャインが提唱した概念で、個人のキャリアにおける深層の動機や価値観を示すものです。キャリアアンカーは、以下の3つの要素「能力」「動機」「価値観」を中心に構成されています。
これらの3つの要素は、個人のキャリアの方向性や選択を理解する上で非常に重要です。
能力
この要素は、個人が持っているスキルや才能、そしてそれらをどのように活用しているかを示します。人々は、自分が得意とする能力やスキルを活かすことで、仕事の達成感や満足感を得ることができます。
例えば、技術的なスキルやコミュニケーション能力、リーダーシップなどが考えられます。
動機
この要素は、個人が仕事をする上での主要な動機や推進力を示します。人々は、自分の内的な動機に基づいてキャリアの方向性を選択し、それに合わせて行動します。
例えば、挑戦や成果を追求する動機、他者をサポートする動機、独立性を求める動機などが考えられます。
価値観
この要素は、個人が仕事やキャリアにおいて最も重視する価値や信念を示します。価値観は、個人の行動や選択の背後にある基盤となるもので、それに基づいてキャリアの方向性や選択を行います。
例えば、安定性や自主性、チームワークの重視、社会的な影響を持つ仕事を求める価値などが考えられます。
キャリアアンカーの8つのカテゴリー
キャリアアンカーにはエドガー・H・シャインが提唱した8つのカテゴリーがあります。それぞれのカテゴリーは、個人がキャリアにおいて最も価値を置く要素や動機を示しています。
これらの8つのカテゴリーは、個人がキャリアにおいて何を最も重視しているかを示すものであり、それぞれのカテゴリーには独自の価値観や動機があります。キャリアアンカーを理解することで、自分自身のキャリアの方向性や選択をより明確にすることができます。
技術的/機能的能力
技術的/機能的能力を重視する人々は、特定のスキルや知識を深め、それを活用することに大きな価値を見いだします。
彼らは専門家としての地位や認識を追求し、その分野での専門的な成功を目指します。管理職やリーダーシップの役職よりも、専門的な役割での成功や認識を重視する傾向があります。
これらの人々は、新しい技術や方法を学ぶことに情熱を持ち、常に自分のスキルや知識を更新し続けることを求めます。自分の専門分野での挑戦や新しい問題解決の機会を追求し、その過程での学びや成果を大切にします。
経営的能力
経営的能力を重視する人々は、組織やチームの管理やリーダーシップに関心があり、そのような役割での成功を追求します。組織の方向性を決定し、チームやプロジェクトを効果的に管理することに価値を見いだします。
他者との協力やコミュニケーションを重視し、組織全体の成功のために貢献することを目指し、組織のビジョンや目標を明確にし、それを達成するための戦略や計画を策定する能力を持っています。
自主独立
自主独立を重視する人々は、他者の指示や制約を受けずに自分の方法で仕事を進めることを好みます。自分自身のボスであることや、独立した職業を持つことに価値を見いだします。
自分の意見や考えを自由に表現し、自分のペースで仕事を進めることを重視し、自分のビジョンや目標に基づいて行動し、外部からの干渉や制約を避けることを求めます。
安定/保証
安定/保証を重視する人々は、安定した職業や経済的な安定を追求します。組織や職場での長期的な安定や保証を重視し、リスクを避ける傾向があります。
安定した収入や福利厚生、長期的な雇用契約など、経済的な安全性を求め、不確実性や変動を避け、安定した環境での仕事を好む傾向があります。
サービス/専念
サービス/専念を重視する人々は、仕事を通じて他者や社会に貢献することに価値を見いだします。特定の原因や目的に専念し、それをサポートする仕事を追求します。
社会的な影響や変化をもたらすことを目指し、そのための活動やプロジェクトに情熱を持って取り組みます。自分の仕事が他者や社会全体のためになることを重視し、その成果や影響を大切にします。
純粋な挑戦
