マーケティングと営業に溝がある原因と溝を埋める方法

マーケティング部門と営業部門は売上向上という同じ目標を持っていますが、しばしば対立して溝が生まれてしまいます。この記事では、なぜ溝が生まれるのか、溝を埋めるにはどうしたら良いのかを解説していきます。

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マーケティング部門と営業部門間の溝とは

チームミーティング
本来であれば、マーケティング部門と営業部門は連携し、相乗効果を出さなければなりません。しかし、両者の間に溝があり、お互いに不満を抱えている企業が多いのが現実です。

この記事ではマーケティング部門と営業部門の溝を埋めるための方法を解説していきます。その前に、まずはマーケティング部門と営業部門それぞれの役割を改めて押さえていきましょう。

販売チームとマーケティングチームが緊密に連携している組織は、他の組織よりも顧客維持率が36%高く、販売終了率が38%高くなっています。言い換えれば、営業チームとマーケティングチームの不整合により、売上が減少し、パイプラインが長くなります。同じ会社でありながら、チームが他チームを信頼できないと感じた場合の士気低下への打撃は言うまでもありません。
参照:DashThis『Bridge the Gap Between Marketing and Sales』

マーケティング部門の役割

マーケティング部門の役割は、販売戦略を立てることです。企業の商品やサービスを欲しがるのは誰なのかを考え、誰に何をどのように販売するのかを考えます。

商品が売れる環境を整えるために、市場調査を行ってどのような商品にニーズがあるのかを調べたり、ターゲットが商品を手に取ってくれるように宣伝したりします。

マーケティングの仕事は、「商品が売れる流れを作る仕事」とも言い換えられます。優れた技術を詰め込んだ製品を作って店頭の棚に並べておくだけでは売れない時代なので、商品が売れる導線を作るマーケティングの仕事が重要になります。

営業部門の役割

営業部門の仕事は、商品やサービスを売ることです。マーケティングや商品開発の成果が販売に現れるので、営業部門の成果は会社全体の成果を表すと言っても過言ではありません。

営業部門では見込み客との商談によって商品の魅力を伝え、購入してもらうための努力をします。また、商品の改善点について顧客から直接アドバイスをもらうことがあるので、マーケティング部門や商品企画部門にフィードバックすることも営業部門の重要な仕事です。

マーケティング部門の役割が「商品が売れる流れを作ること」なら、営業部門の役割は「商品を売ること」です。商品を売るという観点において、両部門は同じ目標を持っているのです。

マーケティング部門が営業部門に抱える不満

マーケティング部門と営業部門は同じ目標を持っているのに、度々すれ違い、溝が深まってしまうことがあります。溝がある状態では、マーケティング部門の情報を営業部門が活かそうという気持ちになりませんし、営業部門のフィードバックをマーケティング部門が素直に受け入るのは難しいです。

そこで、お互いがどのような不満を抱えているのかを理解し、溝の解消に努めましょう。まずは、マーケティング部門が営業部門に抱える不満について解説していきます。

せっかく引き渡した見込み客を放置している

マーケティング部門では、調査や分析から見込み客をリストアップしています。新規顧客の獲得を狙い、営業部門に見込み客のリストを渡しているのですが、営業部門が充分に活用しないことを、マーケティング部門が不満に思っています。

なぜ営業部門が見込み客を放置してしまうのかというと、ほかの顧客への営業で精いっぱいな状態だからです。あともう一押しで購入に結び付きそうな顧客や、これまでの取引実績から次も購入してくれそうな顧客の対応を行っており、新規の見込み客への対応に手が回らないのです。

しかし、新しい顧客を獲得しなければ、いずれは顧客が減少して売上は先細りしてしまいます。見込み客を放置することは、長期的に見ると大きな損失につながることについて、営業部門全体として理解を示す必要があります。

せっかく作成して提供した資料やコンテンツを活用しない

同様に、マーケティング部門が作成した資料やコンテンツを営業部門が活用しないことも、マーケティング部門が不満を募らせる原因のひとつとなっています。

営業部門としては、新しい資料やコンテンツを使うために勉強する時間があるなら、1件でも多く営業をかけたほうが良いと考えます。その考え方は間違いではないですが、1件ずつの営業の効率を高められれば、顧客を増やしたり自分の負担を軽減したりできます。

