この記事では、企業におけるダイバーシティと女性活躍推進について、2022年の法改正を含む最新動向と実践的な推進方法をご紹介しています。人事部や経営層の方々に向けて、女性活躍推進法の詳細な解説と、実務で活用できる具体的な施策を体系的にまとめています。
エーザイやソフトバンクなど、先進企業の成功事例から得られる実践的なノウハウもご確認いただけます。
近年、ESG投資の評価指標としても注目される女性活躍推進について、企業価値向上につながる取り組みのポイントを解説しています。また、一般事業主行動計画の策定義務から情報公表義務まで、法令順守に必要な実務知識も網羅。ダイバーシティ推進による経営メリットと、具体的な推進施策を理解することで、自社の持続的な成長につながる女性活躍推進の道筋が見えてきます。
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株式会社ビジネスプラスサポート 代表取締役 人財育成プロデューサー 藤井 美保代
「お互いの成長が促進される場づくり」をモットーに、参加者主体のファシリテーションを大事にしている。経営者・リーダーとしての経験と原理原則・理論を紐づけ、単なるスキルや知識、ノウハウを教えるだけではなく、それらを根付かせるために必要な姿勢までをしっかりと落とし込む。
次世代の経営層・管理者育成と、女性のキャリア開発支援に力を注いでいる。
2019年、株式会社ソフト99コーポレーションの社外取締役に就任。社外という中立的な立場から、企業価値向上、社の発展のために尽力している。
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企業におけるダイバーシティの重要性と女性活躍の現状
日本企業のダイバーシティ推進の現状
近年、日本企業においてダイバーシティ推進は重要な経営課題として認識されています。多様な人材が活躍できる組織づくりは、イノベーション創出や企業競争力の強化につながる重要な要素となっています。
特に、女性活躍推進については、政府主導で様々な施策が展開されており、企業における人事施策の最重要課題の一つとなっています。各企業では、研修プログラムの充実や育成体制の整備を進めています。
女性管理職比率の推移と課題
日本企業における管理的職業従事者に占める女性の割合は14.6%にとどまっており、国際的に見ても非常に低い水準となっています。
国名 | 女性管理職比率 |
---|---|
フィリピン | 48.6% |
アメリカ | 42.6% |
スウェーデン | 41.7% |
日本 | 14.6% |
内閣府『就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)』 - 内閣府男女共同参画局
女性管理職の登用についてはこちらの記事もご参照ください。「女性管理職の重要性 - 女性の管理職登用のメリットと推進策」
諸外国との比較からみる日本の女性活躍の状況
日本における男女間賃金格差は、長期的には縮小傾向にあるものの、他の先進国と比較すると依然として大きい状況が続いています。この状況を改善するため、2022年7月からは301人以上の企業に対して「男女の賃金の差異」の情報公表が義務付けられました。
組織におけるスキル育成の面では、多くの企業が女性社員向けのキャリア開発プログラムを導入し、管理職候補の育成を進めています。また、柔軟な働き方を実現するため、以下のような制度を導入する企業が増加しています:
- フレックスタイム制度
- 在宅勤務制度
- シェアオフィスの活用
- ワーケーションの導入
さらに、意識改革の面では、全社員を対象としたアンコンシャス・バイアス研修や、管理職向けのダイバーシティマネジメント研修など、組織全体で取り組みを推進しています。
女性活躍推進法の概要と2022年の法改正ポイント
2022年4月に女性活躍推進法が大きく改正され、行動計画の策定や情報公開義務の対象が拡大されました。本章では、法改正の詳細と企業に求められる対応について解説します。
女性活躍推進法の目的と基本方針
女性活躍推進法は、職場における女性の活躍を推進するための法律です。企業における女性の活躍機会の創出と、管理職への登用促進を通じて、持続的な成長を実現することを目的としています。
基本方針として以下の3点が掲げられています:
項目 | 内容 |
---|---|
職業生活における機会の提供 | 採用、配置、育成、昇進における機会均等の確保 |
職業生活と家庭生活の両立 | 育児・介護等と仕事の両立支援の充実 |
職場環境の整備 | ハラスメント防止対策や長時間労働の是正 |
一般事業主行動計画の策定義務
2022年4月からは、常時雇用する労働者が101人以上の企業に対して、一般事業主行動計画の策定・届出が義務付けられました。計画には以下の内容を盛り込む必要があります:
