パワハラの現場

この数年メディアなどで『ハラスメント』という言葉を目にすることが多くなってきました。

労働局への相談件数の中で、ハラスメントに関することが右肩上がりに増えています。

ハラスメントの種類は40を超えており、その中でもパワハラは職場で多く、すべての企業、すべての働く人には他人事ではありません。

ここでは特に起こりやすい、言葉によるパワハラについて事例を紹介していますので、理解を深め対策の参考になさってください。

パワハラが企業に与える影響

パワハラは業務上の立場を利用して、必要以上の精神的・身体的苦痛を与えるものをいいます。

放置していると個人の問題だけにとどまらず、企業全体に大きな問題として損害を与えることになります。

離職者が増える

職場の人間関係は働く環境を左右する重要な要因となります。

上司からのパワハラを受けた時、誰にも相談できず一人で悩み続け、仕事に集中できず十分な能力を発揮できなくなります。

この状況が長く続くと、心身に悪影響が表れメンタル不調を起こし、転職や退職せざるを得なくなるケースも出てきます。

我慢してしまう人は責任感が強くまじめな傾向があります。企業としての生産性が下がるだけではなく、優秀な人材を無くしてしまうのです。

社員のモチベーションが下がる

目の前で同僚がパワハラを受けていたとしても、自分も標的になるのではないかという不安と恐怖から、助けることができなくなってしまいます。

毎日パワハラの現場を目にするだけでも気持ちが沈みがちになります。

同僚がパワハラが原因で休職をしたり退職を余儀なくされたことを目の当たりにし、何もできなかった自分を責めてしまいます。

パワハラを受けた本人だけではなく、周囲にも悪影響が及ぶことになります。

企業としての信頼性が下がる

ネガティブな話は本当であろうと嘘であろうと、あっという間に噂になります。

今はSNSなどで誰でも簡単に拡散することができますので、企業名だけではなく当事者の実名や写真まで短時間で広範囲に広がります。

対応が遅れたり、適切ではなかった場合はパワハラを受けた社員から訴えられる可能性もあります。

一度流れた情報をなかったことにするのは難しく、企業の信頼性は一気に失われることになるのです。

言葉によるパワハラの例

暴言を浴びせる上司
パワハラの中でも言葉によるものは非常に起こりやすいと言えます。

言った上司は深い意味もなく放った言葉でも、受け取る部下が恐怖を感じたり不快を感じた場合は、パワハラと認定される可能性が高くなります。

具体的な言葉としては

  • ばかやろう
  • 使えない奴だな
  • 明日から仕事こなくていいよ
  • やる気あるのか?
  • 会社にどれだけ損をさせるんだ?
  • アホ!バカ!
  • 頭悪いな
  • もう辞めたら?

などがありますが、他にも「おまえ」「おばさん」「おじさん」なども度を越して使い続けるとパワハラとなります。

パワハラは言葉そのものも問題ですが、他の社員や顧客がいる前での叱責、言い方や態度、表情、その後のフォローの有無もかなり重要です。

また、ターゲットの部下に直接暴言を言わなくても、他の社員にその部下を蔑むようなことを言ったり、部下の家族のことを中傷するようなことを言ってもパワハラとなることがあります。

パワハラ裁判の実例

裁判所
言葉によるパワハラが原因で裁判になった実例をご紹介します。

【背景】

上司は部下数人に対して日ごろから過度な叱責、暴言があり、足を蹴るなどの暴力行為もあった。

被害を受けた部下は他の上司に相談をしていたが、対応してもらえなかった。

【パワハラの実情】

部下が仕事上のミスをした時に、「今後同じことをした場合、どのような処分を受けても一切意義はありません」という内容の文言を書いた始末書を書かされた。

また別な部下には、「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」と始末書に書かせたこともあった。

「やる気がない」「ばか野郎」「給料泥棒」などの言葉を浴びせかけることも日常で、配偶者を侮辱するような言葉を言うこともあった。

度重なるパワハラに部下の一人が会社に相談をしたが、取り合ってもらえず、心療内科を受診し診断を受け休職をした。

【結果】

上司の言動は指導の範囲を超えており、休職となった原因はパワハラであると認定された。

裁判所は上司と企業に対して、被害を受けた社員数人に慰謝料の支払いを命じた。

この裁判のように、パワハラをおこなったのは個人でも、責任は企業も負うことになります。

企業は新人や若い社員を育てる一方で、ベテラン社員の管理職としての適性も見極めることが重要です。

https://keysession.jp/media/management-training/

パワハラを起こさないための対策

笑顔で従業員の話を聞く女性
パワハラは早期発見早期対処が重要になります。

パワハラが起きない企業作りをするためにも、次のような対策を取ることが必要です。

パワハラの正しい知識を学ぶ

研修をおこない、社員全員で同じ知識を共有することは、パワハラ対策としては有効です。

年代によってパワハラに対する感覚が違います。

こんな言葉くらいで騒ぐなよ」という人がいるのも現実です。

時代の流れに合った言葉使い、コミュニケーションがありますので、新しい常識をインプットすることが必要なのです。

『パワハラをしない、させない』ためには、正しい知識を得ることから始めましょう。

相談しやすい体制を整える

パワハラの相談をすると、あなたが敏感過ぎるのでは?と取り合ってもらえず我慢するしかなかったというケースがあります。

社内に相談窓口を設置する、相談マニュアルを作るなど、誰もが相談しやすい体制作りをしましょう。

早期発見のためには、現場の声、当事者の声を吸い上げることがとても大切です。

定期的なヒアリング

パワハラ被害を受けている人が全員声を上げられるとは限りません。

また、周囲が問題だと感じていても、本人がパワハラに遭っていると自覚していない場合もあります。

定期的に社員から業務に関することだけではなく、人間関係や就業に関する相談や意見を聞ける場を作るようにします。

企業側から歩み寄ることで、相談してみようという気持ちになります。

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パワハラは企業にとって大損害!

ひと昔前は『指導』という言葉で片付けられてしまった言葉や態度も、今はパワハラと言われます。

教育という名の過度な指導は、社員のモチベーションを下げ、優秀な人材を潰すばかりではなく、企業の信用にも関わります。

上司からの適性を超えた叱責や指導が原因で体調不良を起こしてしまい、企業や上司を訴えた裁判は少なくありません。

社員が安心して働けるように、企業がこの先も成長し続けられるように、パワハラ対策は早急に取り組むことが大切です。

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