そのために活用したいのが、マーケティング部門の資料やコンテンツです。マーケティング部門には顧客のニーズが蓄積されているので、資料やコンテンツも顧客にとってわかりやすいものになっています。営業部門が積極的に活用すれば、営業の効率が良くなって営業部門にとっても大きなメリットがあります。

営業だけが売上を持ってきているような態度をしている

マーケティング部門には、「営業だけが売上を持ってきているような態度を取られるのが嫌」といった不満も溜まっています。同じ目標を持って仕事をしている以上、偉そうな態度を取られては誰だって不満が溜まります。

商品やサービスの販売において、営業部門はマーケティング部門からバトンを受け取り、販売というゴールを達成するのです。陸上のリレーで好記録が出るのは、誰か1人のおかげではなく、全員がレースに貢献したからです。営業部門とマーケティング部門にも同じことが言えて、良い成果が出たなら両方の部門がしっかり貢献できたからです。

会社組織に上限関係はなく、営業部門とマーケティング部門のどちらが偉いといった構造ではありません。営業部門が偉いような態度を取ってしまった経験がある人は、これから改めていきましょう。

営業部門がマーケティング部門に抱える不満

一方で、営業部門もマーケティング部門に対して不満を抱えています。

引き渡された見込み客の確度が低いけど、何やってるの?

マーケティング部門から見込み客を引き渡されても、なかなか成果に結びつかないと、営業部門としては「マーケティングなんて意味がない」と感じてしまいます。

見込み客が販売につながらない理由は多々考えられますが、マーケティング部門の分析が正確でなかったり、マーケティング部門の情報が正しく営業に伝わっていなかったりする原因が考えられます。

成果につながらない分析をマーケティング部門にフィードバックしたり、マーケティング部門から正しく情報を引き継いだりするためにも、営業部門とマーケティング部門は良い関係を築かなければなりません。溝がある状態では、マーケティングを営業に活かせるわけがないので、まずは溝の改善に努めましょう。

マーケティングって何?売上につながるとは思えない

営業部門の担当者の中には、マーケティング部門の存在意義を理解できない人や、売上につながるとは思っていない人もいます。なぜこのような不満が生まれるのかというと、マーケティング部門の情報が役立った経験がなかったり、営業部門でマーケティングの情報を役立てる仕組みがなかったりするからです。

こうした不満を抱く背景には、営業部門がマーケティングの意味を深く理解できていないことがあります。営業部門はこれまでの経験があり、それに基づいた営業で充分に成果を出せているのでしょう。しかし、マーケティング部門の情報を活用すれば、もっと高い成果に結びつくことを丁寧に説明し、理解してもらう必要があります。

営業現場を理解していない、理想ばかり押し付けてくる

会社の外に出て直接顧客と商談を行う営業部門から見ると、マーケティング部門は現場を理解せずに理想ばかり押し付けてくると感じられることがあります。マーケティングはオフィスの中で作業している楽な仕事だ、という偏見を持っている人もいるでしょう。

こうした不満を解消するには、お互いに歩み寄るしかありません。営業部門はマーケティング部門に対して偏見を取り除いて接する必要があります。一方、マーケティング部門も営業の現場を理解できるよう、営業部門にヒアリングを行うなど対応が必要です。

このような溝を解消するためには、相手部門の状況への理解を深めることが重要です。お互いに事情をヒアリングしたり、合同研修を行ったりして、協力できる体制を築いていきましょう。

マーケティング部門と営業部門の溝を埋める方法

談笑する社員
本来、相乗効果を生むためにマーケティング部門と営業部門があるのですが、上述のようにお互いに足を引っ張り合っているケースがあります。

マーケティング部門と営業部門の溝を埋めるためには、どうしたら良いのでしょうか。溝を埋めるための具体的な方法を解説していきます。

セールスイネーブルメントへの理解を深める

マーケティング部門と営業部門の溝を埋めるためには、それぞれがバラバラに動いていては成果を最大化できないことに気づかなくてはなりません。そのためにも、セールスイネーブルメントの考え方を学びましょう。

セールスイネーブルメントとは、組織として営業の成果を出していくための取り組みです。より高い成果を出すためにも、部門がバラバラに動くのではなく、組織として営業活動に力を入れていくことが重要です。営業は営業部門だけの業務でないことを、マーケティング部門・営業部門の社員に浸透させましょう。

企業向けに研修を行う会社では、セールスイネーブルメントについて学べる研修も提供しています。新しい考え方で書籍などでは独学しにくいので、研修で体系的に学ぶのがおすすめです。