- 計画期間
- 数値目標
- 取組内容
- 取組の実施時期
情報公表義務の詳細
情報公表義務については、2022年の法改正で重要な変更がありました。特に注目すべき点として、301人以上の企業における「男女の賃金の差異」の情報公表が必須項目として追加されました。
職業選択に資する情報の公表
以下の項目から、それぞれ1項目以上を選択して公表する必要があります:
区分 | 公表項目例 |
---|---|
採用に関する状況 | 男女別の採用における競争倍率 |
継続就業に関する状況 | 男女別の平均継続勤務年数 |
労働時間等に関する状況 | 月平均残業時間 |
管理職比率に関する状況 | 係長級にある者に占める女性労働者の割合 |
えるぼし認定制度について
えるぼし認定は、女性活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業を認定する制度です。認定は以下の5つの評価項目に基づいて行われます:
- 採用における男女差
- 継続就業の状況
- 労働時間等の働き方
- 管理職比率
- 多様なキャリアコース
さらに、より高い水準の取組を行っている企業については、プラチナえるぼし認定を取得することができ、企業の人材育成や組織強化における優位性を示すことができます。
企業に求められるダイバーシティ推進施策
企業におけるダイバーシティ推進は、組織の持続的な成長において重要な経営課題となっています。ここでは、具体的な推進施策について解説します。
ワークライフバランスの実現に向けた取り組み
企業の持続的な成長には、従業員一人ひとりが仕事と私生活を両立できる環境整備が不可欠です。
施策カテゴリー | 具体的な取り組み内容 |
---|---|
柔軟な勤務体制 | フレックスタイム制度、在宅勤務制度、シェアオフィスの活用 |
休暇・休職制度 | 育児休業、介護休暇、ワーケーション制度 |
両立支援制度 | 事業所内保育所、保育料補助、育児時短勤務 |
管理職登用促進のための育成プログラム
女性管理職比率の向上には、計画的な人材育成と組織風土の醸成が重要です。
プログラム種別 | 内容 |
---|---|
研修制度 | リーダーシップ研修、キャリア開発研修、アンコンシャス・バイアス研修 |
メンタリング | 女性役員によるメンタリング、キャリア相談会 |
スキル開発 | eラーニング、外部セミナー派遣、ビジネススキル研修 |
男性の育児参加支援制度
男性の育児参加を促進することで、組織全体の働き方改革とダイバーシティ推進を加速させることができます。
支援項目 | 具体的施策 |
---|---|
制度整備 | 育児休業奨励金、育休取得目標設定、早期申請制度 |
情報提供 | 育児コミュニティ運営、育休経験者座談会、制度説明会 |
意識改革 | 管理職向け研修、イクボス推進、社内報での啓発 |
これらの施策を効果的に実施するためには、人事部門が中心となり、組織全体で取り組む体制づくりが重要です。また、定期的な効果測定と改善を行うことで、持続的な推進が可能となります。
育児支援制度利用促進のためのポイント
制度の利用促進には、適切な情報提供と利用しやすい環境づくりが必要不可欠です。
施策 | 実施内容 |
---|---|
情報提供体制 | 制度説明会の定期開催、社内ポータルでの情報発信 |
相談体制 | 専門相談窓口の設置、復職支援カウンセリング |
職場環境整備 | 業務引継ぎガイドライン作成、代替要員確保支援 |
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについてはこちらの記事もご確認ください。「新時代のダイバーシティ・女性活躍推進 - 社員サーベイで組織課題を抽出し最適な研修を実施。」
先進企業に学ぶダイバーシティ推進事例
近年、多くの日本企業がダイバーシティ推進に積極的に取り組んでいます。ここでは、特に先進的な取り組みを行っている企業の事例を紹介します。
エーザイ株式会社の事例
2030年度末までに、社員および管理職層の女性比率30%以上、30代以下の若手マネジメント層20%以上という具体的な数値目標を掲げ、組織的な取り組みを展開しています。
施策分野 | 具体的な取り組み内容 |
---|---|
人材育成 | キャリア開発プログラムの実施、e-learningの活用 |
働き方改革 | シェアオフィス導入、ワーケーション制度の実施 |
育児支援 | 育児コミュニティの設立、ライフイベント早期申請制度 |
ソフトバンク株式会社の事例
女性活躍推進を経営課題として位置づけ、有識者をアドバイザーに迎えた女性活躍推進委員会を設置して、組織的な取り組みを実施しています。
取り組み項目 | 成果指標 |
