「フォローアップ」は、ビジネスの場や人事の分野で使われる言葉です。使用する場面や言葉としての正しい使い方だけでなく、フォローアップの具体的な事例とその重要性までしっかり理解を深めておけば、日々の業務に知識を役立てることができます。
目次
「フォローアップ」の意味とは?
「フォローアップ」とは、すでに始めた取り組みを定着させるために繰り返し情報発信したり、取り組みの効果を計測するために追跡調査したりすることを意味します。
ビジネスの場面でもよく使われ、人事の分野では社内研修の理解度を強化する目的でのフォローアップや、社員が配属された部署で仕事にどのように取り組んでいるかを知る目的でのフォローアップなどが一般的です。
ビジネスにおける「フォローアップ」の使い方
ビジネスの場面で使われる「フォローアップ」には様々な種類がありますが、ここでは主な3つについて意味や内容を解説します。
フォローアップメールとは
フォローアップメールとは、企業が顧客に対して行う関係構築の手段です。
・商品を購入した顧客へのアフターサービスのご案内
・以前に取り引きのあった顧客へのおすすめ商品の情報提供
・しばらく取り引きのない顧客への様子伺いの連絡
顧客へフォローアップメールを送ることは、自社の存在を印象づけることにつながり、顧客満足度の向上にも効果があります。フォローアップメールは、顧客と今後も良い関係を続けていくために欠かせないものなのです。
フォローアップ研修とは
フォローアップ研修とは、過去に実施した研修内容の定着度合いを強化することを目的としたものです。前回の研修からしばらく時間をあけて実施される場合が多く、研修内容を現場でどのように活用したか発表したり、応用編としてより踏み込んだことを学んだりと、社員が徐々にステップアップしていくためにとても重要な研修です。
フォローアップ研修を行うべきタイミングは、以下の通りです。
・1ヶ月後:研修内容を業務でどのように活用したかを振り返る
・3ヶ月後:研修後にできるようになったこと、考え方の変化などを自覚する
・6ヶ月後:現在の状況を整理し、新たな課題の抽出をする
社員自身がどのくらい成長したかを自覚するためにも、プレゼンテーションや行動計画を立てるといった内容を盛り込むと、より効果は高いです。
フォローアップ面談とは
フォローアップ面談とは、社員の職場環境や仕事の状況を確認し、仕事へのモチベーションを維持する目的で行われるものです。面談で重要なことは、社員の悩みを正確に把握し、受け止めた上でその解決に向けて何ができるかを一緒に考えることです。
・業務の進め方やスキル習得で悩みはないか
・人間関係でストレスを感じていないか
・その他、不安に思うことや上手くいっていないことはないか
悩みや不安を溜め込むタイプの社員は、もやもやした気持ちを誰にも話せずに、メンタル不調や突然の離職という結果になることも少なくありません。フォローアップ面談を定期的に行い、社員が悩みを話しやすい雰囲気を作って、会社として解決をバックアップする姿勢を示しましょう。
人事分野での「フォローアップ」の重要性
人事分野での「フォローアップ」とは、社員のスキルアップや仕事へのモチベーションアップの支援を目的として行うものを指します。このフォローアップが適切に、かつ継続してできるかどうかで、社員の仕事への姿勢や離職率は大きく変わってくると言われています。
研修効果を定着させる
社員研修をやりっぱなしにしていては、効果の持続は期待できません。研修で学んだことを社員がしっかり現場で実行し、スキルや人間力の面で成長していくためにも、研修後のフォローアップはとても重要です。
研修終了後から一定期間をあけて、プレゼンテーションやディスカッションを行う形式のフォローアップ研修を実施すると良いです。研修の学びを社員自身が言語化することで、より内容が記憶に残る効果が期待できます。
社員のモチベーションがアップする
人事部門や直属の上司が常に社員を気にかけ、業務面やメンタル面のフォローアップを実施することは、社員の働きやすさ向上につながります。「何かあれば気軽に相談していいんだ」という心理的安心感や、「自分はこの組織に必要な人間なんだ」という自己肯定感は、仕事のやりがいに直結する重要な要素だからです。
