指導係と若手社員

「言葉づかいがなれなれしい」「挨拶をしない」「電話での応対ができない」

職場でのコミュニケーションにおいて、特に先輩社員や上司から上記のような状況について、どうしたら良いのかわからないという悩みをよく聞きます。
これらを総称してジェネレーションギャップと呼ばれていますが、それは本当にジェネレーションギャップなのでしょうか。

これらは先輩社員と新入社員の間に起こりがちですが、今に始まったことではなく、数十年にわたって言われ続けていることです。

社会人経験が乏しいことによって起きているギャップなのか、ジェネレーションギャップなのか、はたまた別の原因によって発生してしまっているのか、観察し分析する必要があるように感じます。

そこで今回は、ジェネレーションギャップとは何なのかを正確に理解し、それ以外のギャップの種類や発生理由、解決方法などについて解説します。

ジェネレーションギャップとは何か?をわかりやすく解説

マンパワーグループアンケート結果データ
参照:マクロミル2012年 新社会人の意識調査より

ジェネレーションギャップとは、世代や時代、年齢などによる文化、価値観、常識、思想の相違(ズレ)のことです。

「世代」というのは、単に生まれた年が同じ、または近い集団を指す場合(プロ野球における松坂世代など)以外にも、世相や時代背景を共有し価値観や行動様式を同じくする集団を指す場合や、現役世代・リタイヤ世代といったライフサイクルによって分別した集団を指す場合もあります。

いずれの場合においても、それぞれの世代の間における価値観や行動様式の違いが、葛藤や軋轢を生じさせ、時には精神的に断絶させてしまう可能性を持っています。

技術革新による生活環境の変化は特にジェネレーションギャップを育てていきます。
家にお風呂がなかった世代にとって、銭湯は生活の場ですが、家にお風呂があることが当たり前の世代にとっては非日常の憩いの場という認識です。

このように、最初から存在していたのか、それとも途中から生活様式が変化したのかによって、捉え方が全く違います。

日本で初めてiPhoneが発売されたのは2008年ですが、それより以前から携帯電話を使用していた世代にとってはあくまでも電話という認識であるのに対して、最初にiPhoneを手にした世代にとってはPCでもあり、オーディオ機器でもあり、カメラでもある複合機器という認識です。

ジェネレーションギャップを感じた時には、どうしてそのようなギャップが生じたのかという背景をしっかりと理解しようとする姿勢が、上の世代にとっても下の世代にとっても、重要になってくるわけです。

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職場で感じるジェネレーションギャップ事例

マンパワーグループアンケート結果データ
参照:マクロミル2012年 新社会人の意識調査より

それではここで、ビジネスシーンにおいて具体的に発生しているジェネレーションギャップの事例について考察してみましょう。

電話の受け答え

携帯電話が日本で本格的に普及し始めたのは1990年代からで、それまでは家に一台の固定電話しかありませんでした。

かかってきた相手の番号が表示されることもありませんでしたので、電話にはとにかく出て、こちらの名前を名乗り、相手が誰なのかを聞き、誰宛に電話を欠けてきたのかを確認することが常識とされていました。

しかし今では、電話はひとり一台が常識であり、電話の相手が誰なのかが表示されていますので、電話に出る際に名乗る必要はありませんし、相手が誰なのかを聞く必要もありません。

むしろ、オレオレ詐欺の撃退などの防犯上の理由から、「知らない相手からの電話には絶対に出ないようにする」「最初に名乗らない」ということが常識となりつつありますが、これは固定電話世代の常識では考えられないことです。

社会人になり会社にかかってくる電話は、個人の携帯電話にかかってくるのとは違い、相手が誰なのかはわからないですし、誰宛の電話なのかも分かりません。

会社の名前を名乗り、相手の所在を確認し、要件を聞いて対応しなければならないわけですが、携帯電話世代にはこのような体験をしたことがないわけですから、出来なくて当然なのです。

電話応対の常識は、携帯電話世代と固定電話世代とによって全く違っており、会社宛てという固定電話の応対経験が全くないから出来ないのだ、ということを理解してあげることこそが、ジェネレーションギャップを生まないための対処方法となり得るわけです。

メモや議事録などの取り方

上司から指導を受けている時、メモ用紙や手帳を取り出して書き込んでいると、「忘れないようにメモをとっていて、感心な社員だな」という印象を与えます。

しかし、そこでいきなり携帯電話を取り出してイジリだしたら、その上司はどう思うでしょうか。

部下にとって、忘れないようにメモを取る行為自体は変わらないのに、全く違う印象を与えてしまう可能性があるということです。
このようなケースの場合、上司世代の理解不足を指摘することが多いですが、iPhone世代である部下の側にも大きな問題があります。

「忘れないようにiPhoneでメモをとっても良いでしょうか?」
と一言聞いて、了承を得たうえでiPhoneを取り出せば、それが携帯電話ではなくデジタル文具であり、メモを取るために使っているのだということが認識できますので、誤解が生じることはないわけです。

同じような事例として、会議が終わってホワイトボードなどに書かれている内容は、紙に文字で書き写さなくても、写真を取れば事足りるのですが、カメラがデジタルではなくフィルムであった世代にとっては、かなり抵抗があるようです。

