数年前までは当たり前とされていた言動が今はNGとされ、困惑しているベテラン社員もいるかもしれません。
ここでは、正しくハラスメントを理解するために必要なハラスメントの実態と対策方法をご紹介しています。
ハラスメントを取り巻く環境

誰もが安心して働けるように働き方改革が叫ばれている昨今ですが、ハラスメントに関する課題も表面化してきています。
ハラスメントは個人の問題ではなく、社会問題として取り上げられる問題なのです。
ハラスメントとは
ハラスメントとは、嫌がらせや人を困らせる言動と定義されています。具体的な行動で線引きをするのは難しいのですが、相手が「気分が悪い」「嫌な思いをした」と感じたらそれはハラスメントになってしまいます。どんなに「そんなつもりじゃなかった」「冗談くらいわかれよ」と言っても遅いのです。
最近ではハラスメントの法整備が進んでおり、具体的な内容が示されるようになってきましたが、まだまだ完全ではありません。
国を挙げてのハラスメント対策
2014年の男女雇用機会均等法が改定され、セクシャルハラスメントに関する内容が盛り込まれました。2019年にはパワーハラスメント対策が事業主の義務となり、ハラスメントへの注目が増してきています。
厚生労働省の調べによると、各都道府県労働局に寄せられる相談で、ハラスメントに関する内容が右肩上がりになっています。裁判に発展するケースも増えており、2018年では民事の相談件数が8万件を超えています。
これらのことから、国を挙げてハラスメント対策に乗り出しているのが現状です。
参考:「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より

特に注目の種類

ハラスメントと言われるものは現在50を超えています。その中でも特に注目が高いハラスメント5つについて解説します。
パワーハラスメント
パワハラと略されているもので、職場での立場や関係性を盾に、業務の範囲を超えて苦痛を与えることを言います。管理職や上司と部下の間で起こるハラスメントです。
厚生労働省ではパワハラを6つに分類しています。
- 身体的な攻撃~殴る、蹴る
- 精神的な攻撃~人前で必要以上に怒鳴る
- 人間関係からの切り離し~無視、情報を伝えない
- 過大要求~仕事を押し付ける
- 過小な要求~仕事を回さない
- 個の侵害~勝手にデスクの中を見る
などが、パワハラの言動とされていますが、これ以外がパワハラにならないということではありません。
⇒怒りのコントロールを可能にするアンガーマネジメントとは?
セクシャルハラスメント
セクハラと略されているもので、異性に対するハラスメントを指します。職場において性的な言動により不快感を与えられることなのですが、ここでの職場は社内だけではなく、仕事上の飲食の場も職場とみなされています。飲み会の席でお酌を強要したり、しつこく恋人や妻、夫について聞くこともセクハラになる可能性が高いので要注意です。
モラルハラスメント
モラハラと略されるハラスメントで、人の尊厳を無視するような言動で精神的なダメージを与えることです。無視をする、皮肉を言う、行動や意見を否定する、バカにしたような態度をするなどがこれに当たります。
暴力を振るうことはないため、表面化しにくく周囲が気づかないケースもあります。
マタニティーハラスメント
マタハラと呼ばれるハラスメントで、妊娠・出産に関する嫌がらせを指します。産休や育休の取得に関する不当な扱いも、マタハラに含まれますので、女性ばかりではなく男性もターゲットになるのが特徴です。ジェンダーハラスメント
性別に関する嫌がらせや不公平感を与えるハラスメントです。同じ業務にも関わらず性別により給料が違う、性別を理由に採用されないなどのケースがあります。また、男性らしさ、女性らしさを強要するのもこれに含まれます。ハラスメント対策をする必要性
職場におけるハラスメントは、大人のいじめとなります。わかりやすいハラスメントもあれば、陰に隠れてしまうハラスメントもあります。わかりやすい事例でも、立場を考えて何も言えなくなってしまい、能力ある社員が辞めてしまうかもしれません。
そうならないためにも、ハラスメントをおこさない、おこさせない体制を取る必要があるのです。ハラスメントにより被害者の心身の健康が阻害された時、裁判になる可能性もあり、企業が法的責任を負った判例も多々あります
一度ネガティブなイメージがつくと、回復するのに時間がかかりますので、リスク管理のひとつとして十分に対策をしましょう。
企業で取り組むハラスメント対策

多くのハラスメントが存在する中で、企業ではどのような対策が必要となるのでしょうか。
ハラスメントを放置していると、職場環境が悪化し業務に悪影響をきたす恐れがありますので、適切な措置を講じることが求められます。
相談窓口の設置
まずは社内にハラスメントの相談窓口を設置することが急務です。相談することで、他の人に話が漏れてしまうのではないかという不安から、なかなか相談できない可能性もありますので、守秘義務があること、相談によって不利益がないことを明言するようにします。社員への周知と教育
ハラスメントに関する教育は必須です。外部セミナーへの参加、社内でハラスメント研修などをおこない、被害者目線だけでではなく、自分が加害者になり得ることを意識してもらうことも必要です。ひとりひとりの意識が変化すると、職場全体の雰囲気も良くなっていきますので、組織全体で取り組むことが大切になります。事業主がハラスメント対策の意思を明言し、従業員全員に会社の方針を浸透させることも忘れてはいけません。
ハラスメントを生まない環境づくり
正しい知識を習得し、個人が行動を振り返ることで、ハラスメントのリスクを軽減させることができます。特にベテラン社員は、ハラスメントに対する意識が薄いため、人間関係に関する情報と知識を更新してもらうことも必要です。ハラスメントを受けたと感じた時に、本人にその旨を伝えられる、上司に冷静に報告できるような人間関係を築くのも効果的です。
ハラスメント対策は企業の義務

人材育成のために社員研修をおこなっている企業は多いと思いますが、今後はハラスメント研修も実施することが必要になってきます。ハラスメントが問題となっている背景や具体的な例、対策方法を学ぶことで自分事として捉えることができます。
研修は専門性の高い講師から新しい情報を得るほうが良いですので、研修企画会社にお願いをするのがお勧めです。
ハラスメント対策は企業の義務ですので、快適な職場づくりに向けてぜひ取り組んでください。