純粋な挑戦を重視する人々は、困難な問題を解決することや、競争を乗り越えることに価値を見いだします。常に新しい挑戦を求め、それを克服することでの成功を追求します。
難易度の高いタスクやプロジェクトに取り組むことを好み、その過程での学びや成果を大切にし、自分の能力やスキルを試す機会を求め、それを通じて自己成長を追求します。
ライフスタイル
ライフスタイルを重視する人々は、仕事と私生活のバランスを重視し、ライフスタイル全体の調和を追求します。仕事が私生活や家族との関係に影響を与えないようにすることを重視します。
柔軟な勤務時間やリモートワークなど、自分のライフスタイルに合わせた働き方を求め、仕事と私生活の両方での満足度を追求し、そのバランスを保つことを重視します。
チームワーク
チームワークを重視する人々は、他者との協力やチームでの作業を重視します。彼らは、チームの一員としての成功や、チーム全体の成功を追求します。
他者とのコミュニケーションや協力を重視し、共同での成果や目標達成を大切にし、チーム内での役割や責任を明確にし、それを通じてチーム全体の成功を目指します。
キャリアアンカーに似ている概念
キャリアアンカーに似た概念として「キャリアドライバー」や「ワークバリュー」が挙げられます。これらの概念は、個人のキャリアにおける動機や価値観を中心に考える点で共通しています。それぞれの概念の特徴と違いを以下に説明します。
キャリアドライバー
キャリアドライバーは、個人がキャリアにおいて追求する価値や目標を示すもので、キャリアの方向性や選択を駆動する主要な要因となります。
例えば、昇進や高収入、専門知識の習得などがキャリアドライバーとして考えられます。
ワークバリュー
ワークバリューは、仕事における個人の価値観や優先順位を示すもので、仕事の内容や環境、人間関係など、仕事に関連するさまざまな要素に対する価値観を反映します。
例えば、チームでの協力や独立性、安定性などがワークバリューとして考えられます。
キャリアアンカーとの違い
キャリアアンカーは、キャリアにおける本質的な動機や深層の価値観を中心に考える概念です。これに対して、キャリアドライバーはキャリアの方向性を駆動する要因、ワークバリューは仕事に関連する具体的な価値観を中心に考えます。
キャリアアンカーは、個人がキャリアの中で最も重視する要素を特定するのに役立ちます。一方、キャリアドライバーやワークバリューは、キャリアの選択や仕事の内容に関する価値観を明確にするのに役立ちます。
これらの概念は、それぞれ異なる側面を強調していますが、全てが個人のキャリアにおける価値観や動機を理解するための重要なツールとなります。
概念 | 定義 | 主な特徴 |
---|---|---|
キャリアアンカー | キャリアにおける本質的な動機や深層の価値観を中心に考える概念 | 個人がキャリアの中で最も重視する要素を特定するのに役立つ |
キャリアドライバー | キャリアにおいて追求する価値や目標を示すもの | キャリアの方向性や選択を駆動する主要な要因 |
ワークバリュー | 仕事における個人の価値観や優先順位を示すもの | 仕事の内容や環境、人間関係など、仕事に関連する具体的な価値観 |
キャリアデザイン研修で具体的なキャリアデザインの方法やスキルを習得
キャリアデザイン研修は、キャリアアンカーの概念を基に、参加者が自分自身のキャリアの方向性や選択を具体的にデザインするための方法やスキルを学ぶ研修です。キャリアデザイン研修を受講することで、参加者は自分のキャリアアンカーをより深く理解し、それを基にした具体的なキャリアデザインの方法やスキルを習得することができます。
個人の人生設計と同じように、今はビジネスの現場でも将来を見据えた設計図を作ることが注目を浴びています。これは『キャリアデザイン』と呼ばれ、社員のキャリアデザインをサポートする企業が増えています。ここではキャリアデザインが必要とされている背景と、具体的な進め方について解説します。