企業が生産性向上による業績アップを目指すには、社員それぞれのスキルアップが不可欠です。そこで必要なのが計画的な社員研修です。
社員研修とひと言でいってもさまざまな方法がありますが、いずれにしても人件費や経費が必要となります。特に中小企業では、できるだけ費用を抑えたいものです。
企業が社員に対して教育研修を行う際には国の助成金を活用することができるケースがあります。助成金の種類や申請方法を知って、うまく活用するようにしましょう。
今回は社員研修に活用できる助成金や補助金についてご紹介します。
目次
社員の教育育成に使える助成金制度の種類
厚生労働省では、社員のスキルアップや能力向上を図る企業に対してさまざまな支援を行っています。そのなかで、社員の教育育成に使える助成金を紹介いたします。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、「社員のキャリア形成を効果的に促進することを目的として、職務に関連した知識や技能を修得させるために職業訓練などを受講させる事業主」に対する助成制度です。助成メニューには7つの種類があるのでそれぞれ解説します。
特定訓練コース
計画に基づいて訓練を実施した場合に、訓練期間中の賃金と訓練の経費の一部が助成されます。助成される対象メニューは次のようなものがあります。
- 職業能力開発促進センターなどが実施する在職者訓練(高度職業訓練)、事業分野別指針に定められた事項に関する訓練 、専門実践教育訓練または特定一般教育訓練、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練など
- 採用5年以内で35歳未満の若年労働者への訓練
- 熟練技能者の指導力強化、技能承継のための訓練、認定職業訓練
- 海外関連業務に従事する人材育成のための訓練
- 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
- 直近2年間に継続して正規雇用の経験のない中高年齢新規雇用者等(45歳以上)を対象としたOJT付き訓練
基本的な助成額は以下の通りです。
研修の種類 | 賃金助成 | 経費助成 |
---|---|---|
OFF-JT |
1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 380円〈480円〉 |
対象経費の 中小企業 45%〈60%〉 大企業 30%〈45%〉 |
OJT |
1人1時間当たり 中小企業 665円〈840円〉 大企業 380円〈480円〉 |
〈 〉は生産性の向上が認められる場合の額
一般訓練コース
一般訓練コースは、特定訓練コースに該当しない職業訓練を20時間以上行った際に助成されます。
基本的な助成額は、以下のようになっています。
研修の種類 | 賃金助成 | 経費助成 |
---|---|---|
OFF-JT |
1人1時間当たり380円〈480円〉 ※大企業も同じ |
対象経費の30%〈45%〉 ※大企業も同じ |
〈 〉は生産性の向上が認められる場合の額
教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースには、「教育訓練休暇制度」と「長期教育訓練休暇制度」の2つがあります。
教育訓練休暇制度は、有給教育訓練休暇等制度を導入して、社員が休暇を取得し訓練を受けた場合に助成されます。120日以上の場合には長期教育訓練休暇制度となります。
基本的な助成額は、以下のようになっています。
賃金助成 | 経費助成 | |
---|---|---|
教育訓練休暇制度 | 30万円〈36万円〉 | |
長期教育訓練休暇制度 |
1人1日当たり 6,000円〈7,200円〉 |
20万円〈24万円〉 |
〈 〉は生産要件を満たす場合
特別育成訓練コース
有期契約の社員に対して、正社員転換または処遇改善を目的として、計画に沿っった訓練を実施した場合に賃金と訓練にかかった経費の一部が助成されます。対象となる訓練と助成額は次の通りです。
・一般職業訓練(訓練期間:1年以内、訓練時間数:20時間以上)、育児休業中訓練(10時間以上の自発的な訓練)、中長期的キャリア形成訓練(専門実践教育訓練、特定一般教育訓練の指定講座)
研修の種類 | 賃金助成 | 経費助成 |
---|---|---|
OFF-JT |
1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 475円〈600円〉 |
1人当たり 実費 |
・有期実習型訓練(ジョブ・カードを活用する短期の訓練:訓練期間2~6か月、訓練時間数6月あたり425時間以上、OJTの時間数が全体の訓練時間数の1~9割、Off-JTは20時間以上)
研修の種類 | 賃金助成 | 経費助成 |
---|---|---|
OFF-JT |
1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 475円〈600円〉 |
1人当たり 実費 |
OJT |
1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 665円〈840円〉 |
・中小企業等担い手育成訓練(業界団体を活用、製造、建設など特定の業種、訓練期間3年以内、訓練時間数OJTの時間数が全体の訓練時間数の1~9割)
研修の種類 | 助成内容 |
---|---|
OFF-JT |
賃金助成 1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 475円〈600円〉 |
OJT |
実施助成 1人1時間当たり 中小企業 760円〈960円〉 大企業 665円〈840円〉 |
その他にも、「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」「障害者職業能力開発コース」があります。詳しくは厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)」
人材開発支援助成金の申請方法
ここでは、人材開発支援助成金の「特定訓練コース」「一般訓練コース」に申請方法について紹介いたします。
助成金申請手続きの流れ
- 最初に、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定を行います。
- 訓練の1か月前までに、「訓練実施計画届」と「年間職業能力開発計画」を管轄労働局かハローワークへ提出して、労働局の確認を受けます。
- 計画に沿って訓練を実施します。計画を変更する際には「計画変更届」を提出します。
- 訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書」を管轄労働局に提出します。
「訓練実施計画届」と「年間職業能力開発計画」の提出
事前に作成した「事業内職業能力開発計画」に基づいて、従業員の職業能力開発を年間でどのように進めるかの計画を作成します。その上で、訓練の実施期間や実施場所、対象となる社員など具体的に記載した訓練実施計画を、訓練の開始日1か月前までに管轄労働局に提出します。
「計画変更届」の提出
訓練実施計画に変更が生じた場合には、変更前に計画していた訓練実施予定日、または変更した後の訓練実施日のいずれか早い日の前日まで「計画変更届」を管轄労働局に提出します。「計画変更届」の提出を行わない場合には、変更部分に関する助成金が支給されませんので注意しましょう。
支給申請
訓練終了の翌日から2か月以内に「支給申請書」など必要な書類を管轄労働局に提出します。ただし、支給申請の時までに、訓練にかかった経費を全て支払っている必要あります。
主な申請書類は、以下のとおりです。
- 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
- 支払方法・受取人住所届
- 支給申請書(訓練様式第5号)
- 賃金助成及び実施助成の内訳(訓練様式第6-1号)
- 経費助成の内訳(訓練様式7-1号)
などの他、添付書類なども多いため、厚生労働省ホームページの人材開発支援助成金のページにある「申請書類一覧(チェックリスト)」で確認するようにしましょう。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)」
助成金をうまく活用して効果的な社員研修を
今回は、厚生労働省の人材開発支援助成金について、各コースの概要を解説いたしました。
特に活用される機会が多い「特定訓練コース」「一般訓練コース」については申請のポイントもご紹介しましたが、提出が必要な書類が多く申請が大変です。
助成金申請のサポートを行っている研修会社をご紹介いたします。
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