MA(マーケティングオートメーション)を導入する

システムを使ってマーケティング部門と営業部門を橋渡しすることも、両者の溝を埋めるために有効です。MA(マーケティングオートメーション)を導入し、自動で情報を橋渡しできるように環境を整えましょう。

MAは、顧客情報を収集して見込み客を見つけ、DMなどの働きかけにより見込み客を顧客に育成していくツールです。顧客の反応を分析し、どれくらい自社に興味を持っているかを可視化することが可能です。こうした見込み客の温度感を営業部門に連携すれば、営業担当者も戦略を立てやすくなり、マーケティングと営業の相乗効果が望めます。

マーケティング部門と営業部門との間で情報の連携がうまく行っていない場合は、MAを導入して橋渡しを強化していきましょう。

共通の評価軸を導入する

マーケティング部門と営業部門が同じ目標に向かって協力できる体制を築くためにも、共通の評価軸を用いて成果を評価しましょう。同じ評価項目やKPIを設定し、両者の目指す方向が矛盾しないようにするのです。

マーケティング部門と営業部門がいがみ合ってしまう背景には、売上の向上という目標に対し、手近な目標が異なることが挙げられます。どちらも売上向上が最終目標なのに、マーケティング部門は見込み客を増やすことを、営業部門は契約数や販売額の向上を目標として行動しているため、ときに矛盾した行動を起こしてしまうのです。例えば、見込み客の数を増やしたいマーケティング部門が、見込み度合が低い顧客を営業に渡してしまう、といった行動です。

マーケティング部門と営業部門とで目指す方向が異なると、目的も手段も噛み合わなくなるので、成果につながりません。共通の評価軸を導入し、協力できる体制を築きましょう。

フィードバックの機会を設ける

マーケティング部門は見込み客を営業部門に引き渡すので、営業部門からフィードバックする機会を設けましょう。マーケティング部門は、見込み客がどれくらい成果に結びついたのかを知りたがっています。成果につながらない場合でも、改善のためにフィードバックするべきです。

両部門の間に溝がある背景には、マーケティング部門は「見込み客を引き渡しているのに、営業が対応してくれない」と思っており、営業部門は「マーケティング部門の見込み客情報は使えない」と思っている、といった原因があります。営業部門は、マーケティングの情報が使えないと思っているなら、それをマーケティング部門に伝えて改善してもらいましょう。

客観的な指標を用いてコミュニケーションを行う

両部門の間の溝を埋めるためには、お互いに歩み寄って考え方を理解し合うことが重要です。コミュニケーションの機会を増やすだけでも溝の改善に有効ですが、ビジネスの会話をするときは数字など客観的な指標で話し合いましょう。

対立している部門が会話をしようとしても、「自分が上、相手は下」と思い込み、威圧的に話してしまう人がいます。本来、会社の部門に上下関係はありませんが、溝が深まるにつれて「あいつらはウチの部門の言うことを聞かない」といった見方になってしまうのです。

威圧的な態度で会話をしても、さらに溝が深まったり片方が委縮したりするだけなので、ビジネスにおいては客観的な指標を用いて対話します。特にマーケティング部門は数字で見込み客の分析を行っているので、説得力のあるデータがあるはずです。感情を排した論理的なコミュニケーションで溝を埋めていきましょう。

「営業活動」をアップデートする

情報交換する社員たち
現代のビジネスにおいて、従来の経験と勘に頼る営業では限界を迎えようとしています。競合他社との競争が激化するなかで営業の効率化が求められたり、またコロナ禍で営業が非対面化し、これまでとは異なるやり方に対応したりしなければなりません。

変化のスピードが速い現代社会においては、いち早く昔ながらの営業のやり方から脱し、営業活動をアップデートしていく必要があります。そのためにも、新しい営業の概念を学び、取り入れなければなりません。実際、営業活動を見直し、アップデートする企業が増えています。

競合他社に後れを取ると、商機を逃して売上が低下するだけでなく、優秀な人材が他社に流れるなど、組織が弱体化する原因になってしまいます。そうならないためにも、これからの時代に必要な営業のやり方を取り入れ、組織全体の価値観をアップデートしていきましょう。

最先端の営業手法やマーケティング手法などビジネススキルを学ぶなら、その領域を専門とする講師に学ぶのが一番です。企業研修を導入し、社員の知見をアップデートしていきましょう。

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