システムコーチングとは?個人コーチングとの違いを解説

システムコーチングとは、個人ではなく「チームや組織の関係性」そのものを対象としたコーチング手法です。個人コーチングが1対1で行われるのに対し、システムコーチングではチーム全体の対話や相互理解を促し、組織の構造的な課題に働きかけます。

この記事では、システムコーチングの定義や個人コーチングとの違い、導入が有効な場面、進め方のポイントを解説します。チームの関係性に課題を感じている人事・研修担当者の方に向けた内容です。

この記事でわかること

  • システムコーチングの定義と基本的な考え方
  • 個人コーチングとの違いと使い分け
  • システムコーチングが有効な組織課題の具体例
  • 導入の流れと進め方のポイント
  • 導入時に注意すべき点
【この記事の監修者】
レイテストナレッジ株式会社 代表取締役 番井 潤一郎

精密機械メーカー キヤノンの半導体製造装置部門で、技術営業、事業計画、マーケティングを経験。その後、大手外資系メーカーにて営業、マーケティングを経て、日本人として初めてアジア地区の研修担当責任者となる。これまで5,000人以上の研修実施を通じ、受講者の確実なスキル向上に繋げた経験と、営業・マーケティングの経験から、教育と実践、両方を提供するべくレイテストナレッジ株式会社を設立。

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システムコーチングとは

システムコーチングとは、2人以上の関係性(=システム)を対象としたコーチング手法です。代表的なフレームワークとして、ORSC(Organization & Relationship Systems Coaching)があります。

一般的なコーチングでは「個人の目標達成」や「行動変容」に焦点を当てますが、システムコーチングではチームや組織におけるメンバー間の関係性そのものを支援の対象とします。

「システム」とは何か

ここでいう「システム」とは、ITシステムのことではありません。2人以上が相互に影響し合う関係性の総体を指します。企業のプロジェクトチーム、経営陣、部門間の連携など、人が集まって協働するあらゆる場がシステムに該当します。

システムコーチングの理論では、個々のメンバーの能力とは別に、関係性そのものが独自の特性や力を持つと考えます。この「関係性の力」に働きかけることで、個人の能力を変えなくても組織全体のパフォーマンスを高められるという考え方が基盤にあります。

システムコーチングの特徴

  • 対象は個人ではなく、チーム・組織の「関係性」
  • メンバー全員が同じ場で対話に参加する
  • 対立や葛藤を避けるのではなく、成長の機会として扱う
  • コーチは答えを与えず、チームが自ら解決策を見つけるよう支援する
  • 目に見えにくい組織の構造的課題を可視化する

個人コーチングとの違い

コーチングには大きく分けて「個人コーチング」と「システムコーチング」の2種類があります。以下の表で違いを整理します。

比較項目 個人コーチング システムコーチング
対象 個人(1対1) チーム・組織の関係性(1対N)
焦点 個人の目標達成・行動変容 メンバー間の関係性・相互作用
課題の扱い 個人の内面・スキル 組織の構造的課題・関係性の質
対話の形式 コーチとクライアントの対話 チームメンバー同士の対話をコーチが支援
期待される効果 個人のパフォーマンス向上 チーム全体の協働力・心理的安全性の向上
適する場面 リーダー育成、キャリア支援 組織変革、チームビルディング、部門間連携

どちらが優れているという話ではなく、課題の性質によって使い分けることが重要です。個人の成長課題には個人コーチングが、チームや組織の関係性に根差した課題にはシステムコーチングが適しています。

「関係の質」と「結果の質」のつながり

組織開発の分野では、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱した「成功の循環モデル」がよく知られています。このモデルでは、「関係の質」が「思考の質」「行動の質」を経て「結果の質」に影響するとされています。

システムコーチングは、この循環の起点となる「関係の質」に直接働きかけるアプローチです。個々のスキルアップだけでは解決しにくいチーム全体の停滞感や、メンバー間のすれ違いに対して有効に機能します。

システムコーチングが注目される背景

近年、システムコーチングへの関心が高まっている背景には、組織が直面する課題の変化があります。

個人最適では解決できない課題の増加

リモートワークの普及やプロジェクト型の働き方が広がる中で、「個人の能力は高いのにチームとしての成果が出ない」という課題を抱える企業が増えています。こうした課題は、個人へのコーチングやスキル研修だけでは根本的な解決に至りにくいものです。

心理的安全性への関心の高まり

Googleが自社の研究プロジェクト「Project Aristotle」で、チームの生産性に最も影響する要因が「心理的安全性」であると発表して以来、組織内の関係性の質に注目する企業が増えました。システムコーチングは、この心理的安全性を高めるアプローチのひとつとして位置づけられています。

組織開発手法としての認知拡大

従来の組織開発は、制度設計や人事施策が中心でした。しかし、制度を整えても現場の関係性が変わらなければ効果が出にくいという認識が広がり、関係性そのものに介入するシステムコーチングが組織開発の選択肢として認知されるようになっています。