この場合も、何も言わず無言で写真を撮るのではなく、「議事録を作成するために、写真で記録させていただいてもよろしいでしょうか?」と声をかければ、全く問題はない筈です。

iPhone世代の方は、全てを紙に書きとるしかなかった世代の気持ちを配慮するだけで、印象は全く違ってくるということを覚えておいてください。

残業や飲み会よりも私生活を優先

私生活を顧みず、仕事人間として徹してきた世代には、生活レベルをあげたいという欲求を叶えてくれる「出世」という道が明確に見えていましたし、多くの会社員は右肩上がりの経済成長の中で「出世」を体現することができていました。

しかし現代の企業組織は大きく変化してしまい、私生活を犠牲にし、我慢して努力したからと言って、必ずしも「出世」できる世の中ではなくなりました。

若者は昇進や昇格に興味がない訳ではなく、成功者のロールモデルが周囲にいなくなってしまったために、目標を失ってしまったと言えるでしょう。

マンパワーグループアンケート結果データ
参照:マンパワーグループ「8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは?」

問題の本質は、若者の価値観が仕事重視から私生活重視に変わったことではなく、現在の社会(企業)環境では仕事に打ち込んでも意味がないと思われてしまっていることにあります。

飲み会に出る理由は力を持っている上司に気に入られたいからであり、残業するのはトップダウンが当たり前であったマネジメントスタイルに従わざるを得なかったからです。
飲み会の参加や残業は、必ずしも自ら進んで行っていたわけではありません。

価値観ではなく、ビジネス環境の変化によって起きているジェネレーションギャップであることを、まずは認識しましょう。

デジタル技術の発達や男女雇用機会均等法などの浸透による家庭環境の変化などの影響を受けている現代の価値観に合致した、管理職の役割と魅力(報酬制度など)を企業が独自に設計し、従業員の間に浸透させなければ、従業員の意識は変わりません。

また「仕事の成功=管理職」ではない、キャリアプランが描けるような設計も、同時におこなっていく必要性があります。

報告の仕方

デジタル技術の発達は、人と人とのコミュニケーション手法を大きく変えてしまいましたが、これは何も今回初めて起こったことではありません。

何か重要な依頼や相談、報告をする場合、電話などで済ませるのではなく、直接会いに行って話をするべきだという価値観は、昔は存在していました。

しかし、電話が意思伝達手段として一般化することで、この価値観は次第になくなっていくことになります。
その結果として電話は新たな地位を獲得しました。
その一方で、メールやチャットツールでは重要な連絡をするべきではなく、電話で直接話をするべきだというジェネレーションギャップを新たに生み出したというわけです。

このように、電話が非日常であった時代と日常にあった時代の間にはジェネレーションギャップは存在するし、メールやチャットツールを日常的に使用する時代に育った世代とそうでない世代に間にジェネレーションギャップは発生することになります。

歴史は繰り返し、その問題の本質は同じです。

今後、感染症対策によって、人の移動や直接会って触れ合うことに制限されることが当たり前の世代と、そうではない世代とのジェネレーションギャップは確実に発生するでしょう。

若者が口頭で報告を行わない理由は、上司の時間を煩わせてしまうことに抵抗を感じ、申し訳ないと思うことからの行動であるようです。

相手の行動の真意を理解しようと知る姿勢が、今後も重要になるということです。

自分からあいさつすることができない

人事担当、教育担当の方からお話を伺うと、「とても恥ずかしいのですが、”おはようございます”や”お疲れ様でした”でさえ自分からできる社員が少ないんです」というお悩みをよく聞きます。

自分から挨拶ができない人が増えた、という問題を考えるうえで、忘れてはならないのは1988年から1989年にかけて発生した、東京・埼玉連続幼女誘拐事件です。
この事件によって世の中の常識は一変しました。

この事件以前は学校や家庭において「地域の人や知らない人にも大きな声で笑顔で元気にあいさつをしましょう」と教育されていましたし、それが常識でした。
しかしこの事件以降は、知らない人に挨拶されても、返事をしないようにと言われて育っています。誘拐されるリスクから回避するためです。

つまりこの世代にとって、「知らない人にはあいさつをするべきではない」ということが常識なのです。

もちろん会社の上司や先輩社員は「知らない人」ではありません。しかし、挨拶をすることが習慣化していないわけですから、体に身についていないので、出来なくても当然です。

この世代には、まずあいさつが何のために必要なのかを理解してもらうところから始めなければなりません。

職場では円滑なコミュニケーションが求められるわけですが、挨拶はコミュニケーションを取るきっかけにもなり、それが浸透していくことで誰にでも話しかけやすい雰囲気づくりにもつながっていきます。

「知らない人には挨拶をするべきではない」という常識を持っている世代が存在していることを理解し、その世代に対してあいさつの必要性を教育することを始めてみてください。