---|---|
女性管理職の登用 | 2018年4月241人から2023年4月444人へ増加 |
待遇改善 | ジェンダー・ペイ・ギャップの解消 |
東急株式会社の事例
「制度・風土・マインド」という3つの観点からダイバーシティマネジメントを推進し、特に育児や介護との両立支援に注力しています。
支援制度 | 具体的な内容 |
---|---|
柔軟な働き方 | フレックスタイム制度、在宅勤務制度 |
研修・教育 | 有識者セミナー、eラーニング、社内報による情報発信 |
インクルージョン施策 | 手話教室、おもてなし勉強会の開催 |
株式会社資生堂の事例
「LOVE THE DIFFERENCES(違いを愛そう)」というスローガンのもと、15年以上前から女性活躍推進に取り組み、具体的な支援制度を確立しています。
施策カテゴリー | 実施内容 |
---|---|
両立支援 | 事業所内保育所の設置、保育料補助制度 |
働き方改革 | 長時間労働の解消、休暇制度の整備 |
株式会社ベネッセホールディングスの事例
全社の女性比率が7割という特徴を活かし、育児支援制度の充実や多様な人材の活用を推進しています。
推進項目 | 具体的な施策 |
---|---|
育児支援 | 保育手当、育児時短制度の導入 |
人材育成 | 研修プログラムの実施、情報発信の強化 |
シニア活用 | 定年65歳までの延長、継続雇用制度 |
ダイバーシティ推進による企業メリット
企業におけるダイバーシティ推進は、単なる社会的責任や法令順守の観点だけでなく、ビジネス上の大きな価値を生み出す重要な経営戦略として位置づけられています。本章では、具体的なメリットを3つの観点から詳しく解説します。
イノベーション創出と競争力強化
多様な人材が活躍できる組織づくりは、イノベーションの源泉となります。エーザイ株式会社の事例では、多様な価値観を持つ人材が知のスパイラルを形成し、新たな価値創造につながっていることが報告されています。
項目 | 具体的効果 |
---|---|
意思決定の質向上 | 多様な視点による検討が可能になり、より良い判断につながる |
商品開発力の向上 | 様々な顧客ニーズの把握が容易になり、市場適合性が高まる |
組織の創造性向上 | 異なる経験や知見の組み合わせにより、新しいアイデアが生まれやすい |
人材採用における優位性
優秀な人材の獲得競争が激化する中、ダイバーシティの推進は採用市場での企業の魅力度を高める重要な要素となっています。
メリット | 効果 |
---|---|
採用母集団の拡大 | 性別や年齢を問わない採用により、より広い人材プールにアクセス可能 |
企業ブランド価値向上 | えるぼし認定やプラチナえるぼし認定の取得により、企業イメージが向上 |
定着率の向上 | 育児・介護との両立支援により、キャリア中断を防止 |
ESG投資における評価向上
近年、企業の社会的責任や持続可能性を重視するESG投資が拡大しています。ダイバーシティの推進は、ESG評価の重要な指標の一つとして、投資家からの評価に直結します。
評価項目 | 評価ポイント |
---|---|
女性管理職比率 | 目標設定と達成度、業界平均との比較 |
両立支援制度 | 制度の充実度と利用実績 |
情報開示 | 男女間賃金格差等の積極的な情報公開 |
2022年4月の女性活躍推進法改正により、より多くの企業がダイバーシティ推進の取り組みを求められる中、これらのメリットを最大限に活用することが、企業の持続的な成長につながります。組織のスキル向上や人事制度の整備を通じて、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進することが重要です。
女性活躍推進研修
株式会社ビジネスプラスサポートが提供する女性活躍推進研修は、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に貢献する内容です。
女性管理職候補者プログラム(社員サーベイ+研修)
この研修では、心理的安全性の向上やチームマネジメント力の強化を目的とし、具体的な課題解決を図ります。特に、心理的安全性の高い職場づくりを重視している点が特徴的です。受講者はインバスケット演習やアクションラーニングを通じて、課題解決のスキルと当事者意識を深めます。
女性管理職候補者プログラム(社員サーベイ+研修) (4時間 × 6回)
女性管理職候補者プログラムでは、社員サーベイを活用し、課題抽出から研修までを包括的に提供。心理的安全性や業務効率化を通じたスキル向上を支援します。
この研修の強みは、現場での実践を重視したカリキュラム設計と、受講者一人ひとりに合わせた指導が可能なカスタマイズ力にあります。さらに、研修の成果を職場に定着させるためのフォロー体制も充実しています。同社は、多様な人材の能力を引き出し、職場全体の生産性を高める実績を積み重ねています。