社員のモチベーションがアップすれば、チームのコミュニケーションが活性化し、仕事の成果も上がります。人事部門と各部署の管理職が普段から密に連携して、働きやすい職場づくりに努めましょう。
離職率の低下に役立つ
社員に対するフォローアップは、離職率を低下させることにも役立ちます。特に社会人になったばかりの新入社員は、部署の先輩や上司に気を遣うあまり、仕事の悩みを誰にも打ち明けられない傾向にあります。そのままの状態で放っておくと、モチベーションが低下するだけでなく、ストレスの高い状態になってしまい、せっかく採用した人材を失う結果も招きかねません。
入社後3ヶ月・6ヶ月・1年など、時期を定めて定期的なフォローを実施すれば、社員の成長度合いや悩みの内容に合わせて適切なアドバイスができます。悩みが大きくなって離職を考え始める前に、しっかり対処することが可能です。
企業が行うべき「フォローアップ」の具体的な取り組み
企業が社員に対して行うべきフォローアップの重要性について解説しましたが、「具体的に何から取り組めばいいのかわからない…」という方も多いと思います。フォローアップは高度なことをするよりも、継続が大事です。ここでは、自社の業務に取り入れやすいフォローアップの取り組みを3つご紹介します。
フォローアップ研修を実施する
日々の業務が忙しいと、一度の研修で学んだ内容は徐々に忘れていってしまうものです。それを防ぐために、研修の学びを思い出させる工夫が必要です。それぞれの研修には、「社員にこうなって欲しい」というゴールがあります。そのゴールが研修後に達成されているかを確認する意味で、フォローアップ研修が重要なのです。
具体的には、研修で学んだ内容をどのような形で仕事に活用したかを振り返ります。もし活用できていない場合は、しっかりと原因を追究します。
・社員自身が研修内容を活用する意識が薄かった
・研修内容が社員にとって難しすぎた
・そもそも業務内で研修内容を活かす場面がなかった
原因は社員自身にある場合も、研修内容にある場合も様々です。どちらにしても、しっかりと課題を受け止めて、研修での指導方法や研修後のフォローアップ体制の改善につなげていきましょう。
1on1ミーティングを行う
「1on1ミーティング」とは、上司と部下が1対1で話をすることを意味し、人材育成の方法として注目を集めています。もともとはアメリカの企業で実施されてきた手法ですが、近年は日本企業でも導入が進んでいます。
1on1ミーティングの特徴は、部下の成長を目的としている点です。現状の課題を部下自身が認識し、解決に向けての行動を自ら考え出させます。そのため、仕事の成果や目標達成の度合いを確認する人事考課面談とは、根本的に目的が違うのです。多くの人は、誰かから「こうするべき」と言われたことよりも、自分自身で「こうしたい」と決めた事柄の方が熱心に取り組めるものです。上司は自分の考えを伝えすぎず、できる限り部下を導く役割に徹することが重要です。
社員アンケートをとる
職場環境への満足度に関するアンケートをとることも、フォローアップに有効な手段です。社員満足度が高い企業は業績も高い傾向があり、近年業種を問わず実施する企業が増えてきました。組織の課題を抽出し、社員が前向きに業務に取り組む環境づくりを目的として実施されます。
社員アンケートで調べることができる内容の例は以下の通りです。
・社員は業務にやりがいを感じているか
・業務内容・量に対して上司から適切な評価が行われているか
・ストレス度合いが高い部署はないか
・チームのコミュニケーションは円滑であるか
回答によって個人が特定されないこと、人事評価に影響しないことなどを事前に通告しておけば、より社員が本音を答えやすいアンケートに近づきます。
フォローアップ研修の内容例
フォローアップ研修は、社員のスキルや知識の習得度合いを改めて確認し、ステップアップのための教育を行う、定着・振り返りの機会です。社員の階層別に取り組む内容は異なるため、それぞれで重視すべきポイントについて解説します。
