仕事のスキルを磨こうとすると、ある程度の時間が必要になります。深く追求をしようとすればするほど、膨大な時間がかかります。
一流の技術を取得するには1万時間が必要であるという、『1万時間の法則』をご存じの方も多いのではないでしょうか。
実はこれまで、この1万時間の法則には批判的な意見もあります。
なぜ批判されるのか、そして本当にプロフェッショナルを目指すには1万時間が必要なのか考えてみましょう。
目次
1万時間の法則とは
1万時間の法則は、マルコム・グラッドウェル氏の著書で紹介されたもので、心理学者のアンダース・エリクソン教授がおこなった研究がベースとなってます。
アンダース・エリクソン教授の研究
エリクソン教授は、バイオリニストたちを4つのグループに分け、時間の使い方の調査をしました。
調査時点での練習に使う時間は、立場や環境が違うためバラつきが見られました。
そこでバイオリンを始めてからの練習時間を調査したところ、バイオリンを専攻している学生と国際的な活躍をしているバイオリニストや交響楽団のバイオリニストには大きな違いがみられました。
プロとして活躍しているバイオリニストたちは、20歳になるまでに1万時間以上の練習時間を積み重ねていたのです。
この結果からエリクソン教授は、卓越した技術を得るには10年以上に渡り1万時間以上の計画的練習が必要と結論づけました。
1万時間の目安
1万時間というのは、仕事や趣味に使う時間に換算すると、どのくらいの期間になるのでしょうか。
平日8時間 | 約4年9ヶ月 |
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毎日8時間 | 約3年5ヶ月 |
毎日12時間 | 約2年3ヶ月 |
週末2時間 | 約48年 |
いかがでしょうか。
仕事を極めようとすると、平日8時間の通常業務だけをしていると4年目以降でようやく『その道のプロ』になれます。
1年や2年で仕事ができない、思ったような成果が上がらないと悩むこともあると思いますが、その期間で仕事ができないのは当たり前のことなのかもしれませんね。
また、週末だけ趣味の活動をする場合は、人生の大半の時間をかけなければなりません。
1万時間の法則が批判される理由
1万時間の法則がグラッドウェル氏により紹介されてから長い年月が経っていますが、その間批判とも取れる様々な意見がありました。
- 1万時間の法則は嘘である
- スキル習得にはそんなに時間はかからない
というのが主な内容なのですが、なぜこのような反対意見が出てきたのでしょうか。
成功した人のデータを基にしている
エリクソン教授の研究チームが対象にしたのは、音楽の分野であることと、ある程度成功を収めている人たちでした。
レッスンに1万時間を費やしても成果が出なかった人がいたとしても、その人たちの調査をしていないため、正確なデータではないという見解があります。
練習量以外の要因との関連性
成功のカギは練習量だけではなく、環境や素質、才能なども関係しているという考え方があります。
また、研究では練習内容の質にまで言及しておらず、あくまでも時間のみであるため、信憑性に欠けるのではないかという意見も出てきました。
分野により練習の影響が違う
練習量が技術に影響を与える割合は、分野により違いがあるという考えによる反対意見です。
アメリカにあるプリンストン大学の調査によると、練習量が与える影響は、楽器は21%、スポーツでは18%となっており、専門的知識においては1%でしかないとの結果が示されています。
このことから、すべてにおいて1万時間の法則が当てはまるわけではないと主張する人もいます。
一流になるために必要なこと
1万時間の法則が正しいのかどうかは答えがでない問題かもしれません。しかし、高い技術を習得しようとするなら、長い時間と努力が必要なことは確かですよね。
修練時間だけを考えるのではなく、質にも目を向けることが大切です。
極めたいことに興味を注ぐ
どんなことも興味がなければ続けることは難しいですね。
極めるためには、短期的な集中力ではなく、長期的な集中力いわゆる『継続力』が必要です。
同じ時間を使っても、イヤイヤやると成果は出ません。好きなものや興味のあるものは、もっと知りたい、もっと上手になりたいと思うものです。
最初は小さな興味でも良いのです。続けていくうちに小さな興味がどんどん大きくなっていきます。
継続する工夫をする
高い知識と技術の習得にはコツコツとした努力が大切です。
しかし、日々の生活や日常業務に追われ、時間が取れないという人も少なくありません。
「時間がない」と言っているうちは、何も変わりませんしいつまで経っても成果は出ません。継続できる工夫が必要です。
継続するために必要なことを整理しましょう。
時間、人、モノ、メンタル、資金など、継続に必要と思われるものがリストアップされたら、それらを充実させる方法を考えていきます。
できないではなく、できるを前提に考えると、いろいろな対策が出てくるはずです。
質を上げる
自分にあった方法で練習や勉強をして、質の良い時間の使い方をします。
本に書いてある内容や、他の人が成功した方法が自分にあっているとは限りません。何度やっても上手くいかない、何かやりにくさを感じるという時は、その方法は適切ではないかもしれません。
理論を知らないと行動できない人が、まず練習あるのみ!と実践をしても上手くはなりません。理論から学ぶ必要があるからです。
反対に実技から学ぶタイプの人が、理論攻めにするとやる気が出ず成果も上げられません。
質の良い内容であれば、時間が短くても効果的な練習ができます。
教えることを経験する
練習や学びというとインプットを重視しがちですが、アウトプットしなければ成長はありません。
練習成果を発表する機会を作る、学んだ知識を披露する場を作るのも良いでしょう。
お勧めなのは教えることです。
ラーニングピラミッドでは、教えることで知識の定着率が90%になると言われています。
ビジネスの場面ではなかなか教えるという経験はしにくいかもしれませんね。その場合は、書くことでもアウトプットになりますし、同僚との会話の中で学んだことをさらりと話すのでも効果があります。
極めるには時間と質が大切
1万時間の法則は、プロと言われる人たちは長い時間をかけて技術を習得しているという証明にはなりますが、すべてにおいて当てはまるかというと、そうとも言えないのが現実です。
何かを極めようとするのであれば、具体的な時間だけではなく、質や手法も考慮する必要があります。
現在は様々な学習方法が確立されています。短時間で成果を上げることも可能になっていますので、自分にあった方法で経験を積んでいきましょう。