実際の研修では、直属の上司によるメンタリングや個人アセスメントを組み込み、自身の強みと課題を客観的に認識できる機会を提供します。このアプローチにより、女性リーダーの育成を促進し、職場環境の向上を実現します。
女性管理職候補者のスキル向上に加え、組織全体の成長を目指す方に最適な研修内容となっています。
女性対象マインドセット研修(社員サーベイ+研修)
女性対象マインドセット研修(社員サーベイ+研修) (6時間)
女性対象マインドセット研修は、女性社員が自己理解を深め、役割や責務への意識を高めることで、自信を持って前向きに働けるようサポートするプログラムです。この研修では、社員サーベイを通じて組織や個人の課題を抽出し、それに基づいた最適な研修を実施します。既成概念を取り払い、自分の枠を広げることをゴールに設定しています。
特徴的なカリキュラムは、自己理解とセルフマネジメント、視野拡大を柱としています。ゼロベース思考や創造的思考、仮説思考といった3つの視点を活用し、受講者が新たな可能性に気づくプロセスを重視。個人ワークやグループワークを取り入れることで、実践的な学びを提供します。また、自分の価値観や目標を明確化し、主体的な行動に結びつける実行宣言で、研修後の持続的な成長を促進します。
研修の成果として、受講者は自己肯定感を高め、他者理解の重要性を学びます。これにより、組織内でのコミュニケーションが円滑化し、より協力的な職場環境が実現します。
女性対象スキルアップ研修 - 業務改善と巻き込み力向上(社員サーベイ+研修)
女性対象スキルアップ研修は、業務改善と「巻き込み力」の向上を目的とし、チーム全体の成果を最大化するための具体的なスキルを習得するプログラムです。この研修では、社員サーベイを通じて課題を抽出し、それに基づいた最適なカリキュラムを提供します。特に、業務改善とチームビルディングに重点を置いています。
研修の特徴は、「巻き込み力」を高めるための4ステップや、対話スキルを実践するロールプレイングを取り入れている点です。また、後輩やチームメンバーを巻き込む具体的な方法を学び、チームの一体感を向上させる技術を実践的に習得します。
業務改善の内容では、「着眼→着想→着手」の改善ステップを学び、身近なムダを発見するための視点や実践方法を深掘りします。特に、「5大ムダ」の発見や改善8原則を活用したワークにより、業務の生産性を高めるアイデアを共有します。
この研修は、女性社員が自信を持って改善提案を行い、周囲を巻き込んで成果を出すための実践的なスキルを提供します。業務の効率化とチームの協働力向上を目指す企業に最適なプログラムです。
女性対象キャリアデザイン研修(社員サーベイ+研修)
女性対象キャリアデザイン研修は、結婚・育児・昇格など多様なライフイベントを踏まえ、自分らしいキャリアの方向性を明確にするためのプログラムです。社員サーベイを活用して受講者の現状を把握し、実践的な研修内容を提供します。中長期的なキャリアビジョンの形成と自己成長を促す内容が特徴です。
研修の特徴は、自己理解と環境認識を深めるカリキュラム設計にあります。「ライフラインチャート」による自己振り返りや、キャリアアンカーの明確化を通じて、自分の強みや価値観を発見します。また、「人的ネットワーク」を見える化し、相互支援の重要性を学びます。これにより、変化する社会環境や働き方に対応する力を養います。
キャリアデザインの実践では、1・3・5年後のビジョンを具体化し、行動宣言を通じて明日からの第一歩を明確にします。さらに、転機を乗り越える「キャリア・トランジション」や4S点検を活用することで、将来の不安を解消し、モチベーションを高めます。
まとめ
ダイバーシティと女性活躍推進の取り組みは、これからの企業経営において不可欠な要素となっています。エーザイ、ソフトバンク、東急、資生堂、ベネッセホールディングスといった先進企業の事例からも明らかなように、積極的な推進は企業価値の向上に直結します。
特に重要なのは、女性活躍推進法の改正に対応した一般事業主行動計画の策定と情報公表義務への対応です。これらの取り組みは、単なる法令遵守にとどまらず、優秀な人材の確保やESG投資における評価向上にもつながります。
ワークライフバランスの実現、管理職育成プログラムの整備、男性の育児参加支援など、具体的な施策を通じて、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することが、イノベーション創出と企業競争力の強化につながります。企業の持続的な成長のために、ダイバーシティ推進を経営戦略の中核に位置付けることが求められています。
KeySessionでは貴社のダイバーシティ研修導入をお手伝いをいたします。