新入社員向けのフォローアップ研修
多くの企業で、新入社員は入社後すぐに研修を受けます。社会に出たばかりの新入社員は、自社の業務や配属先の人間関係に馴染むことで精一杯です。そのため、ある程度業務に慣れた入社3ヶ月後~半年後にフォローアップ研修を実施すると良いです。
【新入社員向けフォローアップ研修 テーマ例】
・主体的に取り組む意欲を喚起させ自己成長に繋げる新人フォローアップ研修
・意見が違う人とも上手く会話ができる【アサーティブコミュニケーション実践研修】
・目標を再設定して成長を促進させるフォローアップ研修
配属先で経験した業務と、フォローアップ研修で学んだ知識が体系的なものとして結びつき、自信を持って業務に取り組めるようになります。また、組織への定着を促す効果も期待できます。
スキルアップのフォローアップ研修
社員が定期的に自身の持つスキルを棚卸しして、強みを強化したり弱点を克服したりすることは、企業の競争力アップにも関わる重要な要素です。キャリアや業務内容にあわせたフォローアップ研修を実施すれば、実際の現場で活用した社員はまた一歩成長でき、組織への貢献感と自信を高めることにつながります。
【スキルアップのフォローアップ研修 テーマ例】
・明日から実践できる接客・接遇力向上ホスピタリティ研修
・1分でプレゼンする!相手に伝わる「話し方テンプレート」実践研修
・問題解決のレシピ【デザイン思考研修】
スキルアップ研修は、社員の個別の能力開発に加えて「学ぶ習慣」そのものを定着させる効果もあり、自ら考えて行動する社員の育成に役立ちます。
キャリアデザインのフォローアップ研修
ある程度のキャリアを積むと、仕事に楽しみややりがいを見出す社員がいる一方で、入社した頃の気持ちや未来の展望が日々の忙しさに埋もれてしまう社員も一定数存在します。その状態が続けば、仕事に目的意識を見出せず、離職という結論につながります。それを防ぐためにも、社員が自身のキャリアについて考えるフォローアップ研修が必要です。
【キャリアデザインのフォローアップ研修 テーマ例】
・自己改革・能力開発を促進するモチベーションアップ研修
・「なりたい自分」に出会うキャリアデザイン研修
・短時間で最大限の成果を生み出すタイムマネジメント手法
仕事に対するモチベーションアップはもちろん、研修を通して1年後・3年後・5年後の自分の未来や成長を考える中で、仕事への目的意識を呼び覚ますことができます。
次世代リーダー向けのフォローアップ研修
リーダー候補・管理職候補の社員は業務を多く抱えている場合が多く、なかなか研修を受ける機会がないのが実情です。しかし、次世代リーダーは組織の重要な柱となる人材。柱を強化しなければ、組織自体も強くなっていきません。
【次世代リーダー向けフォローアップ研修 テーマ例】
・豊富なノウハウに裏打ちされた現場マネジメント研修
・打ち合わせの生産性を高めるファシリテーション研修
・プロジェクトの成功率を飛躍的に高めるプロジェクトマネジメント研修
リーダーシップやマネジメントは「ここまでできたら終わり」という明確な指標のない分野のため、定期的に研修を行い、社員の学び直しの機会を設けることが大事です。
管理職向けのフォローアップ研修
働く人材や働き方のスタイルが多様化する現代社会において、管理職には様々なタイプの人を受け入れる柔軟性と、チーム全体を同じ目的に向かって導く統率力の両方が求められています。
【管理職向けフォローアップ研修 テーマ例】
・部下との関係性を築く質問力と傾聴スキル研修
・心地よい人間関をつくるハラスメント対策研修
・部下のやる気を引き出すチームビルディング研修
多様な人材が働きやすい職場づくりを促進するために、管理職が自身のマネジメント手法や部下との関わり方を見直す場として、フォローアップ研修を活用しましょう。
新入社員研修の終わりに立てた目標を達成できたか、新入社員研修で学んだのに忘れてしまっていることはないか、社員が自分自身を振り返り成長を確かめたり、仕事へのモチベーションを高めたりする研修です。