パワハラは上司が部下へ上下関係を利用しておこなわれるものですが、部下が上司へ威圧的な言動を続けるとパワハラになる可能性があります。
この逆パワハラと呼ばれるものは、部下のほうが上司より経験が豊富だったり、年齢が上だったり、様々な背景が原因で発生します。
逆パワハラは対応を間違えると上司の立場や評価にも関わってきますので、十分注意して対処することが必要です。
目次
部下が上司を追いこむ逆パワハラの事例
新しい部署の立ち上げに伴い、50代のベテラン社員が部長として就任した。最新の技術を駆使して業務を進める必要があり、部下となる10人の社員のほとんどがその知識を持っている。
部長はそれほど深い知識は持っていないが、若い社員をまとめる手腕を見込まれての抜擢だった。部下の年齢は20代~30代と若い。
最初の頃は部長から部下へ指示を出すことが多かったが、プロジェクトが進むにつれ部長は最新の知識と技術についていけないと感じ、自信をなくしていった。
部長に質問や指示を仰いでも的確な返答がもらえず、最年長の部下を中心に部長抜きの会議等がおこなわれるようになった。
部長に相談や報告がないまま進んでいることが多くなり、部下に問いただしたところ
「どうせ部長に言ってもわかりませんよね」
「わからない人に言っても無駄なので、黙ってハンコ押してください」
などの言葉が返ってきた。
他部署の社員に部長の誹謗中傷を触れ回ったり、部長に聞こえるように悪口を言うこともあった。だんだんと行動がエスカレートし、部長がいないかのように無視し始めた。
改善策を見つけられないままこの状態が半年くらい続き、部長は仕事に行けなくなり休職を願い出た。
部下から上司への逆パワハラになるポイント
逆パワハラの場合は、立場の優位性があるかどうかが焦点にはなりますが、優位性が認められない関係性でもパワハラになるとされています。
厚生労働省での定義では部下から上司への逆パワハラも、正当なパワハラとして扱っています。
集団での行動
ひとりの上司に対して、部下全員で嫌がらせや不当な言動をすることはパワハラに当たります。
部下は立場が弱いと一般的には認識されていますが、集団になることでパワーを増し、上司でも対応しきれなくなる場合があります。
逆パワハラは1対1ではなく、この例のように集団でおこなわれることが多いのが特徴です。
知識と経験豊富な部下
逆パワハラの起こりやすい状況としては、部下の年齢に関係なく知識がある、経験があることが挙げられます。
知識や経験が浅いと、部下に遠慮が出てしまい、その結果頼りない印象を与えることになります。頼れないと感じた瞬間、上下関係が逆転し、部下からの攻撃が始まります。
部長の人権を脅かす言動
部長に直接不平不満を訴えるのではなく、他部署に上司の悪口を言うのは、適正な範囲を超えています。
また、無視をすることは個の侵害にもなりますし、人間関係からの切り離しに相当すると考えられます。
仕事ができる・できないことは、人格とは別物ですので、人格を否定するような言動は控えなければなりません。
部下からの逆パワハラに対する適切な対処方法
部下からのパワハラでは上司の態度次第で悪化することも、沈静化することもあります。中間管理職としては、あまり大事にすると自分の評価にも関わると思い、対応に苦慮しているケースが多いと言えます。
適切な指導をおこなう
逆パワハラを受けたとしても、凛とした態度で接することが大切です。知識や経験がある部下には遠慮がでるかもしれませんが、それと仕事上の関係性は別と割り切ることが必要です。
業務に関することは部下に任せたとしても、全体をまとめるのは上司の役目ですので、必要な報告はするように指導を続けるようにします。
圧力をかけない程度に、「自分が上司だ」という開き直りと自信も必要です。
会社に報告をする
指導を試みても上手くいかない場合は、会社に報告と相談をしましょう。ここで自分の管理能力を問われるのでは?と考え、躊躇するのは危険です。
上司が逆パワハラを受け入れていると部下が感じた時、行動がエスカレートする傾向にあります。
各部署でおこなわれていることは、部署だけの問題ではなく会社全体の問題となるべきこと認識することが大切です。
証拠を集める
逆パワハラは場合によっては、部下が権利を主張している、部下とのコミュニケーションの問題として片付けられてしまうことがあります。
そうさせないためにも、証拠集めが大切です。
会話を録音する、面談などの記録するなど、音声や文章で逆パワハラの実態を残します。
証拠が集まったら社内調査をしてもらえるように会社に提出します。
外部機関へ相談する
会社に相談をしても何の対処もしてもらえなかったり、会社に言えるような状態ではない時は、外部機関に相談をします。
会社に指導をしてもらうことも可能ですし、上司としての行動のアドバイスなどももらえますので、ひとりで悩むくらいなら思い切って相談をしましょう。
厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内
逆パワハラを起こさせないために
逆パワハラが起こりやすい職場には共通点があります。それらを考慮して次のような対策を日々おこなうことで、逆パワハラを起こさせない環境作りが可能になります。
逆パワハラについて知識を深める
パワハラは上司から部下におこなわれるものという認識だけではなく、逆パワハラもあることを社員全員で理解するように周知します。
当事者同士が逆パワハラをしていると感じていないケースも考えられますので、正しい知識を持つようにしましょう。
要注意社員のチェック
逆パワハラをおこなう部下にも問題がある可能性があります。注意が必要な社員のチェックと指導が必要です。
要注意な社員とは
✅ 権利の主張が強い
✅ 利己的な言動が多い
✅ モラルが欠けている
このような社員は自分は特別だと思い込む傾向にあり、相手が誰であれ上下関係をつけたがります。自分よりも少しでも劣っている部分を見つけると、下とみなし攻撃のターゲットとします。
こういう社員とは距離を置き、プライドを刺激しない方法で指導することでトラブル回避ができます。
部下への敬意
専門的な分野や最新の知識が必要な業務では、上司よりも若い社員のほうが得意な場合があります。経験豊富なベテラン社員はプライドを持って仕事をしています。
年齢に関係なく、部下に対して敬意を払い接することで、部下のプライドを崩すことなく関係性を築くことができます。
上司だからすべてできる、理解しているとは限らないことを理解し、お互いに歩み寄る雰囲気作りも大切です。
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