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システムコーチングが有効な場面

すべての組織課題にシステムコーチングが有効なわけではありません。以下のような場面で特に効果を発揮します。

チーム内の本音が見えにくいとき

表面上は円滑に見えるものの、メンバー間に遠慮や気遣いが多く、本音が出にくい組織は少なくありません。こうしたチームでは、問題が表面化しないまま蓄積し、突然の離職や大きな対立に発展することがあります。

システムコーチングでは、安全な場を設けたうえでメンバー同士が本音で対話する機会をつくります。コーチが場を支えることで、日常業務の中では言いにくいことも扱えるようになります。

経営陣・マネジメント層の連携が弱いとき

経営陣やマネジメント層は、それぞれが強い専門性やリーダーシップを持つ一方で、互いの方針がかみ合わず、現場に混乱をもたらすことがあります。こうした「上層部の関係性の問題」は、一般的な研修では扱いにくいテーマです。

システムコーチングでは、経営陣をひとつのシステムとして捉え、意思決定のプロセスや価値観のすり合わせを支援します。

組織変革や統合の過渡期

M&Aや組織再編、新規プロジェクトの立ち上げなど、異なる文化や価値観を持つメンバーがひとつのチームとして協働する場面では、関係性の構築が最優先課題になります。

部門間の壁を越えた連携が必要なとき

セクショナリズム(部門間の壁)が強い組織では、情報共有や協力体制が滞りがちです。システムコーチングは、部門を横断したチームの関係性に介入し、協働の土台をつくるアプローチとして活用されています。

システムコーチングの進め方

一般的なシステムコーチングの導入ステップを紹介します。組織の状況やコーチの手法によって異なりますが、基本的な流れは以下のとおりです。

ステップ1:課題の把握と目的の明確化

まず、組織が抱える関係性の課題を整理し、システムコーチングで何を実現したいのかを明確にします。「チームの心理的安全性を高めたい」「経営陣の意思決定プロセスを改善したい」など、具体的なゴールを設定します。

ステップ2:対象チームの選定

システムコーチングの対象となるチームや関係性を選定します。全社的に導入するのではなく、まず課題が明確なチームから始めるのが一般的です。

ステップ3:セッションの実施

コーチのファシリテーションのもと、チームメンバー全員が参加するセッションを行います。1回のセッションは2〜4時間程度で、複数回にわたって実施するのが一般的です。セッションでは以下のような取り組みが行われます。

  • チームの現状や関係性の可視化
  • メンバー間の対話と相互理解の促進
  • 対立や課題の健全な取り扱い
  • チームとしてのビジョンや行動指針の共有

ステップ4:振り返りと継続

セッション後は、チーム内で変化を振り返り、日常業務の中で実践できることを確認します。関係性の変化は一度のセッションで完結するものではないため、定期的なフォローアップが効果を持続させるポイントです。

導入時の注意点

システムコーチングを導入する際に押さえておきたいポイントを整理します。

全員参加が前提

システムコーチングは、対象チームのメンバー全員が参加することが前提です。一部のメンバーだけが参加する形では、関係性全体に働きかけることが難しくなります。参加者のスケジュール調整や、参加の意義を事前に共有することが重要です。

即効性を求めすぎない

個人コーチングに比べて、システムコーチングは変化が現れるまでに時間がかかることがあります。関係性の変化は目に見えにくく、短期的な成果指標だけで判断すると効果を見落とす可能性があります。中長期的な視点で取り組む姿勢が求められます。

経営層の理解と支援

チームの関係性に介入する取り組みであるため、経営層やマネジメント層の理解と支援が不可欠です。「なぜこの取り組みが必要なのか」を組織として共有したうえで導入することが、効果を最大化するための前提条件になります。

専門的なコーチの選定

システムコーチングには、個人コーチングとは異なる専門的なスキルが求められます。ORSC(Organization & Relationship Systems Coaching)などの資格を持つコーチや、組織開発の実績があるコーチを選ぶことが望ましいです。

個人コーチングとの組み合わせも有効

システムコーチングと個人コーチングは、対立するものではなく、補完関係にあります。

たとえば、チーム全体の関係性改善にシステムコーチングを活用しつつ、リーダー個人のマネジメントスキル向上には個人コーチングを併用するという方法があります。組織の課題を「個人の問題」と「関係性の問題」に切り分けたうえで、それぞれに適したアプローチを選ぶことが効果的です。

コーチングの基本的な考え方や三大スキルを理解したうえで、組織課題に応じてシステムコーチングの導入を検討してみてください。

まとめ

システムコーチングは、チームや組織の「関係性」に直接働きかける組織開発手法です。個人の能力開発だけでは解決しにくいチームの停滞感や、メンバー間のすれ違い、部門間の壁といった課題に対して有効なアプローチといえます。

導入にあたっては、課題の明確化、全員参加の場づくり、中長期的な視点が重要です。個人コーチングと組み合わせることで、個人と組織の両面から変化を促すことも可能です。

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