新入社員研修の時に丁寧に教えてもらえるよう、研修会社へリクエストすることもおすすめです。

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職場のジェネレーションギャップを放置するリスク

ジェネレーションギャップが発生する理由は常に存在しており、どちらが正しくて、どちらかが間違っているということでは決してありません

しかし、その状況を放置しておくと、管理職側は

「そんな常識もわからないのか」
「いつになったら出来るようになるのか」

という感情が生まれ、断絶に発展してしまう恐れがあります。

若者側には、自分自身の能力の問題ではないことであるにも関わらず、自信を無くしてしまったり、質問したくてもできないという心理的な壁が出来てしまう可能性が生じてしまいます。

壁ができてしまうとコミュニケーション不足が発生し、ゆくゆくは重大な問題を引き起こしかねません。
お互いの理解を深め、信頼関係を構築する作業は、企業(人事)に課せられた問題としてしっかりと捉えましょう。

人事担当者が押さえておくべき指導ポイントとは

企業に新入社員が入社すれば、そこに必ず取ってよいほどジェネレーションギャップが発生します。

新入社員の立場からすると、学生時代は常に同世代同志とのコミュニケーションしか取っていないため、ジェネレーションギャップは初めての経験です。従って、その対処法について、新入社員研修でしっかりと学ぶ必要があります。

一方で先輩社員の立場からすると、ジェネレーションギャップの存在する環境には慣れている訳ですので、新入社員に対して何に配慮してあげるべきなのかを理解し行動する必要があります。

研修などを活用し、ジェネレーションギャップの本質を社員が理解し、お互いが配慮し合う文化を醸成するような指導を行っていきましょう。

共感力を身に着ける

共感力とは、「他者の考えや意見を理解しようという姿勢を持って、相手の立場になって感じること、喜怒哀楽といった感情にも寄り添うことができる力」を指しています。

共感力は、ジェネレーションギャップを考える際、相手の生まれた時代背景や文化、価値観を理解しようとする姿勢につながります。

ルールや約束事を共有する

ある世代では常識だと思っていることでも、世代が違えば違う常識が存在します。
それぞれが当たり前だと思っていることでも、世代間のギャップが生じているのであれば、組織間でのルールや約束事をつくって、皆で守るようにするのです。

例えば会社を休むことを伝える場合のコミュニケーションツールは何にするのかを決めておけば、「大事な連絡を電話でしてこない」といった不満をなくすことができます。

管理層の常識で一方的に決めるのではなく、各世代の代表が集まって話し合いを行って決めるというプロセスを大切にしてください。
議論をしなければ、なぜそのようなルールや約束事にしたのかについて考えることがなくなってしまいます。

理由を理解することが一番大切だということを忘れないようにしましょう

一対一でのコミュニケーションスキルを身に着ける

若者が「飲み会」に参加したがらないからといって、上司や先輩社員とコミュニケーションを取ろうとしていないと考えてしっているのだとしたら、問題の本質から外れているのかもしれません。

大人数で騒ぎ、ストレスを発散するような飲み会は参加したくないが、上司や先輩とはじっくりと話をしたいと考えている場合があります。

ここで大事になってくるのは上司や先輩社員の「傾聴力」です。

ジェネレーションギャップを感じた際、一方的に常識外れの行動であると決めつけるのではなく、どうしてそのような行動をとったのかについての理由を丁寧に聞いてあげて、理解してあげるという姿勢を見せる必要があります。

もしそれが、ジェネレーションギャップではなく、社会人としてとるべき行動ではないのだとすれば、理由を含め指導していく必要がありますが、もしかしたら自分たちの側にも問題があるのではないかという姿勢を示すことも大切です。

相手が話を聞いてくれるという姿勢を感じることができれば、安心感につながり、信頼関係が生まれます。
事実、マンパワーグループが2019年に行ったアンケートでは、”上司を信頼する理由”のトップは「部下の話を真剣に聞く」という結果が出ています。

ジェネレーションギャップの問題は、むしろ相互理解のチャンスであるという考え方を、皆が持つような社風を作り上げていきましょう。
上司を信頼する理由のトップは「部下の話を真剣に聞く」
参考:マンパワーグループ株式会社「若手世代の約8割が「上司を信頼している」と回答!部下から見る「信頼できる上司像」とは

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ほんの少し部下とのコミュニケーションを増やすだけで、驚くほど部下のやる気は変わります。この研修では1回の面談で部下のやる気をMAXに引き出す1on1ミーティングの具体的なやり方を解説いたします。

一人ひとりのモチベーションアップが組織を活性化し業績を最大にする

職場のジェネレーションギャップは研修で解決できる

ジェネレーションギャップが埋まらない一番の理由は、お互いがその存在を正しく認識していないことだと考えられます。
お互いが自分たちの考え方や価値観に固執するのではなく、お互いの世代のことを考慮し、理解する努力が必要です。

知識不足が大きな原因でもありますので、研修やセミナーを実施することで解消することが可能です。
会社全体に相手を理解し、配慮しようという文化が醸成できれば、正しい社風を作り上げることとなり、企業価値を高めることにもつながります。

ジェネレーションギャップの問題を考える際、新入社員を含めた若手社員の問題として目が行きがちですが、上司や先輩社員側の問題でもありますので、両者に気を配った施策を実行する必要があるのです。

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